二八難

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難経二八難

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ゆっくり堂の『難経ポイント』第二十八難

※ 二十八難のポイント其の一は、奇経八脉の流注の起始と停止について述べています。

※ 二十八難のポイント其の二は、
正経十二経、十二絡の脉隆盛なれば邪気暴流し、奇経八脉に入る。
そして、いったん奇経八脉に流れ込んだ気血は十二経に帰ることはないと。

 難経 第二十八難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

二十八難曰.
其奇經八脉者.既不拘於十二經.皆何起何繼也.
然.
督脉者.起於下極之兪.並於脊裏.上至風府.入屬於腦.
任脉者.起於中極之下.以上毛際.循腹裏.上關元.至咽喉.
衝脉者.起於氣衝.並足陽明之經.夾齊上行.至胸中而散也.
帶脉者.起於季脇.廻身一周.
陽蹻脉者.起於跟中.循外踝.上行入風池.
陰蹻脉者.亦起於跟中.循内踝上行至咽喉.交貫衝脉.
陽維陰維者.維絡于身.溢畜不能環流灌漑諸經者也.
故陽維.起於諸陽會也.陰維.起於諸陰交也.
比于聖人圖設溝渠.滿溢流于深湖.
故聖人不能拘通也.
而人脉隆盛.入於八脉.而不環周.
故十二經.亦不能拘之.
其受邪氣.畜則腫熱.砭射之也.

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   二十八難の訓読

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(441号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

二十八の難に曰く。

其の奇経八脉のものは、既に十二経に拘(かかわ)らずんば、

皆何(いず)に起り、何に継ぐぞや。

然るなり。

督脉は、下極の兪に起り、脊裏に並んで、上(のぼ)り、風府に至り、入って腦に屬す。

任脉は、中極の下に起り、以って毛際に上り、腹裏を循り、關元に上り、咽喉に至る。

衝脉は、氣衝に起り、足陽明経に並んで、臍を夾(はさ)んで上行して、胸中に至って散ず。

帶脉は、季脇に起り、身を廻ること一周す。

陽蹻脉は、跟中(こんちゅう)に起り、外踝(そとくるぶし)を循り、上行して風池に入る。

陰蹻脉も、また跟中に起り、内踝を循り、上行して咽喉に至り、衝脉み交り貫く。

陽維、陰維は、身を維絡す、溢畜(いっちく)諸経に環流灌漑すること能(あた)わざる者なり。

故に陽維は、諸陽の会(かい)に起り、陰維は、諸陰の交に起るなり。

聖人、溝渠を図り設く、溝渠滿溢して深湖に流る。

故に聖人も拘(かかわ)り通ずること能(あた)わざるに比すなり。

而(しか)して人の脉隆盛なれば、八脉に入って、環流せず。

故に十二経も、亦(また)之に拘(かかわ)こと能(あた)わず。

其れ邪氣を受けて、畜(あつま)るときは腫熱す、砭(べん)にして之を射すなり。


詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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 二十八難の解説

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(441号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

二十八難の解説をします。

奇経八脉は、二十七難で述べた様に正経十二経とは全然別の形態を取っているのだが、
それでは、奇経八脉の流注の起始と停止について、判り易く説明しなさい。

お答えします。

〔井上恵理先生の難経解説から〕
督脉は、会陰穴に起り、脊椎と並んで上って、風府穴に至り、脳に属会する。

〔井上恵理先生と本間祥白先生の難経解説から〕
任脉は、中極の下、会陰穴(或はスイセン穴)に起り、毛の生え際に上り、腹の中正中を循って、
関元穴に上り、咽喉の天突廉泉穴に至る。

衝脉は、氣衝穴に起り、足陽明経に並んで、臍を夾んで上り、胸中に至って細くなり散って終わる。

帶脉は、脇腹の章門・五枢・帯脉穴辺りに起り、帯の如く腰腹を一周している。

陽蹻脉は、足首に起り、外踝(そとくるぶし)を循って、上行して風池穴に入る。

陰蹻の脉も、また跟中に起り、内踝を循り、腎経に並んで上行して咽喉に至り衝脉み交る。

陽維と陰維は、身の諸陰、諸陽に絡(から)付きまとい、正経の経水が満ち溢れた時に、陽維と陰維の側溝にこれを受けて留める働きがあり、その他の経に環流灌漑することはない。

故に陽維は、諸陽の会(かい)に起り、陰維は、諸陰の交に起るなり。(宿題)

聖人が、人民の為に治水事業を行い河川の整備をして洪水が出ないように深湖にその水を導く。
そして、いったん深湖に流れ込んだ水は河川に帰ることはない。
この例えの如く、
人の気血も正経十二経、十二絡を通じて、環の端し無きが如くに連結して気血を循環させているが、
脉隆盛なれば邪気暴流し、奇経八脉に入る。
そして、いったん奇経八脉に流れ込んだ気血は十二経に帰ることはないと。

奇経八脉に邪氣を受けて、気血が留まるときは腫脹または発熱する、
この様な状態になった時の治療法は、砭鍼をもって、鬱血を瀉血しなさいと。

詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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  二十八難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(441号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕二十八難曰.
〔訓読〕二十八の難に曰く。
〔解説〕二十八難の解説をします。

〔原文〕其奇經八脉者.既不拘於十二經.皆何起何繼也.
〔訓読〕
其の奇経八脉のものは、既に十二経に拘(かかわ)らずんば、
皆何(いず)に起り、何に継ぐぞや。
〔解説〕
奇経八脉は、二十七難で述べた様に正経十二経とは全然別の形態を取っているのだが、
それでは、奇経八脉の流注の起始と停止について、判り易く説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕督脉者.起於下極之兪.並於脊裏.上至風府.入屬於腦.
〔訓読〕督脉は、下極の兪に起り、脊裏に並んで、上(のぼ)り、風府に至り、入って腦に屬す。
〔井上恵理先生の難経解説から〕
督脉は、会陰穴に起り、脊椎と並んで上って、風府穴に至り、脳に属会する。

〔原文〕任脉者.起於中極之下.以上毛際.循腹裏.上關元.至咽喉.
〔訓読〕任脉は、中極の下に起り、以って毛際に上り、腹裏を循り、關元に上り、咽喉に至る。
〔井上恵理先生と本間祥白先生の難経解説から〕
任脉は、中極の下、会陰穴(或はスイセン穴)に起り、毛の生え際に上り、腹の中正中を循って、
関元穴に上り、咽喉の天突廉泉穴に至る。

〔原文〕衝脉者.起於氣衝.並足陽明之經.夾齊上行.至胸中而散也.
〔訓読〕
衝脉は、氣衝に起り、足陽明経に並んで、臍を夾(はさ)んで上行して、胸中に至って散ず。
〔解説〕
衝脉は、氣衝穴に起り、足陽明経に並んで、臍を夾んで上り、胸中に至って細くなり散って終わる。

〔原文〕帶脉者.起於季脇.廻身一周.
〔訓読〕帶脉は、季脇に起り、身を廻ること一周す。
〔解説〕帶脉は、脇腹の章門・五枢・帯脉穴辺りに起り、帯の如く腰腹を一周している。

〔原文〕陽蹻脉者.起於跟中.循外踝.上行入風池.
〔訓読〕陽蹻脉は、跟中(こんちゅう)に起り、外踝(そとくるぶし)を循り、上行して風池に入る。
〔解説〕陽蹻脉は、足首に起り、外踝(そとくるぶし)を循って、上行して風池穴に入る。

〔原文〕陰蹻脉者.亦起於跟中.循内踝上行至咽喉.交貫衝脉.
〔訓読〕陰蹻脉も、また跟中に起り、内踝を循り、上行して咽喉に至り、衝脉み交り貫く。
〔解説〕陰蹻の脉も、また跟中に起り、内踝を循り、腎経に並んで上行して咽喉に至り衝脉み交る。

〔原文〕陽維陰維者.維絡于身.溢畜不能環流灌漑諸經者也.
〔訓読〕
陽維、陰維は、身を維絡す、溢畜(いっちく)諸経に環流灌漑すること能(あた)わざる者なり。
〔解説〕
陽維と陰維は、身の諸陰、諸陽に絡(から)付きまとい、正経の経水が満ち溢れた時に、陽維と陰維の側溝にこれを受けて留める働きがあり、その他の経に環流灌漑することはない。

〔原文〕故陽維.起於諸陽會也.陰維.起於諸陰交也.
〔訓読〕故に陽維は、諸陽の会(かい)に起り、陰維は、諸陰の交に起るなり。
〔解説〕故に陽維は、諸陽の会(かい)に起り、陰維は、諸陰の交に起るなり。(宿題)

〔原文〕
比于聖人圖設溝渠.滿溢流于深湖.故聖人不能拘通也.
而人脉隆盛.入於八脉.而不環周.故十二經.亦不能拘之.
〔訓読〕
聖人、溝渠を図り設く、溝渠滿溢して深湖に流る。
故に聖人も拘(かかわ)り通ずること能(あた)わざるに比すなり。
而(しか)して人の脉隆盛なれば、八脉に入って、環流せず。
故に十二経も、亦(また)之に拘(かかわ)こと能(あた)わず。

〔解説〕
聖人が、人民の為に治水事業を行い河川の整備をして洪水が出ないように深湖にその水を導く。
そして、いったん深湖に流れ込んだ水は河川に帰ることはない。
この例えの如く、
人の気血も正経十二経、十二絡を通じて、環の端し無きが如くに連結して気血を循環させているが、
脉隆盛なれば邪気暴流し、奇経八脉に入る。
そして、いったん奇経八脉に流れ込んだ気血は十二経に帰ることはないと。

〔原文〕其受邪氣.畜則腫熱.砭射之也.
〔訓読〕其れ邪氣を受けて、畜(あつま)るときは腫熱す、砭(べん)にして之を射すなり。
〔解説〕奇経八脉に邪氣を受けて、気血が留まるときは腫脹または発熱する、
この様な状態になった時の治療法は、砭鍼をもって、鬱血を瀉血しなさいと。

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