(一)頭 部
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このコーナーでは臨床に直接役立つ経絡鍼灸の証決定・本治法・標治法の方法を述べます。
参考文献は、小里勝之(こさとかつゆき)先生の臨床発表「論考:身体各部の病症と経絡鍼灸治療」を
ベースにして、 ここに、『鍼灸重宝記』と、HPゆっくり堂の経絡鍼灸教科書を加えて構成します。
また、適宜、東洋はり医学会の臨床経験文を参考に考察を行います。
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鍼灸師の先生方のご意見・間違いの指摘・などを、当院へお送りくだされば幸いです。
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部位 | 特 徴 |
頭部 | 小里勝之(こさとかつゆき)先生の臨床発表 |
首から上を頭部と言い、 顔面含める。経絡では全ての陽経は頭に上がり或いは下っている。 頭部は陽の支配を受けている為に頭寒足熱の言葉の如く、頭は冷えを好むのである。「頭は諸陽の会、生命の府なり、五臓六腑の気血は皆ここに会す」 |
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ゆっくり堂の『難経ポイント』四十七難 | |
※ 四十七難のポイント其の一、人間の顔はいつもヌードである。 ※ 四十七難のポイント其の二、全ての陽経脉の始終穴だけが顔の両耳の幅上にある。 ※ 四十七難のポイント其の三、陽は熱であり、機能旺盛です、だから、顔は寒に耐えるのです。 ・ゆっくり堂の『難経ポイント』第四十七難リンクしてご覧ください。 http://yukkurido.jp/keiro/nankei/47nan/ |
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頭蓋部 | 経絡流注の特徴 |
後頭部から頭頂部、前頭部 | 正中線を督脉が巡り、その傍らを膀胱経、胆経が巡る。 |
側頭部 | 胆経、三焦経、小腸経、胃経、が巡る。 |
深部 | 脳海(脳髄)には心経が巡り、肝経は首から目の奥、眠茎に巡り、視神経の部を通って 百会穴に出で、下って目から口中に散じる。 |
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頭痛の種類 | 特徴 |
真髄痛 | 現代医学で言う脳膜炎や蜘蛛膜下出血(クモ膜下出血)、 尿毒症などからの激しい頭痛。「劇症・難治症である」「夕べに起これば朝に死し、朝に起これば夕に死す」 |
蕨頭痛 厥逆頭痛 |
鍼灸治療の対象になる頭痛 |
ゆっくり堂の『難経ポイント』六十難 | |
六十難のポイント其の一は、頭部の病と心(胸部)の病に、厥痛と真痛とがある。 厥頭痛・真頭痛・蕨心痛・真心痛。 |
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六十難のポイント其の二は、厥痛は治り易いが、真痛は治り難い。 | |
六十難のポイント其の三は、 厥頭痛とは、手の三陽の脉、陽明大腸経、少陽三焦経、太陽小腸経の三脉は皆頭部を循って いる。若し風寒の邪が比等の経脉を傷り冒して、而(しか)も邪が経脉に伏し留っている時は 外邪性の頭痛を発病するとがある。これを厥頭痛と名ける。 真頭痛とは、頭部に痛みが深く入って、錐で刺すが如き劇しく痛みで治り難い。・ |
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詳しくは、ゆっくり堂の『難経ポイント』第六十難をリンクしてご覧ください。 http://yukkurido.jp/keiro/nankei/60nan/ |
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頭痛の部位 | 特徴 | 弁証と治療方法、その効果 |
蕨頭痛頭頂部の痛み | 風邪を引いて、頭頂部が痛む場合、膀胱経を実邪が犯していることが多い。 | 腎虚陽実証の場合には腎経、肺経を補い膀胱経を瀉す。肺虚証では大腸の実邪が、その子膀胱経に流れている場合には肺経、脾経を補い 太めの鍼(三号鍼位)で先ず膀胱経の郄穴金門を瀉すと、ここち良い響きが天柱穴から前頭部にかけて伝わる。 これだけで楽になることがある。 これを行い検脉し、未だ大腸経に邪が残っている場合はこれも瀉法を加える。 |
蕨頭痛耳の上から 風池にかけて 痛む場合 |
胆経の変動として、 肝虚胆実証か、 肺虚あるいは脾虚で、 肝虚の相剋調整を行う。 |
肺肝相剋証・肝肺相剋証 脾肝相剋証・肝脾相剋証 |
蕨頭痛側頭部痛 | 特に片頭痛は主に胆経の変動として、 続いて、小腸経、三焦経の変動 |
メマイをともなうものには、肝虚陽実証。 吐き気を伴うものには、肝虚脾虚相剋証。 咳嗽寒熱を伴うものには、肺虚肝虚相剋証で、 大腸経・胃経に邪のある場合が多い。 |
目の上 眉毛の附近の痛み |
膀胱経、胆経の変動。 | |
前頭部 痛み・重苦しい |
胃経の変動。 | |
頭全体が重苦しい 頭重 |
肝虚証、腎虚証に多い。 |
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頭痛の随伴症 | 弁証・特徴 | 治療方法、その効果 |
眩暈(めまい)メニエル氏病 | 多くは肝の変動。肝虚証か肝の陰実(冷えや湿邪が直接肝経を犯すもの) 静かにしていても天井が、クルクル回る様に感じ、頭を少しでも動かすと一層激しく目が回り気持ちの悪いもの。 |
本治法に重点を置いて処理すべし。 |
立ちくらみ (頭暈) |
起立性のメマイ。平衡感覚失調 激しい運動をするとグラグラと目が回る。 |
主に腎虚証。 |
眩暈(めまい) | ゆっくり堂鍼灸院の治療例より | |
頭位置変換性の眩暈(めまい)、朝、急激に足が地に着かず身体がふらつく状態となり、 歩き出すとめまいがして平衡感覚を失う。 やっとのことで、ベッドに戻り、仰向けに寝るも、 少しでも頭が動くと、 天井や壁がガタガタと揺れだし、左回転に天井が回りだす。・詳しくは「頭位置変換性の眩暈(めまい)」の 鍼治療をリンクしてご覧ください。 http://yukkurido.jp/shinkyu/tirei/ti026/ |
施術内容:脉診と弁証から「肺虚肝実証」にて本治法をしました。初めに、こめかみの部に実所見が有りますのでここにステン1番鍼にて置鍼を行います。 |
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症例 | 経過 | 治療方法、その効果・診たてポイント |
眩暈 ♀51歳 主婦 |
来院継続者、喉が悪く常に肺肝相剋証にて治療中、突然のメマイ。 昨日外出先で豪雨に会い、びっしょり濡れて帰宅、その時は何とも無かったが、 今日朝からメマイが酷いとの訴え。 |
脉診:肺虚肝実証になっている。 これは、湿邪が肝経を犯して起きた症状と診て、 肺虚を補い。後、肝実を処理。 即座に頭が楽になりメマイも治まる。 |
小里勝之先生の自己治療平衡感覚失調 | 患者の治療中に急に平衡感覚失調し物に摑まらなければ立つことも歩行も出来なくなった。 | 血圧:180-110の腎虚証。 |
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東洋はり医学会、経絡治療実践講座 第1集より抜粋。
☆ 頭痛 ☆
講師:谷内秀鳳先生・坂田文夫先生・松本菊雄先生
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谷内秀鳳先生のお話しから。
危険な頭痛とその脈状
頭がガンガン痛く頭を抱えた状態、鍼をしてはいけないと感じた、病院に送り2日後に人後不明、死亡。
脈状は激しい頭痛は実脈になるが、なにしろ沈んだ遅い脈状であつた。
頭痛における刺鍼法について。
局所をよく触診し、その部位が硬く突っ張り、いかにも実的な感触を得たならば「瀉的」に刺鍼する。
ブヨブヨしていかにも虚した感じの時は「補的」に刺鍼する。
ただ、気が上昇し頭痛がする時は、頭部への刺鍼は避けた方が良い。
頭部に刺鍼すると益々気が上がって痛みが増す。逆に遠隔操作で気を下げる治療が良い。
しかし、陽虚証、気虚証のように、頭部への気の不足が原因の頭痛に対しては頭部えへの治療も必要です。
また、更年期障害に診られる瘀血性の頭痛には、刺絡が有効です。
瘀血性の頭痛の証は肺虚肝実とか脾虚肝実が多いです。
瘀血性の頭痛の体質・症状は、肌が垢づき汚い・耳が硬くて曲げると痛い・爪の生え際が黒くなっている・身体中に血絡や細絡が診られる・
歯根(茎)が汚い色が悪い・唇の色がどす黒い・左天枢から大巨穴にかけて、硬結や圧痛の所見を診る。
本治法における陽経の処置
頭痛の場合、陽経の処置しないと早期の治療には導けない。
特に陰虚証(陰虚内熱):例えば腎虚、肝虚で陽経に邪が出ていて、その邪(虚熱)が陽経である、膀胱経や胆経を通じて頭に上昇し頭痛を発症するときは、陽経の処置が必ず必要です。
本治法の手技の基本:陰経を充分に補いますと、陽経に邪の脈(塵・枯・堅)が浮き上がります。これを捕らえて、補中の瀉にて処理します。
逆に陽虚の場合は陽が虚して頭が冷えて痛いこともあります。この時は陽経を補い頭部まで陽気を循らせ治療します。
脉状と証:
沈遅実の脉状で、証が肺虚肝実証。
沈遅実の脉状は、陰実証が考えられます。
陰実証は、瘀血性の頭痛・癪聚・水毒などが陰実に入る証です。
改善には時間が必要です。沈んでいる脈が段々と浮いてきて陽経にしっかりとした邪が出れば、改善の方向に向かいます。
浮数の脉状の頭痛は治りやすいですね。
癪聚(しゃくじゅう)
病には、癪病(冷えの邪気が体内に長い間とどまって、冷えの積み重なり)や、聚病(冷えの集まり)もある。
脉状と証:
浮数の脉状で、証が腎虚証。
腎虚で浮数の脉状なら、陰虚証(陰虚内熱)より、
脉は浮いて数虚になりますから治り易い頭痛ですね。
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谷内秀鳳先生の症例発表から抜粋。
年齢 性別 お仕事 |
主訴 | 副訴・既往歴 | 望診・聞診・切診・脉診・ 証決定・適応側・弁別評価 |
本治法・標治法 治療経過・施術効果 |
8♂ 小学生 |
39.5度の高熱 3日前の冷えこみで風邪を引く |
3歳より、喘息、鼻炎で月1回来院、 本治法にて体質改善。 |
脉状:浮洪数実。 証決定:肺虚陽実証。弁別評価: 典型的な陽実症: 陽分や陽経に外邪が侵入して発症。 |
本治法: 肺、脾を早手刺しにて補う。 全陽経の絡穴:浮実に応じる絡瀉。標治法: 瀉的散鍼:頭部全体、後頸部、背腰部施術効果: 治療終了時にジワーと汗をかき、 その夜はたっぷりと汗をかき、 翌朝は37度の体温に回復。 |
29♀ OL |
右側偏頭痛 | 20歳頃より、 排卵時、生理開始時に 右側偏頭痛が発現。肩こり、眼精疲労、 便秘、生理時は下痢、身体全体の冷え、 頭痛も冷えて痛む。貧血、低血圧。 |
体格:中肉中背、色白。 脉状:沈遅虚。 中脉の幅はやや広い。 硬軟:柔らかい。 滑濇:しょく濇脉(渋り)証決定:肝肺相克調整の証 適応側:左。:右側偏頭痛、 左側中脉が充実していた。弁別評価: 陽虚すれば外寒すの典型的な陽虚タイプであり、 気虚血虚の証であるので、 頭部に陽気をめぐらす事で治癒させる。 |
本治法: 左曲泉・陰谷、右太淵・太白に補法。 このときの手法: 「濇脉には、撚(ひねり)こそ妙なり」 鍼を軽く押しつけるようにして左右圧をかけて、 竜頭を1/4(90度)回す。陽経の処置: 三焦経(原穴:陽池)、胃経(足三里) 病側より補法(全体が虚しているので)検脉:渋った脈は滑らかになり、中位に整う。標治法: 中脘、関元、天枢(胃)に補法。 陽虚であるので、 背腰部「督脈」上の反応点、 特に虚下部位に補法。 (週1回の治療) |
46♀ 居酒屋のおかみ |
首、肩の異常なこり、 頭が締め付けられるように痛む。 安静にしても、投薬でも改善しない。 |
居酒屋の開店1年目、 経営は安定してきたが疲労困憊状態である。 夏でも、足が冷え、顔が火照る、 上半身に発汗、動悸、 不眠、息切れ(更年期症状) 3ヶ月生理がない。 |
脉状:浮やや数虚。 脉の幅は痛みがあるのでやや細い。 滑濇:濇。 硬軟:やや硬め。証決定:腎虚心の旺気実。弁別評価: 腎虚による陰虚内熱である。 腎が虚したことで、虚熱が陽経である、 膀胱経や胆経を通じて頭に上昇し頭痛を発症したもです。 また、腎虚による熱が上昇し熱の多い心臓に更に熱をもたらし、 動悸、不眠、息切れを惹起したもである。 |
本治法:右復溜、尺沢に補法。 手法:「濇脉には、撚(ひねり)こそ妙なり」検脉:心の旺気実まだあるので、左脾経から輸瀉。 検脉:心の邪が治まる。陽経の処置: 左飛陽(膀胱経 絡穴)光明(胆経 絡穴) 右外関(三焦経 絡穴)に 枯の手技(補中の瀉)標治法: ナソ、ムノを中心に施術。 完骨、風池、(足の少陽胆経)天柱(ぼ)に深瀉浅補。 腰部の八髎の反応穴にも深瀉浅補。 治療後の評価: 施術効果:3回の施術で全て改善。 |
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坂田文夫先生のお話しから。
頭痛における刺鍼法について。
脈状により、施術法を変える。
たとえば、浮脈で上実下虚と診たならば、
ナソ周辺は軽く、腰部を中心に施術する。
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坂田文夫先生の症例発表から抜粋。
年齢 性別 お仕事 |
主訴 | 副訴・既往歴 | 望診・聞診・切診・脉診・ 証決定・適応側・弁別評価 |
本治法・標治法 治療経過・施術効果 |
87♂ | 頭頂痛: 百会の前、神庭あたりに手掌を乗せたような痛み。 |
既往歴: 病院に月2回通院 肺がん手術を受ける。 |
望診:155cm、 やや小太り、 色やや浅黒い。 |
月に4回来院中、 主訴は疲労・高血圧・下痢。 だんだん歩行困難になる。脳神経外科の診察を進めた結果 「脳腫瘍」の診断を受ける。 |
72♂ | 緊張型頭痛。頭が締め付けられるように痛む。病院での治療でも改善しない。 | 既往歴: 20数年来、年に7回来院中・・ 普段は肩こりや疲労で治療中 |
望診:165cm、中肉中背、 脉状:浮やや数実証決定:肝肺相克証 |
本治法: 陰経:左曲泉・陰谷、右太淵・に補法。 陽経:飛陽・外関を瀉法標治法 :中脘、関元、天枢(胃)ナソを処置。 :瘂門、天柱、上天柱、を処置。 :背腰部の虚を補う。施術効果:この治療1回で改善。 |
33♀ 週1回来院中 |
左側偏頭重: コメカミが痛い 脈を打つような痛み。右側・後頭部にもでることあり。 |
既往歴: 慢性腎炎で来院中、 顔、まぶたに浮腫。 足の冷え。タンパク・潜血プラス3。 |
望診:165cm、中肉、顔色青白い脉状:沈数虚証決定:肝脾相克証 | 本治法: 陰経:右曲泉・陰谷、左太白・に補法。 陽経:左光明、飛陽、外関を補中の瀉で処理。標治法 :中脘、関元、天枢を処理。 :天柱、風池を含む、ナソを処理。。 :背腰部の虚、特に腰部を補う。左側偏頭重: コメカミが痛い部には治療はしていない。施術効果: 鎮痛剤の服用は無くなった。 |
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松本菊雄先生のお話しから。
危険な頭痛とその脈状
脉状:沈数虚。特に数が際立っている。
「陰虚火動」の脈状であった。
生命力最後の活動状況これに診る。
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標治法に関して、
風池、天柱は欠かすことのできない経穴です。
この部は非常に硬い部位ですが、非常に敏感な部位でもありますから、慎重に刺鍼痛を与えないように処理します。
この部位の手技は本治法の刺鍼手技の心構えで、穴所に静かに鍼を置き静かに緩むのを待つような手捌きをします。
また、項部頸椎の脊柱側周辺をよく切経し、所見に静かに刺鍼すると良い。
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松本菊雄先生の症例発表から抜粋。
年齢 性別 お仕事 |
主訴 | 副訴・既往歴 | 望診・聞診・切診・脉診・ 証決定・適応側・弁別評価 |
本治法・標治法 治療経過・施術効果 |
50♂ | 右後頭痛、 肩凝り、 右後頚痛、 |
既往歴: 軽い、鼻炎、喘息。 |
脉状:浮やや数虚。証決定:肺肝相克証。
弁別評価: |
本治法:陰経: 左太淵・太白に補法。(銀寸3、1番) 右中封(肝経金)輸瀉。 陽経は(用鍼S3、1番)大腸経、胃経、胆経の 絡穴に枯の手技(補中の瀉)標治法: 風池、(足の少陽胆経)天柱(ぼ)、 頚肩背部のナソに処置。 施術効果: |
55♀ | 右偏頭痛。肩こり。 頸腕症候群。 |
既往歴:帝王切開。子宮筋腫の手術。 | 脉状:沈遅虚。証決定:肺虚肝実証弁別評価: 更年期の逆気や頸腕症候群の延長からの頭痛と考えた。 過敏タイプなので、誤治に注意。 |
本治法:左太淵・太白に補法。(銀寸3、1番) 右蠡溝(肝絡穴)に枯の手技(補中の瀉) 三焦経にも邪が診られたので、補中の瀉を加える。標治法: 風池、天柱、ナソに処置。 附分穴(ぼ下2の3寸)付近に大変な凝りと圧痛あり、 皮内鍼を貼付。 (週1回・月1回・3ヶ月に1回の治療) 施術効果:偏頭痛改善 |
57♀ | 不眠、 頭重、 左顎関節症、 |
娘、出産のため、同居中。不眠になる。 精神不安。 イライラ。35歳、子宮筋腫の手術 |
脉状:浮数実。 非常に硬い脈。証決定:肺虚肝和法。弁別評価: 左関上肝の脈所に堅(ケン)の実脈に対し、和法を考えた。 大腸経にも邪、左曲池に著名な硬結圧痛が診られた。 |
本治法:右太淵・太白に補法。(銀寸3、1番) 左太衝に和法。 陽経は(用鍼S3、1番)大腸経、枯の手技(補中の瀉)標治法: 風池、天柱、翳風(三)、ナソに処置。 背部散鍼、膻中(任脈・八会:気会)PM粒を貼付。 膏肓に皮内鍼を貼付。 施術効果: 同様治療隔日4回めでほとんど改善。 週2回・週1回の来院中、 |
真頭痛症例
40♂ |
頭痛 | 脉状:沈実大 左関上部に固定して実脈がある |
3回の施術、脳腫瘍にて死亡。(第三者より後日聞く)癌が存在する場合、 陰の深い診所に実脈を診る。 |
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頭部の所見り、
※ 緊張型頭痛は頭部に瀉的散鍼がある。
※ 偏頭痛には、その部位には直接刺鍼はしないこと。
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『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例より | ||
部位 | 特徴 | 治療穴 |
頭痛・かしらいたむ | 頭は諸陽経の首也。風寒の頭痛は鼻塞り、悪かん発熱す。湿は頭重し、食滞は額の正中いたむ。左邊痛は気虚、 右は血虚、 夜痛み苦し 眉輪骨いたむは痰火なり。真頭痛は脳巓の底にとをり、 痛みはなはだしく、手足冷、 臂とひざより上までひへ上るは、 半日に死す。 |
▲百会・風池・風府・合谷・攅竹・曲池・腕骨・京骨・合骨・衝陽・風市・三里。 |
▲頭重く鼻塞るには、百会に刺すべし。 | ||
▲目眩き、頭のかわ腫には、前頂に刺す。 | ||
▲項強り、悪寒せば、後頂に針すべし。 |
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『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例より | ||
病状 | 特徴 | 治療穴 |
めまい | 諸(ものもろ)の眩暈(めまい)はみな肝に属す。 風邪上り攻、 痰雍りて眩暈をなし、 あるひは気虚失血、 あるひは陰虚火動、みなよく此証をなす。 風眩は脉浮にして汗あり。 痰は脉弦にして滑なり。 |
【針】上星・風池・天柱・臨泣・風府・陽谷・中渚・梁門。 |
【灸】上星・顖会(しんえ)・前頂・百会・風門・厥陰。 |
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頭痛の治療穴 、めまいの治療穴、部位と使用目的。
『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例より
頭痛の治療穴
▲百会・風池・風府・合谷・攅竹・曲池・腕骨・京骨・合骨・衝陽・風市・三里。
めまいの治療穴
【針】上星・風池・天柱・臨泣・風府・陽谷・中渚・梁門。
【灸】上星・顖会(しんえ)・前頂・百会・風門・厥陰。
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頭痛の治療穴
百会穴:
19 百会 (ひゃくえ) 所属経絡:督脈・ 取穴部位:前髪際を入ること5寸、正中線上に取る.
『鍼灸重宝記』百会穴:(一穴) ( 別名:三陽五会、巌上、天満 )
取穴: 前頂の後へ一寸五分、前の髪のへぎはより五寸上、旋毛の中にあり、両の耳の尖の官、頭の直中なり 。
灸法:七壮あるひは三五(15)壮。
針法:針二分又は四分、
主治:
頭風、中風、言語謇渋(げんご げんじゅう:どもる病状)、 口噤(くちつぐ)み、半身かなはず、
心煩れ悶へ、驚悸(驚き動悸する)、健忘(ものわすれ)、痎瘧(がいぎゃく:おこり)、脱肛、
風癇、角弓反張、羊鳴 ・多く突て語言そろはず 、発る時は死入、沫を吐き 、汗出、乾嘔(からづき)し 、
酒を飲て面赤く 、脳重く、鼻ふさがり 、頭痛、 メマイ、食に味なき、 を主る。百病を治す。
▲頭重く鼻塞るには、百会に刺すべし。
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風池・
20 風池(ふう ち) 所属経絡:胆経・ 取穴部位:乳様突起下端と瘂門穴との中間で、後髪際陥凹部に取る. (注)僧帽筋と胸鎖乳突筋の筋間の陥凹部髪際にある.
『鍼灸重宝記』風池 (ふうち)(二穴)
取穴: 脳空の後へ 、耳の下面の通り 、項の竪の髪際の陥の中 、すなはち推ば耳の中へ応る処。
灸法:灸七壮。
針法:針三四分あるひは七分、留ること三呼、
主治:
傷寒々ねつ、 温病、汗出でず、 目眩(くるめ)き、 あるひは偏正の頭痛、痎瘧(がいぎゃく:おこり)、
頚項ぬくがごとく痛を主る 。
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風府・
15 風府(ふうふ) 所属経絡:督脈・ 取穴部位:外後頭隆起の下方にあり、後髪際を入ること1寸に取る.
『鍼灸重宝記』 風府(ふうふ) (一穴) (一名舌本)
取穴: 強間の後二寸五分、後の髪際より一寸。
灸法:禁灸なり 。
針法:針三四分、留ること三呼、
主治:
中風、舌緩まり語らず、振寒汗出て、身重して、悪寒、づっう 、項強て回顧ことを得ず、
偏風半身かなはず、はなぢ、咽喉はれ痛み、傷寒、狂走、 目妄に視るを治す。
頭の百病、黄疸を主る。 傷寒、づっう 、悪風、発熱、身疼痛む者、或は耳聾、脇痛、嘔して口苦く 、
頭痛、寒熱往来する者、 並に風池、風府に刺すべし 。
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合谷・
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攅竹・
2攅竹(さんちく) 所属経絡:膀胱経・ 取穴部位:眉毛の内端陥凹部に取る.
『鍼灸重宝記』攅竹(さんちく) (二穴)
取穴: 両眉の頭、すこし毛の中へ入、陥の中。
灸法:禁灸、
針法:針一分。
主治:
目暗く涙出、眼赤いたみ、 瞳かゆく 、臉瞯(せんかん)動し 、頬いたみ、尸厥(しかばねけつ)、
風眩、 てんかん、 狂乱、鬼魅をつかさどる。
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曲池・
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腕骨・
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京骨・
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合骨・
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衝陽・
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風市・
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三里・
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めまいの治療穴
【針】
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上星・
22 上星 (じょうせい) 所属経絡:督脈・ 取穴部位:前髪際を入ること1寸、正中線上に取る.
『鍼灸重宝記』 上星 (一穴) (一の名は神堂)
取穴: 神庭の後五分、髪際に入こ と一寸賂中。
灸法:灸五社。
針法:針三四分、留ること六呼、
主治:
頭痛、面赤く腫れ、皮はれ、鼻中に息肉いで鼻ふさがり 、痎瘧(がいぎゃく:おこり)、汗不出、
めまひ、 目じりいたみて、遠くみることあたはず、吐血、はなぢを治す。
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風池・
20 風池(ふう ち) 所属経絡:胆経・ 取穴部位:乳様突起下端と瘂門穴との中間で、後髪際陥凹部に取る. (注)僧帽筋と胸鎖乳突筋の筋間の陥凹部髪際にある.
『鍼灸重宝記』風池 (ふうち)(二穴)
取穴: 脳空の後へ 、耳の下面の通り 、項の竪の髪際の陥の中 、すなはち推ば耳の中へ応る処。
灸法:灸七壮。
針法:針三四分あるひは七分、留ること三呼、
主治:
傷寒々ねつ、 温病、汗出でず、 目眩(くるめ)き、 あるひは偏正の頭痛、痎瘧(がいぎゃく:おこり)、
頚項ぬくがごとく痛を主る 。
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天柱・
9天柱(てんちゅう) 所属経絡:膀胱経・ 取穴部位: 瘂門穴の外、1寸3部に取る.(注)頭半棘筋の膨隆部の外縁に当たる.
『鍼灸重宝記』天柱 ( 二穴)
取穴: 項の後の髪際の中行より左右へ一寸三分づっ開きて、大筋の外廉、陥の中。
灸法: 禁灸、
針法:針二分五分、留ること三呼して、瀉すること五吸。
主治:頭風、鼻・香臭を聞ず、頭(かし)らふらつき、脳痛み重く 、頂いたみ、項強る、を主どる。
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臨泣・
15 頭臨泣 (あたまりんきゅう) 所属経絡:胆経・ 取穴部位:瞳孔の直上で、神庭穴と頭維穴を結ぶ線上との交点に取る.
『鍼灸重宝記』臨泣 ( 二穴)
取穴: 目の真中の行の上、髪際より五分上、すなはち神庭の左右へ二寸二分 半づっ開く。
灸法:禁灸。
針法: 針二分、留ること五呼、
主治:
目眩(くるめ)き、 目痛み、 白翳(はくりゅう:ぬける)を生じ 、悪寒、鼻塞、驚風、てんかん、反視、
卒中風、月水通ぜぬに。
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風府・
15 風府(ふうふ) 所属経絡:督脈・ 取穴部位:外後頭隆起の下方にあり、後髪際を入ること1寸に取る.
『鍼灸重宝記』 風府(ふうふ) (一穴) (一名舌本)
取穴: 強間の後二寸五分、後の髪際より一寸。
灸法:禁灸なり 。
針法:針三四分、留ること三呼、
主治:
中風、舌緩まり語らず、振寒汗出て、身重して、悪寒、づっう 、項強て回顧ことを得ず、
偏風半身かなはず、はなぢ、咽喉はれ痛み、傷寒、狂走、 目妄に視るを治す。
頭の百病、黄疸を主る。 傷寒、づっう 、悪風、発熱、身疼痛む者、或は耳聾、脇痛、嘔して口苦く 、
頭痛、寒熱往来する者、 並に風池、風府に刺すべし 。
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陽谷・
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中渚・
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梁門。
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めまいの治療穴
【灸】
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上星・
22 上星 (じょうせい) 所属経絡:督脈・ 取穴部位:前髪際を入ること1寸、正中線上に取る.
『鍼灸重宝記』 上星 (一穴) (一の名は神堂)
取穴: 神庭の後五分、髪際に入こ と一寸賂中。
灸法:灸五社。
針法:針三四分、留ること六呼、
主治:
頭痛、面赤く腫れ、皮はれ、鼻中に息肉いで鼻ふさがり 、痎瘧(がいぎゃく:おこり)、汗不出、
めまひ、 目じりいたみて、遠くみることあたはず、吐血、はなぢを治す。
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顖会(しんえ)・
21 顖会(しん え) 所属経絡:督脈・ 取穴部位:前髪際を入ること2寸、正中線上に取る.
『鍼灸重宝記』 顖会(一穴)
取穴: 上星の後へ一寸、髪際より二寸上。
灸法:灸二三(6)壮あるひは二七(14)壮、
針法:針は禁穴なり 。
主治:
脳虚冷、あるひは酒金をすごし脳痛て破がごとく、風頭眩(かしらふらつき)、顔あをく 、
衂血(はなぢ)、面あかく 、にはかに腫れ、頭皮はれて白屑(しろくぽ)を生じ 、
鼻塞て香臭を聞ず、 驚悸、 目載上し 、昏て人を知ざるを拾す。
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前頂・
20 前頂 (ぜんちょう)所属経絡:督脈・ 取穴部位:百会の前1寸5分、鼻尖を的に正中線上に取る.
『鍼灸重宝記』 前頂 (一穴)
取穴: 顖会の後へ一寸半 、前の髪の際より三寸半上、骨の間陥の中。
灸法:灸三壮あるひは二七(14)壮、
針法:針一分あるひは四分。
主治:
頭風、面赤くはれ、水腫、てんかん、眩暈(めまい)、 きゃうふう 、(けいじゅう)、
腫れ痛むことを主る。
▲目眩き、頭のかわ腫には、前頂に刺す。
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百会・
19 百会 (ひゃくえ) 所属経絡:督脈・ 取穴部位:前髪際を入ること5寸、正中線上に取る.
『鍼灸重宝記』百会穴:(一穴) ( 別名:三陽五会、巌上、天満 )
取穴: 前頂の後へ一寸五分、前の髪のへぎはより五寸上、旋毛の中にあり、両の耳の尖の官、頭の直中なり 。
灸法:七壮あるひは三五(15)壮。
針法:針二分又は四分、
主治:
頭風、中風、言語謇渋(げんご げんじゅう:どもる病状)、 口噤(くちつぐ)み、半身かなはず、
心煩れ悶へ、驚悸(驚き動悸する)、健忘(ものわすれ)、痎瘧(がいぎゃく:おこり)、脱肛、
風癇、角弓反張、羊鳴 ・多く突て語言そろはず 、発る時は死入、沫を吐き 、汗出、乾嘔(からづき)し 、
酒を飲て面赤く 、脳重く、鼻ふさがり 、頭痛、 メマイ、食に味なき、 を主る。百病を治す。
▲頭重く鼻塞るには、百会に刺すべし。
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風門・
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厥陰:
13厥陰兪(けついんゆ)心包経の兪穴。 所属経絡:膀胱経。 取穴部位:第4・第5胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.
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▲項強り(うなじのこわばり)、悪寒せば、後頂に針すべし。
項強り、悪寒の治療穴
後頂穴
18 後頂 (ごちょう) 所属経絡:督脈・ 取穴部位: 百会穴の後1寸5分、正中線上に取る. 大後頭神経
『鍼灸重宝記』 後頂 (一穴) (一の名は交衝)
取穴: 百会の後へ一寸五分、 前の髪際より 六寸半。
灸法:灸五壮、
針法:針二分三分四分。
主治:
頂強り、額上痛み、悪風寒く 、風眩、 目 ( 目十( 流-氵) 々、歴節し て汗出、狂走、
不寝、 癇癪発、(けいじゅう)、 偏頭痛を主どる。
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