四八難

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難経 第四十八難

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ゆっくり堂の『難経ポイント』 第四十八難

※ 四十八難のポイント其の一、四十八難は病気の診察と診断方法の記述です。

※ 四十八難のポイント其の二、
病気の診察診断方法には三つの分類(①脉診・②病状・③触診)があり、
そこに虚と実のタイプがあります。

※ 難経四十八難臨床&エトセトラより。

四十八難の訓読「言うものを虚なし、言わざるものを実となす。」

〔解説補足1.〕虚証は自分の症状をベラベラしゃべる人です。
「・・ここが苦しい・ここを抑えてくれ・水を持ってこい・飯がまずい」等々と。
実証は外邪に入られ、辛くて口も利きたくない状態の人です。

〔解説補足2.〕患者さんが来て、十年前からの病歴を話す人、これは虚証の人です。
ここで、治療家の良否が試されます。良い治療家の態度は、患者の話をよく聞いて、「今は、どうですかと?」と間髪を入れずに聞いて現在の病状を知り今の治療に役立てる事、そうすれば、あの鍼灸院は丁寧で治りが良いと成ります。

難経 第四十八難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考しています。

四十八難曰.
人有三虚三實.何謂也.
然.
有脉之虚實.有病之虚實.有診之虚實也.
脉之虚實者.濡者爲虚.緊牢者爲實.
病之虚實者.出者爲虚.入者爲實.
言者爲虚.不言者爲實.
緩者爲虚.急者爲實.
診之虚實者.濡者爲虚.牢者爲實.
癢者爲虚.痛者爲實.
外痛内快.爲外實内虚.内痛外快.爲内實外虚.
故曰.虚實也
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 四十八難の訓読

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(455号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。) 詳しくは各先生の文献を参照されたし。

四十八難に曰く。
人に三虚三実有りとは何の謂(いい)ぞや。
然(しか)るなり。
脉の虚実有あり、病の虚実有あり、診の虚実有あるなり。
脉の虚実は、濡(じゅ)なるものを虚となし、緊牢(きんろう)なるものを実となす。
病状の虚実とは、出るものを虚となし、入るものを実となす。
言うものを虚なし、言わざるものを実となす。
緩なるものを「虚」となし、急なるものを「実」となす。
診の虚実は濡なるものを虚となし、牢なるものを実となす。
痒(かゆ)きものを虚となし、痛むものを実となす。
診の虚実は濡なるものを虚となし、牢なるものを実となす。
外痛み内快きを外実内虚となし、内痛み外快きを内実外虚となす。
故に虚実と曰う。

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 四十八難の解説

(井上恵理先生の解釈:経絡鍼療(455号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)

四十八難の解説をします。

人間の病気の診察と診断方法には三つの分類があり、そこに「虚」と「実」のタイプがあります。
これらを説明しなさい。

お答えします。

脉診における虚実が有あり、病状における虚実が有あり、触診における虚実の診察診断法があります。

脉診においての虚実は、濡(じゅ)脉は軟(やわ)らかい弱い脉状で「虚」を顕し、緊牢(きんろう)の脉は緊張して硬く強い脉状を「実」と診ます。

病状において、五臓の内因の病状が外に出て現われるものを「虚」と言い、内因の病状に外邪が入って、病状が出る状態を「実」と診断します。

病人の言動において、病状を盛んに訴える人は内因症の「虚証」であり、押し黙って黙って寝ている人は外邪性の「実証」です。

病気の発症形態として、病気がジワジワ・ジワジワと段々と緩(ゆる)やかに来るものを「虚」と言い、例えば急にカーッと熱が出る様な、急に来る病気を「実」と言います。

触診における虚実の診察診断法として、濡とは軟(やわ)らかい皮膚状態で「虚」を顕し、
牢とは硬い皮膚状態で「実」と診ます。

皮膚が痒いのは虚証です。痛みは実証です。

「外実内虚」は皮膚表面をそっと触れるだけでも痛い。ところがズーッと押し込むとかえって気持ちが良い。外が実して中が虚している状態であると診ます。
「内実外虚」は皮膚表面を触れると気持ちが良い。だけどグッと押すと痛い。内が実して外が虚している状態であると診ます。

四十八難の病気の虚実はこの様に診なさいと。

 

詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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四十八難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解釈:経絡鍼療(455号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕四十八難曰.
〔訓読〕四十八難に曰く。
〔解説〕四十八難の解説をします。

〔原文〕人有三虚三實.何謂也.
〔訓読〕人に三虚三實有りとは何の謂(いい)ぞや。
〔解説〕人間の病気の診察と診断方法には三つの分類があり、そこに虚と実のタイプがある。
これらを説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕有脉之虚實.有病之虚實.有診之虚實也.
〔訓読〕脉の虚実有あり、病の虚実有あり、診の虚実有あるなり。
〔解説〕脉診における虚実が有あり、病状における虚実が有あり、触診における虚実の診察診断法がある。

〔原文〕脉之虚實者.濡者爲虚.緊牢者爲實.
〔訓読〕脉の虚実は、濡(じゅ)なるものを虚となし、緊牢(きんろう)なるものを実となす。
〔解説〕脉診においての虚実は、濡脉は軟(やわ)らかい弱い脉状で虚を顕し、
緊牢の脉は緊張して硬く強い脉状を実と診る。

〔原文〕病之虚實者.出者爲虚.入者爲實.
〔訓読〕病状の虚実とは、出るものを虚となし、入るものを実となす。
〔解説〕「出者爲虚」とは五臓の内因の病状が外に出て現われるものを虚と言い、
「入者爲實」とは五臓の内因の病状があり、そこに外邪(風・寒・暑・湿・燥)が入って、痛みや熱症などの病状が出る状態を実と診断します。

〔解説補足1〕五臓の内因には、七情があり、いわゆる感情に支配されて、不安感心配事・具体的な悩み・思い事・恐れる・悲しいことなどが「原因と病状」になった心身状態を「虚」と診ます。

〔解説補足2〕病因論: 病気が起きる原因は大きく分けると三つあります。
① 内因: 内面的な感情が強くなりすぎると発病します。これは七情という感情です。
七情は、怒、喜、憂、思、悲、驚、恐の感情ことを言います。これらの感情がうっ積するこ
とで、病気が起きます。
② 外因: 外邪が身体に作用して起こります。これは六淫の外邪です。
風・寒・暑・湿・燥・火の六種の外からの病邪を六淫の邪と言います。

詳しくは病因論HPを参照されたし。:http://yukkurido.jp/keiro/bkb/bl/
〔原文〕言者爲虚.不言者爲實.
〔訓読〕言うものを虚なし、言わざるものを実となす。
〔解説〕病人の言動において、病状を盛んに訴える人は内因症の虚証であり、押し黙って黙って寝ている人は実証である。

〔解説補足1.〕虚証は自分の症状をベラベラしゃべる人です。
「・・ここが苦しい・ここを抑えてくれ・水を持ってこい・飯がまずい」等々と。
実証は外邪に入られ、辛くて口も利きたくない状態の人です。

〔解説補足2.〕患者さんが来て、十年前からの病歴を話す人、これは虚証の人です。
ここで、治療家の良否が試されます。良い治療家の態度は、患者の話をよく聞いて、「今は、どうですかと?」と間髪を入れずに聞いて現在の病状を知り今の治療に役立てる事、そうすれば、あの鍼灸院は丁寧で治りが良いと成ります。

〔原文〕緩者爲虚.急者爲實.
〔訓読〕緩なるものを「虚」となし、急なるものを「実」となす。
〔解説〕病気の発症形態として、病気がジワジワ・ジワジワと段々と緩(ゆる)やかに来るものを「虚」と言い、例えば急にカーッと熱が出る、急に来る病気を「実」と言う。

〔原文〕診之虚實者.濡者爲虚.牢者爲實
〔訓読〕診の虚実は濡なるものを虚となし、牢なるものを実となす。
〔解説〕触診における虚実の診察診断法として、濡とは軟(やわ)らかい皮膚状態で「虚」を顕し、牢とは硬い皮膚状態で「実」と診る。

〔解説参考例1〕
虚証の肩こりの場合は、皮膚面は緩んで柔らかいその部を少し押すと硬く張ったものがあるこれは
虚の肩こりです。よつてこの部には補法の鍼を施します。
実証の肩こりの場合は、皮膚面から硬く張っていて痛みがあるこれは牢であり実の肩こりです。
ここには瀉法の鍼を施します。

〔解説参考例2〕
虚証の頭痛の場合は、皮膚面はブクブクとコンニャクの様に柔らかい。抑えると気持ちがいい。
実証の頭痛の場合は、皮膚面は硬くて顔までひきつれた様に痛い。

〔解説参考例3〕
虚証の腹部の場合は、お腹が柔らかいが、どうも張っているときは虚証の腹張りです。
実証の腹部の場合は、お腹がパンパンに張って苦しいときは実証の腹張りです。

〔原文〕癢者爲虚.痛者爲實.
〔訓読〕痒(かゆ)きものを虚となし、痛むものを実となす。
〔解説〕皮膚が痒いのは虚証です。痛みは実証です。

〔原文〕外痛内快.爲外實内虚.内痛外快.爲内實外虚.
〔訓読〕外痛み内快きを外実内虚となし、内痛み外快きを内実外虚となす。
〔解説〕「外実内虚」は皮膚表面をそっと触れるだけでも痛い。ところがズーッと押し込むとかえって気持ちが良い。外が実して中が虚している状態であると診るのです。
「内実外虚」は皮膚表面を触れると気持ちが良い。だけどグッと押すと痛い。内が実して外が虚している状態であると診るのです。

〔原文〕故曰.虚實也.
〔訓読〕故に虚実と曰う。
〔解説〕四十八難の病気の虚実はこの様に診なさいと。

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