六十難

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難経六十難

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ゆっくり堂の『難経ポイント』第六十難

※ 六十難のポイント其の一は、頭部の病と心(胸部)の病に、厥痛と真痛とがある。
厥頭痛・真頭痛・蕨心痛・真心痛。

※ 六十難のポイント其の二は、厥痛は治り易いが、真痛は治り難い。

※ 六十難のポイント其の三は、
厥頭痛とは、手の三陽の脉、陽明大腸経、少陽三焦経、太陽小腸経の三脉は皆頭部を循って
いる。若し風寒の邪が比等の経脉を傷り冒して、而(しか)も邪が経脉に伏し留っている時は
外邪性の頭痛を発病するとがある。これを厥頭痛と名ける。
真頭痛とは、頭部に痛みが深く入って、錐で刺すが如き劇しく痛みで治り難い。

六十難のポイント其の四は、
蕨心痛とは、肝牌肺腎の四蔵と胃の一府の気が逆気して心をせめ置す時は其れぞれの心痛を
起す、此れを蕨心痛と名ける。
真心痛は、心(膻中穴辺りの深部)だけが痛むみ、手足が冷える。これを真心痛と名付ける。
心は精神の会する所、即ち精神作用を行う所あるから、
強く冒される時は神気を脱して朝発病すればタに死亡し、
夕方発病すれば翌朝に至って死亡すると言う劇しい病である。

難経第難臨床&エトセトラより。

蕨心痛の鍼灸治療法。
蕨心痛の鍼灸治療は心の病であるから心の経絡で治るのかと言うと そうではなくて、
その原因を尋ねて肺から起ったのならば肺を治療して心痛が治る事がある。
或いは腎から起った場合に腎を補って心との調和を取って治す場合もある。
肝が実している場合は肺を補って肝を潟すと言う事によって心を治す事が出来る。
牌虚証の場合に心を補って、また治す事が出来る。
こう言う事がある様に他の臓腑を考えて治療すれば治る。
これが蕨心痛の治療法である。

難経 第六十難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

六十難曰.
頭心之病.有厥痛.有眞痛.何謂也.
然.
手三陽之脉.受風寒.伏留而不去者.名厥頭痛.
入連在腦者.名眞頭痛.
其五藏氣相干.名厥心痛.
其痛甚.但在心.手足青者.即名眞心痛.
其眞心痛者.旦發夕死.夕發旦死.
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六十難の訓読

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(470号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

六十の難に日く、
頭心の病に厥痛(けつつう)有り、真痛有りとは何の謂ぞや。
然るなり、
手の三陽の脉、風寒を受け伏留して去らざるもの、則ち厥頭痛と名づく 。
入(い)りて脳に連在するものを真頭痛と名づく。
其の五蔵の気相(きあい)干(おか)すを厥心痛と名づく、
其の痛み甚(はなはだ)しきこと、但心に在って、 手足青(ひ)ゆるものを即ち真心痛と名づく。
其の真心痛の者は旦(あした)に発すればタ(ゆうべ)に死し、 タに発すれば旦に死す。

詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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六十難の解説

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(470号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

六十難の解説をします。

頭部の病と心(胸部)の病に、厥痛と真痛とがあるが、これらについて判り易く説明しなさい。

お答えします。

手の三陽の脉、陽明大腸経、少陽三焦経、太陽小腸経の三脉は皆頭部を循っている。
若し風寒の邪が比等の経脉を傷り冒して、而(しか)も邪が経脉に伏し留っている時は外邪性の頭痛を発病するとがある。これを厥頭痛と名ける。

痛みが深く入って、脳中に連り、然も劇しく痛み、錐で刺すが如くなるものを真頭痛と言う。

厥痛は治り易いが、真痛は治り難い。

心痛即ち心部の痛みにも厥心痛と真心痛の二つの病があって、
肝牌肺腎の四蔵と胃の一府の気が逆気して心をせめ置す時は其れぞれの心痛を起す、
此れを蕨心痛と名ける。

厥心痛に比べて其の痛みが甚しく、他の臓腑とは関係なく、
この心(膻中穴辺りの深部)だけが痛むみ、手足が冷える。これを真心痛と名付けると。

真心痛は深く心を冒すものである。心は精神の会する所、即ち精神作用を行う所 であるから、強く冒される時は神気を脱して朝発病すればタに死亡し、夕方発病すれば翌朝に至って死亡すると言う劇しい病である。


詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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六十難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(470号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕六十難曰.
〔訓読〕六十の難に曰く。
〔解説〕六十難の解説をします。

〔原文〕頭心之病.有厥痛.有眞痛.何謂也.
〔訓読〕頭心の病に厥痛(けつつう)有り、真痛有りとは何の謂ぞや。
〔解説〕
頭部の病と心(胸部)の病に、厥痛と真痛とがあるが、これらについて判り易く説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕手三陽之脉.受風寒.伏留而不去者.名厥頭痛.
〔訓読〕
手の三陽の脉、風寒を受け伏留して去らざるもの、則ち厥頭痛と名づく 。
〔解説〕
手の三陽の脉、陽明大腸経、少陽三焦経、太陽小腸経の三脉は皆頭部を循っている。
若し風寒の邪が比等の経脉を傷り冒して、而(しか)も邪が経脉に伏し留っている時は外邪性の頭痛を発病するとがある。これを厥頭痛と名ける。
〔解説補足〕
厥は蕨逆、下より上に邪気が逆に上りせめて痛みを発症することです。
陽経に邪気があって病む頭痛は陽病である故に潟法によって治することが出来る。

〔原文〕入連在腦者.名眞頭痛.
〔訓読〕入(い)りて脳に連在するものを真頭痛と名づく。
〔解説〕
痛みが深く入って、脳中に連り、然も劇しく痛み、錐で刺すが如くなるものを真頭痛と言う。
〔解説補足〕
厥頭痛は痛みが浅いが真頭痛は深い。
真とは真気であって生命の気である。
真頭痛は脳中の真気を冒す故に手足の先から冷えて来、若し手は肘、足は膝まで冷えが上れば間もなく死亡するものである。

厥痛は治り易いが、真痛は治り難い。

〔原文〕其五藏氣相干.名厥心痛.
〔訓読〕其の五蔵の気相(きあい)干(おか)すを厥心痛と名づく、
〔解説〕
心痛即ち心部の痛みにも厥心痛と真心痛の二つの病があって、
肝牌肺腎の四蔵と胃の一府の気が逆気して心をせめ置す時は其れぞれの心痛を起す、
此れを蕨心痛と名ける。
〔本間祥白先生の難経解説から〕
黄帝内経・霊枢・ 厥病篇 (二十四篇 )に肝心痛、牌心痛、肺心痛、腎心痛、胃心痛の名を挙げている。

〔井上恵理先生の難経解説から〕
心痛、これは胸の痛み ・心部の痛みと言う事です。
これにも厥心痛と真心痛とがある。
「其五藏氣相干」と言うのは、肝・牌・姉・腎の四臓或いは胃の一脈が逆気して心を攻める。
心と言うものは大体、病気にならないと言う事になっているんですね。
ところが他の臓器から 心に影響が与えられると言う事がある。
例えば 肺虚肝実の場合に心が実する、或いは腎虚から心が実する場合、
或いは牌虚から心が虚する場合、何れもある訳です。
こう言うものが心痛を起す原因となる。
これにはやはり肝心痛・牌心痛・肺心痛・腎心痛、
それから胃心痛と言う五つの心痛と言うものが上げられます。

蕨心痛の鍼灸治療法。
蕨心痛の鍼灸治療は心の病であるから心の経絡で治るのかと言うとそうではなくて、
その原因を尋ねて肺から起ったのならば肺を治療して心痛が治る事がある。
或いは腎から起った場合に腎を補って心との調和を取って治す場合もある。
肝が実している場合は肺を補って肝を潟すと言う事によって心を治す事が出来る。
牌虚証の場合に心を補って、また治す事が出来る。
こう言う事がある様に他の臓腑を考えて治療すれば治る。
これが蕨心痛の治療法である。

〔原文〕其痛甚.但在心.手足青者.即名眞心痛.
〔訓読〕
其の痛み甚(はなはだ)しきこと、但心に在って、手足青(ひ)ゆるものを即ち真心痛と名づく。
〔解説〕
厥心痛に比べて其の痛みが甚しく、他の臓腑とは関係なく、 この心(膻中穴辺りの深部)だけが痛むみ、手足が冷える。これを真心痛と名付けると。

〔原文〕其眞心痛者.旦發夕死.夕發旦死.
〔訓読〕其の真心痛の者は旦(あした)に発すればタ(ゆうべ)に死し、 タに発すれば旦に死す。
〔解説〕
真心痛は深く心を冒すものである。心は精神の会する所、即ち精神作用を行う所 であるから、強く冒される時は神気を脱して朝発病すればタに死亡し、夕方発病すれば翌朝に至って死亡すると言う劇しい病である。

〔本間祥白先生の難経解説から〕
真頭痛は脳中の真気、即ち生命の気を傷り、真心痛は心の神気、即ち精神作用を止め、共に日一に 発してタに死し、タに発して日一に死亡させてしまう悪性の痛みの病である。

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