『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例 t7

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 『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例

諸病の治例 t7

『鍼灸重宝記』に於ける諸々の病気の症状と治療穴が展開されています。

また、「杉山三部書の治療穴」を各項目に合わせて掲載しています。

初めに各項目、後に詳細を記載します。

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『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例 項目

1、中風 (ちゅうふう:)かぜにあてらるる

2、痺痛 (ひつう:しびれ痛み)

3、痿 なゆる

4、傷寒并熱病 ひへにやぶらるる (しょうかんへいねつびょう)

5、中寒 ひへにあたる (ちゅうかん)

6、痎瘧 (がいぎやく:おこり )おこり

7、痢病 しぶりはら (りびょう)

8、泄瀉 くだりはら (しゃせ)

9、霍乱(かくらん)

11、傷食 しょくだたり

12、嘔吐 ゑづき   (おうと)

13、膈噎 翻胃 かく :憂思、労気より生ず。

14、咳逆 (しやくり)

15、喘促 (ぜり、すたき)

16、痰飮 (かすはき)

17、咳嗽 (しはぶき せき たぐる)

18、諸気 気の脉は沈なり

19、欝證(うつのしょう)

20、癆瘵(ろうさい) きのかた

21、吐血 并 衂血・欬血・唾血・咯血

22、下血 ちをくだす

23、虚損 よはみ

24、汗  (盗汗・自汗)

25、諸熱

26、健忘・怔仲(せいちゅう)・驚悸

27、眩暈 かしらくるめき、めくるめく めまい

28、中悪 (あしきものにあてらるる)

29、癲癇 くつち (てんかん)

30、狂乱 きちがひ

31、諸虫 もろもろのむし  寄生虫

32、積聚(しゃくじゅう) はらのかたまり

33、黄疽

34、水腫 (すいしゅ:むくみ)はれやまひ

35、脹満 かめばら〔腹満〕

36、消渇 (しょうかつ)かはきのやまひ

37、淋病 小便閉

38、溺濁 いばりにごる

39、遺溺 いばりたれ   遺尿

40、遺精 もうざうをみる

41、秘結 だいべんつうぜず

42、痔漏 いぼぢ・あなぢ

43、脱肛

44、頭痛 かしらいたむ

45、痃癖(けんぺき:肩癖)

46、手指

47、心痛 むねいたみ

48、腹痛 はらのいたみ

49、脇痛 わきいたみ

50、腰痛 (こしのいたみ)

51、痛風 つうふう

52、脚気 あしのいたみ

53、疝気 せんき 七疝の症。

54、眼目

55、耳病

56、鼻病

57、牙歯 きば・はのやまひ

58、唇の病

58の2、口の病

60、舌の病

61、咽喉 のんどのやまひ

62、外科門 瘡瘍 かさはれもの

67、癘風・癩風・大麻風 皆かつたい也

68、損傷 そこなひやぶる

69、中毒 どくにあたる

70、虫獣 むしけものにかまるる 蛇に咬れたる

71、頓死 にはかにしする

72、諸の気付

73、溺死 みづにおぼれてしぬる

74、脉絶 みやくたゆる

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75、婦人の科

76、妊婦 はらみおんな

77、産後

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78、小児の科 ちごのりやうじ

79、小児の脉法(図22)

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80、驚風 (きょう‐ふう:小児のひきつけを起こす病気の称)

81、驚癇 てんかん・くつち

82、五疳

83、癖積 かたかい

84、瘧疾 おこり 黄疽

85、吐瀉 あげくだし

86、初生雑病 はじめてうまるる

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87、神灸神針の方法

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鍼灸重宝記項目 終

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『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例 詳細

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1、

中風 かぜにあてらるる

風者百病の長たり。
其変化すること極なし。
偏枯は半身遂はず、
風痱は身に痛なく四肢収らず、
風懿は昏冒して人事を知ず、
風痺はしびれてふるふ。
みな元精虎弱にして、栄衛調護をうしなひ、
あるひは憂思をすごして、真気耗散じ、
腠理(毛穴)密ずして風邪に中(あた)る。
肝風は筋攣り、手足遂はず、汗出て風を悪む。
心風は発熱、舌強て言ず。
脾風は口ゆがみ、言渋り、肌肉不仁、心いきれ、心酔がごとし。
肺風は息づかひ苦しく、身緩り、声かれ、手足なゆる。
腎風は腰いたみ、骨節痠(ひび)れ、耳鳴、声にごる。
又、風、血脉に中(あた)れば口眼ゆがむ。
府に中れば手足かなはず、身節痠すくむ。
臓に中れば耳口鼻とどこをり、舌強り声出がたし。
気虚は右の半身かなはず、血虚は左の半身かなはず。
卒中風は卒に倒れて発るなり。
もし口開き、手撤り、眼合り、遺尿し、髪直、沫を吐き、
頭を揺かし、直視、声いびきの如、汗出て玉のごとく、面青きは死証なり。

神闕・風池・百会・曲池・翳風・風市・環跳・肩髃、皆針灸して風を踈し、気を道く。
中風には此八穴を第一にもちゆ。
又いづれの中風にても腹をよく候ひみるに腹に塊あり。
その塊りに針すべし。
発て悩むときも、この塊に刺せば必しづまる。


【針】

▲卒中風には、天府・少商・申脉・人中。
▲人事を知ずは、中衝・大敦・百会。
▲口噤には、頬車・風池・承漿・合谷。
▲不仁には、魚際・尺澤・少海・委中。

【灸】

▲百会・風池・大椎・肩井・間使・曲池・三里。
▲人事を知ずは、中衝・大敦・百会。
▲口噤て言語ずは、針の穴と同じ。
▲不仁には、風市・肘髎・中渚・太冲・跳環・三陰交。

文言解説
痠(ひび)れ:(疲労・病気で)だるい,だるくて(鈍い)痛みがある.

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

下部中風の病状には、百会・肩井に補法。曲池・三里に瀉法。三陰交・風市・絶骨に置鍼。
上記を七所の穴と云う。

左右の病症に対する処置法則:
左に中風があれば右に鍼を刺し、右に中風があれば左に鍼を刺す。

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2、

痺痛

痺はみな気血の虚なり。
栄衛しぶり、経絡通ぜざるゆへなり。

曲池・風市。しびるる処に刺て血をめぐらすべし。

▲風痺は、尺沢・陽輔。
▲痰痺は、膈兪。
▲寒痺は、曲池・委中・風市。
▲厥逆は、列缺。

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3、

痿 なゆる

湿熱あり、痰あり、血虚あり、気弱きあり、瘀血(おけつ)あり、腎虚あり。

内関・肩髃・曲池・風市・陽陵泉。

痿る所に刺て気をひき、血をうごかすべし。

中瀆・環跳に針して、停て気を待つこと二時。

三里・肺兪に灸すべし。

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4、

傷寒并熱病 ひへにやぶらるる

冬月、風寒に傷られ、寒極て熱となり、すなわち冬の中に病を、正傷寒という。
寒毒、内に蔵れて、春に至て発るを温病といひ、夏に至て発るを熱病と云。
汗なきを傷寒とし、汗あるを傷風とす。

▲初め一二日。頭痛、悪かん発熱、身いたむ者は、病、足太陽の經にあり。発散すべし。
▲二三日。目疼み、鼻乾て、眠ることを得ざるは、足陽明の經にあり。解肌すべし。 これまでを病表にありとす。汗すべし。
▲三四日。耳聾、脇いたみ、嘔して、口苦、寒熱往来(悪かんと発熱とかはるがはるおこる)するは、病、足少陽の經にあり。
これを半表半裏にありといふ。和解すべし。汗、吐、下すことをいむ。
▲五六日。脉沈、咽乾き、腹みち、自利は、足太陰の經にあり。是より裏に入とす。
▲六七日。口噤み、舌乾き、譫語は、足少陰經にあり。 七八日。煩満、嚢ちぢまり、脉沈濇は、足厥陰にあり。みな下すべし。
▲汗出ず悪寒せば、玉枕・大杼・肝兪・陶道。
▲身熱、悪かんせば、後谿。
▲身熱、汗出、足冷は、大都。
▲身熱、づつう、食下らずは、三焦兪。
▲身熱し、頭痛、汗出ずは、曲泉にとる。
▲熱進退、づつうせば、神道・関元・懸顱。
▲背悪寒し、口中和するは、関元に灸す。
▲風を悪まば、まず風池・風府に針して、桂枝湯・葛根湯をもちゆべし。
▲汗出ずは、合谷・後谿・陽池・厲兊・解谿・風池。
▲身熱し、喘は、三間。
▲餘熱盡ずは、曲池。
▲陽明の病、下血、譫言、頭汗は、期門に刺。
▲太陽少陽の并病は、肺兪・肝兪。頭痛は、大椎。冒悶して結胸の如なるは、大椎・肺兪・肝兪に刺すべし。
▲煩満、汗いでずは、風池・命門に取る。
▲汗出、寒熱せば、五處・攅竹・上脘を取る。
▲煩心、よく嘔せば、巨関・商丘にとる。
▲吐利、手中熱、脉至ずは、少陰太谿に灸す。
▲嘔吐は半表半裏にあり、厥陰に灸(五十さう)。
▲欬逆せば、期門に刺すべし。
▲胸脇満、たわことを言には、期門に刺す。
▲小腹満、腹痛ば、委中・奪命の穴に刺す。
▲腹痛み、冷結久して、気、心に冲て死せば、委中に刺すべし。
▲陰証、小便通ぜず、陰嚢縮り入、小腹痛、中死せんとする者は、石門に灸すべし。
▲六七日。手足冷、煩躁せば、厥陰兪に灸す。
▲少陰、膿血を下すは、少陰太谿に灸す。
▲七八日。熱さめ、胸脇満、譫言は、期門に刺して、甘草芍藥湯。 もし愈ずは、隠白に刺。
▲結胸は心満堅く痛む、期門・肺兪に刺。
▲熱病、汗出ずは、商陽・合谷・陽谷・俠谿・厲兊・労宮・腕骨に刺すべし。
▲同、熱度なく、止ずは、陥谷に刺すべし。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

傷寒の病症に対する基本処置法則:発汗させる治療と大便を出す治療法が有効である。

傷寒の治療穴は、 上脘・中脘・三里(手足共)に補法。 肺兪は浅刺鍼にて処置。

傷寒の邪気を発散させるには、章門穴に1日回刺鍼すると効果があがる。

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5、

中寒 ひへにあたる

寒は天地殺厲の気たり。

虚する者、これに中らるる則ば、昏冒、口噤み、
四肢僵直し(手足が硬直すること)、攣急いたみ、悪寒、
あるひは発熱、面赤、汗あり。
あるひは熱なく、頭痛なく、手足冷。

あるひは腹いたみ、吐瀉し、涎沫を吐。
あるひは戦慄して、面疼み、衣を引倦み、臥して、脉遅なり。

▲気海・関元に針灸し、或は腎兪・肝兪に灸す。

▲昏みて人を知ずは、神闕に灸。

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6、

痎瘧 (がいぎやく:おこり )

夏暑に感じ即病ず、秋又湿風に傷られておこる。

初は、悪寒発熱、づつうして、感冒のことし。

但、脉弦、手ふるひ、発に時分あるを異なりとす。

▲合谷・曲池・公孫・承満・大椎の頭に針二三本して、その針後に灸二十壮して奇効あり。又三椎(肺兪)の上もよし。

又いづれの瘧にも、梁門に針して奇効あり。

久しき瘧には、承満・粱門のあたりに、瘧毋と云て、塊りあるぞ。  是 を針にて刺、くだきて効あり。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

痎瘧の寒症状には、中脘・章門穴を使用する。

先に刺鍼し、後にお灸すると効果の上がる経穴は、脾兪・肝兪・大椎穴である。

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7、

痢病 しぶりはら

赤白ともに湿熱と作て治すべし。古へに腸?といひ、滞下といふは、みな今の痢病なり。
脉滑沈小はよし、弦急は死す。
もつはら血を下し、屋の雨漏のごとく、魚の脳髄の如なるは、皆死。

▲脾兪・関元・腎兪・復溜・長強・大腸兪・小腸兪・中脘・足三里・大谿に灸すべし。

おしなべて、気海・水分・天枢に針して奇妙なり。

いづれも五分づつ、いくたびも刺なり。ふかく刺べからず。
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杉山三部書、 病証の治療穴から。

痢病〔しぶり腹〕の病状には、

白色の下痢便には、鳩尾・気海・関元・三里・下脘穴を使用する。

腹痛を伴う下痢便には、上脘穴を使用する。

脇腹が痛む下痢便には、章門穴を使用する。

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8、

泄瀉(せ しゃ) くだりはら

胃泄は、胃虚して尅化せず、黄色にて食物とろけず。
脾泄は、脾虚して五蔵に分散せざるゆへに、腹脹り、嘔逆す。
大腸泄は、大腸に寒邪あるにより、食後に腸いたむ。
小腸泄は、小腸いたみ、膿血をまじへくだして、小便しげし。
大瘕泄(だいかしゃ)は、裏急にして、しぶりて通じがたし、陰茎の中いたむ。五泄の證によりて治す。

【針】関元・復溜・長強・腹哀・天枢。

【灸】三里・気舎・中脘・大腸兪・小腸兪・脾兪・腎兪。おのおのえらひもちゆべし。
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杉山三部書、 病証の治療穴から。

8、泄瀉 腹の下る事

泄瀉の病状には、関元・大腸兪・気海・章門穴を使用する。

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9、

霍乱(かくらん

霍乱は、外暑熱に感じ、内飲食生冷に傷られ、
たちまち心腹疼み、吐瀉、発熱、悪かん、頭痛、眩暈、煩燥し、
手足ひへ、脉沈にして、死せんとす。転筋、腹に入るものは死す。
又、吐せず、瀉せず、悶乱するを乾霍乱という、治しがたし。

▲転筋は、卒に吐瀉して、津液かはき、脉とぢ、筋つづまり攣り、 はなはだしきは嚢縮り、舌巻ときは治しかたし。

男は手にて其陰嚢を引き、女は両の乳を引て、中ヘ一処に寄すべし。これ妙法なり。

▲腹脹、急にいたむときは、針をまづ幽門に刺べし。

此穴に刺ば、かならず吐逆するぞ。 しかれども痛増て、目など見つむることあり。

苦しからず、さて気海・天枢に針すべし。

▲霍乱には、陰陵泉・支溝・尺澤・承山。

▲腹痛には、委中。

▲吐瀉には三里・関冲。

▲胸満悶、吐せずは、幽門に針すべし。
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杉山三部書、 病証の治療穴から。

霍乱(かくらん)の病状には、

【灸】中脘・巨闕・章門・神闕穴に施灸。

治療穴として、下脘・鳩尾・上脘穴を使用する。

【刺絡】委中穴に刺絡する。

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11、

傷食 しょくだたり

飲食停滞するときは、脾胃傷れて、腹痛み、吐瀉をなし、或は悪寒、発熱、づつうして、傷寒のごとし。
外傷は、左の脉盛に、手の背熱し、鼻塞り、頭の角いたみ、身疼む。
内傷は、右の脉盛に、手中熱し、額の正中いたみ、腹いたみ、不食す。

▲脾兪・三里に灸し。

▲梁門・天枢・通谷・中脘に針すべし。

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12、

嘔吐 ゑづき

胃虚して吐する者あり、胃寒して吐する者あり、暑に犯さるる者あり、
飲食に傷られ、気結れて、痰聚り、みなよく人をして嘔吐をなす。

【針】気海・風池・大淵・三里。

【灸】胃兪・三里。
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嘔吐  杉山三部書 東洋はり医学会篇
嘔吐(おうと) からえずき の 事
一、
胃の腑 虚したる人 、寒気暑気に冒(おか)されされ 、食に傷(やぶ)られ 、或いは気結(むすぼ)れ 、痰(たん)集りて嘔吐するなり 。
治療穴:上脘 ・ 中脘(ちゅうかん)・鳩尾 ・巨闕(こけつ)・天突 ・三の兪(肺兪)穴 。
〔解説〕
嘔吐は吐逆なり。 中焦脾胃の病なり。 人身は胃を以って主となす、胃の気が虚せば(脾胃が不健康状態になっている人 ) 食せないのみか外邪に冒され、飲食物により、或いは内因により(七情の気の結(むすぼ)れ)また、痰が集まったりして嘔吐を起こす。
◎ 嘔:えずき  (ゲェッ、ゲェッと云う声 )有りて、吐く物有り。
◎ 吐:えずきはなく、吐く物有り。
◎ からえずき: えずき有りて、吐く物無し。
【原因で分けると】
1、寒嘔:寒邪によりて嘔吐する。 詠は沈、緊。四肢厥冷(ししけつれい)し、飲食下らず。
2、熱嘔:暑邪により嘔吐する。  詠は数、弦。咽渇(のどかわ)く、胃熱の証。
3、食嘔:過食、或いは悪き物を食し嘔吐す。
4、気嘔:七情の気の欝滞(うつたい:汚ない物を見て吐く等 〉・精神的嘔吐。
5、痰嘔:痰が胃の入口に集まりて嘔吐す。
6、涎嘔:上の五つに血が混じり、また唾(つば)涎(よだれ)に血の混じるを云う。これは七情の内、特に憂思過度にして、経絡を損傷し出血する。
この他、妊娠悪阻、脳症、脚気、薬物中毒、車酒酔等あり。
脉: 実大は治し難く、虚細は治し易し。
治療:大概集では本文の通りであるが、
鍼灸重宝記には、
【灸】は脾兪・腎兪・関元・復溜 ・長強 ・大腸兪 ・小腸兪 ・中脘 ・足の三里・太谿。
【針】は気海・水分・天枢。
証に従い選ぶべしとある。

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13、

膈噎(かくいつ) 翻胃(ほんい) かく

憂思、労気より生ず。
噎(いつ)とは、食飲くだらずして噎る也。
膈(かく)とは、喉のおくに何やらさはり、吐ども出ず、呑ども下らず。
痰欝によつて気欝す。食をそのまま吐逆す。
翻胃は、朝食する物を夕に吐し、夕に食して晨に吐するは、病ふかくして治せず。

▲天突・石関・三里・胃兪・胃脘・鬲兪・水分・気海・臆譆・胃倉。

膈噎や翻胃は、七情が主な原因となって五臓の火を動かし津液を消耗させ、そのため痰が非常に多くなって脾胃を弱らせ、
食物が消化しにくくなったためにおこる。

先ず膈や噎となり、悪化すると翻胃にまでいたる。

膈とは朝食べたものを夕方になると吐き、夕方に食べたものは朝になると吐いてしまう病気のことであり、

噎とは食べたものが胃に収まることなくすぐ吐き出す病気である。

膈噎を病むものの便が羊や兎の糞のようにコロコロであれば死ぬ危険がある。

中脘は膈に用い、三里は噎に用いる。天突は膈にも噎にも用いる。太白や肺兪も用いるとよい。

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鍼灸重宝記  小野文恵 解説より
膈(かく)とは食物が口より胸膈を通るとき胸部に渋り滞りて胃まで容るることを得ずして、胸膈より吐き返すのである。
これに思膈、憂膈、喜膈、怒膈、悲膈の五種ありと云われる。
噎(いつ)とは食飲を呑み込まんとすれば、むせてのみこまれぬと云う、これは火邪が炎上して胃脘を乾すによると云う。
憂思気労食の各噎の五種ありと。
本文にては病因は憂思労気の内傷、その症は上に記したると意である。
痰と気の鬱とも云う。
翻胃(ほんい)は一応食せるものを半日にして吐すとある 。
他書によれば翻胃とは腎中冷へ極まるとき、食飲胃に入るとも、消化吸収を行うことを得ず、然りとて食飲をそのまま胃中に留め置くことも出来ないので、食せしものをそのまま吐き出すので翻胃と名づく云うのである。
而してこれは気及び痰の鬱結により始ると。
噎、膈、翻胃と云ふ順序的の経過である故に翻胃は治し難しとある。
黄帝内経には上膈・下膈と呼ぶとある。

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翻胃(ほんい) 膈の事   杉山三部書 東洋はり医学会篇
夫れ(それ:それぞれ)膈噎(かくいつ)、翻胃(ほんい)の病は 、七情に冒(おか)され 、 五臓の火 、動(うご)ひて身の液(うるお)ひを耗(へら)し 、痰熾(たん さかん)にして脾胃衰え、食を腐し運ぶことならずして腐と成り 、 噎となり 、 翻胃となる 。
膈は朝(あした)に喰(くい)たる物を夕(ゆう)べに吐き、夕べに喰(くい)たる物を朝に吐く。
噎は喉(のど)より返るなり 、羊の糞の如くなるを為(する)ものは死す。
中脘(ちゅうかん)穴: 吐くによし 。
三里穴 :噎食(いつしょく)降(くだ)らざるによ し 。
天突穴: 膈噎(かくいつ)よ し 。
太白・肺兪。
〔解説〕
膈、噎、翻胃の三者共に吐く事であり、精神的圧迫、動揺により相火が燃え過ぎ(実する) 体内の水分が乾き、痰(津液が濃くなり結ぼれ鬱滞したもの )が盛んになり脾胃塞(ふさ)がり、為に脾胃が虚冷し(衰え)食物を消化し、下へ運ぶ事、が出来なくなり、噎をなし、膈となり、翻胃を起こすものである。
黄帝内経・素問・霊枢(こうていだいけい・そもん・れいすう)では上膈(噎、膈)下膈(翻胃)といっている。
1、噎(いつ):軽い症状で、咽でむせて吐く(嚥下困難)優噎、思噎、気噎、労噎、食噎の五つがある。
2、膈(かく):中等度の症状で、食後三、四時間から半日位で吐く (七情の気の傷れ、精神的動揺で食物が胃にお治まらない) 、努膈、憂膈、悲膈、驚膈、恐膈の五つがある。羊の糞の様な物を吐く時は死す。
3、翻胃(ほんい):重い症状で、食後半日から一、二日間位で吐く、食物が胃に入り、しばらくして吐く。【 胃が翻(ひるが)える。】
治療:本文中の、中脘穴:吐くによし、は 膈(かく)に用 いてよし。
鍼灸重宝記』針灸諸病の治例では、天突・石関・三里・胃兪・胃脘・膈(かく)鬲兪・水分・気海・臆譆・胃倉。なり。
 

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14、

咳逆 (しやくり)

しゃっくりは、気逆上衝して声をなす也。
又、胃火上衝して、逆す。
口にしたがひ膈より起るは、治し易し。
臍下より上るは、陰火上衝く、治しがたし。

▲期門に針し。脾兪・中脘・乳根に灸す。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

噦逆〔しゃっくり〕 の病状には、上脘・肩中兪・梁丘穴を使用する。

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15、

喘促 (ぜり、すたき)

肺虚寒の喘あり、
肺實熱の喘あり、
水気肺に乗じて喘し、
気滞り肺脹て喘し、
気急の喘、
胃虚の喘、陰虚、気虚、痰喘、其病を受ること同からず。

【灸】中府・雲門・天府・華蓋・肺兪。

【針】中脘・期門・章門・肺兪。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

喘息の病状には、天突・合谷・三里・章門・巨闕・上脘・中脘穴を使用する。

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16、

痰飮 (かすはき)

夫、痰は湿に属す。
津液の化する所なり。
痰の患たること、喘をなし、咳をなし、嘔をなし、暈をなし、
あるひは嘈雑(胸焼けのこと。)、怔仲(せいちゅう)、驚怖し、寒熱し、
痛腫れ、痞塞壅、盛四肢不仁し、口眼動き、眉稜・耳輪いたみ・かゆく、膈脇の間に聲あり。
あるひは背心一点氷のごとく冷へ、肩項いたみ、咽にねばり付て吐ども出ず、呑ども下らず。
みな胃虚して肺を摂することあたはず。
あるひは四気七傷に犯され、気塞り、痰聚りて然らしむ。

▲不容・承満・幽門・通谷・風門・膈兪・肝兪・中瀆(ちゅうとく)・環跳・肺兪・三里。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

痰飮の病状には、天突・尺沢・三里・合谷・上脘・肺兪・膈兪穴を使用する。

中脘・水分に補法。

赤い痰には天突・巨闕穴を使用する。
黄い痰には天突・下脘穴を使用する。
白い痰には肺兪・巨闕穴を使用する。
黒い痰には肺兪・腎兪穴を使用する。

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17、

咳嗽 (しはぶき せき たぐる)

咳は聲ありて痰なし、肺気やぶれて涼しからず。
嗽は痰ありて声なし、脾湿その痰を動するゆへなり。
あるひは風寒湿熱の邪に感じ、あるひは陰虚火動によつて労咳をなし、水うかれて痰となり、みなよく咳嗽せしむ。

肺兪・肩井・少商・然谷・肝兪・期門・行間・廉泉に灸し、すべて不容・梁門に針す。

▲肺咳は手大淵。

▲脾咳は足太白。

▲腎咳は足太谿。

▲多く眠るには三里。

▲面赤く熱咳には支溝。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

咳嗽の治療穴として、 天突・肺兪・下脘・上脘・不容・章門に補法。

咳嗽に頭痛がある場合には、百会穴を使用する。

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18、

諸気 気の脉は沈なり

經に曰、百病は気より生ず。
喜で心を傷るときは、其気散じ、腎気乗ず。
怒て肝を傷るときは、其気のぼり、肺気乗ず。
憂て肺を傷るときは、その気聚り、心気乗ず。
思て脾を傷るときは、其気結れ、肝気乗ず。
恐て腎を傷るときは、其気怯く、脾気乗ず。
暑き則は気泄、寒ずるときは気おさまる。
もし、恬憺虚無、精神内に守れば、病何によってか生せむ。

【灸】肺兪・神堂・膈兪・肝兪・三里。

【針】承満・梁門に刺すべし。

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19、

欝證(うつのしょう)

気血通和すれば百病生ぜず。
一つも結聚するときは六欝となる。
気欝は腹脇脹満、刺すごとく痛みて舒ず(じょず:続く)、脉沈也。
血欝は大小便紅に、紫血を吐き、いたみ處を移(かえ)ず、脉数墻なり。
食鬱は噯気(あいき:あくび)、呑酸、胸腹飽悶いたみ、不食、右脉盛なり。
痰欝は喘満気急、痰嗽、胸脇いたみ、脉滑なり。
熱欝は小便赤く渋り、五心熱し、口苦く、舌乾き、脉数なり。
湿鬱は身節走いたみ、陰雨に遇へば発り、脉濡なり。

▲膏肓・神道・肝兪・不容・梁門。

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20、

癆瘵(ろうさい) きのかた

癆瘵の證(証)、ただ一端にあらす。
気體虚弱し、心腎を労傷してこれを得たり。
心は血を主り、
腎は精を主る。
精血かはき、相火たかぶりて、
咳嗽、吐血、遺精、盗汗、悪かん、発熱、五心煩熱、食少く、嬴(えい)れ痩、日脯にはなはだし。
此證、労虫ありて骨をくらひ、相傳て親類を滅すを傳尸と云。

▲梁門をめぐりて幾度も刺す。

▲患門・四花・膏肓・章門・気海・三里に灸。

———————
杉山三部書、 病証の治療穴から。

癆瘵(ろうさい)の病状には、

【針】百会・上脘・下脘、膏肓は骨の下に刺す。

【灸】四花穴に施灸。

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参考文1.
杉山三部書 東洋はり医学会篇 P30:

 癆瘵(ろうさい) 身弱(みよわ)き人

心腎を労し傷(やぶ)られて発(おこ)、或は風寒暑湿の気に冒(おか)され、
瘧(ぎゃく)を疾(や)み咳嗽を出し、寒氣内に入りて不養生をし、
房労を淫(よご)し、食に傷られて癆瘵(ロウサイ)となる。
其の症は身痩せ、髪抜け、盗汗(ねあせ)をかき、夢遣(もうぞう)を見、小便に自き物をし、腹の内に塊あり。
【針】百会・上脘・下脘、膏肓は骨の下に刺す。
【灸】四花穴に施灸。百会・上脘・下脘・膏肓・
〔解説〕
癆は疲労(心腎の虚)で労損ともいう、瘵は癆の甚しきもので諸臓の虚をいう。
これの末期的状態を陰虚火動(虚火が燃える)という。
過房(腎を傷る)、過労(心を傷る)、或は病後、産後等の気体の弱りたる時に四季の外邪に冒され、
瘧(ぎゃく)をなし、咳嗽し、寒邪が裏に入りて起こる。
症状は肌肉痩せ(精血の不足)、皮毛、髪が乾枯し(相火が旺じて津液が不足する)、寒熱し、盗汗、
夢精、遺精(下虚の症状)、自濁(小便が白く濁る)し、腹中に塊りが出来る。
或いは項(うなじ)の傍らに小結核(結ばれ、るいれき)が出来て、集ったり散ったりして咳嗽、痰涎(喀痰)、ついには膿血を吐く事がある。
癆瘵(ロウサイ)が甚しくなると腹中に虫(癆虫)が生じて、生まれ変りして六代も伝わり、近所、親類縁者の人達に伝わり、
一家一間を滅亡させてしまう。これを伝屍(でんし)という。
◎ 五 屍
一、皮屍:邪気が皮膚の間に走りて、臓腑を穿(うが)ち、卒然に生じ、心腹痛み、喘、張満、逆気、心脇の痛みあり。
一、頓屍(とんし):肌肉、血詠の間に病が滞頓(ていとん)して、己(い)えては起こり、又起こりては己え根治し難い。
心腹脹満し、刺痛(刺す如く甚しく痛む)、喘息し、両足逆す。
一、寒屍:内には虫が、外から寒気に遭い、相引いて体が虚した時に起こり易く、心腹脹満し刺痛する。
一、想屍:他人が病んで死んだ時、その病を恐れにくしみて、自分もその病になる。心腹痛、脹満、息気急迫(呼吸が急迫する)する。
一、虫屍:癆瘵がひどくなり、虫が傍らの人に伝わり、ついには家門をも滅亡させる。
◎ 癆瘵が五臓に伝変した時の症状
一、肝に伝わる時は面白く(肺に兪される)、目枯れ、口苦(にが)く、自汗し、胸いきれ、驚き易くなりて、肝胆に虚熱あり。
一、心に伝わる時は面黒ぐ、(腎に兪される)、鼻乾き、身熱し、忘れ易くなる(神気の不足)秘結(便秘)或いは泄(下痢)す。
一、脾に伝わる時は面青く、舌強ばり、咽(のど)塞がる、喀痰多く出す。肌肉痩せ、飲食無味となる。
一、肺に伝わる時は面赤く、鼻白く、喀痰に血が交じる、一咳嗽、皮毛枯れる。
一、腎に伝わる時は面黄に、耳枯れ、胸痛み、 痛む、白濁、遺溺をなす。
◎ 蒸(じょう)各部にある時の症状
熱(虚熱)の為、全身が蒸(むさ)れるという考え方から、蒸(じょう)という言葉があり、
その蒸が各部にある時は、大略次の如き症状を呈するものである。
一、蒸が心にある時は、舌黒く。
一、小腸にある時は腸内雷鳴(らいめい)し、秘、泄あり(水殻分離が不能)。
一、肝にある時は目眩(くらめ)き、怒り時なし(怒りっぽい)。
一、胆にある時は耳襲(おそ)い、口苦く、腋下痛む。
一、腎にある時は耳輸(ミミワ)焦枯(こがれか)れ、腰部痛む。
右腎にある時は精神落ち着かず、精を泄(も)らし、その中に白い粘液の固い様なものが混じる。
一、肺にある時は音声がゼーゼー鳴って弱くなり喀血す。
一、大腸にある時は鼻乾く。
一、脾にある時は唇(くちびる)乾く。
一、胃にある時は鼻乾き、腹脹し、寝苦しい。
一、膀胱にある時は小便赤黄色になり、濁り濃くなる。
一、三焦にある時は寒熱往来、膻中(だんちゅう)・中脘(ちゅうかん)附近に苦しみあり。
一、膈(かく:横隔膜)にある時は胸塞がり苦しくむせる、身体こわばる。
一、宗筋(そうきん:下腹の筋)にある時は小腹痛み、陰器強くなる。
一、肛門にある時は秘結(便秘)し、裏急後重(りきゅうこうじゅう)す。
一、脳にある時は目眩き、目やに、涎(よだれ)を出す。
一、皮にある時は皮膚乾き、鱗立ち、毛折れて髪枯れる。
一、骨にある時は歯黒く枯れ、月行柱が痛む。
一、髄にある時は肩背だるく、鮨の骨が痛む。
一、筋にある時は曰くらみ、脇痛む。
一、脉にある時は心痛、体熱す。
一、肉にある時は熱甚しく、四肢ビクビクと動く。
一、血にある時は毛髪枯れ、鼻血出る時には血尿あり。
取穴は本文の通りであるが(本文中骨の下に刺しとは、肩胛骨を開く様にしてその内側に刺す事なり)
鍼灸重宝記には梁門を巡り幾度も刺す。
患門・四花・膏肓・章門・気海・三里に灸とある。。
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参考
胛:かいがね【×胛】 肩甲骨(けんこうこつ)。貝殻骨。
裏急後重(りきゅうこうじゅう)
裏急とは「お尻」のことです。後重とは「後ろに重くなる」のことです。
つまり、大便が出そうなのでトイレに入りますが、大便は出ません。
が・・トイレを出ると、また、便意があります。この繰り返しの症状です。
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『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例
http://yukkurido.jp/keiro/e1/e4/t7/#20
癆瘵(ろうさい) きのかた
癆瘵の證(証)、ただ一端にあらす。
気體虚弱し、心腎を労傷してこれを得たり。
心は血を主り、
腎は精を主る。
精血かはき、相火たかぶりて、
咳嗽、吐血、遺精、盗汗、悪かん、発熱、五心煩熱、食少く、嬴(えい)れ痩、日脯にはなはだし。
此證、労虫ありて骨をくらひ、相傳て親類を滅すを傳尸と云。
▲梁門をめぐりて幾度も刺す。
▲患門・四花・膏肓・章門・気海・三里に灸。
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杉山三部書、 病証の治療穴から。
癆瘵(ろうさい)の病状には、
【針】百会・上脘・下脘、膏肓は骨の下に刺す。
【灸】四花穴に施灸。
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癆瘵(ろうさい) 聞き取りメモ

東京鍼本部研修会: 平成28年(2016年)度  5月8日(第2日曜日)
経絡治療特別講義:(22)「解説 杉山流三部書の臨床考察」
 kk先生講義より。
杉山三部書東洋はり医学会篇P30: 癆瘵(ろうさい) 身弱(みよわ)き人
鍼灸重宝記にも癆瘵の記載があるが、三部書とは使用する経穴が違う。
違いを比較し、何故なのかを考えると面白い。
「房労を淫し(過ごし)、食に傷られて癆瘵となる」:
・癆瘵の癆は疲労。
・現代生活での「房」は変わってきている。生活の変化に合わせた考えを持たなければならない。
車があることで歩くことは少なくなり、空調があるため生活空間の気候は違い、食物にしても添加物などなど、昔とは違うことがたくさんある。
「症状は肌肉痩せ(精血の不足)、皮毛、髪が乾枯し(相火が旺じて津液が不足する)、
寒熱し、盗汗、夢精、遺精(下虚の症状)、自濁(小便が白く濁る) し、腹中に塊りが出来る。」:
・「塊り」は癪。梁門辺りに出る。
・経絡治療では津液を考えていない。血や津液を考えることも大事である。
「或いは項(うなじ)の傍らに小結核(結ばれ、るいれき)が出来て、集ったり散ったりして咳嗽、痰涎(喀痰)、ついには膿血を吐く事がある。」:
・「るいれき」とは、結核性のリンパの腫れ。膈兪・肝兪に反応が出る。
「五屍」:五屍とは、気を失い呼吸が止まっている時。現代、鍼灸師が診ることはほとんどない。
頭などがしびれるといった症状は、すぐに救急車を呼ぶのが一番。
「癆瘵が五臓に伝変した時の症状」:
・相克的に症状が出る。
「一、肝に伝わる時は面白く(肺に兪される)、目枯れ、口苦(にが)く、自汗 し、胸いきれ、驚き易くなりて、肝胆に虚熱あり。」:
・肝肺。
「蒸(じょう)各部にある時の症状」:血・津液の不足。熱により、発汗する。
・虚熱を、東洋はりでは津液不足と考えていないが、肝腎の津液不足で虚熱が出 ると考えられる。
「一、膈(かく:横隔膜)にある時は胸塞がり苦しくむせる、身体こわばる。」:
膈とは脾と横隔膜の間とも言われている。
取穴:
「梁門をめぐりて幾度も刺す。患門・四花・膏肓・章門・気海・三里に灸。」:
・章門は体全体が弱っている時に使う。補法、または深瀉浅補。
「【針】百会・上脘・下脘、膏肓は骨の下に刺す。【灸】四花穴に施灸。」:
・百会はステンの0番から2番を切皮で数分おき、血が出ると楽になる場合がある。
血が変動する。深く刺す必要はない。
・本治法;銀の1番〜ステンの5番。福島先生は7番。
     ていしんは7割の人に使っているが、割合は自分の力量に合わせて。
・標治法;ステンの1番〜10番。四花や関門は5番を使っている。
     ていしんだけの人は2割くらい。
左胆兪から肝兪、右肝兪から脾兪←この四ヶ所で皮膚が動くとメモしてるけど、何のことやら分かりませぬ。
兪穴に反応がないと危ない。
臨床でどう使うか?
・気血を潤さないと良くならない!
・血は関門・四花・膈兪・肝兪・脾兪。中の血を取る。
・脾の診所が極端に冷たいと実と見ている。
・膝下で冷たい方を適応側とする。
・額、手、足の温度を見る。額の方が暖かければ逆気→合水穴を使う。
・膝下の温度が逆転、すなわち膝よりも足の方が暖かいのは治りにくい。
精神的 な疾患だったりする。表面だけ施術すると表面が狂ってくる。
・カレボネは今風に考えると、発泡スチロール。ゴム粘土は硬めのグミ。
若い世代にはそう説明すると理解されやすいと思う。
・上前腸骨棘の下あたり、指がスポッと入るところに鍼することで全体の気血の流れが良くなる。
腸骨稜の真ん中や、大転子の近く。寸3の3番から5番で深瀉浅補。
以上。
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21、

吐血 并 衂血(はなじ)・欬血・唾血・咯血

陽盛にして陰虚するゆへに、血下に行ず、炎上して口鼻より出るなり。
或は、一椀ばかり吐て、別にわづらひなきは、腹中の宛血あるおり、ふし熱の傷たるなり。くるしからず。
吐血は胃より出ず。全く血を吐く。先、痰を吐て、後に血を吐は積熱なり。
先、血を吐て、後、痰をはくは陰虚なり。治しがたし。

衂血、欬血は肺より出。

唾血、咯血は腎より出ずる。

▲曲澤・神門・魚際。
▲嘔血は大淵・長強。
▲吐血は前谷・上脘・丹田・隠白・脾兪・肝兪。
▲衂血(はなじ:鼻血)は譩譆(いき)・二間・三間・風府・委中・合谷。
▲欬血は肝兪・大淵。
▲唾血は肝兪。

———————
杉山三部書、 病証の治療穴から。

吐血・鼻血の病状には、肺兪・上脘・天突・巨闕・鳩尾穴を使用する。

鼻血の病状には、少海・郄門穴を使用する。

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22、

下血 ちをくだす

風・寒・湿・熱、臓腑に入て腸胃をやぶり、血を大腸に引て、下血をなす。

▲腎兪・気海・陽関・関元・三陰交・絶骨。

———————
杉山三部書、 病証と治療穴から。

下血

大腸に風があれば、必ず大便より先に血下る、近血(きんけつ)と云う。

臓毒による下血は、必ず大便より後に血下る、遠血(えんけつ)と云う。

気海・脾兪穴に補法。

百会・腎兪・関元も妙なり。

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23

虚損 よはみ

几、元気素より弱く、
或は起居宜きを失ひ、
あるひは飲食労倦し、
心を用こと太過によつて、真気を損じ、形體やせ、
眼かすみ、歯動き、髪落、耳鳴とをく、
腰膝力なく、小便しげく、汗多出、あるひは遺精白濁、
内熱、脯熱、口乾き、咽渇き、心神寧からず、寤(目覚め)て寐(眠)られず、
小便短少餘瀝、肢體寒をおそれ、
鼻気急促、
眩暈、
健忘、四肢倦怠等の証を顕す。

【灸】肺兪・肝兪・脾兪・腎兪・三里・膏肓。

【針】梁門と中脘といくたびも刺すべし。

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24、

汗    (盗汗・自汗)

発散によらずして自ら出るを自汗といふ、陽虚なり。

睡中におぼへず汗出るを盗汗といふ、陰虚なり。

▲自汗には脾兪・肺兪に灸すべし。

▲盗汗には腎兪に灸すべし。

▲合谷・曲池・湧泉・然谷に刺すべし。

———————
杉山三部書、 病証の治療穴から。

自汗の病状には、腎兪・肝兪・章門穴を使用する。

盗汗の病状には、角孫・中脘穴を使用する。

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25、

諸熱

五蔵の熱證。

肺熱すれば、皮毛熱し、喘咳寒熱す。

心熱すれば、脉熱し、煩熱、心痛し、手の中熱す。

脾熱すれば、肌肉熱し、夜はなはだしく、怠惰して、四肢収ず。

肝熱は、筋熱し、寅卯の刻はなはだし、脉弦にして、多く怒り、手足熱して、筋なゆる。

腎熱すれば、骨髄熱し、骨の中を虫くらふ、起て居られず。

▲ 諸經の熱證(証)。

面熱するは足陽明(胃経)。

口熱し、舌乾くは足少陰(腎経)。

耳の前熱するは手太陽(小腸経)。

掌熱するは手三陰(厥陰心包経)。

足の下熱し、いたむは足少陰(腎経)。

身熱し、肌いたむは手少陰(心経)。

洒浙として寒熱せば手太陰(肺経)。

中熱し、喘するは足少陰(腎経)。

身前熱するは足陽明(胃経)。

一身熱し、狂乱し、譫言は足陽明(胃経)。

肩背・足の小指の外熱するは足太陽(膀胱経)。

肩の上熱するは手太陽(小腸経)也。


晝熱(ちゅうねつ:中心)するは、熱、陽分にあり。
夜発るは、熱、陰分にあり。
晝夜同しく熱するは、熱、血室に入り、重陽無陰なり。
陰をおぎなひ陽を瀉すべし。

▲梁門・承満・天枢・気海、針いくたびも刺てよし。又、尺澤・委中より血をとる。

・・・・

参考資料:十二経絡流注順番

①手の太陰肺経・②手の陽明大腸経 ③足の陽明胃経 ④足の太陰脾経 ⑤手の少陰心経・
⑥手の太陽小腸経 ⑦足の太陽膀胱経 ⑧足の少陰腎経 ⑨手の厥陰心包経・⑩手の少陽三焦経
⑪足の少陽胆経 ⑫足の厥陰肝経

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26、

健忘・怔仲(せいちゅう)・驚悸

精神短少なる者、心をもちゆることを過し、恍惚として、多く事を忘るるを健忘といふ。
怔仲(せいちゅう)は心中惕々として跳動す。
驚悸は驚怖して寧からず、人の捕んとするがごとし。
みな心脾の虚損なり。
或は、痰、心竅に迷て事をわするる者あり。

【灸】膈兪・肝兪・肺兪・脾兪・腎兪。

【針】神門・大陵・巨闕・上脘・三里。

寧[音]ネイ:安らかに落ち着いている。

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27、

眩暈 (めまい) かしらくるめき、めくるめく

めまい

諸(ものもろ)の眩暈(めまい)はみな肝に属す。
風邪上り攻、痰雍りて眩暈をなし、あるひは気虚失血、あるひは陰虚火動、みなよく此証をなす。
風眩は脉浮にして汗あり。
痰は脉弦にして滑なり。

【針】上星・風池・天柱・臨泣・風府・陽谷・中渚・梁門。

【灸】上星・顖会(しんえ)・前頂・百会・風門・厥陰。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

眩暈〔めまい〕の病状には、百会・承山・足三里・人中・章門穴を使用する。

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28、

中悪 (あしきものにあてらるる)

中悪とは人の精神衰へ弱して、鬼邪の気、卒に中るゆへなり。
其かたち、卒然として胸腹刺ごとく痛み、悶乱して死す。
あるひは吐血するもあり。

先、▲幽門・百会・関元・気海に灸し、安息香を豆粒ほど火に入、煙を呑すべし。

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29、

癲癇 くつち  (てんかん)

癲癇は元、母の胎内に在て、驚を受く。
五種あつて、五蔵に応ずといへども、心の一蔵に帰す。
驚ときは、神舎を守らず。
舎、空き則ば、痰涎、心竅に迷ひ、ふさぎ、たましゐ出入せざるによりて、卒に倒臥て、
手足びくめかし、口眼引つり、あるひは、さけびよばはり、沫を吐く。
暫にしてよみがへる。

【針】大椎・水溝・百会・神門・金門・巨闕・崑崙・筋縮・湧泉。

【灸】百会・鳩尾・上脘・陽蹻(ひるおこる)・陰蹻(よるおこる)に。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

癲癇の病状には、鳩尾・人中・間使・肝兪・上脘・天突穴を使用する。

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30、

狂乱 きちがひ

狂はくるひ、みだれて、正く定ならざる也。

あるひは痰火實盛、あるひは心血不足にして、憂驚によつて志をうしなひ、此証をなす。

喜で笑は、心火盛なる也。

【針】尺澤・間使・天井・百会・神門・中脘。

【灸】承山・風池・曲池・尺澤・神門・上脘。

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31、

諸虫 もろもろのむし  寄生虫

虫は湿熱より生ず。

腐草、蛍となるがごとし。

其証、嘈雑、腹痛、涎沫を嘔吐し、面の色痿黄、眼眶(まぶた)・鼻の下青黒く、食少く、色黒く、痩、あるひは、寒熱、咳嗽せしむ。

九虫は、

一に伏虫、ながさ四寸、諸虫の長なり。

二に蛔虫、長さ一尺。動くときは清水を吐き、出るときは心痛す。もし心をつらぬくときんば人を殺す。

三に寸白虫、長さ一寸。動くときは、腹痛、腫聚り、清水を吐き、上下り、おこりざめあり。心を傷るときは死す。

四に肉虫、ただれたる杏のごとし。人を煩満せしむ。

五に肺虫、蚕のごとし。人をして咳嗽せしむ。

六に胃虫、かわづに似たり。吐逆、?をする。

七に弱虫、瓜のなかごのごとし。多く唾を吐く。

八に赤虫、生の肉のごとし。腸を鳴しむ。

九に蟯虫、細にして菜虫のごとし。疥癬、痔、瘍瘡を生ず。

千金方に曰く、五蔵労するときは熱を生ず、熱するときは虫を生ず。

心虫を蚘(かいちゆう、 はらのむし)と云。
脾虫を寸白と云。肺虫はかいこのごとし。
肝虫は李のごとし。
腎虫は寸々に切たる線のごとし。
三虫は長虫・赤虫・蟯虫なり。
諸虫みな、上半日は頭を上にむかふ(又、子のときより辰のときまでは、かしらを上にむかふといへり)。

几(およ)そ 諸虫を治するに、寒熱虚実を察し、脉をわきまへつまびらかにして針を行ふべし。

▲三陰交・三里・内関・陰谷・行間・太白・復溜・気海・脾兪・梁門・天枢・滑肉門。

虫の発りたるとき、痛みの上に刺すべからず。

まづ、足の穴にて気を下すべし。

諸虫はみな気血のあつまり、邪気に感じ、その時節の気に応じて、色々のかたちをなす。

気を引下すときは、虫おのづから治す。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

寄生虫の病状には、

【灸】章門・不容・中脘・天突・巨闕・神闕穴に施灸。

寸白の病状には、大横穴を使用する。

陰嚢が腫れる病状には、大赫穴を使用する。

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32、

積聚 (しゃくじゅう) はらのかたまり

肝の積を肥気といふ。左の脇にあり。面青く、両わきいたみ小腹に引。

心の積を伏梁といふ。臍の上におこり、胸の中に横たへ、腹熱し、面赤く、胸いきれ、咽かはき、不食し、やせて、吐血す。

脾の積を痞気といふ。臍の真中のとをりにあり。面の色黄にして、飢るときはかくれ、飽ときはあらはる。常に腸ふくれ、足はれ、泄瀉、嘔吐し、痩おとろふ。

肺の積を息賁といふ。右の脇にあり。面白、背いたみ、膚冷、皮の中時にいたみ、虫のはふがごとし。

腎の積を奔豚といふ。小腹にあり。おこるときは胸にのぼり、面黒く、飢るときはあらはれ、飽ときはかくるる。腰いたみ、骨ひゑ、目くらく、口かわく。

積に腹痛あり、痛まずして塊ありて不食するもあり。或は咳逆、咳嗽、短気、心痛をなす。

腹痛するときは、猥に痛処に刺べからず。

まづ、積ある処をよくおし、やわらげ、其後いたむ処より一二寸ばかりわきに針すべし。

若、痛みつよきとき、むさといたみのうへに刺せば、かへつて痛みまし、人を害すこと多し。

積にかまはず、わきをやわらげて、気を快くするときは、おのづから治す。

▲三里・陰谷・解谿・肺兪・膈兪・脾兪・三焦兪・期門・章門・中脘(ちゅうかん)・気海・関元。


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杉山三部書、 病証の治療穴から。

積聚の病状には、三里・中脘・建里・不容・章門穴を使用する。

聚の病状には、上脘・下脘穴を使用してもいいかも。

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積聚については、ゆっくり堂 難経ポイント第五十五難moリンクしてご覧ください。
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/55nan/

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33、

黄疽 (おうだん)

五疽の分ありといへとも、皆これ脾胃、水穀・湿熱、相蒸ゆへに、黄を発する也。
胸腹飽悶、身面目みな黄、小便黄渋、汗の衣を染ること黄栢の汁のごとし。
たとへば、麹のごとし。湿と熱とたたかひ、気ととのわざれば、欝して疽となる。

【針】承満・梁門にいくたびも刺すべし。

【灸】天枢・水分・気海・膈兪・肝兪・膽兪・脾兪・腎兪・胃兪に灸すべし。

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杉山三部書、 病証と治療穴から。

黄疸の病証、
脾胃の内に湿熱欝して積(つん)で久しくして散ぜず、故に脾胃の色が、顔や肌肉に出て黄色くなり。

黄疸の病状には、
五疸として五種類がある。
黄汗(おうかん)・黄疸(おうたん)・酒疸(しゅたん)・穀疸(こくたん)・女労疸(じょろうたん)である。

※ 五疸の症状に対応してそれぞれの穴を使用する。

黄汗は、足手が腫れ、汗が出て、衣(服)が黄色く染まる。
黄汗の治療穴として、中脘・三里・大杼穴を使用する。

黄疸は、身体・顔・目・小便が黄色くなる。
黄疸の治療穴として、脾兪・三里・隠白穴を使用する。

酒疸は、身体・目・小便が黄色くなり、胸痛み顔赤く斑が出る。
酒疸の治療穴として、胆兪・委中・至陽穴を使用する。

穀疸は、食後目眩して全身が黄色くなる。
穀疸の治療穴として、胃兪・腕骨・三里穴を使用する。

女労疸は、身体・目が黄色くなり、発熱、悪寒、小便不利などの症状が出る。
女労疸の治療穴として、関元・腎兪・至陽穴を使用する。

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34、

水腫 (すいしゅ:むくみ)はれやまひ

内経に曰く、水腫その本は腎にあり、そのすゑは肺にあり。
みな水のつもりなり。故に水病は、下腫れ、腹大きに、上喘急をなし、臥ことを得ず。
先、腹よりはれ、後に手足はるるは治すべし。
まづ、手足より腫れ、後に腹はるるは治せず。
もし、肉かたく、掌たいらかなるは治せず。

【灸】膈兪・肝兪・膽兪・脾兪・腎兪・通谷・石関・水分・天枢・気海。

【針】胃倉・合谷・石門・水溝・三里・復溜・四満・曲泉。

▲渾身浮腫は曲池・合谷・三里・内庭・行間・三陰交。
▲水腫は列缺・腕骨・間使・陽陵・陰谷・解谿・公孫・厲兊・冲陽・陰陵・胃兪。
▲四支浮腫ば曲池・合谷・中渚・液門・三里・三陰交。
▲風腫身浮ば解谿。
▲遍身腫満、飲食化せずは腎兪百壮、即痊。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

水腫〔むくみ〕の病状には、水分・気海・三陰交・三里・百会・上脘穴を使用する。

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35、

脹満(ちょうまん)・かめばら

腎を水とし、脾土を堤とす。
故に脾腎虚するときは腫脹をなす。
遍身はるるを水腫とし、腹ばかり大にして鼓のごとく、 面目手足腫ざるを脹満といひ、蠱脹ともいふ。
脉洪大はよし、徴細はわろし。

【針】上脘・三里・章門・陰谷・関元・期門・行間・脾兪・懸鐘・承満・復溜。

【灸】三里・章門・脾兪・承満。

▲水脹脇満ば陰陵泉。
▲水分に刺を禁ず。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

脹満(ちょうまん)腹の張る病の病状には、気海・三里・三陰交・上脘・中脘穴を使用する。

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36、

消渇 (しょうかつ:糖尿病) かはきのやまひ

上消は邪熱、肺を燥して、多く水を飲、食すくなく、大小便つねのごとし。

中消は胃熱し、脾陰虚す。飲食ともに多く、小便赤し。

下消は腎虚し、水乾く。

多く水をのみ、小便膏の如くにしてしぶる。

▲水溝(人中)・承漿・金津・玉液・曲池・太冲・行間・労宮・商丘・然谷・隠白。

【灸】腎兪・中膂・意舎・小腸・膀胱・関元。

【針】中膂・意舎・照海・曲池・曲骨。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

消渇の病状には、人中・脾兪・中脘・三里・腎兪穴を使用する。

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37、

淋病 (りんびょう) 小便閉

淋は小便しぶり、痛むなり。
熱、膀胱に客とし、欝結して滲泄すること能はざるがゆへに淋をなす。

五種あり。
熱淋は小便赤くしぶり、痛みはなはだし。
沙石淋は茎中いたみ、努力ときは沙石のごとし。
気淋は小便しぶり、いたみ、つねに餘瀝ありて盡ず。
血淋は尿血結熱して、茎痛をなす。
膏淋は尿、膏に似たり。
労淋は労倦すればすなはち発る。

又、色欲すでにきざして強留て泄さず、小便急に乗じて溺を忍ゆれば多く淋を致す。

【針】関元・夾溪・三陰交。

【灸】腎兪・膀胱・小腸・中膠・三陰交。炒塩を臍中に填満て、大艾炷七壮すべし。

▲陰寒甚して小便通ぜす、陰嚢縮入、小腹痛み、死せんとするには、石門に灸す。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

淋病(りんびょう)の病状には、湧泉・三陰交・石門・腎兪穴を使用する。

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杉山三部書、 病証と治療穴から。

赤白濁(しゃくびゃくだく)〔小便の濁る病なり〕

赤白濁には、赤濁あり、白濁あり、小便膏(あぶら)の如く、糊(のり)の如く、濃糊(このり)の如く、
泔水(白水)の如く、赤き濃(うみ)の如くなる者あり。
是(これら)は皆、湿熱が内傷又は腎経が虚して濁るなり。赤濁は心虚の熱、白濁は腎虚の寒。

治療穴として、下脘の瀉法。

赤濁、白濁いずれにも、気海・章門穴を使用して良い。

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38、

溺濁 いばりにごる

赤濁は血に属す、思慮を過し、心虚して熱するなり。
白濁は気に属す、房労をすごし、腎虚して寒ずるなり。

▲腎兪・気海・関元・脾兪・三里・三陰交。

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39、

遺溺 いばりたれ  遺尿   

几(およ)そ 、遺尿は小腸・膀胱の陽気衰へ、脱するゆへなり。
経に曰く、膀胱利せざれば癃(つかれ)をなす、約せざれば遺をなす。
又曰く、下焦に血をたくはへ、虚労し、内損すれば、小便おのづから遺て知す。
下焦虚寒し、水液を温制することあたはざれは、小便たへずながれいづる。

▲腎兪・気海・小腸兪・絶骨・三里・関元。

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杉山三部書、 病証と治療穴から。

遺尿

心腎の気が少なくなり陽気が衰え寒(ひえ)て出るなり。

遺尿の病状には、関元・石門・中極穴を使用する。

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40、

遺精 もうざうをみる

夜夢に人と交り、感じて精を泄すを夢遺といふ。
夢に因ずして、精おのづから出るを精滑といふ。
心腎内虚に因て、固く守ることあたはず。
みな、相火動ずるゆへなり。
、久しく交合せず、精満て溢るものは病にあらず。

【灸】脾兪・肺兪・腎兪・気海・三里。

【針】関元・曲泉・然谷・大赫・三陰交。

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杉山三部書、 病証と治療穴から。

遺精の病状には、腎兪穴を大いに補法。 気海穴を補法。

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41、

秘結 だいべんつうぜず

風秘は風痰、大腸に結して通ぜず。
風を発散すべし。
気秘は気とどこをり、後重せまり、いたみ、煩悶、脹満す。気をめぐらすべし。
寒秘は腹冷、痃癖、結滯す。温補すべし。
虚秘は津液虚し、血少くして、かわき渋る。潤し滑にすべし。
熱秘は實熱、気ふさがり、心満、腹脹り、煩渇す。熱をすずしくすべし。

【灸】肝兪・膽兪・腎兪・大腸兪・関元。

【針】天枢・滑肉門・石門・陰交・承山。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

秘結〔便秘〕の病状には、 下脘・水分・章門に補法。 脾兪に瀉法。

治療穴として、気海・天枢穴も使用する。

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42、

痔漏 いぼぢ・あなぢ

尻の穴に瘡を生じて傷れず、あるひは傷ても少にして愈やすきを痔と云。

瘡潰て竅を作し、膿血出て、愈えがたきを漏といふ。

痔に六種あり。

牡痔は肛門の邊に肉珠を生じて、鼠の奶(ちち: 乳房)のごとくにてうみ血を出す。

牝痔は瘡を生じ、腫いたみ、四五日にうみ潰て即ち散る。

脉痔は尻の回りにつぶつぶと生じ、いたみ、かゆく、膿血を出す。

腸痔は肛門の中に結核を生じ、血を出し、寒熱往来し、溷に行ごとに脱肛をなす。

血痔は大便に清血を下すこと止ず。 酒痔は酒をのむごとに瘡出、血をながす。

【灸】百会・気海・腎兪・大腸兪・長強・膀胱兪・三陰交。

【針】秩辺・委中・陽輔。

▲血痔には承山・復溜。

▲腫痛には飛陽。

▲漏には長強・商丘・承扶。

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43、

脱肛

肛門の飜出ずるなり。

肛は大腸の門なり。大

腸は肺の府なるによつて、肺實すれば秘結し、肺虚寒すれば脱出す。

又、経に曰く、腎は穴を二陰にひらくと。

故に腎虚する者、多く此症あり。

▲命門兪・腎兪・長強・百会・膀胱に灸。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

脱肛の病状には、懸枢・中脘・百会穴を使用する。

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44、

頭痛 かしらいたむ

頭は諸陽経の首也。
風寒の頭痛は鼻塞り、悪かん発熱す。
湿は頭重し、食滞は額の正中いたむ。
左邊痛は気虚、右は血虚、夜痛み苦し眉輪骨いたむは痰火なり。
真頭痛は脳巓の底にとをり、痛みはなはだしく、
手足冷、臂とひざより上までひへ上るは、半日に死す。

▲百会・風池・風府・合谷・攅竹・曲池・腕骨・京骨・合骨・衝陽・風市・三里。
▲頭重く鼻塞るには、百会に刺すべし。
▲目眩き、頭のかわ腫には、前頂に刺す。
▲項強り、悪寒せば、後頂に針すべし。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

頭痛の病状には、百会・前頂・列缺・合谷・曲池・肩井穴を使用する。

項が引きつるものや前頭部の頭痛には、印堂穴を使用する。

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杉山三部書、 病証と治療穴から。

上気 気の上がる事

下寒(しもひえ)る時は気上るなり。

上気の病状には、三陰交・三里・百会・風市穴を使用する。

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八、肩の鍼灸治療 ・  十一、背部の鍼灸治療

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45、

痃癖(けんぺき:肩癖)

肩の痛むこと、或は痰により、或は風寒湿によるといへども、多くは気血つかへたるゆへなり。
此處に刺すこと秘伝あり。

まづ、手にて肩を押ひねり、撫くだし、気を開かせて、後に刺すべし。

深きときは、あやまちあり。若、みだりに刺ときは人を害す。

これを刺には、針をふして皮肉の間をとをすべし。少も肉を刺ことなかれ。

肩背には撚針を用べからず、砭針(へんしん)をもちゆべし。

管に入て、はぢき下し、皮をやぶりて気血をぬく。

その効、速かなり。針を刺たるあとを、又、管にて推べし。

かならず血出て邪気さるなり。

上古には石の尖にて痛み痺る處を刺し、脉をやぶり邪をさる、鍼經に砭石(ヘンセキ:石針)をもつて膿血を出すとあり。

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46、

手指

手の痛は痰により、風湿による。
老人は気血衰弱して、肢をやしなはざるゆへなり。
かいなの骨節ふとり、大にして、節間ほそくなり。
指も亦かくの如くなるは、痰と血の不足なり。

▲曲池・手三里・肩髃・列缺・尺澤。

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47、

心痛(しんつう)・むねいたみ・胃脘(いかん)痛・世俗に胸虫(むねむし)と云う物也。

心痛に九種あり。
虫痛、痛、風痛、悸痛、食痛、飲痛、寒痛、熱痛、去来痛也。
厥心痛は、寒邪、心包絡に客たり。
真心痛は、寒邪、心の蔵を傷る。
痛みはなはだしく、手足青くして、臂膝を過るは半日に死す。

▲胸の中、刺がごとくいたみ、手足ひへ、唇青く、脉沈なるに大谿に刺してよし。
▲胸中、満ふくれ、いきどをしく、缺盆より引つり痛み、死せんとするは、行間・尺澤に刺てよし。
▲胸つよくいたみ、死せんとするには然谷・湧泉に刺す。
▲神門・健里・大都・太白・中脘に撰刺。
▲灸は厲兊・鬲兪・肺兪・大谿・中脘・下脘・足三里。

参考: 中脘(ちゅうかん)胃経の墓穴・腑会・中焦の栄気・ 所属経絡:任脈 ・取穴部位:神闕穴の上4寸に取る.

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

心痛〔胃脘痛〕の病状には、天突・鳩尾・章門・中脘・不容穴を使用する。

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48、

腹痛 はらのいたみ

腹痛に九種あり。
綿々として増減なきは寒也。
乍痛乍止は熱痛なり。
食するときは腹痛み泄して、後に痛減ずるは宿食なり。
時に痛み、時に止み、面白く、唇紅にして、飢るときは痛みはなはだしく、
食するときはしばらく止ば虫痛なり。
痛處移らざるは死血なり。
脇下に引いたみ、聲あるは痰飲なり。
手にて腹を按に軟に痛やはらぐは虚なり。
腹硬く、手にて按ときは、いよいよいたむは實痛なり。

いづれの腹痛にも、先、腹に針灸すれば、かへつて痛ますものなり。

必まづ足の穴に針灸して、痛み和ぎてのち腹に刺すべし。

尋常のかろき腹痛には、まづ腹、滑肉門を重く押へて刺すべし。

▲もし腹痛はなはだしく、目眩き、死せんとするには隠白・湧泉に針して正気を付べし。

▲上脘・中脘・巨闕・不容・天枢・章門・気海・崑崙・大白・大淵・三陰交。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

腹痛の病状には、内関・天枢・上脘・中脘・胃兪・巨闕・梁門・石門・三陰交・三里穴を使用する。

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十一、背部の鍼灸治療  十、胸部の鍼灸治療

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49、

脇痛 わきいたみ

両脇痛は肝火盛に、本、気実するなり。
咳嗽して、いたみ走注し、痰の声あるは痰なり。
左の脇に塊ありて痛処を移さざるは死血。
右の脇に塊ありて飽悶するは食積なり。
肝積は左に在、肺積は右にあり。

【針】日月・京門・腹哀・風市・章門・丘墟・中瀆(ちゅうとく)・期門。

【灸】肝兪・絶骨・風市。

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十二、腰部の鍼灸治療

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50、

腰痛 (こしのいたみ)

腰は一身の大関、六經の懸るところ。
太陽腰痛は項脊尻に引、せなか重し。
陽明の腰痛は左右へかへりみられず、強り、かなしむ。
少陽の腰痛は針にて皮をさくがごとし、俛仰ならず。
大陰の腰痛は熱して、腰に横木あるが如く、遺尿す。
少陰の腰痛は張弓のごとく、黙々として心わろし。
脾に熱たたかふときは、腰痛み、俛仰せられず、腹満て泄す。腎に邪熱あれば、
腰痛み、脛しびれ、舌かはく。
又曰く、腰は腎の府、多くは色欲を過し、腎を労傷すれば、常に腰を痛ましむ。
日軽く夜重きは?血なり。
陰雨に遇ひ、久しく坐して発るは湿なり。
腰背重、走注串き痛は痰なり。
頭痛、悪寒、発熱するは風寒による。
腰冷るは中寒なり。

▲腎兪・膀胱・腰兪・志室・崑崙に灸し。
▲崑崙・肩井・環跳・陰市・三里・陽輔に針。
▲委中より血をとるべし。
▲両腿水のごとく冷、腰脇肋いたむは尺澤・三陰交・合谷・陰陵・行間・三里・手三里。
▲腰痛動がたきは風市・委中・行間。
▲腰脊強痛には腰兪・委中・湧泉・小腸兪・膀胱兪。

参考:十二経絡流注順番

①手の太陰肺経・②手の陽明大腸経 ③足の陽明胃経 ④足の太陰脾経 ⑤手の少陰心経・
⑥手の太陽小腸経 ⑦足の太陽膀胱経 ⑧足の少陰腎経 ⑨手の厥陰心包経・⑩手の少陽三焦経
⑪足の少陽胆経 ⑫足の厥陰肝経

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

腰痛の病状には、腎兪・足三里・章門・絶骨穴を使用する。

【刺絡】委中穴に刺絡する。

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51、

痛風 つうふう

痛風は、遍身骨節、走注していたむ也。

気血虚弱し、風寒湿に感じ、或は、痰、経絡に流れ注ぎ、関節利せず。

【針】百会・環跳に刺べし。

【灸】肩臂いたまば、肩?・曲池にすべし。

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52、

脚気 あしのいたみ

男は腎虚、女は血海の虚より発る。
或は、風寒暑湿をうけて生ず。
走りいたむ處、さだまらざるは風なり。
筋、拘急してひきさく如に痛は寒なり。
腫て重きは湿なり。
手足ねまり熱し、燥渇て、便実は暑熱なり。
骨節、大きになり、節の間ほそくなるを鶴膝風と云。
治しがたし。脚気腹に入ときは大事なり。

【灸】三里・三陰交・風市・外踝・内踝。

【針】公孫・衝陽・委中・懸鐘・飛陽。又、痛む上に針を刺すべし。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

脚気の病状には、陰陵泉・陽陵泉・三里・公孫・絶骨・風市・承山・三陰交穴を使用する。

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53、

疝気 せんき

凡そ疝気は、湿熱、痰積、流下て病をなす。
或は虚寒により、食積によつて発る。
みな肝經に帰す。
宜く肝經を通ずべし。
又、腎經を干ことなかれ。

七疝の症。

厥疝は心痛し、足冷、食を吐く。
厥疝は腹中に気積みかたまり、臂のごとし。
寒疝は冷たる食を用ゆれば、にはかに心腹ひきいたむ。
気疝は、忽にみち、忽に減じていたむ。
盤疝は腹中いたみ、臍の旁にひく。
附疝は腹いたみ、臍の下につらなり、積聚あり。
狼疝はほがみと陰へ引痛む。

【針】天枢・大衝・大敦・腹結・気海・関元・石門・滑肉門・三陰交。

【灸】章門・三陰交・大敦・気衝・肝兪。

【秘灸】 病人の口を合がしめ、口の濶さの寸を三つとり、 それを三角に△此の如くして、上の角を臍の下廉にあて、 下の両角に灸すること左右各二十一壮すべし。

七疝ともに奇妙なり。

▲陰卯偏大なるは、関元に灸百壮すべし。

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54、

眼目

目は肝の外候、五蔵の精華にして、諸脉は皆、目に属す。

鳥睛は肝木、両眥は心火、上下のは脾土、白睛は肺金、童子は腎水の精なり。

暴に赤腫痛は肝經の風熱。

久病昏暗は腎虚。

遠く視ことあたはざるは心虚。

近視ことあたはざるは腎水の虧たるなり。

【灸】巨骨・膏肓・曲池・肝兪・脾兪・三里

【針】神庭・上星・前頂。

▲熱血、目赤きには絲竹空・百会・上星。

▲眥痛み、涙出で、明ならずは風池・合谷。

▲雀目には睛明・攅竹。

▲疳目には合谷(各一壮)。

▲赤くただるるには陽谷・太陵。

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杉山三部書、 病証と治療穴から。

眼目  目の病の事

一、これ、人に両眼あるのは、天に日月あるが如(ごと)し、万(よろず:万物)のものを見、一身の肝要なり。

目の病(やまい)には七十二種類あると言われているが、ここにそのあらましを記す。

一、烏眼(くろまなこ:光彩)は肝の臓の主(つかさど)り、

眥(めじり)は心が主り、

眼瞼は脾が主り、

白睛は肺が主り、

瞳子は腎が主る。 三陰交・風門・手足の三里・百会・肩井・肝兪を用いるとよい。

治療穴は三陰交・風門・手足の三里・百会・肩井・肝兪穴を使用する。

一、目に外障(うはい:がかすみ)かかり渋りて開き難きには、 睛明・肝兪・合谷。

一、目に風が中(あた)って、爛(ただれ)れ泪(なみだ:涙)が出るものには、 睛明・攅竹・二間・絲竹空。

一、目に風が中(あた)り、腫れ痛んで弩肉(どにく:翼状片(よくじょうへん))が出るものには、 睛明・攅竹・肝兪・委中・合谷・列缺。

一、目が卒(にわか:急)に赤く腫れ痛むには、 迎香・攅竹・合谷。

一、目が赤く痛み涙が出て止まらないものには、 攅竹・合谷・臨泣。

一、目が赤く痛むには、 承漿・百会。

一、さかまつげには、 睛明・瞳子髎。

一、目が痛むものには、 肝兪・中脘・石門。


語彙説明

弩肉(どにく:翼状片(よくじょうへん))

翼状片(よくじょうへん) とは、
目頭側の結膜から角膜にかけて、赤みを帯びた翼のよう膜が広がってくる病気である。
長年にわたって紫外線や煤煙などにさらされていると、発症しやすくなると考えられる。

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55、

耳病

耳は腎に属して、竅を少陽の部に開。

会を手三陽の間に通ず。

腎に関かり脳を貫く。

故に腎虚するときは耳聾して鳴る。

両耳腫痛み、あるひは膿を出すは、腎經の風熱なり。

口苦く、脇痛み、寒熱往来は、少陽膽經の風熱。

左の耳聾は、忿怒、膽の火を動す。

右の耳聾するは、色慾相火を動ず。

両耳倶に聾するは、厚味胃火を動ず。

あるひは、気によつて閉る者あり。

あるひは、痰火に因て耳鳴ものあり。

小児耳腫、耳痛、耳停は三陽の風熱なり。

各証を詳にして治すべし。
【灸】腎兪・百会。

▲耳聾鳴(耳鳴り)には聴会(五壮)。

▲耳聾(耳聞えぬ)・耳痛は、翳風(七壮)、耳門(三壮)。

【針】陽谷・前谷・液門・商陽・少海・聴宮・肩貞、ゑらみて刺すべし。
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杉山三部書、 病証と治療穴から。

一、耳聞えぬには、聴会・迎香・三里。

一、耳鳴りには、頬車・迎香・百会。

一、耳が痛むには、耳門・肝兪・章門・頬車・風池。

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56、

鼻病

鼻は肺の候なり。

和するときは、よく香臭を分別す。

若し、七情内に欝し、六淫外を傷り、飲食労役して、鼻気調はず、清道ふさがりて病をなす。

鼻塞り、濁涕を流すは熱邪とし、清涕を流は寒邪とす。

香臭を聞ざるは肺に風熱あり。

濁涕、あるひは清汁をながして止ざるを鼻淵といふ。 乃、風熱、脳をやぶり、脳気固からずして、液をのづから滲る也。

臭き膿水ながれ出るを脳漏といふ。 面白く、清涕をながし、香臭を聞ざるは肺虚なり。

鼻赤きは熱血肺に入る。 酒齄鼻といふ。  鼻頭、紫黒きは風寒によつて、血冷、凝滞て散ぜざるなり。

みな、症を詳にして治すべし。

▲百会・上星・肺兪・風門。
▲鼻塞るは上星・臨泣に針し、上星(七壮)・百会・厲兊・前谷に灸すべし。
▲清涕は人中・上星・風府(又、風門に灸)。
▲脳漏、臭き涕出ば曲差・上星。
▲久病、涕ながれて止ずは、百会に灸して妙なり。
▲息肉は迎香。
▲衂血は風門・風府・風池・合谷・二間・三間・後谿・前谷・委中・申脉・上星・三里。
▲鼻瘡は上星・百会・風府。

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57、

牙歯 きば・はのやまひ

夫、歯は骨の餘り、腎これを主る。

上の前歯は督脉に属し、下の前歯は任脉に属す。

両頥の上齦は手陽明大腸、下齦は足の陽明胃の經これを絡ふ。

風を呷ときは、痛みはなはだしきは腸胃に風邪あり。

腫痛は陽明の風熱。

臭く穢しきは腸胃に熱あり。

動き揺ぐは腎元の虚なり。

血火に遇うときは沸出て宣露る。

熱極り、歯の縫より血出るは虚熱なり。

蛀牙は竅あり、腸胃の湿熱なり。

走馬牙疳は即時に腐落る。

真陰いまだ成ずして熱さかん也。

▲少海・合谷・内庭・四瀆・上廉・大淵・三間・浮白・陽白。
▲歯痛ば商陽。
▲牙痛は陽谿・少海・曲池・陽谷・二間・厲兊。
▲上牙痛には人中・内庭・大淵・呂細・少海・三里。又、肘の上、肉の起るところに灸して妙なり。
▲下歯いたまば、龍玄側腕交叉・承漿・合谷・三間。又、腕くびより五寸上、両筋の間に灸五壮して妙なり。
▲血熱胃口にあり、咽歯に引きいたむには浮白・内庭・合谷。
▲頬腫れ牙いたまば、頬車・曲池。
▲虫牙にはいたむ牙のとをりの齦に刺べし、妙也。
▲虫喰牙にて瘡を生じ、ただるるものは、承漿に灸七壮すべし。
▲牙疳は承漿に針灸。

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58、

唇の病

經曰く、脾の栄は唇にあり。

唇目閏(うごく)は風也、乾は燥なり、裂は熱なり、掲は寒なり。

唇腫裂、あるひは瘡を生じ、米泔(しろみず)のごとくなるは瀋といふ。 脾経の風熱也。

唇緊口小さくなるを、緊唇といふ。

又、中気虚損して唇口瘡を生ずる者あり。

又、陰虚火動して唇燥裂て繭の如なる者あり。

▲唇乾、液あるは下廉。 唇乾き、食下らざるには三間・少商。

▲唇動き、虫の行がごとくなるは水溝。

▲唇腫は迎香。

▲緊唇は虎口を灸す(男は左、女は右)。又承漿に灸三壮すべし。

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58の2

口の病

經に曰く、脾気は口に通ず。
肝熱すれば口酸し。
心熱すれば口苦し。
膽熱するときも口苦し。
脾熱すれば口甘し。
肺熱すれば口辛し。
腎熱すれば口鹹し。
口臭きは内熱。
口乾き、口瘡は脾熱。

▲口乾は尺澤・曲澤・大陵・二間・少商・商陽。
▲口噤には頬車・支溝・外関・列缺・厲兊・内庭。
▲口眼喎斜ば頬車・水溝・絲竹空・列缺・太淵・合谷・二間・地倉。
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杉山三部書、 病証と治療穴から。

口中の病状と治療穴。

※ 【口の病・唇の病・歯の病・舌の病・咽喉の病・が一括論述されています。】

一、口唇は脾胃の主る所なり。 唇も亦(また)脾胃の主る所、

脾胃邪を受くれば唇病む、 風勝つ時は唇動く、寒勝つ時は唇上(あが)る、熱勝つ時は(唇が)裂る、気鬱する時は瘡(かさ)を生ず。

一、舌は心の主る所なり、風寒これに中(あた)る時は舌が強ばって話し難くなる。

一、歯は骨の余り、腎の主る所なり、

精気強き時は牙(歯)自から固し、腎気衰ふる時は歯も自から豁(す)く。

歯が痛みは胃の火熾(ひさかん)なり、 虫嗆(虫歯)痛むは大腸に湿熱がある故なり。

一、喉腫れ痛み瘡を生じ、喉塞(ふさ)がり言(ものい)ふ事なり難(がた)きは、風熱痰火なり、急いで治せば死す。

一、喉痺(こうひ:のどの炎症)には、天突、委中、合谷、少商から(刺絡にて)血を出してよし。

一、喉の痛みには、天突、耳門、口が開(あ)き難(がた)きにもよし。

一、口熱には頬車、痛むにもよし。

一、舌が強ばって死に至りそうなものには天容。

一、歯が痛み両頬が腫れるものには、人中・合谷。

一、上歯が痛み、耳の前に引きつり、口を開け難きには、頬車・合谷・大迎。

一、下歯が痛み、頬項赤く腫れ痛むには、頬車・陽谿。

一、虫嗆歯には、頬車・列缺・犢鼻。

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60、

舌の病

舌は心の苗也。
又、脾の經絡、舌の本に連る。
惟舌の下、廉泉の穴は腎經に属す。
故に心熱すれば舌腫、瘡を生ず。
心脾、熱を重て、舌腫て言語ず。
心脾虚して風熱をうけ、気欝して重舌を出す。
心脾熱して、舌胎を生ず。
肝ふさがれば血を出す。
上に欝熱をたくはゆるときは口舌のやまひを生ず。

▲舌緩は太淵・合谷・冲陽・内庭・風府・三陰交・崑崙。
▲舌強は亜門・二間・少商・魚際・中冲・陰谷・然谷。
▲舌黄は魚際。

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61、

咽喉 のんどのやまひ

喉は肺に通じて、気の往来を主どる。
気、欝結して、上にのぼり、頚の間に血熱をたくはへ、血餘りて喉痺を病む。
又、手少陰(心経)、少陽(三焦経)の二脉も喉気に並ぶ。火は腫脹を主る。
故に熱、上焦に客して咽嗌(のどむせび)はるる。
或は腫痛み、或は瘡を生じ、あるひは紅にはれ、結核腫れいたみ、或は閉塞り、言こと能(あたわ)ず。
倶にこれ風熱、痰火なり。

▲尺澤・瘂門(あもん)より血をとる。口を開かせて喉の腫れたる所をひねり針にて突ぬき、血をとるがよし。
▲あるひは喉閉、急症には三稜針を少商に刺て、毒血を出すべし。
▲喉痺には夾車・合谷・少商・経渠・大陵・二間・尺澤・前谷・陽谿。
▲頷腫には少商。
▲咽痛ば風府、妙なり。
▲咽の中、鯁(ノギ:魚の骨)の如くいらつくには間使・三間。
▲咽腫ば中渚・大谿。
▲咽の外はるるには液門。
▲食下らずは亶中に灸せよ。
▲咽の中ふさがるには合谷・曲池。
▲又、ふさがりて飲食下らざるには合谷・少商。
▲咽乾ぐは大淵・魚際。
▲消渇には水溝・行間・曲池・承漿・然谷・商丘・隠白・労宮。

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62、

外科門 瘡瘍 かさはれもの

經に曰く、諸痛、痒、瘡瘍は皆、心火に属す。

蓋し心は血を主て、気を行らす。

若、気血凝滞り、心火の熱を夾て、癰疽のたぐひを生ず。

大にして高く起るを癰とす。

平にして内に発するを疽とす。

癤(セツ)は頭のある小瘡。瘡は総名なり。

此病、多くは魚肉、厚味を食し、安坐して、身をつかはず、色慾を過して、水へり、 火盛になり、熱毒、内に攻め、気血を煎熬して成る。

▲癰瘡、背に発するは肩井・委中に針すべし。

▲又、始めて発せば蒜を片て、瘡の上に貼、その上に灸して、疼ざるは疼むまで、 疼む者は疼まざるまで灸すべし。
発することを覚て、七日より中なれば愈べし。

▲癰、背より出るは至陰・通谷・束骨・崑崙・委中。

▲髪より出るは竅陰・夾谿・陽輔・陽陵泉。

▲髭より出は厲兊・内庭・陥谷・衝陽・解谿。

▲脳より出るは絶骨。

▲腸癰は両肘を曲正して、肘の頭の鋭骨の端に灸百壮すれば、膿血を下して安し。

▲嚢癰、陰腫には崑崙に灸三壮。   久病陰腫るには水分に灸す。

▲乳癰には天枢・水泉・肩井・臨泣・夾谿。

▲疔はかならず面手足に生ず。

▲面上と口の角に生ぜば、合谷に灸す。

▲手に生ば、曲池に灸す。

▲背上は肩井・三里・委中・臨泣に灸。行間・通里・少海・太沖。

▲足には行間・三里・委中・臨泣。

▲掌後横文に灸す。男は左、女は右に七壮。すなはち瘥(いゆる)る。

▲紅絲疔は、頭、手足の間に黄泡を生ず。
その中に紫紅の線あり。針を線の処に刺て、血水を去。しからざれば心に入て治がたし。

▲瘰癧は結核、耳の前後、頥頷(あご)、頚喉に生ず。胸脇に生じて、形長きを馬刀とす。小なるを結核といふ。
いくらも連るを、るいれきといふ。少海(まづ皮の上に刺こと三十六息して、
後その核の大きさほと針を入て三上三下して出す)・天池・章門・臨泣・支溝・陽輔に灸(百壮)。
肩井(年のかず)・手の三里・曲池・大迎に灸すべし。

▲痰核は項、臂、腋にありて、紅ならず。痛まず。膿ならず。肩井・曲池に針す。

▲癭瘤(えい‐りゅう:細菌感染のコブ)には天容・翳風・間使・天突(二十一壮)・肩髃(けんぐう)(十八壮)。又、両耳後髪際(灸七壮)。

▲瘊子(いぼ)は、いぼの上に灸一壮して水を滴てよし。

▲瘍瘇(ねぶとはれもの)は少海。

▲癬瘡(せんそう)は曲池・支溝・後谿・崑崙・大陵。

▲癮疹(インシン:蕁麻疹)には、肩髃(けんぐう)・曲澤・曲池・環跳・合谷。

▲便毒は手掌の後の横文より中指の先までの寸をとり、其寸を又横文より臂の方へ向て、 寸の盡るところに三壮灸す。

便毒右ならば右の手に灸すべし。

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67、

癘風・癩風・大麻風 皆かつたい也

癘風は、天地殺物の風也。
陽明の一經に外ならず。
初て起るものは、白屑雲頭(しろくず-うんとう)、紫黒疙瘩(しこく-きつとう:紫黒色の丸く膨れ上がったできもの,)、膿を流し、あるひは燥てうまず。
麻木不仁はなはだしきものは、毛落、眼ただれ、眉脱し、遍身癩疹いで、鼻くづれ、肉陥り、声唖る。
痒きは、虫あり。 耳鳴り、膝はれ、足の底穿つ。

▲承漿に灸七壮すれば瘡軽くなる。再灸すれば愈る。三たび灸すべし。

▲又、大拇指、觔骨(すじぼね)縫(ぬいめ)の間、約すること半寸。灸三炷、香して毒気を出す。

▲又、三稜針にて委中を刺て血を出すこと二三合。紫黒疙瘩の處も亦、悪血を去べし。
一日を隔て一刺すべし。三次刺して血の色変ず。此のごとくすること、二十餘日して已べし。

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68、

損傷 そこなひやぶる

經に曰く、堕墜折傷すれば、瘀血(おけつ:古血)、腹中に留り、腹満、大小便通ぜず。

心腹に攻上て、悶乱して死する者あり。これを瀉すべし。又、皮敗れて血出たるは補ふべし。

足の内踝の下、然骨の前を刺して血を出す。止ずんば、大敦より血をとるべし。

又、足の跗上(フジョウ:あしのこう)の動脈の処に、三毛という穴あり。これに針して血を出す。

右ならば左に、左ならば右に刺べし。 大衝・崑崙も針して血をとるべし。灸は宜からず。

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69、

中毒 どくにあたる

凡そ、砒霜石、斑猫の毒。

その外もろもろの毒に中る者は、中脘にふかく針して、吐すべし。
又、水溝に針して妙なり。

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70、

虫獣 むしけものにかまるる

蛇に咬れたるは、その処に蒜(ニンニク)の片たるをしき、上に灸三壮すべし。

犬に咬れたるは、その咬たる処に灸すべし。

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71、

頓死 にはかにしする

驚て死するあり。

悲みて死するあり。

▲驚きて死し、心下温ならば、針を醫者の口中にてあたためて、兊骨を刺し、しづかに出て、穴をもめば活かへる。

▲悲み哭て死し、手足冷たりとも、口身温ならば、水溝に針して百会に灸七壮すべし。

▲目神轉らず、口に涎なく、舌卯縮らずんば、合谷に針を刺し、治を施すべし。湧泉・神道・会陰に針すべし。

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72、

諸の気付

驚き、肝をつぶし、気を上へとりあげ、絶入たるには、三里・三陰交に針すべし。

▲眠ごとく引入やうに絶入たるには百会・水溝に針して活べし。

▲腹痛て絶たるには、湧泉に針すべし。

▲胸痛で絶入たるには、三里に針すべし。

▲気付には合谷・中府・労宮・陽谿みな針してよし。

▲気付には何様なるにも神闕・関元に灸数百壮すべし。

▲魘れ死するには、両足の大拇指の聚毛の中を灸すること三五壮。

▲又、魘死、一切の卒死に、人中を灸すること三五壮。

▲又、臍の中百壮すべし。

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73、

溺死 みづにおぼれてしぬる

凡そ、水におぼれて死したるをば、一夜すぎてもすくふべし。

まづ、皀角を粉にして綿につつみ、肛門に入て、百会・関元に針灸すべし。

又、臍中に灸すべし。

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74、

脉絶 みやくたゆる

脉微細にして尋ぬべからず、あるひは絶て有ることなきがごとくは、少陰の経。

▲復溜の穴に針すべし。

圓利鍼にて針、骨の處に至り、針を順し下し刺す。

陽を回し、脉をうかがひ、脉生ずるときに、しづかに針を出すべし。

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婦人の科

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75、

婦人の科

夫、婦人は十四にして月水行り、四十九にて絶。

その病、太低男子と異なることなし。

惟、胎前、産後、月経調はず。

癥瘕(チョウ-カ:腹部腫瘤)、崩漏、帯下の證のみ同じからず。常に血虚し、気欝しやすし。

▲月水調らざるには気海・三陰交・中極・帯脉。灸一壮より過すべからず。又、肩兪効あり。

▲月水多く下るは通里・行間・三陰交。

▲月水来らず、面黄み、嘔吐し、子なきには三陰交・曲池・支溝・三里。

▲経閉は会陰(三壮)。月水通ぜずは気衝(七壮)。あるひは関元。

▲月水通ぜず、あるひは多、心下満、目遠みること能はず、腹いたまば、水泉(五壮)灸すべし。

▲崩漏、月水調はず、逆気、腹脹は血海に灸三壮。

▲漏血止ずんば太冲・三陰交。

▲血崩には気海・大敦・陰谷・太冲・三陰交・然谷・中極。

▲赤白帯下は白環・帯脉・関元・三陰交・気海・間使。

▲久き帯下は曲骨・次膠・長強。

▲月水をみる時に交合し、寒熱さし引、形痩て、虚労のごとくは腎兪・風門・中極・気海・三陰交。

▲經行のときに傷寒を病ば、期門に針す。

▲臍腹冷痛み、脇下に引痛は、中庭(廿一壮)。

▲諸節疼ば陽輔。腨腓(センヒ:ふくらはぎ)の病は崑崙・承山。

▲足緩は陽陵・冲陽・丘墟。

▲脚弱は膝関・委中・三里・陰市。

▲脚筋短急、足重腫痛み、鶴膝、歴節風は風市。

▲腰重く、脚筋攣には、両脚を曲め、両紋(四処三壮一同に灸す)。

▲腰痛は僕参(三壮)。

▲膝より上のいたみは環跳・風市。

▲膝より下は犢鼻・膝関・三里・陽陵に灸。

▲踝より上は三陰交・絶骨・崑崙に灸。

▲踝より下は照海に灸。

▲腿痛は寘骨康し。

▲脚気は風市に灸し、次に伏兎に針三分(灸すべからず)。犢鼻・膝眼・地五会・三里・上廉・絶骨。

▲一切冷つかるるには関元に灸すべし。

▲月水調はず、塊となるを癥瘕(チョウ-カ:腹部腫瘤)といふ。 関元に灸すべし。

▲血塊には復溜・三里・気海・丹田・復帯・三陰交。

▲小腹堅は、帯脉。

▲血の道は、目眩、頭つう、発熱、嘔吐して不食す。不容・風府・大椎・大杼。

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76、

妊婦 はらみおんな

▲子なきは三丘・中極。

▲又は腎兪・命門。

▲妊婦、頓に仆るることあれば、胎動して安からず。あるひは、胎衝上て、心をせめ、腹いたむには巨闕・三陰交に針すべし。

▲小産、胎堕して後、手足水のごとく厥冷するに、肩井一針すべし。針刺すことふかければ、悶へくるしむ。急に三里に刺。

▲胎落やすきは神闕に灸す。永く落ず。

▲難産、横産、死胎には合谷を補して、再は瀉すべし。三陰交・太冲。

▲横産にて子の手を出さば、産母の右の足の小指の尖の上に、灸小麦ほどにして三壮か五壮すべし。

▲胎子、手足を出さば、針にて手足の心を一分刺て、塩をぬり、徐に送入れば、子がへりして順に産す。

▲難産には至陰(三壮)、又、太衝(三壮)。

▲子心へつき上り、悶えくるしむには巨闕・三陰交を瀉し、合谷を補すべし。

▲子心に衝上り、痛み息ずは気衝(七壮)。

▲胞衣下らずは中極・崑崙・三陰交に針。
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杉山三部書、 証と治療穴から。

産前

産前には、重きものを持たず、高き所のものを取らず、腹を立てざるものなり。そうしなければ難産するとあり。

先ず逆産は足から出、横産は先ず手から出、坐産は先ず尻から出てくる。これその力のある部分から出てくる故なり。

足手先ず出すには、手足の内にて一二分の深さ、三つ四つ(針を)刺し、其の上に塩をぬる。
子供は痛がって子宮の中に戻り、ひっくり返って生るるなり。

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77、

産後

▲産後の諸病には期門。

▲悪露止ざるは気海・関元。

▲同腹痛ば陰交(百壮)、気海に灸す。期門・伏兎・関元・腎兪。

▲悪露止ず、小便しぶり通ぜずは、気海に灸すべし。

▲両脇痛ば、石門(五十壮)。

▲耳鳴、腰いたむは合谷・光明。

▲血暈には支溝・三里・三陰交に針し、気海に灸すべし。

▲卒に口噤み、語音出ざるには、承漿(五壮)。

▲血気、倶に虚するには血海(百壮)。

▲悪露行ざるは石門・三陰交・崑崙。

▲陰挺出には曲泉・照海・大敦に灸す。

▲産後、手足水のごとく冷ば肩井に針(五分)。

▲乳汁通ぜずは、壇中に灸し、少澤より針すへし、前谷。

▲乳腫痛は足の臨泣。

▲乳癰は下廉・三里・魚際・少澤・委中・足の臨泣・夾谿。

▲児の息が乳にあたりて、悪寒発熱するには百会。

▲子を妊ことを絶んと欲せば合谷・右足の内踝の上一寸に灸。

臍下二寸三分に灸三壮すれば、陽気消す。又、肩井に灸すれば永く孕まず。又、関元・陰交・石門・合谷に針灸するも。

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杉山三部書、 証と治療穴から。

産後 (2)

一、質の悪い食物や暴飲暴食によって脾胃を傷り、泄瀉し痢疾(しぶりばら)になりては治(いえ)難し。

一、産後、母の乳強張り塊り散ぜず、寒熱痛みを為すものは速やかに揉み散らすべし、
乳通じ塊り自ら消えるなり、若し消えざれば乳癰(にゅうよう:乳腺炎)となる。

一、月水(生理)通ぜざるには、曲池、三陰交、肘髎、四満、中注、間使、中極、関元。

一、産後臍腹が痛み、瘀血(おけつ)止(やま)ざるには、水分、関元。

一、難産で分娩できないものには、三陰交・合谷・至陰に灸す。

一、子宮久(ひさ)しく寒(ひえ)て孕むこと成り難き(妊娠できなくなっているものには)、中極、三陰交、子宮。
子宮穴は中極穴の傍ら三寸にあり。

一、崩漏(ほうろう)、帯下、子無し(不妊症)には、気海、三陰交、地機。

一、難産子。母の心を握って生まれざるには、巨闕、合谷、三陰交。

一、胞衣下りざるには、曲骨、腎兪、崑崙。

一、産後母の乳、足(たらざる)には、乳根、章門、絶骨、前谷。

一、産後、瘀血(おけつ)止(やま)まらざるには、関元、石門、気海。 産後の痛みに効果あり。

一、産後、腹痛するものには、腎兪、関元、気海。

一、血塊(けつかい)には、中脘、関元、腎兪。

一、赤帯下、白帯下の出るものには、帯脉、五枢、蠡溝、百会。 腎兪、関元、三陰交、も効果あり。

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78、

小児の科 ちごのりやうじ

小児の病を治すること、古人みな難しとす。  誠に証を問うの一法を闕。

故に、これを唖科と云。

しかのみならず、脉気いまだ定まらずして、浮沈極て決しがたし。

面部の外候、虎口の説、ともに闕べからず。比等に依ざれば、其証を極ること成がたし。

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79、

小児の脉法

(図22)

▲左のは肝に属す。

色青きを順とし、白きを逆とす。
赤きは肝經の風熱を主どり。
青黒きは驚風腹痛をつかさどり。
淡赤きは潮熱、痰嗽をつかさどる。

▲右の腮(えら)は肺に属す。

色白きを順とし、赤きを逆とす。
赤きこと甚しきは、咳嗽、喘息を主る。
その色、頦(おとがい:あご)へ傳(つた)れば、小便赤くしぶり、あるひは通ぜず。

▲額は心に属す。

色赤きを順とし、黒を逆とす。
青黒きは驚風、腹いたみ、契瘲(けいしょう:ひきつけ)、啼(テイ:涙を流して泣く。)をつかさどる。
少し黄なるは盗汗、驚疳、骨熱することをつかさどる。

▲鼻は脾に属す。

色黄なるを順とし、青を逆とす。
赤きは脾經の虚熱を主る。
ふかく黄なるは小便通せず。
あるひは鼻かわき、衂血(ジュクケツ:鼻血)いづることをなす。

▲頦(オトガイ:あご)は腎に属す。

色黒きを順とし、黄なるを逆とす。
赤きは腎と膀胱とに熱ありて、小便通ぜざることを主どる。
小児三歳より内は、虎口三関の紋理を見て病をしるべし(図23)。

男は左り、女は右の手の食指の本の節を風関とし、中の節を気関とし、第三の節を命関とす。

その紋、風関にあれば病あさく、治し易し。

気関にあれば病重しとす。

命関にあれば、病すでに深く治しがたし。

○紋の色むらさきは熱とし。

○赤は傷寒とす。

○青きは驚風をつかさどる。

○白きは疳の病。

○黒きは悪気に中らるる。

○黄なるは脾の困み、つかるるなり。

○淡赤きは寒熱表にあり。

○深紅は傷寒、痘疹を主とる。

○紋乱るるときは病久し。

○細なるときは腹いたみ、多く啼き、乳食消せず。

麁くして、直に指に入は、驚風をつかさどる。悪証なり。

黒く墨のごとくなるは、諸病ともに治しがたし。かならず死す。

右は心肝に應じ、左は肺脾に應ず。

魚刺の形は驚風、痰熱を主どる。

懸針の形は傷風、泄瀉、積熱を主る。

水字の形は食積、咳嗽、驚風と疳。

乙字の形は肝の病、きやうふうを主る。

虫の形は肝虫、大腸穢積を主とる。

環の形は疳積、吐逆をつかさどる。

珠のかたちは死をつかさどるなり。

乱れたる紋は虫をつかさとる也。

▲小児三歳より後は、醫者の大指ばかりにて、児の寸関尺を按候ふなり。

脉の数、呼吸の間に六七至るを常の脉とす。

是よりかず多きを熱とし、是よりかずすくなきを寒とするなり。

浮数なるは風熱とす。

○虚濡は驚風。

○緊弦は腹いたむ。

○弦急は気和せず。

○牢實は大便結す。

○沈細は冷。

○緩小沈細なるを宿食消せずとす。

○沈遅は虚とす。○

沈實を積とす。

○単細は疳労なり。

右寸関尺の脉法は、二歳よりうちといふとも、浮沈遅数を辨へ、寒熱虚實を察すべし。

十二三歳より以後は、大人と法を同じうすべし。

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80、

驚風 (きょう‐ふう:小児のひきつけを起こす病気の称)

急驚風は風熱よりおこる。

或は卒に大聲を聞き、あるひはころびて驚き、搐搦き(ちくじゃく:ひきつけや痙攣をおこすこと)、
身熱し、面赤く、口渇き、いき熱く、大小便黄赤く、目を見つめ、反張る。

前頂に灸。 若、愈ずは攅竹・人中(各三壮)。
慢驚風は久病の後、
あるひは吐瀉の後、脾胃虚し、身冷、口鼻のいき涼しく、手足びくめき、昏睡して晴をあらはし、発る時は目をみつめ、涎を流す。
▲尺澤(七壮)・顖会(しんえ)・百会(各三壮)灸すべし。

▲驚風には腕骨(最真也)・百会・前頂・上星・水溝・合谷・尺澤・中脘(ちゅうかん)・章門・少海・

長強(急驚には針すべし、慢驚には灸すべし)。
———————
杉山三部書、 病証の治療穴から。

急驚風の病状には、百会・人中・印堂・中衝・大敦・大鐘・合谷穴を使用する。

慢驚風の病状には、隠白・承泣・身中は驚疳によい。百会・承漿・人中・大敦・脾兪を用いる。
———————

参考資料

『鍼灸重宝記』 顖会 しんえ (一穴)

取穴: 上星の後へ一寸、髪際より二寸上。
灸法:灸二三(6)壮あるひは二七(14)壮、
針法:針は禁穴なり 。
主治:
脳虚冷、あるひは酒金をすごし脳痛て破がごとく、風頭眩(かしらふらつき)、
顔あをく 、 衂血(はなぢ)、面あかく 、にはかに腫れ、頭皮はれて白屑(しろくぽ)を生じ 、
鼻塞て香臭を聞ず、 驚悸、  目載上し 、昏て人を知ざるを拾す。

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81、

驚癇 てんかん・くつち

大人は癲と云。  小児は癇といふ。

その証、目眩き、搐搦(ちくじゃく:ひきつけや痙攣をおこすこと)し、涎沫を吐き、たちまち地に仆れて人をしらず。

風癇は手足をなげ、口喎(くちゆが)む。

驚癇は頭目を癈し、口目を吊し、あるひは昏く、あるひは邪視す。

食癇は肢搐き(あしびくめ:足のひきつけ)き、角弓反張、大声し、食を吐す。

飲癇は手足搐動し、食飽くことなく、あるひは数日食せず、寝中に発る。

飽くときにもおこる。

痰癇は狂のごとく、耳きこへず、目みへず、夢のごとく、酔たるごとくなり。

又曰く、

犬癇は反折、上竄(そらめ)、犬叫(いぬのこえ)をなすは肝也。

牛癇は目直視、腹満、牛叫(うしのこえ)するは脾也。

雞癇(ケイカン)は驚跳反折、手縦、雞叫(にわとり)するは肺なり。

猪癇は尸のごとく、沫を吐き、猪叫するは腎なり。

羊癇は目瞪み(メスミ:じつとみつめ)、舌を吐き、羊叫(めーとなく)をなすは心なり。

▲驚癇は頂上旋毛の中三壮。

耳の後、青絡三壮。

▲風癇は百会・崑崙・絲竹空。

▲癲癇、驚、目まひ、角弓反張に神庭(七壮)。

▲驚癇まづ驚き、怖れ、啼叫て、おこるは、後頂・百会(三壮)、耳後の青絲の脉。

▲同く舌を吐き、沫を出すには少衝(三壮)。

▲風癇、中風、角弓反張、多く哭、語言択はず、発るに時節なし、盛なるときんば涎沫を吐には百会(七壮)。

▲同く指を屈、物を数るごとくなるは、鼻上髪際(三壮)。

▲五癇は水溝・百会・神門・金門・崑崙。

▲猪癇・羊癇は、巨闕(三壮)灸して全功あり。

▲羊癇には九推の下、節の間(三壮)。又法、大椎の上(三壮)。

▲馬癇は僕参(三壮)・風府・臍中(各三壮)。

▲犬癇には両手の心、足太陽の助戸(各一壮)。

▲雞癇は足の諸陽經の穴、三臨。

▲食癇は鳩尾の上五分、灸(三壮)すべし。

▲猪癇は尸厥のごとく、沫を吐は巨闕(二壮)。

▲牛癇は鳩尾(三壮)・大椎(三壮)。

▲中悪、狐魅、てんかん、きやうふうは鬼哭に灸。

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82、

五疳 (ごかん)

▲肝疳は頭を揺がし、目しぼめき、目を揉、汗を流し、俛き伏し、筋青く身も青し、髪立、筋をいたみ、痩羸るる。

▲心疳は、面赤く、身熱し、咽渇き、小便赤く、鼻下ただれ、腹脹、口瘡、虚驚く。

▲肺疳は咳嗽多く、喘き、鼻を揉み、爪を咬み、寒熱、鼻瘡、身白色、腹脹。

▲腎疳は躰痩、身に瘡疥あり、寒熱し、雀目、足冷、嚢しめり、水を好み、声かるる。

▲脾疳は身黄み、肚大に、泄瀉、不食し、土を吃ひ、地に臥すことを好む。

▲五疳ともに肝兪・脾兪・不容・章門に灸すべし。

▲疳にて痩、脱肛、咽渇には、尾翆骨の上三寸陥中(三壮)、午時に灸す。虫出て兪る。三伏中、楊の煎湯にて浴す。

▲疳目には合谷(七壮)灸すべし。

▲牙疳は即時に腐落る。承漿(針或は灸)。

▲夏痩するには、臍上一寸に七壮灸すべし。

▲腹脹、手足腫れたるには、臍の上一寸(七壮)。

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杉山三部書、 病証の治療穴から。

疳の病には、睛明・章門・肝兪・膈兪・脾兪・上脘・中脘穴を使用する。

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参考資料:
五疳(ごかん)とは、小児が内因・外因・不外内因により五臓(肝臓・心臓・脾臓・肺臓・腎臓) のバランスが乱れ、
精神的症状(夜泣き、かんむし・ひきつけ)や肉体的症状 (食欲不振・消化不良・嘔吐・下痢)の病状ががでること。

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83、

癖積 かたかい

癖積、久しく消ぜずは中脘・章門に(七壮)、命門兪(十四壮)。

▲賁豚、身やせ、懈惰して、肩せなか挙らずは、章門に灸すべし。

▲癥瘕(チョウ-カ:腹部腫瘤)、脊強り相引くには、長強(三十壮灸)。

▲脇の下満、瀉痢、躰重く、四肢収らず、痃癖、積聚、腹いたみ、不食、腹はりて背に引、多く食しても、漸々に黄に痩るは。

▲脾の兪七壮灸すべし。

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84、

瘧疾 おこり 黄疽

▲痰瘧、そぞろ寒く、熱さしひき、脾兪(七壮)。

▲黄疽には、脾兪(三壮)灸すべし。

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85、

吐瀉 あげくだし

▲食傷によつて吐瀉し、腹いたむには上脘・中脘に刺すべし。

▲卒に肚いたみ、皮青黒は、臍の上下左右各半寸づつ四穴、灸三壮づつ。鳩尾一寸(三壮)。

▲瀉痢には神闕。

▲冷痢には臍穴二寸三寸。

▲吐乳には中庭に灸一壮、亶中。

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86、

初生雑病 はじめてうまるる

▲初生、乳を呑ざるは承漿・頬車・璇璣(せんき)。

▲初生、尻の穴なきは、三稜鍼にて刺うがつべし。ふかく刺べからず。

▲生て七日のうち、口中、齦舌の上に粟粒のごとくなるもの出て、白沫を吐き、啼て、乳をのまず。

これを臍風撮口といふ。

絹を指にまき、温湯にひたし、そろそろと擦破り、紅をぬるべし。

若、此のごとくせざれば、忽死するなり。

然谷に灸三壮、あるひは針三分(血を見す)。立効あり。

顖門(しん‐もん:幼児の頭蓋骨の泉門(せんもん)のこと。)合ざるは、臍の上下各五分(二穴に九壮)。

▲夜啼は百会に灸(三壮)、中脘に針すべし。

▲大便通ぜずは、大腸兪・神闕に灸す。

▲小便通ぜずは、関元・石門・中極に針す。

▲脱肛は長強(三壮)、臍中(三壮、あるひは年の数)。

▲久しく瘥(いえ)ざるは百会(七壮)灸すべし。

▲脱肛、瀉血は亀尾に一壮すべし。

▲重舌は舌の下に小舌を生ず。木舌は舌すくみ、木のごとくになる。 共に肺兪・脾兪・肝兪・膏肓。

▲木舌、重舌は三稜針にて舌下の紫脉を刺て、悪血を出す。

▲弄舌は口より外へ舌を出すなり。

▲四五歳まで語こと能ずは心兪(三壮)。

▲亀背は肺兪(三五壮)、あるひは膈兪・心兪。

▲亀胸は両乳の前、各一寸半に灸三壮。

▲口瘡、鵞口は上脘・中脘・下脘。

▲赤遊風は百会・委中。

▲目赤眥は、大指小指の間の後一寸半(三壮)。

▲肩腫、偏墜は関元(三壮)・大敦(七壮)。

▲腋腫、馬刀瘍は陽輔・太冲。

▲瘍腫、振寒には少海。

▲頭中瘡は陽輔・太冲。

▲遍身瘡を生ぜは曲池・合谷・三里・絶骨・膝眼(十四壮)。

▲熱風、癮疹(インシン:蕁麻疹)には肩髃(けんぐう)・曲池・曲澤・環跳・合谷・湧泉。

▲疥癬は曲池・支溝・陽谿・陽谷・大陵・合谷・後谿・委中・三里・陽輔・崑崙・行間・三陰交。

▲初生の児、病なくは、みだりに針灸すべからず。其痛に忍えがたく、五蔵を動かし、却て病を生ずべし。

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87、

神灸神針の方法

本艸綱目に曰、五月五日に桃の木の東へ引たる枝を取、削て木針とす。

雞子(たまご)の如く、長さ五六寸にして、之を乾し、もちゆるとき、綿紙三五層を以て、患る処に襯(しき)、針を将て麻油に蘸(ひた)し點著て、吹滅し、熱に乗じてこれを針すと。

又、艾葉一種を糊にてねゆし、紙につつみ、箸のごとくにし、日に乾して用ゆ。

灸するとき、紙を四重に畳み、表裏に墨点じて、灸穴に中、火針に火をつけ、墨点に當推すべし猶、口伝あり。

又、雷火神針の法あり。

熟断艾の末(一両)・乳香・没薬・川烏頭・草鳥頭・川山甲・桃樹皮の末・硫黄・雄黄(各一刃)・射香(五分)。

右末して、艾を拌ぜ、厚紙を以て裁て條と成し、薬艾を内に鋪、緊く巻て指の大さ長み三四寸にして瓶内に収め貯へ、地中に埋こと五十日。

取出し用るとき燈の上にて點着・吹滅して、紙十層をへだて、熱に乗じて患る処に針す。

熱気、直に病処に入て、其効さらにすみやかなり。並に冷水をいむ。

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 鍼灸重宝記 針灸諸病の治例 終

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