難経 第六十八難
ゆっくり堂の『難経ポイント』第六十八難
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※ 六十八難のポイント其の一は、五行穴の井滎兪経合穴の説明が述べてあります。
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※ 六十八難のポイント其の二は、
〔本間祥白先生の難経解説から〕
此の主治症は難経に於いて始めて説かれた所のものである。
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※ 難経第六十八難臨床&エトセトラより。
第21回経絡大の研究部において、取穴を担当された先生から、主要七穴だけでは、臨床家としてアウトだよ、肝心脾肺腎の井滎兪経合穴は正確に取穴できないと、本治法の腕は上がらないからと。
ガンバリマス。
ゆっくり堂、初学者用 経絡鍼灸教科書・経穴と主治:十四経絡にも写メ図解をアップせねば。
参考リンク。
http://yukkurido.jp/keiro/e1/e5/
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難経 第六十八難 原文
(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。
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六十八難曰.
五藏六府.各有井滎兪經合.皆何所主.
然.
經言.
所出爲井.所流爲滎.所注爲兪.所行爲經.所入爲合.井主心下滿.
滎主身熱.兪主體重節痛.經主喘欬寒熱.合主逆氣而泄.
此五藏六府.其井滎兪經合所主病也.
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六十八難の訓読
(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(477号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)
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六十八の難に日く、
五蔵六府皆井滎兪経合有り、皆何を主る所ぞ。
然るなり、
経に言う、
出(いづ)る所を井となし、
流るる所を滎となし、
注ぐ所を兪となし、
行く所を経となし、
入(い )る所を合となす。
井は心下満を主り、
滎は身(み )熱するを主り、
兪は体重節痛を主り、
経は喘咳寒熱を主り、
合は逆気して泄(もら)すことを主る。
此れ五蔵六府其井滎兪経合の主る所の病なり。
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詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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六十八難の解説
(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(477号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)
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六十八難の解説をします。
五蔵六府の十二経には皆五行穴として井滎兪経合のツボがあるが、
其の主る(病を治す)所を説明しなさい。
お答えします。
泉の水が始めて湧き出でる源を井となす。
井から出た水泉が流れ始めた所を栄となし、
更に其の小さな流れがあちこちとめぐる所を経となす。
此等の小水が幾っか合して大きな流れになる所、或は大きな流れに合する所を合と言うのである。
井穴は木であって陰経では肝経の気の通じる所である。
肝経の支脉は横隔膜を貫いて上る故に肝経が乱れ逆すると心下部即ち水おちの部が満ちてくる。
栄穴は火であって、陰経では心経の気の通じる所である。
身熱は心火の病である、身熱の時は栄火穴を使えと言うことを意味するものである。
兪穴は土であって、陰経では脾経の気を通じている所である。
身体重く関節の痛む事は脾胃の病である、兪穴を以って治すべき事を意味するものである。
経穴は金穴であって、陰経では肺経の気の通じている所である。
肺の病は多くは喘あり咳あり、又肺の合である皮膚に病が来て、実熱往来の症が表れる。
宜しく経穴を以って治すべきである。
合穴は水穴であって、陰経では腎経の気の通じている所である。
腎の病を起すときは腹部内の水が乱れ逆して総ての竅(あな)から泄(も)れ出る。
全身の分泌物が泄れる病を治す。
以上が五蔵六府の十二経脉中にある井滎兪経合五行穴の主治する症である。
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詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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六十八難の詳細解説
(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(477号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。
山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。
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〔原文〕六十八難曰.
〔訓読〕六十八の難に曰く。
〔解説〕六十八難の解説をします。
〔原文〕五藏六府.各有井滎兪經合.皆何所主.
〔訓読〕五蔵六府皆井滎兪経合有り、皆何を主る所ぞ。
〔解説〕
五蔵六府の十二経には皆五行穴として井滎兪経合のツボがあるが、
其の主る(病を治す)所を説明しなさい。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕經言.
〔訓読〕経に言う。
〔解説〕黄帝内経・霊枢・九鍼十二原篇と難経理論から考察するに。
〔原文〕所出爲井.所流爲滎.所注爲兪.所行爲經.所入爲合.
〔訓読〕
出(いづ)る所を井となし、流るる所を栄となし、注ぐ所を散となし、行く所を経となし、
入(い )る所を合となす。
〔解説〕
泉の水が始めて湧き出でる源を井となす。
井から出た水泉が流れ始めた所を栄となし、
更に其の小さな流れがあちこちとめぐる所を経となす。
此等の小水が幾っか合して大きな流れになる所、或は大きな流れに合する所を合と言うのである。
〔本間祥白先生の難経解説から〕
比の文の所は九鋪十二原篇にある所である。
経脉の流に量的に大小ある訳ではなく、肺経とか大腸経としての経気の発生と、増幅を意味するものと解すべきである。
指端は其の経気が未だ細く、肘関節、或は膝関節の合穴に至れば太い事を意味する。
比れも臨床的に見て細いことは必らずしも量的に少いと見ることは出来ない。
却って敏感である、電圧に例えると高圧である。
従って治療効果が鋭敏であり、速効的である。
〔原文〕
井主心下滿.滎主身熱.兪主體重節痛.經主喘欬寒熱.合主逆氣而泄.
此五藏六府.其井滎兪經合所主病也.
〔訓読〕
井は心下満を主り、滎は身(み )熱するを主り、兪は体重節痛を主り、経は喘咳寒熱を主り、
合は逆気して泄(もら)すことを主る。
此れ五蔵六府其井滎兪経合の主る所の病なり。
〔解説〕
井穴は木であって陰経では肝経の気の通じる所である。
肝経の支脉は横隔膜を貫いて上る故に肝経が乱れ逆すると心下部即ち水おちの部が満ちてくる。
栄穴は火であって、陰経では心経の気の通じる所である。
身熱は心火の病である、身熱の時は栄火穴を使えと言うことを意味するものである。
兪穴は土であって、陰経では脾経の気を通じている所である。
身体重く関節の痛む事は脾胃の病である、兪穴を以って治すべき事を意味するものである。
経穴は金穴であって、陰経では肺経の気の通じている所である。
肺の病は多くは喘あり咳あり、又肺の合である皮膚に病が来て、実熱往来の症が表れる。
宜しく経穴を以って治すべきである。
合穴は水穴であって、陰経では腎経の気の通じている所である。
腎の病を起すときは腹部内の水が乱れ逆して総ての竅(あな)から泄(も)れ出る。
全身の分泌物が泄れる病を治す。
以上が五蔵六府の十二経脉中にある井滎兪経合五行穴の主治する症である。
〔本間祥白先生の難経解説から〕
此の主治症は難経に於いて始めて説かれた所のものである。
が、此の説、がもっと具体的に臨床的に運用出来るように説明がなされなかったために、
難経自体の主旨が後世に徹底しないまま伝って終った。
又、陰経を基本として主治症は出来ているが、陽経については如何ように理解してよいか分らない所にも難点がある。
唯、難経は六十九経と七十五難に最も基本的な運用理論があるのであるから其の外の理論はもっと 単的に解して、深い理論を抜きにして、井滎兪経合の主治症を五行とか陰陽を抜きにして、
症状的に 此等の穴を駆使したとも考えられる点もある。
精しくは難経考井滎兪経合論を参照されたし。
〔井上恵理先生の難経解説から〕
井穴は心下満を主る。
心下満と一吉うのは胸先(むなさき)痞(っか)えた感じがする。
胸と言うのは心下、即ち鳩尾(みぞおち )。鳩尾に痞えた感じのする病気と言う意味です。
これは井が主っているんだと。
栄穴は身(み)熱する。
身熱すると言うのは発熱すると言う意味じゃない。身体が熱すると言う事です。
本人が熱っぽい ・熱いと感ずる事。他覚的にも熱いと感ずるもの。
こう言うものは栄穴によって治する所である。
兪穴は体重く節痛する。
体がダルく重い。節痛は節々が痛い。 これらは何れも兪穴が主っている。
経穴は喘咳寒熱。
喘はぜりっき、咳はしわ ぶき・せき。寒熱は寒くなったり熱くなったりする。寒熱往来と言います合穴は逆気して泄らす。
逆気はのぼせる。気のぼせと血のぼせがある。気血共に逆気する、これを厥冷或いは厥逆と色んな言葉を使っています。泄らすと言うのは泄れると言う意味ですから、小便が泄れる ・ 大便が泄れる ・鼻汁が泄れる、或いは鼻血が出る・婦人の月経不順。多く出る方ですよ。
出る方の全て泄らすと言う事は合穴がこれを主っている。
これが五臓六腑、井滎兪経合の主る所の病気の症状であると。
ここで考えなくちゃならないのは、こうした病症はこれらのツボによって治るのだと言うのだから、 このツボさえ使えばいいのかと言う問題が出て来る。
もしそうであるならば前の方に書いてある様に、親を補えとか子を瀉せとか言う事はいらない訳ですね。 これだけを使えばいい。
そうじゃなくて、これと全 のものが一致した時に使われる問題なんです。
例えば体が重く節痛して肺虚証だと言う時には太淵穴を使うと。
脾虚証の時には太白穴を使う。逆気して泄らすと言う時に腎虚証ならば陰谷穴を使えばいい。
肝虚証ならば曲泉穴を使う。 こう言う風になる訳です。
で、 これは一つ皆さんが臨床的に研究して貰いたいのですが、
のぼせるなんて人に脾虚証なんて言うのはないんですね。
脾虚証だの肺虚証で、のぼせでしょうがないなんて言うのは凡そない。
のぼせる ・逆気する ・泄らすなんて言うのは大抵腎虚か肝虚です。
旨くこう言う事は合ってますね。
そう言う点から考えて、この病症はこれだけを使えばいいのではなくて、そうした取穴法或いは証決定の法則と言うものから考えて使えばいいと思います。
そこで問題にするのは、心下満は井が主ると言うのは、肝木が主るんだと考えてもいい。
身熱するのは心火の主る所、体重節痛は脾土の主る所、喘咳寒熱は肺金の主る所、逆気して泄らすは腎水の主る所と考えても決して差し支えない。
陽経 はまた別です陽経はこれには合わない様です。
却って陽経の方は井金穴と言うのは 喘咳寒熱なんかに効くんだから、
金穴として使った方がいい様に思います。
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