七七難

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  難経 第七十七難


ゆっくり堂の『難経ポイント』第七十七難

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  • ※ 七十七難のポイント其の一は、上工は、未病を治す。
  •  ※ 七十七難のポイント其の二は、中工は、病気のある所だけを治療する。
  • ※ 七十七難のポイント其の三は、難経は経絡治療の実践理論書である。
    難経は経絡治療の実践理論書であることの『未病を治す』神髄が述べてあります。
    『未病を治す』と言う言葉の意味は、
    鍼術(はりのじゅつは)相生相剋の五行理論に基ずき「経の治療」を施すことで成立している事を意味しています。
  • 「未病(みびょう)を治(なお)す」とは、将来の病気を防(ふせ)ぐ予防医学のことです。
    そこにまだ病気が無くともこれから病気が来そうだと言う所も治す技術法則です。
    たとえば、肝の病状として診察したら、
    五行論の相剋関係「木剋土」によってやがては脾胃に病気を起こすことが予想されます。
    現在は未だ病んでいなくとも脾胃にも治療を施し肝病の影響を起さないように努めます。
    こうように、先々の治療をして新たな病を未然に防ぐことを「未病を治す」と言います。
  • 虚している経絡を治療するために、
    難経七十二難の『虚実補瀉』「経絡の正気の不足、虚」を補う補法の手技があり、
    難経六十九難の「虚するものは其の母経を補う」原則が述べられている訳です。

リンクしてご覧ください。

 


※ 難経  第七十七難 臨床エトセトラより。

上工は、医道に精通し、病の未だ発しない前に先々の事を察して治療する。
上工は、鍼灸師の診断方法である五行論の相生、相剋を理解してるから、必要に応じて相剋経、相生経への治療を施すことが出来る。
そして、
未病治療を行える者こそが上工(鍼医)の条件になる。

※ 臨床経験からは、「未病をの治療対象」癌と痴ほう症に罹患しないためには、

1週間に1回以上の鍼灸治療が必要です。 北国の師匠より。

中工(平凡な鍼灸師)は、病んでいる所だけを診て治療する。
例えば、現に病んでいる肝の病だけを診るだけで、
鍼灸師の診断方法である五行論の相生、相剋を理解していないから、
肝の病が相剋関係の脾に病が伝わる事も知らず、また脾の相生(母子)関係からその子に伝えて心実の病を起すことも知らない。
但一心に肝だけを治している。
だから、中工は、「巳病を治すのみ」と言われるのである。


難経 第七十七難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

七十七難曰.
經言.
上工治未病.中工治已病者.何謂也。
然.
所謂治未病者.見肝之病.則知肝當傳之與脾。
故先實其脾氣.無令得受肝之邪。
故曰治未病焉。
中工治已病者.見肝之病.不暁相傳.但一心治肝。
故曰治已病也。

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 七十七難の訓読

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(494号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

七十七難に曰く、
経に言う、
上工は未病を治(ち)し、中工は已(き)病を治す、とは何の謂ぞや。
然つなり、
所謂る未病を治すとは、肝の病を見て、即ち肝當(まさに)これを脾に伝うべし。
故に先づその脾の気を実して、肝の邪を受けざらしむることなし。
故に曰く未病を治すと。
中工は已病を治すとは、肝の病を見て、相(あい)伝わることを暁(さと)さずして、
但(ただ)一心に肝の病を治す。
故に曰く已病を治すなりと。


詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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 七十七難の解説

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(494号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

七十七難の解説をします。

黄帝内経・霊枢・逆順篇から考察するに。

上工、即ち医道に精通し、上手な鍼灸師は病の未だ発しない前に先々の事を察して治療する。
中工、即ち並の鍼灸師は既に現在病んでいる所だけを見て治療する。
と言われるが、この上工と中工について、わかり易く説明しなさい。

お答えします。

「未病を治す」と言う上工の診断技術とは、
たとえば、現在、肝に邪があり肝が病んでいるとすることを診察したら、
肝木は五行論の相剋関係「木剋土」によって更に病の影響を脾土に伝えることを当然の伝変として知っているのである。

肝の邪による実は脾を相剋して、やがては脾虚を起すことが当然であるから、
現在は未だ病んでいなくとも脾を補って置いて肝の邪から脾虚を起さないように努めるのである。
こうように、
肝の実を診断したならば、肝への瀉法行うと同時に直ちに脾を補って先々の治療をして新たな病を未然に防ぐことを「未病を治す」と言うのである。

中工(平凡な鍼灸師)は、現に病んでいる肝の病だけを診るだけで、
鍼灸師の診断方法である五行論の相生、相剋を理解していないから、
肝の病が相剋関係の脾に病が伝わる事も知らず、また脾の相生(母子)関係からその子に伝えて心実の病を起すことも知らない。
但一心に肝だけを治している、此れを「巳病を治す」と言うのである。


詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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 七十七難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(494号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕七十七難曰.
〔訓読〕七十七難に曰く。
〔解説〕七十七難の解説をします。

〔原文〕經言.
〔訓読〕経に言う。
〔解説〕黄帝内経・霊枢・逆順篇から考察するに。

〔本間祥白先生の解説補足〕
霊枢逆順篇には、病の盛衰を見て治療する時期を記している。
本難では病の伝変による未病己病を説く。

〔原文〕上工治未病.中工治已病者.何謂也。
〔訓読〕上工は未病を治(ち)し、中工は已(き)病を治す、とは何の謂ぞや。
〔解説〕
上工、即ち医道に精通し、上手な鍼灸師は、病の未だ発しない前に先々の事を察して治療する。
中工、即ち並の鍼灸師は既に現在病んでいる所だけを見て治療する。
と言われるが、この上工と中工について、わかり易く説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕所謂治未病者.見肝之病.則知肝當傳之與脾。
〔訓読〕所謂る未病を治すとは、肝の病を見て、即ち肝當(まさに)これを脾に伝うべし。
〔解説〕
「未病を治す」と言う上工の診断技術とは、
現在肝に邪があり肝病んでいるとすることを診察したら、肝木は五行論の相剋関係「木剋土」によって更に病の影響を脾土に伝えることを当然の伝変として知っているのである。

〔原文〕故先實其脾氣.無令得受肝之邪。故曰治未病焉。
〔訓読〕故に先づその脾の気を実して、肝の邪を受けざらしむることなし。故に曰く未病を治すと。
〔解説〕
肝の邪による実は脾を相剋して、やがては脾虚を起すことが当然であるから、
現在は未だ病んでいなくとも脾を補って置いて肝の邪から脾虚を起さないように努めるのである。
こうように、
肝の実を診断したならば、肝への瀉法行うと同時に直ちに脾を補って先々の治療をして新たな病を未然に防ぐことを「未病を治す」と言うのである。

〔原文〕中工治已病者.見肝之病.不暁相傳.但一心治肝。故曰治已病也。
〔訓読〕
中工は已病を治すとは、肝の病を見て、相(あい)伝わることを暁(さと)さずして、
但(ただ)一心に肝の病を治す。故に曰く已病を治すなりと。
〔解説〕
中工(平凡な鍼灸師)は、現に病んでいる肝の病だけを診るだけで、
鍼灸師の診断方法である五行論の相生、相剋を理解していないから、
肝の病が相剋関係の脾に病が伝わる事も知らず、また脾の相生(母子)関係からその子に伝えて心実の病を起すことも知らない。
但一心に肝だけを治している、此れを「巳病を治す」と言うのである。

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井上恵理 先生の解説&言葉の意味

上工とは、鍼灸の上手な人と言う事です。

中工とは、上工に次ぐ人と言う事です。
(鍼灸の診断方法である五行論の相生、相剋を理解していない鍼灸師)

『未病を治す』とは、そこにまだ病気が無くともこれから病気が来そうだと言う所から治す事です。

「已病を治す」とは、病気のある所だけを治療する事です。

未病を治す例として、今、肝の病(やまい)ここにある。肝はこれを脾に伝える。

nk1

(図nk1)
参考http://yukkurido.jp/keiro/bkb/c101/c203/

いわゆる木剋土(肝剋脾)と言う相剋関係で脾に伝える。
そう言う事を考えて、まず脾の気を実しせしめておいて(脾の補法)、
そして肝の邪を受け入れない様にする事だと。
だからこれは「未病を治す」と言い事なのだと。

○ まだ病気が脾まで行っていないから、その行ってい所に治療を加えるのだと。
脾の気が病まない内に脾の気を実しせしめておくのだと言う事なんです。

○ 六十九難の治療法なんかは完全にこの方法を取る訳です。
例えば肺が虚して肝が実していれば、必ず脾が虚して来るので、初めから肺と脾を補うと言うのが
『未病治療』であり、経絡治療の「本治法」に成るのです。

nk2

(図nk2)
「中工は已(き)病を治す」と言うのは、肝が実しているとすれば、肝だけを瀉す。
肺が虚していれば肺だけを補う。今そこにあるものだけを「治療」する。
- また、経絡なんか考えないで、
頭が痛ければ頭に刺す。肩が痛ければ肩だけ刺す。
そうやっているのが己病の方です。
いわいる「中工は、肝の病を見て、相(あい)伝わることを暁(さと)さず」と言うのは、
病気と言うものは伝変すると言う事を知らない(察知できない)で、
「但(ただ)一心に肝の病を治す」ただ肝だけを治療している。

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ここからは、井上恵理先生の、「鍼治療の本質とは」から山口一誠の考察をしてみました。

※ ゆっくり堂鍼灸院の「脱即効主義宣言」

鍼灸治療には太古の昔から、現在に至るも、二通りの鍼灸路線の違いがあります。

一方は、「即効主義」です。

そうしてもう一方は「経絡主義」です。

経絡治療家は「本当の鍼」と言うものは「即効」するものではない事を知っています。

「即効」は偶然には起こるが、意識的に起させるものではないのです。

患者に治る時期まで待たせる事が「本当の鍼」なんです。

患者さんは「早く病気が治りたいから、鍼灸師に早く治してくれ」と、要求しますが、

治療家がそれを“真に受けて”「早く治すと考えて施術をする」と間違いを犯します。

それは、「病状を悪化させる」間違いであり、

「鍼は効かないとう言う評価を社会に与える」間違いを犯します。

そして、

これは論外ですが、肩が痛ければ肩だけ刺す。方法で、その時は楽にさせるが、治さないで(治せないで)、治療を長引かせる。これは論外のやり方ですね。
即効主義よりもたちが悪いと思います。

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 経絡鍼灸家は、こんな気持ちで、『未病治療』=『本治法』を施術しています。

井上恵理先生の講和「録南北経驗醫方大成」による「病症論」p200より、

井上先生の言霊を綴ってみます。

経絡鍼灸の真髄に少しでも近づければ良いのですが・・・

※ 患者さんの病気が改善した時の鍼灸師の心得について。

① 治療が上手く行った時はこちらから自慢話しをしない事です。
② 患者様から「おかげさまで良く成りました。」との感謝の言葉を頂いた時は静かに微笑んで拝聴します。
③ そして、その時の返答は、経絡鍼灸師の先人の遺徳を称え、患者さんの自然治癒力を称えます。
④ 上手く治らない時は、自分の拙劣(せつれつ:へたであること。)を心の中で悔やみます。

※ 『 鍼治療の本質とは、』

身体の「気血」(榮気・衞気)の運行を調和する事によって病気を治させる方法なんですね。

やはり、経絡治療の本治法と標治法でゆっくりと病気を治させる方法が良いです。

「慢性病」や「子宝の身体つくり」など、「病気の治療」は1週間に1回。

「未病をの治す」癌と痴ほう症に罹患しないためには、1週間に1回以上の鍼灸治療をお勧めします。
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経絡鍼灸師の学友ならびに先輩諸先生方の
ご意見・間違いの指摘・などを、
当院へお送りくだされば幸いです。

追伸:

数年前、私も一発芸の話しをしていました。

七十七難を分類して、あれは偶然の出来事と思えるようになりました。

 

 

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