六九難

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難経六九難

ゆっくり堂の『難経ポイント』 六九難     ank069

難経「第六九難」のポイントは、

  • ※ 六十九難のポイント其の一は、六十九難は難経中で最高の治療原則である。
  • ※ 六十九難のポイント其の二は、六十九難の補法と瀉法の法則は不滅である。
  • ※ 六十九難のポイント其の三は、六十九難の先補後瀉の法則は不滅である。
  • ※ 六十九難のポイント其の四は、六十九難と七十五難は鍼灸治療法の二本柱である。
  • ※ 六十九難のポイント其の五は、「虚するものは其の母を補う」法則の意味は、経絡の補法(気を補う手法)の原則が述べられている。(2016年2月4日追記分)

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難経 第六十九難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

六十九難曰.
 經言.
 虚者補之.實者瀉之.
 不虚不實以經取之.何謂也.
 然.
 虚者補其母.
 實者瀉其子.當先補之.然後瀉之.
 不實不虚.以經取之者.是正經自生病.不中他邪也.當自取其經.故言以經取之.

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  六十九難の訓読

この段は、井上恵理先生の「六十九難」の訓読から、全文を参考にして文章を構成しています。

(詳しくは、東洋はり医学会機関誌「経絡鍼療」(478号・480号)故井上恵理先生『難経講義』の文献を参照されたし。)

六十九の難に曰く、
經に言う、
虚するものは之を補い、実するものは之を瀉し、
虚せず実せずんば、経を以って之を取るとは、何んの謂ぞや。
然るなり、
虚するものは其の母を補い、
実するものは其の子を瀉す。
当(まさ)に先づ之を補って、
然して後(のち)に之を瀉すべし。
虚せず実せずんば、経を以って之を取るとは、是れ正経自ら病を生じて、他邪に中(あた)らざればなり。当に自ら其の経を取るべし。故に言う経を以って之を取ると。

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    六十九難の解説

この段は、井上恵理先生の「六十九難」の訓読・解説から、ほぼ全文を参考にして、
山口一誠の考察により解説文章を構成します。

(詳しくは、井上恵理先生の訓読・解釈:経絡鍼療(478号・480号)文献を参照されたし。)

六十九難の解説をします。

黄帝内経・霊枢:経脉篇から考察するに、

虚している所には補法の治療をおこない。

実している所には瀉法の治療をおこなう。

経絡の流注上での虚実の所見に対しも

「標治法」として虚実補瀉の法則を適用しなさいと。

鍼灸治療に於いてこの「虚実補瀉」の法則があり、

本治法・標治法の手技があるがこれを判り易く説明しなさいと。

お答えします。

五行法則より循環の相生関係(ここでは母子関係)において、

子供が虚す時にはその母を補法する事。

また、母が実する時には子供を瀉法する事。

必ず補法を先にして、その後に瀉法をしなさいと。

本治法に於ける一気一経(正経自病)の場合、

正経自病の場合は其の経だけで

「虚するものは其の自経の母を補い、実するものは其の自経の子を瀉しなさいと。」

だから、自経だけの治療で良いのだと。

また、標治法では其の自経の流注上での虚実の所見に対して補瀉をしなさいと。

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  井上恵理先生の「六十九難」のまとめの言葉。

経絡鍼療(478号:p18後4行目から転記)

鍼灸治療をする術者にとって、

これは当たり前すぎて語る事がない事ですが、

鍼灸が何故に病気を治す力があるのか。

『我々(鍼灸治療家)は病気が相手じゃない。(患者の)身体が相手だからです。(鍼灸治療術)は
身体に治療転機を与えるのが鍼なんです。身体に治療させる様に、(身体自身が)治療できる様な状態にさせる。』

鍼灸術の施術行為は病人自身の自然治癒力の惹起にこそ、その本質があるのである。

これが、当たり前すぎて語られない、鍼灸治療の神髄だと思います。

だからこそ、難経における、六十九難と七十五難の治療法則が鍼灸師の羅針盤となる訳です。

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〔六十九難の解説補足〕

この六十九難型の治療法で解決できない陰経旺実証の治療法として七十五難の治療法が提起されています。

七十五難の治療法の詳細原則は、

東亜医学協会機関紙「漢方の臨床」
(通巻716号の『難経』七十五難の「訓読」と「解説」ゆっくり堂鍼灸院:山口一誠、投稿文)を参照されたし。

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    六十九難の詳細解説

この段は、井上恵理先生の「六十九難」の訓読・解説から、ほぼ全文を参考にして、山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

(詳しくは、東洋はり医学会機関誌「経絡鍼療」(478号・480号)故井上恵理先生『難経講義』の文献を参照されたし。)

〔原文〕六十九難曰
〔訓読〕六十九の難に曰く、
〔解説〕六十九難の解説をします。

〔原文〕經言.
〔訓読〕經に言う、
〔解説〕黄帝内経・霊枢:経脉篇から考察するに、
〔解説補足〕※ 六十九難の治療原則。(経絡鍼灸治療の原則です。)
① 虚する時はその母を補う。(法則1)
② 実する時はその子を瀉す。(法則2)
①②即ち、「虚実補瀉」の法則は、黄帝内経・霊枢の九鍼十二原篇にも、「およそ鍼を用いる者は、虚するときはこれを実し、満するときはこれを泄し、宛陳(えんちん)すれば之を除き」の原則記載があります。

〔原文〕虚者補之.實者瀉之.
〔訓読〕虚するものは之を補い、実するものは之を瀉し、
〔解説〕虚している所には補法の治療をおこない。実している所には瀉法の治療をおこなう。
〔解説補足〕鍼灸治療に於いてこの「虚実補瀉」の法則こそが最高の中心となる治療の法則です。
本治法・標治法ともに、「虚実補瀉」の手法を鍼灸師が行う時のみ完治への道に進むのだと。
如何なる時も、如何なると所に鍼を打つ場合にも「虚実補瀉」のこの精神を忘れてはいけない。
これ以外の鍼灸治療はあり得ないと。

〔原文〕不虚不實以經取之.
〔訓読〕虚せず実せずんば、経を以って之を取るとは、何んの謂ぞや。
〔解説〕経絡の流注上での虚実の所見に対しも「標治法」として虚実補瀉の法則を適用しなさいと。
〔解説補足〕この条文は、鍼灸治療に於ける「標治法」の補瀉の取穴法の原則を指しています。

〔原文〕何謂也.
〔訓読〕何の謂(いい)ぞや。
〔解説〕鍼灸治療に於いてこの「虚実補瀉」の法則があり、本治法・標治法の手技があるがこれを判り易く説明しなさいと。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕虚者補其母.
〔訓読〕虚するものは其の母を補い、実するものは其の子を瀉す。
〔解説〕ここの条文では、鍼灸治療の本治法の原則を述べられています。
五行法則より循環の相生関係(ここでは母子関係)において、
子供が虚す時にはその母を補法する事。
また、母が実する時には子供を瀉法する事。
〔解説補足〕
例①「虚するものは其の母を補い、」の例として、
母子関係と言うのは五行法則の循環に於ける相生関係、生むと言うのは母で生まれた方は子供です。例として、「肝木と心火」の関係を考察すると、肝木は心火をを生じる。つまり、木から火が生まれると言う事です。これを母子関係と言う。
相生関係(母子関係)の「木生火」と言う事は、木からみて火は子供であり、火からみて木は母親と言う関係になります。

(陰経五行・相生関係図を参照されたし。)

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「虚するものは其の母を補い、」には2たつのパタンーンがあります。
第1パタンーン:一気一経(正経自病)の場合。
例えば、肝木の足の厥陰肝経だけに虚がある場合は、合水母穴の曲泉穴の補法を行います。
第2パタンーン:一気二経の場合。
例えば、「水生木」で、水が母親、木が子供ですね。この時、肝木の虚と腎水の虚がある場合。
肝自経の合水母穴の曲泉穴の補法を行い、かつ母経の腎経の合水自穴、陰谷穴の補法を行います。

例②「実するものは其の子を瀉す。」の例として、
大腸経実証の場合は自穴(母)は金穴ですからその子、水穴の二間穴(栄水子穴)を瀉法します。
膀胱経実証の場合は自穴(母)は水穴ですからその子、木穴の束骨穴(兪木子穴)を瀉法します。
(陽経五行・相生関係図を参照されたし。)
また、大腸経だけが実している場合には、自穴(母)は金穴の商陽穴(井金自穴)を瀉法する場合もあり、陰経の補法が終了し、陽経の大腸経だけが実している場合には、絡穴の遍歴穴を瀉法する場合もあり、急性病なら?穴の温溜穴を瀉法する場合もある。

〔原文〕實者瀉其子.當先補之.然後瀉之.
〔訓読〕当(まさ)に先づ之を補って、然して後(のち)に之を瀉すべし。
〔解説〕ここの条文でも、鍼灸治療の本治法の原則を述べられています。
補法と瀉法ではどちらを先にすべきかと言う事です。
これは必ず補法を先にして、その後に瀉法をしなさいと。
〔解説補足〕例えば陰経だけの三経虚実の場合、肺虚木実脾虚の場合には、肺経を補って脾経も補って最後に木実を瀉法する訳です。このような理論ですが実際の臨床では、肺経を補っただけで相剋経の木実も整う時は肺経の補法だけで済む場合もあります。

〔原文〕不實不虚.以經取之者.是正經自生病.不中他邪也.當自取其經.故言以經取之.
〔訓読〕虚せず実せずんば、経を以って之を取るとは、是れ正経自ら病を生じて、他邪に中(あた)らざればなり。当に自ら其の経を取るべし。故に言う経を以って之を取ると。
〔解説〕ここでは、本治法に於ける一気一経(正経自病)の場合の治療原則を述べています。
正経自病の場合は其の経だけで「虚するものは其の自経の母を補い、実するものは其の自経の子を瀉しなさいと。」だから、自経だけの治療で良いのだと。

〔解説補足〕そして、この六十九難型の治療法で解決できない、陰経旺実証の治療法として七十五難の治療法が提起されている訳です。
七十五難の治療法の詳細原則は東亜医学協会機関紙「漢方の臨床」(通巻716号の『難経』七十五難の「訓読」と「解説」ゆっくり堂鍼灸院:山口一誠、投稿文)を参照されたし。

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経絡鍼療(478号:p18後4行目から転記)

井上恵理先生の「六十九難」のまとめの言葉。

鍼灸治療をする術者にとって、これは当たり前すぎて語る事がない事ですが、

鍼灸が何故に病気を治す力があるのか。

『我々(鍼灸治療家)は病気が相手じゃない。(患者の)身体が相手だからです。(鍼灸治療術)は
身体に治療転機を与えるのが鍼なんです。身体に治療させる様に、(身体自身が)治療できる様な状態にさせる。』

鍼灸術の施術行為は病人自身の自然治癒力の惹起にこそ、その本質があるのである。

これが、当たり前すぎて語られない、鍼灸治療の神髄だと思います。

だからこそ、難経における、六十九難と七十五難の治療法則が鍼灸師の羅針盤となる訳です。

 

以上を2014年5月1日にHP掲載しました。
以上、山口一誠の「独自の訓読」と「解説」を終わります。


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