難経 第六十六難
ゆっくり堂の『難経ポイント』第六十六難
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※ 六十六難のポイント其の一は、原穴についての説明が述べられています。
※ 六十六難のポイント其の二は、
三焦の原気、先天の気の主る所は、関元穴であり生命の根本です。
※ 六十六難のポイント其の三は、
先天の原気の留まる所は関元であるが、ただ留まっているだけではない。
これを三焦の別使となって全身に回して使う。
◎ 三焦の別使は3つに分類されている。これを「三気」と言う。
◎ 「三気」と言うのは栄気(営気)・衛気 ・原気(宗気 )である。
◎ この「三気」が全身の経脉と五臓六腑を巡ることで人の生命が保たれているのです。
※ 六十六難のポイント其の4は、
身体の経脉や五臓六腑が病んだとき、原穴を治療の穴(ツボ)として使う訳です。
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※ 難経第六十六難臨床&エトセトラ。(六十六難の詳細解説の後に掲載。)
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難経 第六十六難 原文
(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。
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六十六難曰.
經言.
肺之原.出于太淵.
心之原.出于太陵.
肝之原.出于太衝.
脾之原.出于太白.
腎之原.出于太谿.
少陰之原.出于兌骨.
膽之原.出于丘墟.
胃之原.出于衝陽.
三焦之原.出于陽池.
膀胱之原.出于京骨.
大腸之原.出于合谷.
小腸之原.出于腕骨.
十二經皆以兪爲原者.何也.
然.
五藏兪者.三焦之所行.氣之所留止也.
三焦所行之兪爲原者.何也.
然.
臍下腎間動氣者.人之生命也.十二經之根本也.故名曰原.
三焦者.原氣之別使也.主通行三氣.經歴於五藏六府.
原者.三焦之尊號也.故所止輒爲原.
五藏六府之有病者.皆取其原也.
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六十六難の訓読
(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(477号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)
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六十六の難に臼く、
経に言う、
肺の原は太淵に出(い)で、
心(包)の原は大陵に出で、
肝の原は太衝に出で、
脾の原は太白に出で、
腎の原は太谿に出で、
少陰(心)の原は兌骨(神門)に出(いづ)る。
膽(胆)の原は丘墟に出で、
胃の原は衝陽に出で、
三焦の原は陽池に出で、
膀胱の原は京骨に出で、
大腸の原は合谷に出で、
小腸の原は腕骨に出る。
十ニ経皆兪を以って原となすものは何んぞや。
然るなり、
五蔵の兪は三焦の行く所、気の留止する所なり。
三焦行く所の兪を原となすは何んぞや。
然るなり、
斉下(さいか)腎間の動気は人の生命なり、
十二経の根本なり。
故に名(なづ)けて原と臼う。
三焦は原気の別使なり、三気を通行し、五蔵六府に経歴することを主る。
原とは三焦の尊号なり。
故に止(とどま)る所を輙(すなわ)ち原となす。
五蔵六府の病ある者は皆其の原を取るなり。
・
詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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六十六難の解説
(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(477号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)
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六十六難の解説をします。
黄帝内経・霊枢・九鍼十二原篇、及び輸篇(原穴論)から考察するに。
原穴は、生命力の原気のよく表れる穴所である。
そして、陰経に於いては、此の原穴は兪穴と土穴が兼ねている。
肺経の原穴は太淵。
心(包)の原穴は大陵。
肝経の原穴は太衝。
牌経の原穴は太白。
腎経の原穴は太谿。
少陰(心)の原穴は兌骨(神門)になる。
陽経に於いて原穴は兪穴と経穴の間にある。
膽(胆)の原穴は丘墟。
胃の原穴は衝陽。
三焦の原穴は原は陽池。
膀胱の原穴は原は京骨。
大腸の原穴は原は合谷。
小腸の原穴は腕骨になる。
「兪を以って原となす」とはどう言う理由か説明しなさい。
お答えします。
陰経に於いては、五臓の兪は原穴を兼ね、三焦の原気の通じる所であり、
また、先天の原気と後天の原気栄養を司る胃の気とを通じる大事な所である。
三焦の原気、即ち臍下丹田(腎間 )の動気の留止する所これ五臓の兪穴である。
陰経五臓に於いて三焦の原気の通じる所の兪は原穴を兼ねると云うが、これを詳しく説明しなさい。
お答えします。
両腎に宿る精は先天の活動力の根本であり、此の精、又一部が化した生命力、即ち原気は腎間の動気として 外表部から察することが出来る。此の動気は人の生命の表れである。
此の腎間に宿る原気は十二経脉を巡回し生命を維持する活動の根本的な力でもある。
故に生命を維持する根本的な力であるからこの力を原気と言うのである。
三焦の原気は、腎間の動気つまり腎間の精から別に分かれて身体中に行き使われている。
栄気・衛気・原気の三気を経脉を通じて五蔵六府・全身の各器官を経歴して栄養と生命力を与えるものである。
三焦は栄気・衛気・原気の三気の後天的栄養を生産し全身に行らすものであり、腎間の原気を加えて生命力を与えるものであるから、比の気の顕現する点即ち経穴を特に尊んで原穴と呼ぶのである。
故に三焦の気の止る所、十二経の根本である所の原気の留り止る所を原穴となすのである。
病を治す力、それは先天の原気即ち三焦の原気と後天の原気栄衛の気である。
故に比の気の止る所の原穴を取って五蔵六府・全身各所にある病を治す経穴なのである。
・
詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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六十六難の詳細解説
(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(477号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。
山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。
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〔原文〕六十六難曰.
〔訓読〕六十六の難に臼く、
〔解説〕六十六難の解説をします。
〔原文〕經言.
〔訓読〕経に言う。
〔解説〕黄帝内経・霊枢・九鍼十二原篇、及び輸篇(原穴論)から考察するに。
〔原文〕
肺之原.出于太淵.
心之原.出于太陵.
肝之原.出于太衝.
脾之原.出于太白.
腎之原.出于太谿.
少陰之原.出于兌骨.
〔訓読〕
肺の原は太淵に出(い)で、
心(包)の原は大陵に出で、
肝の原は太衝に出で、
脾の原は太白に出で、
腎の原は太谿に出で、
少陰(心)の原は兌骨(神門)に出(いづ)る。
〔解説〕
原穴は、生命力の原気のよく表れる穴所である。
そして、陰経に於いては、此の原穴は兪土穴が兼ねている。
肺経の原穴は太淵。
心(包)の原穴は大陵。
肝経の原穴は太衝。
牌経の原穴は太白。
腎経の原穴は太谿。
少陰(心)の原穴は兌骨(神門)になる。
〔原文〕
膽之原.出于丘墟.
胃之原.出于衝陽.
三焦之原.出于陽池.
膀胱之原.出于京骨.
大腸之原.出于合谷.
小腸之原.出于腕骨.
〔訓読〕
膽(胆)の原は丘墟に出で、
胃の原は衝陽に出で、
三焦の原は陽池に出で、
膀胱の原は京骨に出で、
大腸の原は合谷に出で、
小腸の原は腕骨に出る。
〔解説〕
陽経に於いて原穴は兪穴と経穴の間にある。
膽(胆)の原穴は丘墟。
胃の原穴は衝陽。
三焦の原穴は原は陽池。
膀胱の原穴は原は京骨。
大腸の原穴は原は合谷。
小腸の原穴は腕骨になる。
〔原文〕十二經皆以兪爲原者.何也.
〔訓読〕十ニ経皆兪を以って原となすものは何んぞや。
〔解説〕「兪を以って原となす」とはどう言う理由か説明しなさい。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕五藏兪者.三焦之所行.
〔訓読〕五蔵の兪は三焦の行く所。
〔解説〕
陰経に於いては、五臓の兪は原穴を兼ね、三焦の原気の通じる所であり、
また、先天の原気と後天の原気栄養を司る胃の気とを通じる大事な所である。
〔原文〕氣之所留止也.
〔訓読〕気の留止する所なり。
〔解説〕三焦の原気、即ち臍下丹田(腎間 )の動気の留止する所これ五臓の兪穴である。
〔原文〕三焦所行之兪爲原者.何也.
〔訓読〕三焦行く所の兪を原となすは何んぞや。
〔解説〕
陰経五臓に於いて三焦の原気の通じる所の兪は原穴を兼ねると云うが、これを詳しく説明しなさい。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕臍下腎間動氣者.人之生命也.十二經之根本也.故名曰原.
〔訓読〕
斉下(さいか)腎間の動気は人の生命なり、十二経の根本なり。故に名(なづ)けて原と臼う。
〔解説〕
両腎に宿る精は先天の活動力の根本であり、此の精、又一部が化した生命力、即ち原気は腎間の動気として 外表部から察することが出来る。此の動気は人の生命の表れである。
此の腎間に宿る原気は十二経脉を巡回し生命を維持する活動の根本的な力でもある。
故に生命を維持する根本的な力であるからこの力を原気と言うのである。
〔原文〕三焦者.原氣之別使也.主通行三氣.經歴於五藏六府.
〔訓読〕三焦は原気の別使なり、三気を通行し、五蔵六府に経歴することを主る。
〔解説〕
三焦の原気は、腎間の動気つまり腎間の精から別に分かれて身体中に行き使われている。
栄気・衛気・原気の三気を経脉を通じて五蔵六府・全身の各器官を経歴して栄養と生命力を与えるものである。
〔解説補足〕
「三気」と言うのは営(栄)気 ・衛気 ・原気(宗気 )のことです。
三焦の中で、上焦で出来るものを原気(宗気 )、 中焦で出来るものを営気と言い、下焦で出来る のは衛気です。これを三気と言っています。
〔原文〕原者.三焦之尊號也.
〔訓読〕原とは三焦の尊号なり。
〔解説〕
三焦は栄気・衛気・原気の三気の後天的栄養を生産し全身に行らすものであり、腎間の原気を加えて生命力を与えるものであるから、比の気の顕現する点即ち経穴を特に尊んで原穴と呼ぶのである。
〔原文〕故所止輒爲原.五藏六府之有病者.皆取其原也.
〔訓読〕
故に止(とどま)る所を輙(すなわ)ち原となす。五蔵六府の病ある者は皆其の原を取るなり。
〔解説〕
故に三焦の気の止る所、十二経の根本である所の原気の留り止る所を原穴となすのである。
病を治す力、それは先天の原気即ち三焦の原気と後天の原気栄衛の気である。
故に比の気の止る所の原穴を取って五蔵六府・全身各所にある病を治す経穴なのである。
・
詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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六十六難〔井上恵理先生の難経解説から〕
『難経講義』 井上恵理先生の講義録:東洋はり医学会機関誌経絡鍼療(477号)の参考引用にて、山口一誠の考察文にて構成しました。
・詳しくは東洋はり医学会機関誌「経絡鍼療」(477号).を参照されたし。
※ 難経第六十六難臨床&エトセトラより。
井上恵理先生の難経 第六十六難 解説のポイント。
◎ 三焦の原気、十二経の根本の原と言うのは、
先天の気の主る所、瞬下丹田の動気(腎間の動気)です。
即ち関元穴と言うツボに出て来る気が生命の根本です。
◎ 関元穴に鎮座する三焦の原気(先天の気)は別使となり経脉を周流する。
◎ 先天の原気の留まる所は関元であるが、ただ留まっているだけではない。
これを三焦の別使となって全身に回して使う。
◎ 三焦の別使は3つに分類されている。これを「三気」と言う。
◎ 「三気」と言うのは栄気(営気)・衛気 ・原気(宗気 )である。
即ち上焦で出来るものを原気(宗気 )と言い、
中焦で出来るものを栄気(営気)と言い、
下焦で出来るものを衛気と言う。
◎ この「三気」が全身の経脉と五臓六腑を巡ることで人の生命が保たれているのです。
◎ 人の生命が亡くなってから如何に輸血をしても生き返らないと言うのは、
三焦の原気(榮気・衛気 ・宗気 )が、無くなった、巡らないからです。
◎ 皮膚にものを感じるのも暑さ寒さを感ずるのも、目で見るのも、耳で聞こえるのも、
鼻で臭いが嗅げるのも、五臓六腑が働くのも、 三焦の原気が身体を巡っているからです。
◎ だから、身体の経脉や五臓六腑が病んだとき、原穴を治療の穴(ツボ)を使う訳です。
◎ 原気の宿る原穴を旨く使えば経絡を調和させる事が出来き病を治すのに役立つのです。