難経 第七十四難
ゆっくり堂の『難経ポイント』第七十四難
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※ 七十四難のポイント其の一、
難経七十四難は四季の移ろいに合わせて五臓の脉状が変化する摂理を述べている。
春は肝木が旺気(おうき)する脉状。
夏には心火が旺気する脉状。
春夏秋冬の土用には脾土が旺気する脉状。
秋には肺金が旺気する脉状。
冬には腎水が旺気する脉状。
※ 七十四難のポイント其の二は、四季に応じて脉状が変化しない時に病が発生する。
十五難を参照されたし・・弦鉤毛石の各脉は、四時の脉なり。
※ 七十四難のポイント其の三は、
肝の病いを例えとして挙げて、五臓の五蔵の色体(よそおい)表にある、
五色・五香・五味・五声・五液 の症状を挙げている。
※ 七十四難のポイント其の四、
鍼術は経絡理論と臨床経験を結合した修行をしなければ獲得できない。
〔原文〕鍼之要妙.在於秋毫者也.
〔訓読〕鍼の要妙は、秋毫(しゅうもう)にあるものなり。
〔解説〕鍼法の微妙神妙の要は、細い髪の毛を使うものに似て非常に難しものであると。
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難経 第七十四難 原文
(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。
七十四難曰.
經言.
春刺井.夏刺滎.季夏刺兪.秋刺經.冬刺合者.何謂也.
然.
春刺井者.邪在肝.
夏刺滎者.邪在心.
季夏刺兪者.邪在脾.
秋刺經者.邪在肺.
冬刺合者.邪在腎.
其肝心脾肺腎.而繋於春夏秋冬者.何也.
然.
五藏一病.輒有五也.
假令肝病.色青者肝也.臊臭者肝也.喜酸者肝也.喜呼者肝也.喜泣者肝也.
其病衆多.不可盡言也.
四時有數.而竝繋於春夏秋冬者也.
鍼之要妙.在於秋毫者也.
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七十四難の訓読
(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(492号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)
七十四難に曰く。
経に言う。
春は井を刺し、夏は滎を刺し、季夏は兪を刺し、秋は経を刺し、冬は合を刺すものは、
何の謂(いい)ぞや。
然(しか)るなり。
春井を刺すものは、邪肝に在り、
夏滎を刺すものは、邪心に在り、
季夏を刺すものは、邪脾に在り、
秋を刺すものは、邪肺に在り、
冬を刺すものは、邪腎に在り、
其の肝心脾肺腎、而(しか)も春夏秋冬に繋(かかわ)るものとは、何んぞ也。
然(しか)るなり。
五藏の一病は、輒(すなわ)ち五つあり。
假令(たと)えば肝病は、
色青きものは肝なり、
臊(あぶらくさき)臭は肝なり、
酸を喜(この)むものは肝なり、
呼(よばわる)ことを喜むものは肝なり、
泣を喜むものは肝なり。
其の病衆多にして、尽(ことごと)く言うべかずなり。
四時数あって、而(しか)して並(なら)に春夏秋冬に繋(つな)がるものなり。
鍼の要妙は、秋毫(しゅうもう)にあるものなり。
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詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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七十四難の解説
(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(492号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)
七十四難の解説をします。
陰陽五行理論から考察すると。
季節に応じた手法として、春は井穴を刺し、夏は滎穴を刺し、夏の土用は兪穴を刺し、秋は経穴を刺し、冬は合穴を刺すが、
この法則について判り易く説明しなさい。
お答えします。
春に邪が肝に入った場合には井穴を刺鍼する治療法がある、
夏に邪が心に入った場合には滎穴を刺鍼する治療法がある
春夏秋冬の土用に邪が脾に入った場合には兪穴を刺鍼する治療法がある、
秋に邪が肺に入った場合には経穴を刺鍼する治療法がある、
冬に邪が腎に入った場合には合穴を刺鍼する治療法があると言う訳です。
五臓の肝心脾肺腎が、四季のも春夏秋冬にかかわると言うが、それはどの様な理由か説明しなさい。
お答えします。
肝心脾肺腎の五臓のそれぞれに、5種類の病状がある。
例えば肝の病気の症状として、5種類の病状がある。
1、顔色が青色になるのは肝病である。(五色)
2、体臭が臊(あぶらくさ)く臭うのは肝病である。(五香)
3、味覚に於いて酸を好み又は嫌うは肝病である。(五味)
4、発声する声に於いて呼(よばわる)ことを喜むものは肝病である。(五声)
5、涙を流すは肝病である。(五液)
五臓の病状はそれぞれ沢山ある。
五臓の病状は季節に応じ数限りなくあるり、それれは春夏秋冬・土用に関係し五行分類されている。
鍼法の微妙神妙の要は、細い髪の毛を使うものに似て非常に難しものであると。
・
詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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七十四難の詳細解説
(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(492号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。
山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。
〔原文〕七十四難曰.
〔訓読〕七十四難に曰く。
〔解説〕七十四難の解説をします。
〔原文〕經言.
〔訓読〕経に言う。
〔解説〕陰陽五行理論から考察すると。
〔解説補足1〕
黄帝内経・霊枢の順気一日分為四時篇(四十四篇)に同じ様な文章あり。
ここでは、冬刺井とある。難経の書かれた緯度が北に位置したため春刺井である。
〔原文〕春刺井.夏刺滎.季夏刺兪.秋刺經.冬刺合者.何謂也.
〔訓読〕
春は井を刺し、夏は滎を刺し、季夏は兪を刺し、秋は経を刺し、冬は合を刺すものは、何の謂(いい)ぞや。
〔解説〕
季節に応じた手法として、春は井穴を刺し、夏は滎穴を刺し、夏の土用は兪穴を刺し、秋は経穴を刺し、冬は合穴を刺すが、
この法則について判り易く説明しなさい。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕春刺井者.邪在肝.夏刺滎者.邪在心.季夏刺兪者.邪在脾.秋刺經者.邪在肺.冬刺合者.邪在腎.
〔訓読〕
春井を刺すものは、邪肝に在り、 夏滎を刺すものは、邪心に在り、季夏を刺すものは、邪脾に在り、
秋を刺すものは、邪肺に在り、 冬を刺すものは、邪腎に在り、
〔解説〕
春に邪が肝に入った場合には井穴を刺鍼する治療法がある、
夏に邪が心に入った場合には滎穴を刺鍼する治療法がある、
春夏秋冬の土用に邪が脾に入った場合には兪穴を刺鍼する治療法がある、
秋に邪が肺に入った場合には経穴を刺鍼する治療法がある、
冬に邪が腎に入った場合には合穴を刺鍼する治療法があると言う訳です。
〔解説補足〕
春は肝が旺気(おうき)する。
だから肝は春には実していなけれればならない。
よって、肝虚証の人は春に体調が良くない。
逆読みすると、春に体調が崩れる人は肝虚証の疑いが出る事になる。
夏には心火が旺気する。
だから心は夏には実していなけれればならない。
よって、心虚証の人は夏に体調が良くない。
逆読みすると、夏に体調が崩れる人は心虚証の疑いが出る事になる。
秋には肺金が旺気する。
だから肺は秋には実していなけれればならない。
よって、肺虚証の人は秋に体調が良くない。
逆読みすると、秋に体調が崩れる人は肺虚証の疑いが出る事になる。
冬には腎水が旺気する。
だから腎は冬には実していなけれればならない。
よって、腎虚証の人は冬に体調が良くない。
逆読みすると、冬に体調が崩れる人は腎虚証の疑いが出る事になる。
春夏秋冬の土用には脾土が旺気する。
だから脾は各季節の土用は実していなけれればならない。
よって、脾虚証の人は土用に体調が良くない。
逆読みすると、土用に体調が崩れる人は脾虚証の疑いが出る事になる。
ここでの旺気の意味は季節(春夏秋冬・土用)に応じて配当五臓の活動が盛んになる時をさす。
〔原文〕其肝心脾肺腎.而繋於春夏秋冬者.何也.
〔訓読〕其の肝心脾肺腎、而(しか)も春夏秋冬に繋(かかわ)るものとは、何んぞ也.
〔解説〕五臓の肝心脾肺腎が、四季のも春夏秋冬にかかわると言うが、それはどの様な理由か説明しなさい。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕五藏一病.輒有五也.
〔訓読〕五藏の一病は、輒(すなわ)ち五つあり。
〔解説〕肝心脾肺腎の五臓のそれぞれに、5種類の病状がある。
〔原文〕假令肝病.色青者肝也.臊臭者肝也.喜酸者肝也.喜呼者肝也.喜泣者肝也.
〔訓読〕
假令(たと)えば肝病は、色青きものは肝なり、臊(あぶらくさき)臭は肝なり、酸を喜(この)むものは肝なり、呼(よばわる)ことを喜むものは肝なり、泣を喜むものは肝なり。
〔解説〕
例えば肝の病気の症状として、5種類の病状がある。
1、顔色が青色になるのは肝病である。(五色)
2、体臭が臊(あぶらくさ)く臭うのは肝病である。(五香)
3、味覚に於いて酸を好み又は嫌うは肝病である。(五味)
4、発声する声に於いて呼(よばわる)ことを喜むものは肝病である。(五声)
5、涙を流すは肝病である。(五液)
〔解説補足1〕肝の病いを例えとして挙げて、五臓の五蔵の色体(よそおい)表にある、
五色・五香・五味・五声・五液 の症状を挙げている。
〔解説補足2〕五臓の五蔵の色体(よそおい)表の参照表リンクHP。
http://you-sinkyu.ddo.jp/c202.html
〔原文〕其病衆多.不可盡言也.
〔訓読〕其の病衆多にして、尽(ことごと)く言うべかずなり。
〔解説〕五臓の病状はそれぞれ沢山ある。
〔原文〕四時有數.而竝繋於春夏秋冬者也.
〔訓読〕四時数あって、而(しか)して並(なら)に春夏秋冬に繋(つな)がるものなり。
〔解説〕五臓の病状は季節に応じ数限りなくあるり、それれは春夏秋冬・土用に関係し五行分類されている。
〔原文〕鍼之要妙.在於秋毫者也.
〔訓読〕鍼の要妙は、秋毫(しゅうもう)にあるものなり。
〔解説〕鍼法の微妙神妙の要は、細い髪の毛を使うものに似て非常に難しものであると。
〔解説補足〕鍼の微妙さは即ち、秋毫(しゅうもう)にある。
秋毫(しゅうもう)とは、毛の最も細いもの。
鍼法の神妙は細い髪の毛を使うものに似ている。
所謂致(ち)し難きもの、非常に難しものであると。
〔井上恵理先生の難経解説から、経絡法則と臨床、鍼灸師の心得・実際の手技〕
七十四難で述べてある五行の色体(よそおい)診断文言は全て暗記し、実践臨床で使用するものである。
と・・・それの運用が日常になるように・・・・・
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