臀部辺りの経穴と主治詳細 r16

臀部辺りの経穴と主治詳細

督脈と膀胱経、及び奇穴を横並びに取り上げ「背部経穴」の考察を行います。

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1、参考文献は、次の3点です。
1-1:本間祥白(著)鍼灸実用経穴学より、引用構成文を掲載します。
1-2:『鍼灸重宝記』の経穴と主治より、引用構成文を掲載します。
1-3:東京鍼研究会、及び自院での臨床考察文を掲載します。
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臀部経穴の図・写真​

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 経穴マップ 図の写真引用にて。
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経穴マップ 図の写真引用にて。
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【 腰兪(ようゆ)穴、 所属経絡:督脈 】

〔鍼灸学校教科書:2. 腰兪(ようゆ)穴: 所属経絡:督脈・ 取穴部位:仙骨裂孔の中央陥凹部に取る.〕
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※1:本間祥白(著)鍼灸実用経穴学より引用。

2. 腰兪(ようゆ)穴、
別名:腰柱、髄孔、髄府。 (GV… 2)
部 位 : 仙骨管裂孔 (古書の第21椎)の下部にある。
取り方 :伏臥位で尾骨尖端から上に押し上げてくると、約3寸のところで仙骨管裂孔の陥凹部に触れることができる。
左右の第4後仙骨孔、すなわち下髎(げりょう)穴の内下部にあたる。
【筋肉】輔上靭帯、胸腰筋膜
【血管】下殿動・静脈
【神経】仙骨神経後技、 下殿皮神経
【主治症】婦人病、月経閉止、痔疾、膀脱炎、足腰の神経痛、筋の弛緩。
〔鍼灸学校教科書:30.下髎(げりょう)穴:  所属経絡:足の太陽膀胱経・ 取穴部位:第4後仙骨孔部に取る.〕
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※2:『鍼灸重宝記』の経穴と主治より引用。

 腰兪 ようゆ(一穴)
取穴: 二十一椎の下。
灸法:灸七壮四十九壮、
針法:針二分 、留ること七呼、あるひは八分、 留ること三呼、瀉は五吸。
主治:
腰尻背いたみ、温瘧汗出ず、足膝不仁していたみ、傷寒、 四支熱し、 月経通ぜず、 帯下を 治す。
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※3:東京鍼研究会及び自院での臨床考察より。
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【 会陽(えよう)穴、 所属経絡:膀胱経 】

〔鍼灸学校教科書:31. 会陽(えよう)  所属経絡:膀胱経・ 取穴部位:尾骨下端の外5分に取る.〕
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※1:本間祥白(著)鍼灸実用経穴学より引用。

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※2:『鍼灸重宝記』の経穴と主治より引用。

 会陽 えよう  (二穴)
取穴: 亀尾と尻骨と両旁の陥み。
灸法:灸五壮。
針法:針八分、
主治:腹寒、熱気、寒気、泄瀉、久痔、下血、陽気虚乏、陰汗しめるを治す。
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※3:東京鍼研究会及び自院での臨床考察より。
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【 長強 (ちょうきょう)穴  所属経絡:督脈 】

〔鍼灸学校教科書:長強穴: 督脈の絡穴・ 所属経絡:督脈・取穴部位:尾骨下端と肛門の間に取る.〕
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※1:本間祥白(著)鍼灸実用経穴学より引用。

1. 長強 (ちょうきょう)穴
別名:亀尾・尾骨下空・尾閭〔びりょ〕・骶骨〔ていこつ〕・窮骨〔きゅうこつ〕。
【尾閭】の意味:《「荘子」秋水から》大海の底にあって絶えず海水を漏らしているという穴。「―洩らせども乾かず」〈太平記・三四〉
部 位 :尾骨先端の直下にある。
取り方 :尾骨端から肛門にかけて肛門尾骨靱帯があり、穴はこの上に取るが、その内部に肛門挙筋がある。
【筋肉】肛門尾骨靱帯、肛門挙筋
【血管】下直腸動・静脈
【神経】尾骨神経、肛門尾骨神経、
【主治症】
急性、慢性の淋病に効き、失精すなわち遺精に効く。
遺精にもいろいろな原因があるが、神経衰弱、局部神経の過敏、
全身衰弱に基づくものは、われわれの立場からみれば気虚の一症である。
治療としては全体的治療でなければならないが、局部治療もまた非常に効果的である。
長強の治験例として、
数年前42歳男子、慢性腎臓炎、高血圧症が悪化して全身衰弱をきたした。
そしてわずかの刺激でも遺精する。
のちには妻がそばにきただけでも射精するようになった。
そこで、いつもの腎虚証の治療のほかに長強穴に灸五壮を施したところ2日ほどで止まり、以後1回もなくなった。
後に別の男子患に会陰穴に施灸したことがあるが、これも効いた。
痔疾に対しても特効穴である。
疣(いぼ)痔、脱肛いずれにも効く。
疣痔には、長強のほかに疣の周囲に糸状灸を数か所すえるとなおよい。
急性症であれば一回ごとに鮮かに効く。
痔痛 脱肛 痔出血の鍼では、側臥して両膝を前にまげ、長強穴から3寸あるいは2寸の鍼で仙骨の前面に沿って深く刺入すると速効がある。
ただし第1回の治療後出血量を増すことがあるが、これは内部の鬱血がとれ、かえって予後がよいように思われる。
また、長強は脳出血や腰痛、小児引きつけにも効くことになっているが、このような場所の治療点をしいて選ぶ必要はないと思う。
また中老年以後になると肛門および膀胱の括約筋が弛緩してわずかのことでも放屁(ほうひ)したり、
大便や小便を泄(もら)したりするようなとき、長強穴を用いて非常に効果があり喜ばれることがある。
試みるべき穴であると思う。
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※2:『鍼灸重宝記』の経穴と主治より引用。

 長強 ちょうきょう(一穴)
取穴: 脊の骶骨の端、俗に亀の尾と云処なり 。
灸法:灸五壮あるひは三十壮二百壮まで。
針法:針二分、留ること七呼、
主治:
是痔の根本なり 、腸風、 下血、 久痔、 腰背いたみ、 狂乱、大小便かたく 、 頭重く 、 洞泄(どうせ:水様性の軟便)、
淋病、驚風、 癲癇、 嘔血、 驚恐、 小児顖陥り :幼児の頭蓋骨の泉門(せんもん)のこと、
瘈瘲(けいしょう:きつじゅう:筋脉の牽引性拘急を瘈、弛緩し伸張する瘲である。:筋が緊張したり緩んだりすること。)、
視こと正からざる 、を主る。
脊強るものはこれを瀉し 、頭腫る者はこれをおぎなふべし 。
『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例
42、痔漏 いぼぢ・あなぢ へのリンク
http://yukkurido.jp/keiro/e1/e4/t7/#42

43、脱肛 へのリンク
http://yukkurido.jp/keiro/e1/e4/t7/#43

75、婦人の科(▲久き帯下は曲骨・次膠・長強。)へのリンク
http://yukkurido.jp/keiro/e1/e4/t7/#75

83、癖積 かたかい へのリンク
▲癥瘕(チョウ-カ:腹部腫瘤)、脊強り相引くには、長強(三十壮灸)。
http://yukkurido.jp/keiro/e1/e4/t7/#83
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※3:東京鍼研究会及び自院での臨床考察より。

自院での臨床考察より。

いぼ痔の改善例

患者様プロフィール: 女性57歳
一番改善したい病状の特徴と経過:
イボ痔の痛み。
イボ痔の形状は、母指大のイボ痔が肛門部より突き出ています。色は赤黒色です。
夕方になると肛門部が痛みだし、不快感に襲われ仕事にも支障がでます。
昔から、この様なイボ痔の状態をくり返していますが、1週間ぐらいで治っていました。
だが今回は、この状態が一年以上続いています。
外科手術はしたくないので、鍼灸で何とかなるのではと思い来院されました。
2番目に改善したい症状は、
頭重。首のコリ・肩コリ、飲食の時に上はぐきが痛みです。
過去の病歴:
8年前に狭心症を発症。動脈硬化もあり、ワーファリンを現在も服用中。
3年前から上はぐきが痛み前歯で食物をかむ事ができません。
奥歯では噛めますが、丸呑みになる場合が多いそうです。
2年前に車の運転中、後方よりトラックに追突されてムチ打症になりました。
漢方診断と施術内容:
触診から、
首、肩全体に冷や汗をかいています。
左の肩に硬いシコリがあります。
臍より上の大腹は大きくせり出し、充実し、色は白く、うっすらと汗が出ています。
臍より下の小腹は陥下し赤黒い色で軟弱な腹部に見えます。
左中都穴辺りに細絡があります。
左足の内果に内出血があります。
手は冷たく汗ばんでいます。
足先は温かいです。
主訴のイボ痔の痛みの改善が一番なので、
患部の「いぼ痔」の処置として、
長強穴にステンレス鍼2寸-5番にて菅鍼法の手法で5センチほど刺入、置鍼を施します。
主訴の症状と触診から、肺の変動とみて、
ここが、病気の根本解決の中心になりますので、本治法で気の調整の処置をします。
治療の経過:
治療4回目:
頭重と首肩コリは改善しました。
手、腹部、首肩全体の冷や汗も引っ込んで改善しています。
治療6回目:
長強穴の処置で改善効果が出て来ました。
鍼の手技は患者に側臥位で両手で片足を抱えてもらい、 長強穴に10分ほど置鍼します。
押手、刺手を軽く支えていると、鍼尖と鍼体に温かい充実感を感じました。
時間の経過と共に、イボ痔が縮小し始め、終わりには、小指のツメほどの大きさに変化しています。
また、患部の色も黒色から灰色に変化しましたので、ここを限度にしてゆっくりと抜鍼しました。
患者様の声
治療を終えて、1年余り症状が改善しなかったのがここまで良くなったので、満足しているとのこと。
治療経過のまとめ :
治療結果として、イボ痔が小指のツメほどになり、軟らかくなり、肛門部の痛みもなくなり、気力もとぎれないこと。
患者様からは、治療に対する満足感も話され、鍼灸に対する信頼も生まれたと考えます。
このような症状をお持ちの方は、週に一回のペースで健康促進の鍼灸治療をお勧めします。
そうする事で、動脈硬化の改善にもつながります。
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