二四難

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難経 第二十四難

    ank024

 

ゆっくり堂の『難経ポイント』第二十四難

※ 二十四難のポイント其の一は、
手足の三陰三陽に氣の変動が起こった場合に、
どの様な病状・どの様な状態・どの様な脉状となるか、
またその吉凶を知る事についての臨床法則が述べられている。

※ 二十四難のポイント其の二は
難経二十三難には一番目に望診で観察するポイントが述べられている。
しかも懇切丁寧に変動機序が縷々説明してある。

 

※ 難経二十四難の臨床&エトセトラ

まだ50代なんだけど「歯が長く見える」のは、老化現象の始りか。
これは腎経の氣の変動と診るか。「下唇の裏に口内炎がある」のは脾経の変動か。
「呂律が回らない時は」肝経か。「ツルツル肌」は肺経に問題ありかも。

難経二十四難には、一番目に望診で観察するポイントが述べられている。
しかも懇切丁寧に変動機序が縷々説明してある。

現代の臨床にも役立ち、五行の色体表の理由も納得です。

だから、経絡の変動を整える本治法が必要なのですね。・・・・


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難経 第二十四難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

二十四難曰.
手足三陰三陽氣已絶.何以爲候.可知其吉凶不.
然.
足少陰氣絶.即骨枯.少陰者.冬脉也.伏行而温於骨髓.
故骨髓不温.即肉不著骨.骨肉不相親.即肉濡而却.
肉濡而却.故齒長而枯.髮無潤澤者.骨先死.戊日篤.己日死.

足太陰氣絶.則脉不榮其口脣.口脣者.肌肉之本也.
脉不榮.則肌肉不滑澤.肌肉不滑澤.則肉滿.
肉滿則脣反.脣反則肉先死.甲日篤.乙日死.

足厥陰氣絶.即筋縮引卵與舌.
厥陰者.肝脉也.肝者.筋之合也.筋者.聚於陰器.而絡於舌本.
故脉不營.則筋縮急.筋縮急.即引卵與舌.故舌卷卵縮.此筋先死.庚日篤.辛日死.

手太陰氣絶.即皮毛焦.
太陰者.肺也.行氣温於皮毛者也.氣弗榮.則皮毛焦.皮毛焦.則津液去.
津液去.即皮節傷.皮節傷則皮枯毛折.毛折者.則毛先死.丙日篤.丁日死.

手少陰氣絶.則脉不通.少陰者.心脉也.
心者.脉之合也.脉不通.則血不流.血不流則色澤去.故面黒如梨.此血先死.壬日篤.癸日死.

三陰氣倶絶者.則目眩轉.目瞑.
目瞑者.爲失志.
失志者.則志先死.
死即目瞑也.

六陽氣倶絶者.則陰與陽相離.
陰陽相離.則腠理泄.
絶汗乃出.大如貫珠.
轉出不流.即氣先死.
旦占夕死.夕占旦死.

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二十四難の訓読

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(438号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

二十四の難に曰く。
手足三陰三陽の氣、已(すで)に絶すれば、何を以ってか候となして、其の吉凶を知るべきや否や。
然るなり。
足の少陰の氣絶すれば、即(すなわ)ち骨枯る。
少陰は、冬の脉なり、伏行して骨髓を温む。
故に骨髓温かならざれば、即ち肉骨に著(つ)かず、
骨肉相親まざれば、即ち肉濡(やわら)かにして却(ちぢま)る、
肉濡にして却る、故に齒長くして枯る、髮に潤沢(じゅんたく)無きものは、骨先づ死す。
戊(つちのえ)の日に篤(あつ)く、己(つちのと)の日に死す。
足の太陰の氣絶するときは、則ち脉其の口脣を榮せず。
口脣は、肌肉の本なり。
脉榮せざれば、則ち肌肉滑沢ならず、
肌肉滑沢ならざるときは、則ち肉滿つ、
肉滿つるときは唇反る、唇反るときは肉先ず死す。
甲(きのえ)の日に篤く、乙(きのと)の日に死す。
足の厥陰の氣絶するときは、即ち筋(すじ)縮り卵と舌に引いて巻く。
厥陰は、肝の脉なり、肝は、筋の合なり、筋は、陰器に聚(あつま)って、舌本を絡(まと)う。
故に脉營ぜざるときは、則ち筋縮急なり、筋縮急なれば、即ち卵と舌に引く。
故に舌卷き卵縮る、此れ筋先ず死す。
庚(かのえ)の日に篤く、辛(かのと)の日に死す。
手の太陰の氣絶すれば、即ち皮毛焦る、
太陰は、肺なり、氣を行(めぐ)らし、皮毛を温るものなり。
氣榮ぜざるときは、則ち皮毛焦る、皮毛焦るときは、則ち津液去る、
津液去るときは、即ち皮節傷る、皮節傷るときは、則ち皮枯れ毛折る、
毛折るものは、毛先づ死す。
丙(ひのえ)の日に篤く、丁(ひのと)の日に死す。
手の少陰の氣絶するときは、則ち脉通ぜず、
少陰は、心の脉なり、心は、脉の合なり、
脉通ぜざるときは、則ち血流れず、血流れざるときは色沢去る。
故に面色黒くして梨(れい)の如し、此れ血先づ死す。
壬(みずのえ)の日に篤く、癸(みずのと)の日に死す。
三陰の氣、倶(とも)に絶するものは、則ち目眩轉し、目瞑(めいもく)す、
目瞑するものは、志を失する事をなす、
志を失するものは、則ち志先づ死す、
死するときは目瞑す。
六陽の氣、倶に絶するときは、則ち陰と陽と相離る、
陰陽相離るときは、則ち腠理(そうり)泄(もら)して、
絶汗乃(すなわ)ち出て、大(おおき)さ貫珠の如く、
転(うた)た出て流れず、即ち氣先ず死す。
旦(あした)に占(こころ)みて夕(ゆうべ)に死し、夕に占みて旦に死す。


詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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二十四難の解説

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(438号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

二十四難の解説をします。

手足の三陰三陽に氣の変動が起こった場合に、どの様な病状・どの様な状態・どの様な脉状となるのか、またその吉凶を知る事が出来るのか、詳しく説明しなさい。

お答えします。

足の少陰腎経の氣が変動が起こした時には、骨から枯れてくる。
少陰は、冬の脉であり、冬は脉が下に沈んで伏行している。
伏行しているから腎は骨髓を温める役目をしている。
故に骨髓が温かでなければ、肉が骨に付かなくなる。
骨と肉が付いていなければ、肉が軟らかくなって縮んでしまう。
老人になると腎気が衰え歯茎が縮んで歯が長く見える様になる。
また、髮に潤いが無くなり、皮膚の艶が無くなる。そして一番目に歯が抜け骨が脆くなる。
戊日に病が重くなり、己日に死ぬと。

〔解説補足〕
腎水は脾土の支配(相剋)を受けているので、脾土の戊日に病が重くなり、己日に死ぬと。
第七難 の図nk3を参照されたし。
十干(じっかん)は、陰陽五行を表している。
十干は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の十種類からなる。図nk3

nk3

足の太陰脾経の氣が変動が起こした時には、脉が其の口と唇を栄養できない。
口と唇は、脾経の肌肉の主りである。
肌肉即ち筋肉の現われる所は口と唇である。
脉が口と唇を栄養できなければ、肌肉が滑らかでなく、潤いが無くなる。
そして、「肉滿つ」腫れぼったくなって来る。
更に病状が進むと、唇が反り返って来る。
唇反るときは肉が死んでいるのだと。
甲日に病が重くなり、乙日に死ぬと。

足の厥陰肝経の氣が変動が起こした時には、腱が縮むと。
この「筋(すじ)」は筋肉ではありません。靭帯や腱・神経と考えます。
厥陰肝経の流注から「筋」は、女性は子宮・男性は睾丸や舌本に来ている。
厥陰は、肝脉であるから、肝は筋の集まる所である。
だから、筋は、陰器や舌本を担当するのである。
そして、肝脉が栄養されない時は、筋が縮まり締まる。筋が縮締すれば、陰器や舌本に影響する。
どの様な症状になるかと言うと、舌が卷き上がり、睾丸がギューッと上がって縮る。
そして一番目に陰器や舌本が脆くなる。
庚(かのえ)の日に病が重くなり、辛(かのと)の日に死ぬと。

手の太陰肺経の氣が変動が起こした時には、まず皮毛が枯れる。
太陰は、肺の脉であり、肺の氣を循環させて、皮毛を温める役目をしている。
肺氣が栄養されない時は、皮毛が枯れる。そして津液が減り皮膚に潤いが無くなる。
津液去るときは、皮節(表皮の凸凹のヒダ)が無くなりツルツル肌になる。
皮節傷る時になると、皮膚が枯れていると診ていい。そして体毛が折れ無くなっていく。
体毛が折れ無くなっていく時はまず毛が死んでいるんだと。
そして、丙(ひのえ)の日に病が重くなり、丁(ひのと)の日に死ぬと。

手の少陰心経の氣が変動が起こした時には、脉が通じなくなる。
少陰心経は、心脉であるから、心は脉を統括する所である。
脉が通じなくなると、血が流れ無くなる。血が流れなければ皮膚の色艶が去ってしまう。
だから、顔の色が眉墨(まゆずみ)よりも黒くなってしまうと。
これは血が流れなくなって死ぬと。
少陰心経の絶する時は手当の施し様のない速さで病状が悪化する。
壬(みずのえ)の日に病が重くなり、癸(みずのと)の日に死ぬと。

手足の三陰の氣、即ち肝心脾肺腎の五臓の気が全滅する時には、
まず目眩(めまい)がして、思わず目を閉じてしまう。
「目眩轉し、目瞑」するときは、腎中の精気先天の気の志魂が失われている。
志魂が失われると、目を閉じてしまい口を聞くことも耳で聞くことも出来なくなり死ぬと。
つまり、目瞑する時は死ぬときであると。

手足の陽経の気、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦の気が全滅する時には、
陰と陽と相離れ、気血臓腑の気が全部バラバラになってしまう。
陰陽相離るときは、腠理(皮膚)の艶が無くなり、
ものすごい勢いで、数珠(じゅず)大のきな脂汗が流れ出ると。
これは気が絶した証拠で死ぬのみである。
朝方にこの様な状態になると夕方には必ず死ぬ。
夕方にこの様な状態になると明日の朝には必ず死ぬと。


詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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  二十四難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(438号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕二十四難曰.
〔訓読〕二十四の難に曰く。
〔解説〕二十四難の解説をします。

〔原文〕
手足三陰三陽氣已絶.何以爲候.可知其吉凶不.
〔訓読〕
手足三陰三陽の氣、已(すで)に絶すれば、何を以ってか候となして、其の吉凶を知るべきや否や。
〔解説〕
手足の三陰三陽に氣の変動が起こった場合に、どの様な病状・どの様な状態・どの様な脉状となるのか、またその吉凶を知る事が出来るのか、詳しく説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕
足少陰氣絶.即骨枯.少陰者.冬脉也.伏行而温於骨髓.
故骨髓不温.即肉不著骨.骨肉不相親.即肉濡而却.
肉濡而却.故齒長而枯.髮無潤澤者.骨先死.戊日篤.己日死.
〔訓読〕
足の少陰の氣絶すれば、即(すなわ)ち骨枯る。少陰は、冬の脉なり、伏行して骨髓を温む。
故に骨髓温かならざれば、即ち肉骨に著(つ)かず、
骨肉相親まざれば、即ち肉濡(やわら)かにして却(ちぢま)る、
肉濡にして却る、故に齒長くして枯る、髮に潤沢(じゅんたく)無きものは、骨先づ死す。
戊(つちのえ)の日に篤(あつ)く、己(つちのと)の日に死す。
〔解説〕
足の少陰腎経の氣が変動が起こした時には、骨から枯れてくる。
少陰は、冬の脉であり、冬は脉が下に沈んで伏行している。
伏行しているから腎は骨髓を温める役目をしている。
故に骨髓が温かでなければ、肉が骨に付かなくなる。
骨と肉が付いていなければ、肉が軟らかくなって縮んでしまう。
老人になると腎気が衰え歯茎が縮んで歯が長く見える様になる。
また、髮に潤いが無くなり、皮膚の艶が無くなる。そして一番目に歯が抜け骨が脆くなる。
戊日に病が重くなり、己日に死ぬと。

〔解説補足〕
腎水は脾土の支配(相剋)を受けているので、脾土の戊日に病が重くなり、己日に死ぬと。
第七難 の図nk3を参照されたし。
十干(じっかん)は、陰陽五行を表している。
十干は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の十種類からなる。図nk3

nk3

〔原文〕
足太陰氣絶.則脉不榮其口脣.口脣者.肌肉之本也.
脉不榮.則肌肉不滑澤.肌肉不滑澤.則肉滿.
肉滿則脣反.脣反則肉先死.甲日篤.乙日死.
〔訓読〕
足の太陰の氣絶するときは、則ち脉其の口脣を榮せず。口脣は、肌肉の本なり。
脉榮せざれば、則ち肌肉滑沢ならず、肌肉滑沢ならざるときは、則ち肉滿つ、
肉滿つるときは唇反る、唇反るときは肉先ず死す。
甲(きのえ)の日に篤く、乙(きのと)の日に死す。

〔解説〕
足の太陰脾経の氣が変動が起こした時には、脉が其の口と唇を栄養できない。
口と唇は、脾経の肌肉の主りである。
肌肉即ち筋肉の現われる所は口と唇である。
脉が口と唇を栄養できなければ、肌肉が滑らかでなく、潤いが無くなる。
そして、「肉滿つ」腫れぼったくなって来る。
更に病状が進むと、唇が反り返って来る。
唇反るときは肉が死んでいるのだと。
甲日に病が重くなり、乙日に死ぬと。

〔原文〕
足厥陰氣絶.即筋縮引卵與舌.
厥陰者.肝脉也.肝者.筋之合也.筋者.聚於陰器.而絡於舌本.
故脉不營.則筋縮急.筋縮急.即引卵與舌.故舌卷卵縮.此筋先死.庚日篤.辛日死.
〔訓読〕
足の厥陰の氣絶するときは、即ち筋(すじ)縮り卵と舌に引いて巻く。
厥陰は、肝の脉なり、肝は、筋の合なり、筋は、陰器に聚(あつま)って、舌本を絡(まと)う。
故に脉營ぜざるときは、則ち筋縮急なり、筋縮急なれば、即ち卵と舌に引く。
故に舌卷き卵縮る、此れ筋先ず死す。
庚(かのえ)の日に篤く、辛(かのと)の日に死す。

〔解説〕
足の厥陰肝経の氣が変動が起こした時には、腱が縮むと。
この「筋(すじ)」は筋肉ではありません。靭帯や腱・神経と考えます。
厥陰肝経の流注から「筋」は、女性は子宮・男性は睾丸や舌本に来ている。
厥陰は、肝脉であるから、肝は筋の集まる所である。
だから、筋は、陰器や舌本を担当するのである。
そして、肝脉が栄養されない時は、筋が縮まり締まる。筋が縮締すれば、陰器や舌本に影響する。
どの様な症状になるかと言うと、舌が卷き上がり、睾丸がギューッと上がって縮る。
そして一番目に陰器や舌本が脆くなる。
庚(かのえ)の日に病が重くなり、辛(かのと)の日に死ぬと。

〔原文〕
手太陰氣絶.即皮毛焦.
太陰者.肺也.行氣温於皮毛者也.氣弗榮.則皮毛焦.皮毛焦.則津液去.
津液去.即皮節傷.皮節傷則皮枯毛折.毛折者.則毛先死.丙日篤.丁日死.
〔訓読〕
手の太陰の氣絶すれば、即ち皮毛焦る、
太陰は、肺なり、氣を行(めぐ)らし、皮毛を温るものなり。
氣榮ぜざるときは、則ち皮毛焦る、皮毛焦るときは、則ち津液去る、
津液去るときは、即ち皮節傷る、皮節傷るときは、則ち皮枯れ毛折る、
毛折るものは、毛先づ死す。
丙(ひのえ)の日に篤く、丁(ひのと)の日に死す。
〔解説〕
手の太陰肺経の氣が変動が起こした時には、まず皮毛が枯れる。
太陰は、肺の脉であり、肺の氣を循環させて、皮毛を温める役目をしている。
肺氣が栄養されない時は、皮毛が枯れる。そして津液が減り皮膚に潤いが無くなる。
津液去るときは、皮節(表皮の凸凹のヒダ)が無くなりツルツル肌になる。
皮節傷る時になると、皮膚が枯れていると診ていい。そして体毛が折れ無くなっていく。
体毛が折れ無くなっていく時はまず毛が死んでいるんだと。
そして、丙(ひのえ)の日に病が重くなり、丁(ひのと)の日に死ぬと。

〔原文〕
手少陰氣絶.則脉不通.少陰者.心脉也.心者.脉之合也.
脉不通.則血不流.血不流則色澤去.
故面黒如梨.此血先死.
壬日篤.癸日死.
〔訓読〕
手の少陰の氣絶するときは、則ち脉通ぜず、少陰は、心の脉なり、心は、脉の合なり、
脉通ぜざるときは、則ち血流れず、血流れざるときは色沢去る。
故に面色黒くして梨(れい)の如し、此れ血先づ死す。
壬(みずのえ)の日に篤く、癸(みずのと)の日に死す。

〔解説〕
手の少陰心経の氣が変動が起こした時には、脉が通じなくなる。
少陰心経は、心脉であるから、心は脉を統括する所である。
脉が通じなくなると、血が流れ無くなる。血が流れなければ皮膚の色艶が去ってしまう。
だから、顔の色が眉墨(まゆずみ)よりも黒くなってしまうと。
これは血が流れなくなって死ぬと。
少陰心経の絶する時は手当の施し様のない速さで病状が悪化する。
壬(みずのえ)の日に病が重くなり、癸(みずのと)の日に死ぬと。

〔原文〕
三陰氣倶絶者.則目眩轉.目瞑.
目瞑者.爲失志.失志者.則志先死.
死即目瞑也.
〔訓読〕
三陰の氣、倶(とも)に絶するものは、則ち目眩轉し、目瞑(めいもく)す、
目瞑するものは、志を失する事をなす、志を失するものは、則ち志先づ死す、
死するときは目瞑す。

〔解説〕
手足の三陰の氣、即ち肝心脾肺腎の五臓の気が全滅する時には、
まず目眩(めまい)がして、思わず目を閉じてしまう。
「目眩轉し、目瞑」するときは、腎中の精気先天の気の志魂が失われている。
志魂が失われると、目を閉じてしまい口を聞くことも耳で聞くことも出来なくなり死ぬと。
つまり、目瞑する時は死ぬときであると。

〔原文〕
六陽氣倶絶者.則陰與陽相離.
陰陽相離.則腠理泄.
絶汗乃出.大如貫珠.
轉出不流.即氣先死.
旦占夕死.夕占旦死.
〔訓読〕
六陽の氣、倶に絶するときは、則ち陰と陽と相離る、
陰陽相離るときは、則ち腠理(そうり)泄(もら)して、
絶汗乃(すなわ)ち出て、大(おおき)さ貫珠の如く、
転(うた)た出て流れず、即ち氣先ず死す。
旦(あした)に占(こころ)みて夕(ゆうべ)に死し、夕に占みて旦に死す。

〔解説〕
手足の陽経の気、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦の気が全滅する時には、
陰と陽と相離れ、気血臓腑の気が全部バラバラになってしまう。
陰陽相離るときは、腠理(皮膚)の艶が無くなり、
ものすごい勢いで、数珠(じゅず)大のきな脂汗が流れ出ると。
これは気が絶した証拠で死ぬのみである。
朝方にこの様な状態になると夕方には必ず死ぬ。
夕方にこの様な状態になると明日の朝には必ず死ぬと。

 

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