帯状疱疹 ti023

帯状疱疹 (ヘルペス)後遺症

帯状疱疹(2)

                                      ゆっくり堂鍼灸院の病気の改善例(23)

                       鍼灸治療例 小項目 番号 ti023

治療例 (23):帯状疱疹 (ヘルペス)後遺症

患者様プロフィール: 女性 54歳 国内と海外にて野外アート彫刻家&創作料理店経営

来院年月:平成2x年5月 漢方相談薬局のご紹介で来院されました。

 一番改善したい病状の特徴と経過:

現病歴

主訴は、帯状疱疹の後遺症による激痛が1日に5~6回、昼夜を問わず突然起きる。

帯状疱疹の発症部位は、右腹部と右背部に4~6ミリ経の茶色に色素沈着した湿疹が多数点在しています。

腹部では右季肋部(みぎきろくぶ)を中心に巨闕、不容、大包、京門、太乙、中脘穴を囲む部にあり、背部では大包、京門、膈兪、肝兪穴を囲む範囲にあります。

激痛は腹部では不容、承満、期門穴辺りの茶色の湿疹に一点づつ、バラバラに激痛が出ます。

背部は面的に焼きゴテを押しつけるような痛みが数分間出る事もあります。

そして、痛む時はただ耐えるのみで声も出せません。

自動車での移動時にも道路の凹凸の振動で激痛が走りますので、自分での運転はできません。

帯状疱疹の遠因としては、

2年前にM国にて、野外アート彫刻責任者として12月~5月の半年間、休みなく働いていました。

外国人との対外折衝。

日本から連れて行った従事者の面倒などの心労。

気温の変動差が激しい土地柄で冬は氷点下30度、春は砂嵐が吹く日もあり、又汗ばむような陽気の次の日には雪が降るなど、天気の変化激しい現場作業との事で、心身ともに酷使しされたようです。

病状の経過は、痛みが出だしたのは一年3ヵ月前で、3か月間は痛みのみで、皮膚症状は出ていません、その後、少し皮膚に湿疹が出だして、急速に皮膚症状が悪化します。

皮膚が真っ赤になり、熟れたザクロを開いた様なヘルペス特有のプチプチの真っ赤な湿疹となり。

赤い炎症性の水泡が現れ、それが潰瘍します。

この段階で大学病院にて、帯状疱疹と診断され、即入院。

2か月ほど入院したのち現在まで病院にて通院治療をしていました。

病院での通院治療と、漢方薬局の服薬も飲みながら鍼灸治療に来られた次第です。

副訴としては、
右側の肩から背部、腰部あたりまでが「ムズムズ」する違和感があります。

現在の使用薬は:
ペイクリニックでの注射と降圧剤及びホノミ漢方薬のロイルック錠を服用しています。

 過去の病歴:

高血圧・メニエル症があります。

 

漢方診断:

望診
身長 160cm・ 体重50kg
顔面は日焼けしていますが黄色に見えます。尺部の色は白と黄色で艶がありません。
動作は、機敏です。 雰囲気は、意志の強い人で、国内外に友人も多いようで社交的です。

聞診
五音は角(かく)音・ 五声は呼(こ)・五香は、香(こう)に感じました。

問診
食欲はあり、偏食はありません。
便通は一日1回の普通便です。
睡眠は寝つきは良いのですが、帯状疱疹の後遺症による激痛が夜間も突然起き目覚めます。
小便は昼間は7回、夜間尿はありません。

国内での職業の創作料理店経営は完全予約制です。

遠方からの来店もあり、また国内外の施主や友人の誘いで、出かけることもあるとのこと、 人生の大仕事をやり通し、優々自適の生活とのこと、
ただ、この激痛があと半分になり、自分で車の運転が出来れば他に言う事はないそうです。
鍼灸治療の経験はあります。

切 診

切経:
体全体に生気があり、手足の陽部は艶と程よい張りがあります。
臍型は正気得る丸臍型です。
背腰部も筋肉質で左右の均整も良く、艶と張りがあります。
右ムノ部に弛緩・硬結があります。 右ナソ部に緊張・弛緩があります。

腹診:
右季肋部日月・腹哀穴より斜めに臍の右側までの肺の診所、陥下し、茶色の湿疹多数あり、不容、承満、期門穴辺りの湿疹部に圧痛あり、肌全体は艶なくカサつき最も虚。
陰交穴より中脘穴のやや上までの脾の診所、艶なくカサつき虚。
臍の左下、側腹部、胆経の帯脉穴 よりきょりょう居髎穴までの 肝の診所、艶なくカサつき虚。
その他は平位と診ました。

脉診

1、脉状診・・・「浮・数・実」(古タイヤを並べたような脉)

2、比較脉診・・右手寸口沈めて肺最も虚、浮かせて大腸実。
右手関上沈めて脾虚、浮かせて胃実。
左手関上沈めて肝虚、浮かせて胆虚。
左手尺中沈めて腎虚、浮かせて膀胱実。
その他は平位と診ました。

 病症の経絡的弁別:

帯状疱疹の発症部位の右季肋部・尺部の白色・比較脉診の右手寸口沈めて肺最も虚は、肺金経の変動。

野外アート彫刻責任者として心労・五音の角音・五声の呼は、肝木経の変動。

顔面と尺部の黄色・五香の香は、脾土経の変動。

帯状疱疹の後遺症・右背部の激痛・背部、腰部の違和感は、腎水経の変動。

証決定:

以上の漢方診断四診法から、総合的に判断して、「肺肝剋調整証」としました。

適応側の判定:

病症が右にありまた、慢性病ですので「左」を適応側にしました。

 治療の予測:

元来健康で体全体に生気があり、声には艶と力、張りともにあり喋り方も明るいので、「良」と診ました。

治療方針:

帯状疱疹の後遺症が継続していると言う事は、依然として免疫力の低下がある訳ですから、本治法によって免疫力を上げる事を中心に行い。

気血を整え、生命力の強化をはかり健康を根本から促す事。

標治法はナソ、ムノ治療を適切に行い、局所の反応点をその日の状況に応じて処置し、また奇経治療の反応を診ながら処置をし、適宜、頭部から足先まで柳下円鍼にて虚の部分を撫で擦る手技を行ないます。

そして、治療の終わり方は、患者の自然治癒力が湧き出す方向に程よく向けた時を終わりとします。

また、今回は痛さのレベルを自己申告してもらうことにしました。

(現在をレベル10として、痛みが減少して0になれば完治になります。)

 施術内容と治療の経過:

1回目:5月25日

本治法:
銀鍼寸3-1番にて、左太淵穴を経に従い取穴。気が至るのを度とし、
左右圧をスーッと加え、すばやく抜鍼と同時に、鍼口を閉じる補法を行いました。

険脉すると、脉状はやや硬さが取れ、数も少しおさまりました。
そして、肺の脉が出てきました。また脾の脉はまだ十分ではありませんでしたので、
左太白穴に同様の補法を行いました。再度険脉すると、脉状は良くなりましたが、
副証の肝の脉が十分ではありませんでしたので、右太衝穴に補法を行いました。

険脉すると、陰経の脉状はほぼ整いました。
また、腹部を診ますと腹部全体に少し艶が出たように感じました。

次に陽経の脉を診ますと、古タイヤを並べたような脉が少し柔らかくなっています。
そして、胆の脉に、虚性の邪(枯)を感じましたので、ステンレス鍼寸3-1番にて、胆経の右光明穴に枯に応じる補中の瀉法を行いました。

険脉すると、中脉にほぼ纏まったものに感じましたので、
本治法を終了し、標治法に移りました。

標治法:ムノ部ナソ部の左右の緊張・弛緩を整える為に虚した部に補鍼をしました。
頭部から足先まで柳下円鍼にて虚の部分を撫で擦る手技を行ない、程よく気がみ順った所で、
1回目の治療を終了しました。

2回目:5月28日、痛さレベル10。1回目の治療と同様に処置しました。

3回目:5月31日、痛さレベル10。

ここで、奇経治療の陽蹻脉に反応を診ましたので、
右申脈→左後谿を使用。手技:5分ほど置鍼し。後、五-三で奇経灸をして終了。

4回目:6月4日、痛さレベル7。3回目の治療と同様に処置しました。

5回目:6月6日、痛さレベル7。
自分で車の運転をされて来院されました。道路の凹凸の振動で痛が出るがハンドルはぶれないとの事。

6回目:6月11日、から・・

10回目:7月4日、痛さレベル5の半分になって来ました。
この時期から、局所治療:として、治療当日の痛みの箇所にゴマ灸や糸状灸を一点一壮、直接湿疹の部に手技を加えますと、痛みが瞬時に消える様になてきました。

11回目:7月11日、から最終の14回目:8月2日痛さレベル3~5で落ち着いているとのこと。

激痛が半分になり、自分で車の運転が出来るまでになれたので、治療終了となりました。

 治療経過のまとめ :

患者さんの求めには答える治療には成りましたが、結果として完治には至らず終了になったことは、私の理と術の現状を現わすものです。

今回は経絡鍼療第476号平成22年6月号の「ヘルペス・帯状疱疹」中田光亮先生の講義を読みながら、治療過多にならないように一つずつ手技を重ね、または入れ替えて治療を試みました。

このような症状をお持ちの方は、週に一回のペースで健康促進の鍼灸治療をお勧めしたいのですが・・・

元来元気なので、鍼灸院には足が向きません・・・

でも、何かの時に頼りにしてもらえればと思います。

 

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参考リンク:言葉の説明コーナーです。ご覧ください。

漢方診断とは

本治法と標治法について。

 

 

                                 ゆっくり堂鍼灸院の病気の改善例(23)

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