弾の脉とその手技 e215

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   弾の脉とその手技

                   小項目 番号 e215

弾の脉状の特徴

1、脉の位置:陽経の脉状(陽分と中脉の間に感じられる。)

2、指を跳ね上げるような触感覚の脉である。

または、「弾(だん)」「はじく」「押し上げる」「突っ張る」「堅い」などの感覚の脉である。

3、そして、触覚的には特定の脉状にはなっていない。

4、また、古典の「牢脉(ろうみゃく)」や「革脉(かくみゃく)」にも類似しているものもある。

ちなみに古典にある牢脉、革脉について述べると。

「牢脉(ろうみゃく)」は、血の変動によりおこる。
陰中の陽脉なり。沈似、伏に似たるは牢の位なり。
実、大、弦、長の四脉を合するは牢の体なり。つづみ太鼓を押すが如し。
これを少し按せば無きが如く、強く按せば有って指の広く堅く覚えるなり。身のうち腫れて息づかいせわしく、命久しからず。

「革脉(かくみゃく)」は、気の変動によりおこる。
弦を寒とし、芤を虚とするなり。陰分における失血の脉なり。 太鼓の皮を按すがごとし。
脉の位地 (場所)は、 陽分と中脉の間に感じられる。(参考文献1)

または、最近の臨床からは、陰分にもある。

 

 弾の対象者

次のような慢性病のある者:

動脈硬化症・高血圧・低血圧・癌患者・リウマチ・心臓病・老衰・糖尿病・

などの者で、次のような病状をあらわす時に診られる。

頭痛・めまい・肩こり・よろめき・疲れやすい・動悸・胸いきれ等を訴える者。

また、実体の体質者のみに現れ、虚体の者には現れない。

 

 弾脉の原因

これは、身体の中で正邪抗争が起きているからである。

気血ともに、虚損渋滞している。

 

 弾脉を治す手技

特定の手法はない。
所定の主証に随って、陰より入念かつ充分に補うと、
陰分に注ぎ込まれた生気によって、
陽分に、「実脉の実邪」や「枯、堅等の虚勢の邪」として現れるので、
しかるべき処置をする。
また、
陰分での処置と病態の状態においては陰陽調和して改善をみる場合もある。
しかして、
経絡鍼灸術未熟な者が陽分に、邪を上げきらないで、陰分に弾脉として残ったままで、
軽率に瀉法を行うと、脉は開き浮にして虚、または散脉となり、
患者をして、めまい、息苦しい、動悸、冷や汗、胸いきれの副作用を出す。
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中級者編、弾脉を治す手技

柳下登志夫先生の

「弾脉を処理する時の基本的な手法」

柳下登志夫 先生  経絡治療学原論上巻臨床考察‐基礎・診断編‐

柳下臨床考察:51 脉状診 頁:180・平成18年4月収録文を参照して。

弾脉の捉え方と其の治療実技が書いてあります。

弾脉 総じて言うならば、

①簡単に処理可能なものと、
②難しいもの、
③そして弾脉が病的な場合と、
④これを呈していても何ら病症を現わさず、
何十年に亘って通常人と同じ様に生活している人もいる。

軽いものでは、風邪引きの時に現れるもの、
これは陰経を補って陽経に現れた邪を処理する事によって脉状は通常に戻る。
しかし、慢性症に打つ弾脉は、このような方法では消えない。
これに対する処置についても経絡治療学原論には述べられている。
しかし手馴れない内は「これでは消極的過ぎるかな」と思う程度の処置から始め、
極めて徐々に治療を進める事が大切である。
【手法:弾脉改善の手法:邪を陽分に浮かせるコツ。】

弾脉即ち指先に当たるものを邪と考えた時、

この邪を陽に浮かせて瀉そうとするならば、

補法においては鍼を接触させ、軽く押し続ける。

そして、

その押し続けている儘(まま)左右圧を掛け、

その位置から一気に抜鍼する。

これが邪を陽分に浮かせるコツである。―

先ず行ってみよう。
【手技:弾脉改善の手順 】

手順 ――

鍼先を穴所に接触させる。

→ 軽く押し始める。

→ 押し続ける。

→ 硬い鍼先は軟らかい穴所に刺さる方向で進む。

→ 暫くして穴所の緊張が緩み、鍼先を受け入れる。――

例え話として、2ミリの厚さがあるといわれる皮膚に1ミリ入り込んだとする。

術者は、これを知り、左右圧を必要条件に合わせて掛ける

弦絶の如く抜鍼し鍼口を閉じる。

弾脉を呈していたものが邪実となって陽経に現れる。

これは弾脉を処理する時の基本的な手法として考えて貰いたい。

以上。
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・ - 参考図書 ・ -

柳下登志夫 先生の著作

経絡治療学原論(上巻)臨床考察 ―基礎・診断編― をお読みください。

発刊:東洋はり医学会

発刊書籍の販売リンクはこちらをご覧ください。
http://www.toyohari.net/book.html

参考文献1:経絡治療学原論(下巻)p152- 脉法手引草p56-

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