七難

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難経七難

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ゆっくり堂の『難経ポイント』  第七難

※ 七難のポイント其の一は、春夏秋冬の季節に応じて脉状は変化している。

※ 七難のポイント其の二は、一年を六節に分けて、それぞれの脉状を述べてある。

(六節の区分は三陽三陰の少陽・陽明・太陽・太陰・少陰・厥陰です。後述に参考表作成します。)

※ 七難のポイント其の三は、鍼灸師は四季に応じた脉状を認識して、季節に合った脉を作る事。

※ 七難のポイント其の四は、

現代社会(先進国)は夏には冷房、冬には暖房、放射能被爆、大気汚染等と自然に身を任せた時代とは異質の状況にある。

よって、これも考慮して脉状を考察しなければならない。

 

 井上恵理先生の難経第七難の纏(まと)めの言葉。

季節と脉の関係で、季節によって脉と言うものは病気に関係なく動いている。
私達の脉は夏に成ると浮いて来て、冬になると沈んで来ます。
それじゃ冬は陰虚に成って、夏は実になるかと言うとそうではない。
これを旺脉と言うと。
脉を診る場合にはこうした季節と言うものも考えなさいと第七難で注意をしている訳です。

難経 第七難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

七難曰.
經言.
少陽之至.乍大乍小.乍短乍長.
陽明之至.浮大而短.
太陽之至.洪大而長.
太陰之至.緊大而長.
少陰之至.緊細而微.
厥陰之至.沈短而敦.
此六者.是平脉.將病脉耶.
然.
皆王脉也.
其氣以何月各王幾日.
然.
冬至之後.得甲子少陽王.
復得甲子陽明王.
復得甲子太陽王.
復得甲子太陰王.
復得甲子少陰王.
復得甲子厥陰王.
王各六十日.六六三百六十日.以成一歳.
此三陽三陰之王時日大要也.

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七難の訓読

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(420号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

七の難に曰く、
経に言う、
少陽の至る乍大、乍小、乍短、乍長、
陽明の至る、浮大にして短、
太陽の至る、洪大にして長、
太陰の至る、緊大にして長、
少陰の至る、緊細にして微、
厥陰の至る、沈短にして敦、
此の六つのものは是れ平脉なりや、将(は)た病脉なりや。
然るなり、
皆王脉なり。
其の氣何月を以て各々王すること幾日ぞや。
然るなり、
冬至の後、甲子を得て少陽王ず。
復た甲子を得て陽明王ず。
復た甲子を得て太陽王ず。
復た甲子を得て太陰王ず。
復た甲子を得て少陰王ず。
復た甲子を得て厥陰王ず。
王ずること各六十日、六六、三百六十日以つて一歳と成す。
此れ三陽三陰の王ずる時日の大要なり。

詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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七難の解説

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、 山口一誠の考察文にて構成しました。)

七難の解説をします。
陰陽五行理論から考察すると。
少陽の季節には、(ある時)大、小、短、長、と言う脉(脈)を打っている。
陽明の季節には、浮大にして短の脉を打っている。
太陽の季節には、洪大にして長の脉を打っている。
太陰の季節には、緊大にして長の脉を打っている。
少陰の季節には、緊細にして微の脉を打っている。
厥陰の季節には、沈短にして敦(なん)の脉を打っている。
以上の六つの季節の脉は健康な人の正しい脉であるのか、あるいは病人の脉状であるのか。
お答えします。
これらは全て旺気の脉である。季節に相応する正しい脉であると。
三陰三陽の気は自然界(天地)や人間の身体の内において旺気する月日はいつであるか、又何日間であるのか。
お答えします。
少陽の気が旺気するのは冬至の後の甲子から次の甲子の前日「癸亥」の間である。
陽明の気が旺気するのは2回目の「甲子」の日より60日間である。
太陽の気が旺気するのは3回目の「甲子」の日より60日間である。
太陰の気が旺気するのは4回目の「甲子」の日より60日間である。
少陰の気が旺気するのは5回目の「甲子」の日より60日間である。
厥陰の気が旺気するのは6回目の「甲子」の日より60日間である。
旺気は60日間ずつあり、60日×6回で、360日すなわち1年となる。
これが、三陽三陰に脉が旺気する月日の大要である。

 

詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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七難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(420号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、 山口一誠の考察文にて構成しました。)

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕七難曰
〔訓読〕七難に曰く。
〔解説〕七難の解説をします。

〔原文〕經言.
〔訓読〕経に言う。
〔解説〕陰陽五行理論から考察すると。

原文:少陽之至.乍大乍小.乍短乍長.
訓読:少陽の至る乍大、乍小、乍短、乍長、
解説:少陽の季節には、(ある時)大、小、短、長、と言う脉(脈)を打っている。

言葉の意味:「乍」は(たちまち)又は(ある時)(その季節)の意味です。
「少陽」とは(その年の冬至の後の初めての甲子の日より60日間)

原文:陽明之至.浮大而短.
訓読:陽明の至る、浮大にして短、
解説:陽明の季節には、浮大にして短の脉を打っている。

原文:太陽之至.洪大而長.
訓読:太陽の至る、洪大にして長、
解説:太陽の季節には、洪大にして長の脉を打っている。

原文:太陰之至.緊大而長.
訓読:太陰の至る、緊大にして長、
解説:太陰の季節には、緊大にして長の脉を打っている。

原文:少陰之至.緊細而微.
訓読:少陰の至る、緊細にして微、
解説:少陰の季節には、緊細にして微の脉を打っている。

原文:厥陰之至.沈短而敦.
訓読:厥陰の至る、沈短にして敦、
解説:厥陰の季節には、沈短にして敦(なん)の脉を打っている。

原文:此六者.是平脉.將病脉耶.
訓読:此の六つのものは是れ平脉なりや、将(は)た病脉なりや。
解説:以上の六つの季節の脉は健康な人の正しい脉であるのか、あるいは病人の脉状であるのか。

原文:然.皆王脉也.
訓読:然るなり、皆王脉なり。
解説:お答えします。これらは全て旺気の脉である。季節に相応する正しい脉であると。

言葉の意味:「王」は旺(おう)で盛んと言う事で、また、相応するの意味もあります。
:「旺気する」とは、天地の気に従って陰陽の気の盛衰する事、すなわち相応する事である。

原文:其氣以何月各王幾日.
訓読:其の氣何月を以て各々王すること幾日ぞや。
解説:三陰三陽の気は自然界(天地)や人間の身体の内において旺気する月日はいつであるか、又何日間であるのか。

原文:然.冬至之後.得甲子少陽王.
訓読:然るなり、冬至の後、甲子を得て少陽王ず。
解説:お答えします。
少陽の気が旺気するのは冬至の後の甲子から次の甲子の前日「癸亥」の間である。
少陽はその年の冬至の後の初めての「甲子(きのえ、ね)」の日より60日間である。
平成二四年の冬至は12月21日です。
平成二四年の「甲子」12月29日から平成二五年の「癸亥」2月26日の60日間が少陽です。

原文:復得甲子陽明王.
訓読:復た甲子を得て陽明王ず。
解説:陽明の気が旺気するのは2回目の「甲子」の日より60日間である。
平成二五年の2回目の「甲子」2月27日から平成二五年の「癸亥」4月27日が陽明です。

原文:復得甲子太陽王
訓読:復た甲子を得て太陽王ず。
解説:太陽の気が旺気するのは3回目の「甲子」の日より60日間である。
平成二五年の3回目の「甲子」4月28日から平成二五年の「癸亥」6月26日が太陽です。

原文:復得甲子太陰王.
訓読:復た甲子を得て太陰王ず。
解説:太陰の気が旺気するのは4回目の「甲子」の日より60日間である。
平成二五年の4回目の「甲子」6月27日から平成二五年の「癸亥」8月25日が太陰です。

原文:復得甲子少陰王.
訓読:復た甲子を得て少陰王ず。
解説:少陰の気が旺気するのは5回目の「甲子」の日より60日間である。
平成二五年の5回目の「甲子」8月26日から平成二五年の「癸亥」10月45日が少陰です。
原文:復得甲子厥陰王.
訓読:復た甲子を得て厥陰王ず。
解説:厥陰の気が旺気するのは6回目の「甲子」の日より60日間である。
平成二五年の6回目の「甲子」10月25日から平成二五年の「癸亥」12月23日が厥陰です。

平成二五年の冬至は12月22日である。
平成二五年の冬至の後の初めての「甲子」は12月24日である。この日より少陽始まる。

原文:王各六十日.六六三百六十日.以成一歳.
訓読:王ずること各六十日、六六、三百六十日以つて一歳と成す。
解説:旺気は60日間ずつあり、60日×6回で、360日すなわち1年となる。
閏調整ありです。

原文:此三陽三陰之王時日大要也.
訓読:此れ三陽三陰の王ずる時日の大要なり。
解説:これが、三陽三陰に脉が旺気する月日の大要である。

 

 井上恵理先生の第七難の纏(まと)めの言葉。

季節と脉の関係で、季節によって脉と言うものは病気に関係なく動いている。
私達の脉は夏に成ると浮いて来て、冬になると沈んで来ます。
それじゃ冬は陰虚に成って、夏は実になるかと言うとそうではない。
これを旺脉と言うと。
脉を診る場合にはこうした季節と言うものも考えなさいと第七難で注意をしている訳です。

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参考資料①

少陽はその年の冬至の後の初めての「甲子(きのえ、ね)」の日より60日間である。?

平成二四年の冬至は12月21日    平成二六年の冬至は12月22日

平成二四年の①「甲子」12月29日   平成二七年の①「甲子」12月19日
少陽
平成二五年の②「甲子」2月27日    平成二七年の②「甲子」2月17日
陽明
平成二五年の③「甲子」4月28日    平成二七年の③「甲子」4月18日
太陽
平成二五年の④「甲子」6月27日    平成二七年の④「甲子」6月17日
太陰
平成二五年の⑤「甲子」8月26日    平成二七年の⑤「甲子」8月16日
少陰
平成二五年の⑥「甲子」10月25日   平成二七年の⑥「甲子」10月15日
厥陰
平成二五年の冬至は12月22日   平成二七年の

平成二五年の①「甲子」12月24日

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十干(じっかん):甲 ・乙 ・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸

甲 (きのえ) 乙 (きのと) 丙 (ひのえ) 丁 (ひのと) 戊 (つちのえ)
己 (つちのと) 庚 (かのえ) 辛 (かのと) 壬 (みずのえ) 癸 (みずのと)

十二支(じゅうにし)は、子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥 。

子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・
未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い)。

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十二支は古来、

「甲子(きのえ、ね)」「丙午ひのえ、うま」「癸亥(みずのと、い)」のように、

十干と組み合わせて用いられてきた。

字音から言えば、十干は「幹」、十二支は「枝」である。

十干十二支を合わせたものを干支(「かんし」または「えと」)といい、

干支(十干十二支)が一巡し起算点となった年の干支にふたたび戻ることを還暦という。
ーーーーーーーーーーーーーーー
十二支

二支(じゅうにし)は、

子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥 。

子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・
未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い)。

の総称である(それぞれ音訓2通りの読み方がある)
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(図nk3)の説明文。(文章内にウィキペディアよりの引用含む。)

十干(じっかん)は、陰陽五行を表している。

十干は甲 ・乙 ・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10種類からなる。

甲 (きのえ) 木の兄:陽: 草木の芽生え、鱗芽のかいわれの象意 。
乙 (きのと) 木の弟:陰: 陽気のまだ伸びない、かがまっているところ。

丙 (ひのえ) 火の兄:陽: 陽気の発揚 。
丁 (ひのと) 火の弟:陰: 陽気の充溢 。

戊 (つちのえ) 土の兄:陽:“茂”に通じ、陽気による分化繁栄 。
己 (つちのと) 土の弟:陰:  紀に通じ、分散を防ぐ統制作用 。

庚 (かのえ) 金の兄:陽: 結実、形成、陰化の段階 。
辛 (かのと) 金の弟:陰: 陰による統制の強化 。

壬 (みずのえ) 水の兄:陽: “妊”に通じ、陽気を下に姙む意 。
癸 (みずのと) 水の弟:陰: “揆”に同じく生命のない残物を清算して地ならしを行い、
新たな生長を行う待機の状態 。
以上

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参考図

十干(じっかん)は、陰陽五行を表している。

十干は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の十種類からなる。

図nk3

nk3

 ゆっくり堂鍼灸院 山口一誠

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