脉状に応じる手技
項目 番号 e104
一、補法の手技(基本)
二、瀉法の手技(基本)
三、手技の名称
経絡治療では、
主証(診断)が決定しますと、その虚実に随って直ちに補法・瀉法の鍼灸治療を行います。
補法・瀉法の鍼灸治療の概要
一、補法の手技(基本)
「虚」に対しては、補法を行います。
「虚」とは、生気が不足して力なく、力のない脉状を現し、身体冷え、呼吸浅く、声小さく、
大小便頻数にして飲食入らず、皮膚枯れて乾燥し、身体痩せる等、
生体機能の減弱と物質不足の消極的な病態を言います。
その脉状は、微弱で指先に微かに触れ、気血の虚損を現しています。
このような脉状に対しては、本治法も標治法も共に補法によって生気を補う手法を施します。
用鍼は、銀の1番・2番鍼を使用します。
手技の手順。
① 上半身の力を抜いて、心おだやかに手技をおこなう。
② 経に従い取穴。
③ 押手を軽く構え、穴所を凹ませない程度に密着させる。
④ 刺手は、鍼柄を指腹で柔らかく持ち、鍼全体を感じ鍼柄と鍼体の境目に意識を集中させる。
⑤ 押手と穴所によって鍼尖に空気を触れさせない様にしながら、鍼体がたわまないよう、
鍼尖を柔らかく穴所に接触させる。
⑥ 軽く押すと同時に押手は鍼先の方向を確かなものにする程度の左右圧をかける。
⑦ 鍼尖が自然に吸い込まれるまで待ち、患者の脉拍に合わせて、2拍押し力を抜き1拍置く、
これを繰り返し目的の深さ、2~4ミリ程度刺入する。
⑧ 催気の感覚を良くするためには、刺手の指先感覚が鍼先にある気持ちで手技をおこなうと、
穴所の気の動きが感覚できる。
患者の呼吸に応じて吸気で穴がしまり、吐気で穴がゆるむ。フワフワと鍼響が伝わる。
⑨ 催気をえたならば、押手の左右圧をスーッ加え、すばやく抜鍼と同時に、
鍼口を閉じる補法を行う。
補法の効果を上げる方法。
鍼刺中の押し手の左右圧の加減に鍵があった。
脉状の硬軟、患者の気の循の速さに応じて、左右圧を加減する。
抜鍼時は、押手の左右圧を100%スーッ加え、すばやく抜鍼と同時に、鍼口を閉じる補法を行う。
※ これが古典にいわく補法の手技「心に円を持てば補」「蚊虻の止まるがごとき」鍼術です。
※ これが、患者の意識にのぼらない痛みのない刺鍼法です。
刺鍼感覚(患者の感じ方の感想)
良い鍼をうけると、患部にフワフワと温かい感じが起こる。
また、その経の影響する、腹部の緊張が解け、冷えていれば温かくなる。
また、外虚内実の場合は、痛みが改善します。
刺鍼感覚(施術者の感じ方)
良い鍼をすると、目的の深さの部で、鍼尖がゆるむ感じを覚え、その響きが押手の左右に伝わり、また同時に刺手の指先から肘の方に「くすぐったい様」な感覚を覚えます。
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※ 補法の刺入方法の手順。(最新版)
【補法】基本刺鍼
①経に随いごく軽く取穴する。
②押手を軽く構える。
③竜頭を極めて軽く持ち、その鍼を押し手の母指と示指の間に入れる。
④鍼先を静かに穴所に接触させる。
⑤とどめたまま、鍼がたわまないように静かに押し続ける。
(その際、患者の気の状態によって、鍼が進んだり、進まなかったするので、術者は無理に鍼を進めようとしない。)
⑥鍼先が動かなくなったのを度とする。
⑦押し手の中に鍼があるのが分かるくらいの左右圧、ゆっくりとかける。
⑧抜鍼と同時に押し手にて穴所(けつしょ)に蓋をする。
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二、瀉法の手技(基本)
「実の脉」に対しては、瀉法を行います。
「実」とは、邪気盛んにして、力のある脉状を現し、身体熱し、腹が張ってもだえ苦しみ、
大小便が通じず、痛み激しく、大声でわめく等、生体機能の亢進であり、
物質過剰の積極的な病態を言います。
その脉状は、硬く強く荒々しく指先に触れます。
この実脉には、大きく三つの脉状があります。
「外邪実」・「旺気実」・「虚性の邪」です。
外邪実とは、風・寒・暑・湿・燥・火の六種の外からの病邪を六淫の外邪が身体に作用して
起こります。また、不外内因の暴飲暴食によっても現れます。
旺気実とは、生体の内部的アンバランス、歪みよる邪の脉状です。
虚性の邪とは、一般的な特徴として、新陳代謝機能の低下した状態の脉状です。(別記)
瀉法の用鍼は、ステンレス鍼の1番~3番鍼を使用します。
実技の手順(基本)
① 経絡の流れに逆って取穴し、押出を構える。
② 刺手は竜頭をある程度しっかり持ち、すみやかに刺入し、抜き刺しを行う。
(鍼先は絶えず動かし止めない)
③ 抵抗が取れたら、押手にて、ゆっくり下圧をかけ、ゆっくり鍼を抜きあげ、
先鍼が鍼口離れても尚、下圧をかけ続ける。
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※ 瀉法の刺入方法の手順。(最新版)
【瀉法】
①経に逆らい取穴する。
②押出を軽く構える。
③竜頭は補法よりやや強めに持ち、その鍼を押し手の母指と示指の間に入れる。
④鍼先を穴所に接触させる。
⑤押す・止めるを繰り返す。(刺動法:目的の深さまで鍼先を刺入する。)
⑥鍼が止まる(抵抗を)度として、
鍼が滑らないよう押し手の母指と示指でしっかり保持し、鍼先の方向に下圧をかける。
⑦刺し手は押し手の下圧と共にもっていく。
⑧下圧の限度は押し手で感じる。(鍼先が進まない所)
⑨鍼口は閉じずに、ゆっくりと抜鍼する。
⑩抜鍼後一呼吸おいて、押し手を取る。
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三、手技の名称
「虚性の邪」の脉状
「虚性の邪」とは、虚体あるいは、それに近い体力の持ち主が、慢性的な病気や半健康状態にある時に、内因による邪により、旺気実の脉状を現すものです。
「虚性の邪」の脉状の一般例。
六部定位の比較脉診において、右の寸口関上の脉位を中脉より静かに浮かせ、陽脉をうかがったと時よりも、その尺中を同様に観察すると、尺中は寸口関上に比べて、やや指に当たり、しかも高めに感じます。
これは、三焦に「虚性の邪」が存在していると診ます。
ただし、外邪による実脈とは違い、観察者の指に「弱く触れる異状物の脉状」です。
「虚性の邪」は3つの脉状に分類され、それぞれを治す手技があります。
「虚性の邪」の分類は塵(ジン)・枯(こ)・堅(ケン)の3つです。
虚性の邪の基本の邪実の処理を「補中の瀉法」と呼称します。
「虚性の邪」を現す一般的な体質について。
一般的な特徴、新陳代謝機能の低下した状態です。
臓器の働き。
胃の状態として、胃酸不足があります。食後に、みぞおちがつかえ不快感がでます。
食事の内容は、甘い食物、辛い食物を欲しがります。
また、無意識に、ご飯をたくさん食べ過ぎています。
そして、苦い薬は飲めません。
大便の状態として、下痢をすると、お腹が痛くなります。
また、便秘をしても、のぼせがなく、コロコロの便(兎便)になります。
これらの現象は、大腸の働きが弱くなり大便を送り出すぜんどう運動機能が低下しているからです。
小便の状態として、稀薄な小便がたくさん出ます。
したがって小便に何回も行き総量が多くなります。
これは腎臓の働きが弱くなり水分の再吸収機能が衰えるからです。
その他の状態として、
生理不順・貧血性の生理痛・不妊症。
貧血で顔色が悪く、働くと調子が悪くフラフラして元気がなく、眠気のくる状態。
手足から冷たくなり過労で心臓に痛みが出ます。
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その他の脉状:「弾(ダン)脉」
弾脉の対象者
次のような慢性病のある者:
動脈硬化症・高血圧・低血圧・癌患者・リウマチ・心臓病・老衰・糖尿病・などの者で、次のような病状をあらわす時に診られる。
頭痛・めまい・肩こり・よろめき・疲れやすい・動悸・胸いきれ等を訴える者。
また、実体の体質者のみに現れ、虚体の者には現れません。
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脉状の名称と手技
「虚の脉」に対しては、補法の手技を行います。
「実の脉」に対しては、瀉法の手技を行います。
以下の脉状はそれぞれのリンクをご覧ください。
速手刺しの脉 とその手技 e208
和法の脉 とその手技 e209
浮実の脉 とその手技 e210
「虚性の邪」3つの脉状
塵(ジン)の脉 とその手技 e212
枯(コ)の脉 とその手技 e213
堅(ケン)の脉 とその手技 e214
e218 | 補法手技応用 |
e219 | 瀉法手技応用 |
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手技の名称と関係図 e1041
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