難経 第五十九難
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ゆっくり堂の『難経ポイント』第五十九難
※ 五十九難のポイント其の一は、
脳の病、統合失調症(精神疾患)と癲癇(てんかん)の二つの症状についての記述です。
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※ 難経第五十九難臨床&エトセトラより。
〔本間祥白先生の臨床解説から〕
狂は陽詠が非常に盛んである場合に起り胃実証で治療する場合が最も多い。
癲は陽虚陰実であって肝木経に多く表われ、肝実胆虚証として治療する場合が多い。
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難経 第五十九難 原文
(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。
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五十九難曰.
狂癲之病.何以別之.
然.
狂之始發.少臥而不饑.自高賢也.自辨智也.自貴倨也.妄笑好歌樂.妄行不休.是也.
癲疾始發.意不樂.直視僵仆.
其脉三部陰陽倶盛.是也.
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五十九難の訓読
(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(470号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)
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五十九の難に日く、
狂癲(きょうてん)の病、 何を以ってか之を別たん。
然るなり、
狂疾の始めて発すは、
臥すこと少くして飢えず、
自ら賢を高ぶり、
自ら智を弁智ありとし、
自ら貴を居(ほこ)るなり、
妄(みだ)りに笑い、
歌楽(からく)を好み、
妄行して休まざる是(これ)なり。
癲疾(てんしつ)の始めて発するや、
意楽しまず、
僵仆(きょうとう)し直視す。
其の脉三部陰陽倶(ともに)に盛(さかん)なる是なり。
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詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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五十九難の解説
(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(470号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)
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五十九難の解説をします。
脳の病に、統合失調症(精神疾患)と癲癇(てんかん)症と二つの症状があるが、
これらについて説明しなさい。
お答えします。
狂疾(統合失調症)を発症した時の特徴は、
陽病であるから興奮性であって、夜は不眠となり寝なくなる。
また、陽明胃の熱であるから食事が少くとも飢えた感じがなくなる。。
誇大妄想になり、自分程の賢者はない。自分は智者であり、高位高官であると思うようになって多弁になる。
心火の亢進により、些細なことにも、おかしくもないのに妄りに笑い、唄を歌う。
胃熱が盛んであるからであるから、 牌胃は四肢を主る故に行き当たりばったりに放浪する。
これが、陽性の狂疾(統合失調症)の症状である。
癲癇(てんかん)症を発症した時は不快な気分になり、顔が能面のようになり、
それから全身に痙攣(けいれん)が起り目をむいて倒れる。
統合失調症(精神疾患)と癲癇(てんかん)症の脉状の特徴。
統合失調症(精神疾患)の脉状は、寸関尺の三部は陽病の陽脉で、浮滑長脉と盛んである。
癲癇(てんかん)症の脉状は、寸関尺の三部は陰病の陰実脉で、沈潜短と盛んである。
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詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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五十九難の詳細解説
(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(470号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。
山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。
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〔原文〕五十九難曰.
〔訓読〕五十九の難に曰く。
〔解説〕五十九難の解説をします。
〔原文〕狂癲之病.何以別之.
〔訓読〕狂癲(きょうてん)の病、 何を以ってか之を別たん。
〔解説〕
脳の病に、統合失調症(精神疾患)と癲癇(てんかん)症と二つの症状があるが、
これらについて説明しなさい。
〔本間祥白先生の難経解説から〕
此の難は霊枢第二十二篇繍狂篇から出ているもので、此処には精しく論じられている、
五十九難では其の最も代表的な症候のみを挙げ、陰陽の虚実と言う点のみを重視して論じている。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕狂之始發.少臥而不饑.自高賢也.自辨智也.自貴倨也.妄笑好歌樂.妄行不休.是也.
〔訓読〕
狂疾の始めて発すは、臥すこと少くして飢えず、自ら賢を高ぶり、自ら智を弁智ありとし、
自ら貴を居(ほこ)るなり、 妄(みだ)りに笑い、歌楽(からく)を好み、
妄行して休まざる是(これ)なり。
〔本間祥白先生の難経解説をさんこうにして〕
〔解説〕
狂疾(統合失調症)を発症した時の特徴は、
陽病であるから興奮性であって、夜は不眠となり寝なくなる。
また、陽明胃の熱であるから食事が少くとも飢えた感じがなくなる。。
誇大妄想になり、自分程の賢者はない。自分は智者であり、高位高官であると思うようになって多弁になる。
ここが神経衰弱と区別される所である。神経衰弱は世の中で自分だけが病人で他人は皆丈夫だ、
自分程不幸な病人はないと悲観していて狂者とは全く反対 である。
心火の亢進により、些細なことにも、おかしくもないのに妄りに笑い、唄を歌う。
胃熱が盛んであるからであるから、 牌胃は四肢を主る故に行き当たりばったりに放浪する。
これが、陽性の狂疾(統合失調症)の症状である。
〔本間祥白先生の難経解説補足から〕
五十九難及び霊枢癒狂篤の狂の部では主として陽性躁症だけを取扱って述べている。
然し実際には反対に鬱性もあり更に交互に表れるものもある。
此れは次に述ベる癲癇(てんかん)症の陰症と明確に区別するために殊更に陽症のみを挙げたのであると思う。
〔原文〕癲疾始發.意不樂.直視僵仆.
〔訓読〕癲疾(てんしつ)の始めて発するや、 意楽しまず、僵仆(きょうとう)し直視す。
〔解説〕
癲癇(てんかん)症を発症した時は不快な気分になり、顔が能面のようになり、それから全身に痙攣(けいれん)が起り目をむいて倒れる。
〔本間祥白先生の難経解説補足から〕
癲癇(てんかん)症の特徴は、陽気不足から、陽虚して陰実の病状になっている。。
これは、邪が陰に閉塞されるので神気が犯されるからである。
〔原文〕其脉三部陰陽倶盛.是也.
〔訓読〕其の脉三部陰陽倶(ともに)に盛(さかん)なる是なり。
〔解説〕
統合失調症(精神疾患)と癲癇(てんかん)症の脉状の特徴。
統合失調症(精神疾患)の脉状は、寸関尺の三部は陽病の陽脉で、浮滑長脉と盛んである。
癲癇(てんかん)症の脉状は、寸関尺の三部は陰病の陰実脉で、沈潜短と盛んである。
〔本間祥白先生の臨床解説から〕
狂は陽詠が非常に盛んである場合に起り胃実証である。
却って其の陰なる牌が虚する故に牌虚、胃実として治療する場合が最も多い。
癲は陽虚陰実であって肝木経に多く表われ、肝実胆虚の証として治療する場合が多 い。
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