一難

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難経一難

整理番号 ank01

ゆっくり堂の『難経ポイント』  難経 第一難

脈診こそは鍼灸師の特権です。 難経「第一難」にはその大事な話が記載されています。

鍼灸師のバイブル難経を学びましょう。

※  難経「一難」のポイントは、六部定位診(ろくぶじょういしん)を確定した点である。

六部定位診とは、前腕部、橈骨動脈の流れを診ることで、五臓六腑、全身の状態が判り、
疾病により死ぬか生きるか、病気が治るか、病気が治らないかが診断できると言う事です。

前腕部、橈骨動脈の位置:図gbm30を参照

gbm30

指の当て方

手関節橈骨茎上突起の内側に中指をあて、橈骨動脈の流れを指腹に感じ診る。
その両側に示指と薬指を添えて脉を診る。

示指の当たる部を寸口と言い、左手側、沈めて陰経「心」浮かして陽経「小腸」を診る。
右手側、陰経「肺」、陽経「大腸」を診る。
中指の当たる部を関上と言い、左手側、陰経「肝」、陽経「胆」を診る。
右手側、陰経「脾」、陽経「胃」を診る。
薬指の当たる部を尺中と言い、左手側、陰経「腎」、陽経「膀胱」を診る。
右手側、陰経「命門:心包」、陽経「三焦」を診る。

左右の前腕部、橈骨動脈(太陰肺経)の脉診で全身の十二の臓腑経絡の様子が全て診断できる。


※ 一難のポイント其の二は、

経絡鍼灸の本治法の治療効果が本格的に出だすのは、治療日の次の日からです。

一日五十回転の気の循環で気の一巡が完了するからでしょうね。

臨床エトセトラ1・・

難経に於いて六部定位脉診の理論が完成された。

※ 一難、
六部定位診(ろくぶじょういしん)を確定した点である。

※ 六一難、
六部定位の脉診と言うものが「難経」に於いて完成された事である

※ 十八難、
難経に於ける脉診の三部九候について説明しています。

※ 五難、
寸関尺を押さえる重さ・深さの比較です。

※ 四難、
脉状に於いて浮沈、長短、滑濇の六脉を基本脉と言っている。
浮、長、滑は陽脉であり、沈、短、濇は陰脉であると。

※ 四十八、
病気の診察診断方法には三つの分類(①脉診・②病状・③触診)があり、
そこに虚と実のタイプがあります。

それぞれリンクしてご覧ください。
一難」「六一難」「十八難」「五難」「四難」「四十八難

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(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

難経「一難」原文

一難曰.
十二經皆有動脉.獨取寸口.以決五藏六府死生吉凶之法.何謂也.
然.寸口者.脉之大會.手太陰之脉動也.
人一呼脉行三寸.一吸脉行三寸.呼吸定息.脉行六寸.
人一日一夜.凡一萬三千五百息.脉行五十度.周於身.漏水下百刻.
榮衞行陽二十五度.行陰亦二十五度.爲一周也.故五十度.復會於手太陰.
寸口者.五藏六府之所終始.故法取於寸口也.

一難の訓読

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(417号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、 山口一誠の考察文にて構成しました。)

一難に曰く。

十二経皆動脉有り、独り寸口(すんこう)を取って、
以(も)って五臓六腑死生吉凶を決すとは、
何の謂(いい)ぞや。

然(しか)るなり。

寸口は大会(たいえ)する、手の太陰肺経の動脈なり。

人は一呼に脉行くこと三寸、一吸に脉行くこと三寸、呼吸定息に脉行くこと六寸。

人は一日一夜に凡(すべ)て一万三千五百息、脉行こと五十度にして、
身を周(めぐ)る、漏水下がること百刻。

榮衞陽行くこと二十五度、陰に行くことも亦(また)二十五度、一周と爲す也り。
故に五十度にして、復(ま)た手の太陰に会す。

寸口は、五藏六府の終始する所、故に法を寸口に取る也り。

詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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一難の解説

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(417号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、 山口一誠の考察文にて構成しました。)


難経一難の解説をします。

十二経絡の流注上にはそれぞれ脈拍を見る動脉が有あるが、
寸口肺経の脉を一つ診るだけで五臓六腑、全身の状態が判り、
疾病により死ぬか生きるか、病気が治るか、病気が治らないか、が診断できると言うが、

これはどの様な理由か説明しなさい。

お答えします。

左右の手の太陰肺経の動脈の脉診で全身の十二の臓腑経絡の様子が全て診断できる。

人間の経脉の気の流れがどの位の速さで回っているのかと言うと、
一呼で三寸、一吸で三寸進み、一呼吸で六寸進みます。

人間は一昼夜(一日)に一万三千五百回、呼吸をしているので、
経脉の榮衞気の流れは十二臓腑経絡の全身を五十回転している。
また、水時計の水が百刻を刻む時、一日五十回転の気の循環が終わる。

榮衞の気は昼に二十五回めぐり、夜に二十五回めぐり気の一巡が完了する。
だから、一日五十回転の気の循環をして手の太陰肺経の動脈に戻ってくる。

寸口は十二経絡・五藏六府の出発点であり終着点でる。
だから、全身の十二の臓腑経絡の様子が全て診断でき、
寸口肺経の脉を一つ診るだけで五臓六腑、全身の状態が判り、
疾病により死ぬか生きるか、病気が治るか、病気が治らないかが診断できるのである。

詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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一難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(417号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、 山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕一難曰.
〔訓読〕一難に曰く。
〔解説〕一難の解説をします。

〔原文〕十二經皆有動脉.獨取寸口.以決五藏六府死生吉凶之法.何謂也.

〔訓読〕十二経皆動脉有り、独り寸口(すんこう)を取って、
以(も)って五臓六腑死生吉凶を決すとは、
何の謂(いい)ぞや。

〔解説〕十二経絡の流注上にはそれぞれ脈拍を見る動脉が有あるが、
寸口肺経の脉を一つ診るだけで五臓六腑、全身の状態が判り、
疾病により死ぬか生きるか、病気が治るか、病気が治らない、かが診断できると言うが、
これはどの様な理由か説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕寸口者.脉之大會.手太陰之脉動也.

〔訓読〕寸口は大会(たいえ)する、手の太陰肺経の動脈なり。

〔解説〕左右の手の太陰肺経の動脈の脉診で全身の十二の臓腑経絡の様子が全て診断できる。

〔解説補足〕
ここで言う寸口とは、六部定位診(ろくぶじょういしん)のことで、
左右の手の太陰肺経の寸(すん)・関(かん)・尺(しゃく)の脉診部の動脈を言います。
「大会する」とは、十二の臓腑経絡の様子が全て診断できると言う事です。

〔原文〕人一呼脉行三寸.一吸脉行三寸.呼吸定息.脉行六寸.

〔訓読〕人一呼に脉行くこと三寸、一吸に脉行くこと三寸、呼吸定息に脉行くこと六寸。

〔解説〕人間の経脉の気の流れがどの位の速さで回っているのかと言うと、
一呼で三寸、一吸で三寸進み、一呼吸で六寸進みます。

〔原文〕人一日一夜.凡一萬三千五百息.脉行五十度.周於身.漏水下百刻.

〔訓読〕人は一日一夜に凡(すべ)て一万三千五百息、脉行こと五十度にして、
身を周(めぐ)る、漏水下がること百刻。

〔解説〕人間は一昼夜(一日)に一万三千五百回、呼吸をしているので、
経脉の榮衞気の流れは十二臓腑経絡の全身を五十回転している。
また、水時計の水が百刻を刻む時、一日五十回転の気の循環が終わる。

〔解説補足1〕一昼夜(一日)に一万三千五百回、呼吸。
榮衞気の流れは、一呼吸で六寸進み。
十二経絡の長さは、16丈2尺=1620寸。
一昼夜(一日)に榮衞気の流れる距離は、13500×6=81,000寸。
∴ 81,000÷1,620=50 経脉の榮衞気の流れは十二臓腑経絡の全身を五十回転している。

〔解説補足2〕漏水とは水時計のこと。 百刻とは一昼夜(一日)を百に刻むこと。

〔原文〕榮衞行陽二十五度.行陰亦二十五度.爲一周也.故五十度.復會於手太陰.

〔訓読〕榮衞陽行くこと二十五度、陰に行くことも亦(また)二十五度、一周と爲す也り。
故に五十度にして、復(ま)た手の太陰に会す。

〔解説〕榮衞の気は昼に二十五回めぐり、夜に二十五回めぐり気の一巡が完了する。
だから、一日五十回転の気の循環をして手の太陰肺経の動脈に戻ってくる。

〔原文〕寸口者.五藏六府之所終始.故法取於寸口也.

〔訓読〕寸口は、五藏六府の終始する所、故に法を寸口に取る也り。

〔解説〕寸口は十二経絡・五藏六府の出発点であり終着点でる。
だから、全身の十二の臓腑経絡の様子が全て診断でき、
寸口肺経の脉を一つ診るだけで五臓六腑、全身の状態が判り、
疾病により死ぬか生きるか、病気が治るか、病気が治らないかが診断できるのである。

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鍼を受けた次の日が調子が良い理由。

ゆっくり堂の鍼灸臨床でも、患者様から、たびたび治療の感想を頂きます。

「鍼灸治療を受けた日よりも、翌日がもっと身体が軽くなり、痛みが取れ、気分が良く、身体の調子が良いと。」

〔原文〕榮衞行陽二十五度.行陰亦二十五度.爲一周也.故五十度.復會於手太陰.

〔訓読〕榮衞陽行くこと二十五度、陰に行くことも亦(また)二十五度、一周と爲す也り。
故に五十度にして、復(ま)た手の太陰に会す。

〔解説〕榮衞の気は昼に二十五回めぐり、夜に二十五回めぐり気の一巡が完了する。
だから、一日五十回転の気の循環をして手の太陰肺経の動脈に戻ってくる。

鍼の本治法の治療効果が本格的に出だすのは治療日の次の日からです。

一日五十回転の気の循環で気の一巡が完了するからでしょうね。

 

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