五七難

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難経 第五十七難

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ゆっくり堂の『難経ポイント』第五十七難

※ 五十七難のポイント其の一は、
下痢症には五つの分類が在る。
1.胃泄。2.牌泄。3.大腸泄。4.小腸泄。5.大瘕泄、別名を裏急後重と言う。。

 ※ 難経第五十七難 臨床&エトセトラより。

〔井上恵理先生の難経五十七解説から〕 下痢治療の注意点、 臨床に役立ちます。参照されたし。

下痢症の治療で臨床的に気を付けなくてはならない事。

これは治療法になりますが、

1.胃泄。2.牌泄。と言うのは大体に於いて牌虚が多い様です。

3.大腸泄は、肺虚症である場合が多い。

5.大瘕泄、別名を裏急後重と言う口うのは腎虚証に多い。

何れも熱がないので実証でない場合が多い。

熱があっても下痢をしている時は、脉が沈んでいる方が治りいい。


4.小腸泄なんかで膿血を下していて脉がポッコン ポッコン出ている時、

 こう言う実証で脉が浮いている時には、まず手を付けない方がいい。

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 難経 第五十七難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

五十七難曰.
泄凡有幾.皆有名不.
然.
泄凡有五.其名不同.
有胃泄.有脾泄.有大腸泄.有小腸泄.有大瘕泄.名曰後重.
胃泄者.飮食不化.色黄.
脾泄者.腹脹滿.泄注.食即嘔吐逆.
大腸泄者.食已窘迫.大便色白.腸鳴切痛.
小腸泄者.溲而便膿血.少腹痛.
大瘕泄者.裏急後重.數至圊而不能便.莖中痛.
此五泄之法也.
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五十七難の訓読

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(464号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

五十七の難に臼く、
泄に凡(およ )そ幾(いくば )くか有るや。皆名有るやいなや。
然るなり、
泄に凡そ五有り、其の名同じからず、
胃泄有り、牌泄有り、大腸泄有り、小腸泄有り、大瘕泄(だいかせつ)有り、
名けて後重(こうじゅう)と日う。
胃泄は飲食化せず、色黄なり、
牌泄は腹脹満し、泄注す、食すれば、即ち嘔吐し逆す。
大腸泄は食し已(や)みて窘迫(きゅうはく)し、大便の色白く、腸鳴し切痛する。
小腸泄は洩(もら)して膿血を便し、小腹痛む。
大瘕泄は裏急後重(りきゅうこうじゅう)し数々圊(かわや:wc)に至って、しかも便すること能わず、茎中痛む。
此五泄の要法なり。


詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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五十七難の解説

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(464号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

五十七難の解説をします。

急性の下痢には幾つの種類があるのか、またそれらの名称を示して説明しなさい。

お答えします。

急性下痢症は五つの分類が在る。
1.胃泄。2.牌泄。3.大腸泄。4.小腸泄。5.大瘕泄、別名を裏急後重と言う。。

胃泄は消化不良が原因です。消化せず色が黄色です。 胃は土に属する故に土の色の黄色なのかな。
これは気持ちよくグーッと下る下痢症です。

牌泄は、お腹が張って下痢する。
胃泄の方はお腹が張らない。下痢してお腹がぺシャンコになってしまう。
そしてご飯が、胃泄の方は食べられるが、牌泄の方は食べられない。食べると直ぐに吐く。
吐逆する。嘔気は吐き気、吐逆と言うのは本当に吐く。
「声なくして物あるを吐となし、声あって物なきを嘔となす。」と言うのが嘔と吐の区別です。
嘔と言うのは気だけの病、物を吐(は)かない。
吐と言うのは血の方も病んでいるから物を吐く訳です。
ウエッと呻いて吐物を吐くのは気も血も病んでいることに成ります。

大腸泄は食べなければ下らない。食ると迫って来て下痢する。臍の周りが痛む。
食後直ちに下腹部でゴロゴロと腸が動き、便が肛門にせまって来て我慢が出来なくなり、
大便したくなる、大使の色は白く、腸が常に鳴ってキリきりと甚しく痛む。
子供の大腸泄の場合は粘液便などが出る。そしてお腹が鳴ってチクチク痛む。

小腸泄は下痢に膿血が混じって出て来る。 そして下っ腹が痛む。小便が出なくなる。

大瘕泄の方は「裏急後重 」と言うのが主症状です。
裏急後重と言うのは、大便所へ行って終わって出て来ても何かお尻が下へ下がりそうな感じがする。
「裏急 」と言うのは「お尻が」と言う事で、「後重」は後ろへ重くなる。
便が出たい様だから便所に行くんですね。ところが出ない。
便所から出て来るとまた行きたくなる。行ってみると出な い。
これは痢病、ドツと下らずピリピリと渋る所謂「渋り腹」と言うものです。
そして「茎中痛む 」は男根が痛む。

以上の下痢症の五つの分類は、重要な経絡鍼灸理論の区別の方法である。

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  五十七難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(464号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕五十七難曰.
〔訓読〕五十七の難に臼く。
〔解説〕五十七難の解説をします。

〔原文〕泄凡有幾.皆有名不.
〔訓読〕泄に凡(およ )そ幾(いくば )くか有るや。皆名有るやいなや。
〔解説〕急性の下痢には幾つの種類があるのか、またそれらの名称を示して説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕
泄凡有五.其名不同.
有胃泄.有脾泄.有大腸泄.有小腸泄.有大瘕泄.名曰後重.
〔訓読〕
泄に凡そ五有り、其の名同じからず、
胃泄有り、牌泄有り、大腸泄有り、小腸泄有り、大瘕泄(だいかせつ)有り、
名けて後重(こうじゅう)と日う。
〔解説〕
急性下痢症は五つの分類が在る。
1.胃泄。2.牌泄。3.大腸泄。4.小腸泄。5.大瘕泄、別名を裏急後重と言う。。

〔原文〕胃泄者.飮食不化.色黄.
〔訓読〕胃泄は飲食化せず、色黄なり、
〔解説〕
胃泄は消化不良が原因です。消化せず色が黄色です。 胃は土に属する故に土の色の黄色なのかな。
これは気持ちよくグーッと下る下痢症です。

〔原文〕脾泄者.腹脹滿.泄注.食即嘔吐逆.
〔訓読〕牌泄は腹脹満し、泄注す、食すれば、即ち嘔吐し逆す。
〔井上恵理先生の難経五十七臨床解説から山口一誠の考察解説文〕
牌泄は、お腹が張って下痢する。
胃泄の方はお腹が張らない。下痢してお腹がぺシャンコになってしまう。
そしてご飯が、胃泄の方は食べられるが、牌泄の方は食べられない。食べると直ぐに吐く。
吐逆する。嘔気は吐き気、吐逆と言うのは本当に吐く。
「声なくして物あるを吐となし、声あって物なきを嘔となす。」と言うのが嘔と吐の区別です。
嘔と言うのは気だけの病、物を吐(は)かない。
吐と言うのは血の方も病んでいるから物を吐く訳です。
ウエッと呻いて吐物を吐くのは気も血も病んでいることに成ります。

〔原文〕大腸泄者.食已窘迫.大便色白.腸鳴切痛.
〔訓読〕大腸泄は食し已(や)みて窘迫(きゅうはく)し、大便の色白く、腸鳴し切痛する。
〔解説〕
大腸泄は食べなければ下らない。食ると迫って来て下痢する。臍の周りが痛む。
食後直ちに下腹部でゴロゴロと腸が動き、便が肛門にせまって来て我慢が出来なくなり、
大便したくなる、大使の色は白く、腸が常に鳴ってキリきりと甚しく痛む。
子供の大腸泄の場合は粘液便などが出る。そしてお腹が鳴ってチクチク痛む。

〔解説補足〕
窘迫(きゅうはく)とは、大便が肛門の方に窘(せま)り、迫(せま)って便意を催し、急に大便したくなること。
便色が白いのは、大腸が肺金に属し五色は白色であるから。

〔原文〕小腸泄者.溲而便膿血.少腹痛.
〔訓読〕小腸泄は洩(もら)して膿血を便し、小腹痛む。
〔解説〕小腸泄は下痢に膿血が混じって出て来る。 そして下っ腹が痛む。小便が出なくなる。

〔解説補足〕
ここに来ると、大腸カタルの部に入って来る。
小腸は心火の腑である、心は血を生ずる所である。又小便を分別する所である。

〔原文〕大瘕泄者.裏急後重.數至圊而不能便.莖中痛.
〔訓読〕
大瘕泄は裏急後重(りきゅうこうじゅう)し数々圊(かわや:wc)に至って、
しかも便すること能わず、茎中痛む。

〔井上恵理先生の難経五十七解説から〕
大瘕泄の方は「裏急後重 」と言うのが主症状です。
裏急後重と言うのは、大便所へ行って終わって出て来ても何かお尻が下へ下がりそうな感じがする。
「裏急 」と言うのは「お尻が」と言う事で、「後重」は後ろへ重くなる。
便が出たい様だから便所に行くんですね。ところが出ない。
便所から出て来るとまた行きたくなる。行ってみると出な い。
これは痢病、ドツと下らずピリピリと渋る所謂「渋り腹」と言うものです。
そして「茎中痛む 」は男根が痛む。

〔原文〕此五泄之法也.
〔訓読〕此五泄の要法なり。
〔解説〕以上の下痢症の五つの分類は、重要な区別の方法である。

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〔井上恵理先生の難経五十七解説から〕 下痢治療の注意点

1.胃泄。2.牌泄。3.大腸泄。4.小腸泄。5.大瘕泄、別名を裏急後重と言う。。

これは治療法になりますが、1.胃泄。2.牌泄。と言うのは大体に於いて牌虚が多い様です。

3.大腸泄は、肺虚症である場合が多い。

5.大瘕泄、別名を裏急後重と言う口うのは腎虚証に多い。

何れも熱がないので実証でない場合が多い。
熱があっても下痢をしている時は、脈が沈んでいる方が治りいい。

下痢をして肱がピョコンビョコン出ているので「潟法をしなくちゃならんかな? 」なんて言うのは、気を付けた方がいいです。危ない。

殊に

4.小腸泄なんかで膿血を下していて脉がポッコン ポッコン出ている時には、
まず 「御免下さい。」 と言 って帰った方がいいですね。

「これは実証だ。潟法をやれば治るんだ。」と言 って潟法をやると、
明日行くと忌中の札が下がっている。

こう言う実証で脉が浮いている時に気を付けなくちゃならんのが、 この下痢症です。

日射病もそうです。日射病の場合にも が浮いていたら、まず手を付けない方がいい。

脉がなくなっている程いい。必ず効くから治る。

こう言う事 が臨床的に気を付けなくてはならな い事だと思 いますね。

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井上恵理先生の難経五十七、質問コーナーより。

質問: 知熱灸の場合、リウマチで発赤腫脹して熱が患部にある時は知熱灸はやらないがいいですか?
井上 : 局所的な実証なら大丈夫です。所謂、経病の実証に使うものだと思えばいい。
標治法ですから。但し発赤腫脹の場合は非常に熱がらないですから、気を付けないと火傷させちゃいますからね。熱がない場合は熱いのが早く判るから案外いいですが、温感がなくなっちゃう。熱感だけしかない。だからズーッと下まで燃えて行って、「熱い!」と言った時に取ると、
もう火ぶくれになってトいる。そう言う場合には向うで言わない内に、もうこの辺で取ておこうと 一言う風に取っておいた方がいいですね。

質問:(続き)その場合、一番発赤腫脹の所にやった方がいいですか?それとも周囲に?
井上: 周囲にやった方がいい。それから、やり過ぎない事。「あんなに刺激が弱いんだから、幾らやってもいいだろう。」なんてやるのは間違いです。例えば膝関節の場合、膝蓋骨の周りが腫れていましょう?私は大抵五ヶ所です、多くやっても。もっと少ないのは三 ヶ所位でいいですね。それ以上やると却って治らな い。
質問:(続き)  一壮位 ですか?
井上 :  一壮ずつです、そんなに早く治さんでもいいですよ。余り欲をかくといけない。

治るものは治そうとしなくても、早く治るものがあるんです。却ってこっちが治そうとすると悪くする事が多いからね。既定の事をやったら、それ以上余分な事をやらない事ですよ。
例えば、経絡治療で聞いた事をやって、それからどこかの本に出ていたのはこうだからと言ってまたやる。どこかの 講義で開いたからまたやるなんて。汽車の上に自動車を載せて、自動車の上を自転車で走ろうなんて。 これは一番危険な事です。加減と言うのは一番難しいと思います。まあ、凡そ失敗はやり過ぎて失敗する事が多いんじゃないですか? やり足りなくて失敗なんて事は絶対ないでしょう?治らないだけの話です。 (笑 い ) 所謂、失敗しない事が一番の開業の秘訣ですよ。
失敗した方は広まり易い。成功したのはなかなか広まらない。金を出して治療して貰ったのだから当たり前だと思っているんだね。金を出したのに悪くしゃがったと。 これは広まる訳ですよ。

質問:積はどの積が一番治り易 いですか?
井上: 治りにくいですよ、皆。あれは医者に行ってもどうにもならない。
そんなに早く治るものじゃないですね、確かに。

質問: 今、私がやっている患者ですが、
胃 ・ の上からミゾオチにかけて竪くなっているんですね。肝臓も腫れて下がっている様です。それで本人も胃酸過多で、もう一歩で胃潰蕩になるんだと言う訳です。酒を朝でも夜でも毎日飲んで、小説か何かやっている人らしいんですが、 徹夜をすると飲みながらやっているんで、飲まなきゃいいと言う事は判っているんだけれども、 飲まなきゃや仕事が出来ない悪い癖が付 ちゃったと・:。
井上:  それは、酒をやめさせる事が一番大事な事です。
私が酒をやめさせる方法を教えてあげる。 「やめろ」と絶対言 ちゃダメですね、あれは。 「酒、どうでしょうか? 」って必ず聞くからね。悪い事は自分で知っている。知っていて聞くんだから逆の事を言う。「飲みなさい。 その代わり、苦しんでも病気が悪くなってもしょうがない。」 とね。 「日本は人口が多いんだから、あんた一人位死んでもいいだろうよと。 これは一番 いいですね。 (笑 い ) そうするとや めますよ。必ずやめる。今まで随分とめたんだけど、絶対ダメ。

質問:  積聚の積は気ですか?血じゃないですか?
井上: いや、気だけれども血まで及んでいるヤツです。所謂、病の伝変と言うのは気だから、
気が変化して初めて血に至る。血の変化と言うのはない訳です。そこに留まるからね。
だから気が変化して血に及んだものを積と言うのです。

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