切診

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   切診 (せっしん)

項目 番号  b104

 「切診」とは、身体の特定の部位に触れることで診断を行うことです。

切診は三つの方法により行われます。

切経診・脉診・腹診の三つの方法です。

そして、脉診は脉状診(六祖脉)と比較脉診、検脉から構成されます。

 (切診チャート図を参照。)b10421

 また、脉証腹証一貫性のルール②から、治療後に「検脉」と「腹診」を行います。

(治療後の検脉と再腹診のチャート図を参照。)

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脉証腹証一貫性のルール②について。

「治療後即診断」
経絡鍼灸の施術おいては、例えば、一箇所のツボ(穴)に鍼を施術したならば、その後すぐにその施術の良否を検証判断できます。
その検証の部位が脉診部と腹診の診所(診察場所)です。
正しい良い施術を行えたら、脉が整い、正常な腹部に変化して行きます。

これが、脉証腹証一貫性の意味です。

 

腹診:肝心脾肺腎を診ます。 臍型も診ます。

切経診:十二経絡の流中を診ます。

脉診:脉状診(六祖脉)と比較脉診の2たつを診ます。

脉状診 (六祖脉) :浮・沈・数・遅・虚実。

比較脉診:左右の寸口・関上・尺中の脉を比較します。

検脉:手技の成否の確認を診ます。

経絡鍼灸では、「脉診」が重要なポイントになります。

- 参考図書 -

著者:柳下登志夫先生「経絡治療学原論上巻臨床考察‐基礎・診断編」より、

【 】( )は山口一誠の考察文です。

  切診 (せっしん)

頁:28・平成14年2月 収録から、

【 四診のポイント:患者が来院したら、その人本来の元気で健康な姿をイメージする。】

診断は望・聞・問・切から順を追って、あるいは慣れてくると同時に進められる。

この時、治療家はまず『平人』をシッカリと心に描き、

目の前にいる患者のどこが異なっているかを知ることから始まる。

頁:29・平成14年2月 収録

【 切診(触察)は術者の観察が主体である。 】

【 切診は気の変動を知る 】

【 切診は気の巡り具合を調べる。】

触察は、「気の変動を知る」目的で経絡を触察する。
この場合は患者の感じ(気持ちが良い悪い・圧痛・鈍麻)よりも、
術者の観察を主とし、各経絡の気の巡り具合を調べ、間違いのない様に努める。

頁:72~74・平成15年4月

【 切 診: 穴の標準位置と「生きて働いている穴」反応点 】

まず穴の標準位置を知ることである。
温溜・支正・豊隆・飛陽これらの穴も標準位置から離れた部位に反応点として現れることが多いが、何はともあれ、標準位置を求めてから、
「生きて働いている穴」反応点を探すのが順序である。

【 切 診:反応点とは非生理的な部位と言う事になる。】

ではその反応点とはどの様なものか?要するに周囲との比較において、
非生理的な部位と言う事になる。
血絡・細絡・湿疹等も含めてその形は色々ある。
これらの生きて働いている穴を求めるには、証に従って理論的に取穴するだけに終始せず、そんの経絡を追ってもう少し広い範囲を観察する必要がある。
特に陽経は思わぬ部位に反応が現れていることがあり、それを処置すると意外な効果を上げられる。
胃経・胆経・三焦経に散在する血絡・細絡・湿疹はその例である。
頚腕症候群・むち打ち症・高血圧を始め、物質代謝障害・免疫関係や膠原病にも効果を上げられる処置となる。

【切 診:】

「生きて働いている穴」を捕らえるには、理論的に正しく、
そこであっても最終的には左右にある穴の虚実あるいは周囲との比較等を綿密に行って、
理論を患者の身体に当てはめる事に止まらず、術者の感覚・診察力を生かして取穴する。

〔経絡〕理論の上に患者の身体の状態を重ねて取穴する。この態度を忘れてはならない。
【切 診:自分が置いた指先の部位が他の部分と比較して虚しているか実しているかを判定する修練につきる。】

熟達した上工の指先は直感的に、いま働いているツボに吸い寄せられ、
すばらしい整脉力を上げ得るものであるが、そのための指頭感覚の訓練こそ誠に重要である。
しかしそれにはまず正しい穴位を正確に熟知しなければならない。――原論上巻p131より、

上工の指先を我々がものにする方法は唯一、
自分が置いた指先の部位が他の部分と比較して虚しているか実しているかを判定する修練につきる。
更に他の部分との比較において、虚実の差を弁えて補瀉できれば上工に近づいたといえる。

この時またしても「上工への道の険しさ」を悟らされる。

頁:61・平成14年12月 収録

〔 触覚所見・温度の左右差・適応側 〕

【触覚所見:皮下のコロコロ】

経の流注に沿って湿疹・血絡あるいは皮膚を軽く撫でると、
皮下にコロコロと豆状の反応が触知される。
これらの所見が診断を下すのに大変役立つと共に、治療に応用して効果大である。

【温度の左右差大は、病が上がり坂】

また発熱時には、患者の身体の温度の左右差が大きい時はまだ病が上がり坂、
これが揃ってくると病気が治まる方向に向かっていることが多い。

【適応側:】

大抵は温度の高いほうが適応側になり、反応点もそちらに現れることが多い。

頁:64・平成15年2月 収録

【 左志室穴(第二腰椎左に3寸)辺りの結状物は要注意。】

なかでも志室穴あたり、特に左の固い骨の様な結状物は腰、下肢の異常をもたらすと共に、進んでは腹内・骨盤内の臓腑やそれら周辺の病変に大いに係わることになる。
治療的価値よりも予防的価値を重視すべきである。

〔よって、本治法を中心として、未病を治す治療が必要な人である。〕

【膀胱経は陽経であり、感受性高い、現象を踏まえた治療方法を望む 。】

その他、臀部下肢に至っても、この経の流注は範囲が広く、急性・慢性病を問わず反応点が多く現れる。
これらの処置は欠かせないが、とかく鍼が深く灸は硬いひねりで壮数も多くなりがちだが、この経は陽経であり、感受性の高い経絡である事を思い起こしてみたい。
外邪が侵入し易く、激しい症状を起こし易い。
それは治療方法もその現象を踏まえて処方すべきである。

【 腎臓疾患の時には浅く反応が出る 】【 腎経は反応が深い 】

また腎兪穴と腎臓疾患とは少し反応の出方も異なり、
腎経は深いというが、腎臓疾患の時には意舎・胃倉・志室・京門・章門辺りに浅く反応が出ることが多い。

頁:153・平成17年6月 収録

【診断、総論(四診法):切経(せっけい)】

鍼灸術を施すに当たって、切経は欠かす事のできない診察法であり、
特に我々経絡治療を信奉する者にとっては切経・腹診・脉診は重要視されなければならない診察法である。
そこで各経絡について切診の立場からこれを切経すると、
圧診・擦診等より圧痛・擦痛・知覚鈍麻・痺れ・冷え感・心地よさ・嫌な感じ・圧すると病巣部ぬ感じる良感・悪感・等々・・・
― この診察の際「患者の言葉」だけによっては―
これ等の反応は患者によって様々であり、その有無は総て術者の行為→患者の表現力→診察結果という、
患者を通しての診察法であり、そこには術者の主体性が欠如している為、誤診に繋がりかねない恐れがある。

【術者の主体的診察こそがより完全な診断に近づける。】

例えば、多角的な熱・冷え・緊張・弛緩・高まり・陥下・湿疹・皮膚炎・細絡・血絡等は患者の意識を経ず、術者によって診察可能な病変である。
故に術者の診断が主体性を持って下せる。
また施術後の観察も具体的な評価を下す事ができる。
しかしこれ等の病巣は気の変動を越えて、血の結ぼれとなり、形として顕現(けんげん)するもので、その診断も容易であるが、治療の段階では治療回数と日数をようする。
患者にもそれを前もって知らせておく事。

頁:166・平成17年10月 収録

【 切 経 】

切経時に於ける基本概念 : 本文(原論p325)

「赤く腫れ緊張して熱感があり、冷やして心地よく、圧せば痛んで不愉快なものは実。」

「冷えて痩せ痺れ、弛緩して軟弱、温めると快く皮膚乾燥し、圧して心地よきは虚。」

径絡変動は流注に沿って現れる。
湿疹・皮膚炎・血絡・皮下の列状の硬結等も流注上に現れる。
もちろん複数の経絡が重なる事もある。
手足の流注ははっきりと分かれるが、それ以外の部位では経絡が重なり合い巡っている事は、周知の通りである。
注意すべき事は、
如何にその経絡の流注に病症が集中していても、それが即主証に繋がるとは限らないという点である。


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詳しくは、
「経絡治療学原論(上巻)臨床考察 ―基礎・診断編」をお読みください。

発刊:東洋はり医学会
http://www.toyohari.net/book.html

元東洋はり医学会会長の筆者:柳下登志夫先生が、
福島弘道著「経絡治療学原論(上巻)」をテキストとし講義した中で、
臨床上重要な箇所を抜粋したものです。
柳下登志夫著  定価3,000円 (送料400円) A5 230貢

※ 筆者柳下登志夫の60年に及ぶ治療経験、
1日100人を越える患者さんと向き合い、臨床を通して古典を再検討したものです。
時代により変わりつつある患者さんの病に十二分に対応できるバイブルとなっています。
現代に生きる経絡治療家には必携の書籍です。

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終わりに、

鍼灸師の先生方の、ご意見・間違いの指摘・などを、当院へお送りくだされば幸いです。

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