七二難

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  難経 第七十二難

ゆっくり堂の『難経ポイント』第七十二難

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※ 七十二難のポイント其の一、鍼術の「虚実補瀉」の診断と手技の法則が述べてあります。

※ 七十二難のポイント其の二

経絡鍼灸の手技に於ける迎隨・逆順の意味について。

迎とは、鍼尖の刺入方向が経絡の流注にたいして、逆(さか)らって迎(むかえ)え刺入する事。
その経絡の実邪を奪い瀉す、瀉法の手技である。

隨とは、鍼尖の刺入方向が経絡の流注にたいして、順(したが)って隨(したが)い刺入する事。
その経絡の正気の不足、虚を補う、補法の手技である。

※ 七十二難のポイント其の三

正しい鍼灸術は経絡の流注の迎隨の氣をとらえて、気の調整をする事にある。

気の調整の方法のポイントは、経絡の陰陽を明らかにしてそれに応じた対処する事にある。

難経 第七十二難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

七十二難曰.
經言.
能知迎隨之氣.可令調之.調氣之方.必在陰陽.何謂也.
然.
所謂迎隨者.知榮衞之流行.經脉之往來也.隨其逆順而取之.故曰迎隨.
調氣之方.必在陰陽者.知其内外表裏.隨其陰陽而調之.故曰.調氣之方.必在陰陽.

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七十二難の訓読

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(490号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

七十二難に曰く。

経に言う。

能(よ)く迎隨(けいずい)の氣を知って、之を調(ととのえる)べし、氣を調える方は、必ず陰陽に在りとは、何の謂いぞや。

然(しか)るなり。

所謂(いわゆる)迎隨は、榮衞の流行、經脉の往来を知る也り。
其の逆順に隨って而(そ)して之を取る。故に迎隨と曰う。
氣を調えるの方(みち)は、必ず陰陽に在ありとは、内外表裏を知って、其の陰陽に隨って之を謂う。
故に、氣を調えるの方(みち)は、陰陽に在ありと曰う。


詳しくは各先生の文献を参照されたし。

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七十二難の解説

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(490号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

七十二難の解説をします。

陰陽五行理論から考察すると。

正しい鍼灸術は経絡の流注の迎隨の氣をとらえて、気の調整をする事にある。
気の調整の方法の注視点(ポイント)は、経絡の陰陽を明らかにして対処する事にあるが。
この法則について判り易く説明しなさい。

お答えします。

いわゆる迎隨手法を判断するには、経脉を循環する栄血・衛気の虚実の流れを認識する事。
その虚実逆順に応じて補瀉逆順の手技を行う。
ゆえにこれを迎隨の判断と手法と言う。

氣の調整の方法には2つあり、これを迎随の鍼法と言う。

1、経絡の流注における逆順に対応する陰陽調和の方法・・・

2、内外の陰陽、内を陰とし外を陽とする陰陽調和の方法。
内に向かって鍼を刺すものを陰にさすと言う。(陰に刺すを順と言う。)
外に向かって鍼を刺すものを陽にさすと言う。(陽に刺すを逆と言う。)
裏に鍼を刺すものを陰にさすと言う。(陰に刺すを順と言う。)
表に鍼を刺すものを陽にさすと言う。(陽に刺すを逆と言う。)

よつて、気の調整は陰陽調和の鍼術にあると言う。


詳しくは各先生の文献を参照されたし。

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七十二難の詳細解説1、

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(490号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕七十二難曰.
〔訓読〕七十二難に曰く。
〔解説〕七十二難の解説をします。

〔原文〕經言
〔訓読〕経に言う。
〔解説〕陰陽五行理論から考察すると。

〔原文〕能知迎隨之氣.可令調之.調氣之方.必在陰陽.何謂也.
〔訓読〕
能(よ)く迎隨(けいずい)の氣を知って、之を調(ととのえる)べし、氣を調える方は、必ず陰陽に在りとは、何の謂いぞや。
〔解説〕
正しい鍼灸術は経絡の流注の迎隨の氣をとらえて、気の調整をする事にある。
気の調整の方法の注視点(ポイント)は、経絡の陰陽を明らかにして対処する事にあるが。
この法則について判り易く説明しなさい。

〔解説補足〕「陰陽に在りとは」陰陽を明らかにすると言う意味です。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕所謂迎隨者.知榮衞之流行.經脉之往來也.隨其逆順而取之.故曰迎隨.
〔訓読〕
所謂(いわゆる)迎隨は、榮衞の流行、經脉の往来を知る也り。
其の逆順に隨って而(そ)して之を取る。故に迎隨と曰う。
〔解説〕
いわゆる迎隨手法を判断するには、経脉を循環する栄血・衛気の虚実の流れを認識する事。
その虚実逆順に応じて補瀉逆順の手技を行う。ゆえにこれを迎隨の判断と手法と言う。

〔解説補足1、〕
経絡鍼灸手技に於ける迎隨・逆順の意味について。
迎とは、鍼尖の刺入方向が経絡の流注にたいして、逆(さか)らって迎(むかえ)え刺入する事。
その経絡の実邪を奪い瀉す、瀉法の手技である。
隨とは、鍼尖の刺入方向が経絡の流注にたいして、順(したが)って隨(したが)い刺入する事。
その経絡の正気の不足、虚を補う、補法の手技である。

〔解説補足2、〕福島弘道先生の訓読・解説より。

黄帝内経 霊枢 九鍼十二原 第一段.後半部の訳より。

〔原文〕
往者爲逆.來者爲順.明知逆順.正行無問.
迎而奪之.惡得無虚.追而濟之.惡得無實.
迎之隨之.以意和之.鍼道畢矣.
〔訓読〕
往く者は逆となし、来る者は順となす、明らかに逆順を知るは、正行して問うこと無し。
迎えて之を奪はば、惡(いずく)んぞ虚無きことを得ん。
追うて之を濟(すく)わば、惡んぞ実無きことを得ん。
之を迎、之に隨い、意を以って之を和すれば、
鍼の道は畢矣(終わる)。

〔解説〕
鍼術の極意に逆順ということがあるが・・
往く者は逆となし、来る者は順となす。従って、逆順の道理を良くわきまえている者は、
すべてを正しく行うので一言もいうことはない。
これを具体的にいうと・・
気の流れに逆らって瀉法を加えれば、邪気はことごとく除かれるし、
また気の動きに随って補法を行うならば、生気は満ちて健康体にすることが出来る。
故に、その逆順に従い、補瀉迎随の意を充分に尽くすならば、
鍼の道はすべて終わる。

鍼術の極意を体得したことになる。

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 七十二難の詳細解説2

〔原文〕調氣之方.必在陰陽者.知其内外表裏.隨其陰陽而調之.故曰.調氣之方.必在陰陽.

〔訓読〕
氣を調えるの方(みち)は、必ず陰陽に在ありとは、内外表裏を知って、其の陰陽に隨って之を謂う。
故に、氣を調えるの方(みち)は、陰陽に在ありと曰う。

〔解説〕
氣の調整の方法には2つあり、これを迎随の鍼法と言う。

1、経絡の流注における逆順に対応する陰陽調和の方法・・・

2、内外の陰陽、内を陰とし外を陽とする陰陽調和の方法。
内に向かって鍼を刺すものを陰にさすと言う。(陰に刺すを順と言う。)
外に向かって鍼を刺すものを陽にさすと言う。(陽に刺すを逆と言う。)
裏に鍼を刺すものを陰にさすと言う。(陰に刺すを順と言う。)
表に鍼を刺すものを陽にさすと言う。(陽に刺すを逆と言う。)
よつて、気の調整は陰陽調和の鍼術にあると言う。

〔解説補足〕
迎随の種類について。
1、内外表裏の迎随、表の病を裏によって治す場合・裏の病を表によって治す場合これも迎随。
2、陰陽に随ってこれをととのえるのも迎随と言う。
3、経絡の流注における逆順に対応する陰陽調和の方法、これも迎随と言う。
4、気が陰に籠っている時、陽を調える場合には、陰を考えて気を上げるようにする。
気が陽に籠っている時、陰を調える場合には、陽を考えて気を下げるようにする。これも迎随。
気に随って刺す・気に逆らって刺すと言う意味で、これも陰陽迎随と言う言葉になる。

 

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