腎水経の変動 c208

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  腎水経の変動

                    小項目 番号 c208

⑧ルート 足の少陰腎経

現代経絡鍼灸実践例から鍼灸古典文献を考察する。

黄帝内経・素問・霊蘭秘典論 第八、六節
(コウテイダイケイ・ソモン・レイランヒテンロン)

腎者作強之官  : ジンハサクキョウノカン
伎巧出焉    : ギコウコレヨリイズ
三焦者決涜之官  : サンショウハケットクノカン
水道出焉    : スイドウコレヨリイズ
膀胱者州都之官  : ボウコウハシュウトノカン
津液藏焉    : シンエキコレニクラス
氣化則能出矣  : キカスルトキハスナワチヨクイズ

腎者 作強之官・伎功出焉

(腎は精力の維持管理をし細かい巧みな仕事をする)

腎臓および「足の少陰腎経」は先天の原気(両親から受け継いだ命の元)を主る。
それは、個体の維持、生存、生殖を主っている。
漢方医学の陰陽五行論は、万物の発生は「水」に始まると考える。
ゆえに、水臓である腎と腎経は個体の生存、発育に大きく関与していると解するのである。

内経を中心とした流注・・・・

〇 流注 ・ 経穴

膀胱経の終わる所、至陰穴より、足の裏に至り、湧泉穴 より外経が始まり、内果の後を通り、 三陰交に交わる(これは足の脾・腎・肝の3陰経の交わる所である)。
下腿の後内側を通リ膝の後内側にある陰谷穴に至り、大腿の後内側を通って、 尾骨先端の督脈経の長強穴に入り、出でて前に行き任脈経の外側5分のところを上がって、 臍の傍ら肓兪(こうゆ)穴より中に入って腎に属会する。
これより任脈経を下って膀胱をまと絡う。
その直行するものは、上がって肺に入り、出でて気管を循り舌根に終わる。
支脈は肺より出でて任脈を下り、心蔵穴の部にて心臓を絡(まと)い胸中に注(そそ)ぐ。

⑧ルート 足の少陰腎経  内経を中心とした流注図  c2081

c2081

〇 【腎経】 取穴上の注意

膝蓋骨尖から内果尖 1尺5寸(WHO国際標準骨度)
脛骨内側顆下縁から内果尖 1尺3寸

⑧ルート 足の少陰腎経(27穴)

1湧泉(ゆうせん)  井木穴  足底中央の前方陥中で、足指を屈すると最も陥凹する部に取る.
2然谷(ねんこく)  栄火穴  内果の前下方、舟状骨粗面の直下に取る.
3太谿(たいけい)  兪土原  内果の最も尖ったところの高さで、内果とアキレス腱の間陥凹部、動脈拍動部に取る.
4大鐘(だいしょう)絡穴  太谿穴の下5分で踵骨上際、アキレス腱の前陥凹部に取る.
5照海(しょうかい)     内果の直下1寸に取る.
6水泉(すいせん) 郄穴    太谿穴の下1寸で、踵骨隆起の前、陥凹に取る.
7腹溜(ふくりゅう)経金穴  太谿穴の上2寸で、アキレス腱の前に取る.
8交信(こうしん)       腹溜穴の前方、腹溜穴と脛骨内側縁の間に取る.
9築賓(ちくひん)     太谿穴の上5寸で、腓腹筋下垂部とヒラメ筋の間に取る.
10陰谷(いんこく)合水穴  膝を少し屈曲し、膝窩横紋の内端で半腱様筋腱と半膜様筋腱の間に取る.
11横骨(おうこつ)    曲骨穴の外5分、肓兪穴の下5寸に取る.
12大赫(だいかく)    中極穴の外5分、肓兪穴の下4寸に取る.
13気穴(きけつ)     関元穴の外5分、肓兪穴の下3寸に取る.
14四満(しまん)     石門穴の外5分、肓兪穴の下2寸に取る.
15中注(ちゅうちゅう)  陰交穴の外5分、肓兪穴の下1寸に取る.
16肓兪(こうゆ)     臍の外5分に取る.
17商曲(しょうきょく)  下脘穴の外5分、肓兪穴の上2寸に取る.
18石関(せきもん)    建里穴の外5分、肓兪穴の上3寸に取る.
19陰都(いんと)      中脘穴の外5分、肓兪穴の上4寸に取る.
20腹通谷(はらつうこく) 上脘穴の外5分、肓兪穴の上5寸に取る.
21幽門(ゆうもん)     巨闕穴の外5分、肓兪穴の上6寸に取る.
22歩廊(ほろう)    中庭穴の外2寸、第5肋間に取る.
23神封(しんぽう)    膻中穴の外2寸、第4肋間に取る.
24霊墟(れいきょ)   玉堂穴の外2寸、第3肋間に取る.
25神蔵(しんぞう)   紫宮穴の外2寸、第2肋間に取る.
26彧中(いくちゅう)  華蓋穴の外2寸、第1肋間に取る.
27兪府(ゆ ふ)    璇璣穴の外2寸、鎖骨の下際に取る.

詳細 歴代取穴部位 『鍼灸重宝記』『経穴主治症の研究』コーナー

注1、文一行目は鍼灸学校にての流注番号、五行穴・五要穴・相生剋関係、経穴名、取穴部位の記載です。
※五行穴:井木穴・栄火穴・兪土穴・経金穴・合水穴
※五要穴:原穴・郄穴・絡穴・募穴・兪穴
※相生(母子)相剋関係:自穴・子穴・畏穴・剋穴・母穴
注2、(☆)記号は『鍼灸重宝記』の取穴、灸法、針法、主治です。
注3、(△)記号は『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』です。
注3、(〇)記号は『東洋はり医学会』の取穴部位と取り方です。

1、 湧泉(ゆうせん)穴  井木子穴  ・ 所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:足底中央の前方陥中で、足指を屈すると最も陥凹する部に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 湧泉 ゆうせん (二穴)
取穴: 足掌の中、跪坐(きざ:ひざまずいて座る)して足を仰け、指を捲屈(まげかが)て点す。
灸法: 灸三壮。
針法: 針三分五分、血を出すことなかれ、
主治: 尸厥(しけつ:突然倒れて人事不省となり仮死状態になる) 、 心痛、 自明ならず、 目眩、 五指ことごとく痛むを治。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 湧泉(井木)
婦人科疾患と言っても、足、腰、下腹部が冷えて痛む様な場合、特に下腹部に硬まり之が痛む様な婦人病に効き、又男子でも彼様な場合には湧泉に灸する事によって下腹部に温みが出て痛みが減する場合が多い。
膀胱、生殖器、腸の病から来ている何れの時でも一応試みるべきである。
不妊症に効ありと言われるのはかかる症状に合致した場合に効くのであろう。
又足、腰、腹が温って来るととから高血圧症やのぼせ症の人にはのぼせ下げの灸としてよく応用される。
此の症から来た眩暈には以前私自身も体験者である関係上よく効く事が解る。
此の穴は冬の寒冷時、足の冷えている場合は別だが大体過敏な所であって鍼でも灸でも強く而(しか)も長く、痛みや熱さを感じる所であるから気付け治療に応用される事もある。
然し普通治療で余り過敏な人には味噌、食塩、にんにく等の上から問接灸を施すのもよい。
神経衰弱の不眠症で肝虚証の場合には此処の灸と、肝兪の灸が鍼で安眠出来たと言った患者が選々あった。
呼吸器疾患で熱、咳がある場合又心臓炎、心悸亢進、喘息等心臓病にも効くし、腎臓病は慢性急性何れにもよく使って効がある。
次に喉は腎経の注ぐ所であるから、扁桃腺炎や其の周囲炎に効く、湧泉から然谷、太谿、大鐘、照海等は皆同様に効く穴である。
局所的に足心が冷える人、反対にほてる人に鍼も灸も効く、但し、ほてる人に施術して熱痛が何時迄も消えない患者がある。
こんな人には却って上方の然谷や交信あたりが効く様である。
上衝性の人、血圧亢進、動脈硬化等の人は頭の百会の灸は大抵の場合は、よく効くのであるが、人によって此れが為めに却って上衝性が烈しくなって一層耳鳴がひどくなったり、肩こりがひどくなったりする者がある。
顔が赤らみ、腫れ気味である、耳鳴が強い、目がかすむ、意識が判つきりしない等と言う場合には百会の施灸は余りよくない様である。
私は或る高血圧患者に望まれるるまま百会に灸して網膜出血をさした苦い経験がある。
かかる場合は頭部は瀉法に適して鍼を行い。
足の湧泉に施灸すべきであったと後に悔いた事があつたので忘れない。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 1. 湧泉穴 : 井木子穴
部位: 足底において第2指の根元より踵の後端に至る線上で、その前方の指を屈して陥凹する所(への字形)にあり。
取り方:第2指の根元より踵に至る線上で、その前方の両側に母指球と小指球の山があり、指を屈すると凹みができる。
即ち踵の方から指でなでていくと(への字)のシワに付きか当たる、ここに取る。

2、然谷(ねんこく) 穴 : 栄火畏穴 ・ 所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位: 内果の前下方、舟状骨粗面の直下に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 然谷 ねんこく (二穴)
取穴:足の内踝の前、大指の本節の後への側ら通りに起骨あり、その骨の下に点す。
灸法:灸三壮。
針法:針三分、留ること三呼、刺し血を出すことなかれ、
主治:足痿(なえ)しびれ、男子精泄やすく 、婦人子なく 、陰戸出、月水調ず、小児の臍風(さいふう:新生児破傷風)、口噤むを治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 然谷(栄火)
項目としては湧泉同様婦人科、泌尿器、咽喉、心臓等の疾患に効く事になっているが、本穴の特長は火穴であり、熱性に適応する事になっている。
従つて子宮充血、膀胱カタル、扁桃腺炎、心臓炎の様な場合に穴としての価値が高いのである。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 2、然谷穴 : 栄火畏穴
部位:  舟状骨前下際の陥中 、 赤白肉の間にあり 。
取り方:内果の前下方に舟状骨突起を触れる 。
その前下際の陥凹部、赤白肉の間に取る 。 (公孫穴の約1寸後ろにあたる 。)
※ 然谷穴は赤白肉の間を外れず取ること。

3、 太谿(たいけい)穴  : 兪土原相剋穴 ・ 所属経絡:8.足の少陰腎経 ・
取穴部位:内果の最も尖ったところの高さで、内果とアキレス腱の間陥凹部、動脈拍動部に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 太谿 たいけい (二穴)
取穴: 足の内踝の後へ五分、跟骨(かかと骨)の上、動脉ある処。
灸法:灸三壮。
針法:針三分、
主治:久瘧(きゅうぎゃく:慢性の瘧、「おこり」病)籍、 心痛、足冷痿(なえる)、 喘息、痰実して口中滑るを治す。
※ 瘧(おこ)りとは、
南北病証論 六、瘧論 (ぎゃくろん)井上恵理 先生の解説と言葉の意味:
詳しくはリンクしてご覧ください。

六、瘧論 (ぎゃくろん)


(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 3.太谿 (兪土、原)
心臓性疾患で手足の非常に冷える場合喘息の伴う場合に宜しく、又、気管支炎や、肋膜炎に効く、咽が腫れるそして血が出る様な場合にもよい。
太谿は土穴であって脾胃の気を受けている所から腎経の病であつて消化器の違和を来している場合即ち胃痛、嘔吐、便秘等の症ある場合によく効くし、原穴である所から腎経の病一般に広く取される穴である。
(〇)
『東洋はり医学会』取穴部位・取り方』 3、 太谿(たいけい) (兪土原剋穴)
部位: 内果とアキレス腱との間の陥中微動脈部にあり。
取り方:足関節を90度曲げ、内果尖とアキレス腱との間の陥凹部で、微動脈を目当てに取る。

4 大鐘(だいしょう)穴 : 絡穴 ・ 所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:太谿穴の下5分で踵骨上際、アキレス腱の前陥凹部に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 大鐘 だいしょう (二穴)
取穴: 内踝の後へ跟骨(かかと)の上廉(うえかど)、跟と踝(くるぶし)との中央に点す。
灸法:灸三壮、
針法:針二分、留ること七呼。
主治:嘔吐、ぜんそく 、 りんびゃう 、 舌こはり 、膈嘻(かくき:横隔膜がああ~)、を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』   4. 太鍾(絡穴)
心臓衰弱、咽の病等は以上の穴によく共通の主治症である。
又、必尿器疾患のため小便が閉じた場合に効があり、身冷え腰痛にも効く。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 4 大鐘 : 絡穴 ・
部位:太渓穴の後下方、アキレス腱付着部前縁の陥中にあり。
取り方:足関節を90度曲げ、アキレス腱前縁を押し下げて行くと踵骨に突き当る、ここに取る。

5 照海(しょうかい) 穴   所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:内果の直下1寸に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 照海 しょうかい (二穴)
取穴: 足の内踝の前の下一寸。
灸法: 灸三壮七壮。
針法: 針三分、
主治: おこり、疝気、手足力なく 、陰湿りかゆく 、 月水ととのはざるを治。
※ 瘧(おこ)りとは、
南北病証論 六、瘧論 (ぎゃくろん)井上恵理 先生の解説と言葉の意味:
詳しくはリンクしてご覧ください。

六、瘧論 (ぎゃくろん)


※ 疝気とは、男子が気の結ぼれから病気になる事です。
男は下腹にしこりがない、ただ痛む。 腸疝痛・正経の痛み・腰腹神経痛などです。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』  5.照海
本穴は婦人科恵に最も卓効のある穴で月経不順、子宮内膜炎、子宮位置異常等に効があり
他穴特に腰薦部(腰仙部)の諸穴等と共に多く併用される。
或る治療家によっては婦人科疾患は何病によらず込らず併用すべき不可欠の穴であるとしている者もある。
此の点側腹の帯脈穴とよく似た効のある所である。
照海は手足の運動不随、腸疝痛や、淋疾等にも使ってよい穴である。
又局所的に足関節の炎症やロイマチス、捻挫等にもよく使われる。
照海穴は陰蹻脉(いんきょうみゃく)の発する所と言う以外には一般に要としては取扱われていないが実に重要な経穴である事は臨床家の等しく認める所である。

※ 奇経治療
任脉  (列欠:肺経 : 右列欠 → 左照海)
陰蹻脉 (照海:腎経 : 右列欠 ← 左照海) 診察点:陰蹻脈:人迎より缺盆、交信、照海、然谷。
病証:
1、前部歯牙歯齦腫痛。
2、咳嗽、喘息、少気、痰の病。
3、心下部の膨満、疼痛、嘔気、嘔吐。
4、臍腹および小腹の脹満、疼痛、下痢、便秘、遺尿、尿閉、血尿。
5、婦人科疾患: 難産、胞依不出、死産、産後腹痛、血の道証
6、痔疾、脱肛、便秘。
7、足寒、足熱、原気衰弱、腎疾患一般。
参考ゆっくり堂鍼灸院HP:

奇経治療1  e2031  

(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』  5 照海(しょうかい)
部位:内果の下、1寸にあり。
取り方:内果の直下で、やや後方に触れる腱がある、この腱の前縁に取る。

6 水泉(すいせん)穴 : 郄穴 ・ 所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:太谿穴の下1寸で、踵骨隆起の前、陥凹に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 水泉 すいせん (二穴)
取穴: 太谿(たいけい) 後にみゆの下一寸ばかり 、内踝の後への下。
灸法:灸五壮。
針法:針四分、
主治:目とをく見ること能(あた)はず、小便淋瀝(しょうべんりんれき:小便がしたたり排尿痛)、婦人の月水通ぜず 、通ずるときは心下悶え痛むを治す。
※ 淋 (りん), 淋は膀胱や尿道などにカンジタ菌、淋菌、ブドウ球菌、連鎖球菌などの菌が原因の 排尿痛、頻尿
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 6.水泉(郄穴)
主として婦人病に効き月経が不順にて後れる、閉止、子宮下垂等の如き、比較的優性症にる応用されるが、郄穴である所から子宮痙攣、子宮出血其の他膀胱痙攣等にも使われる。
局所的には踵骨の捻挫にるよく圧痛が表われ施術される場所である。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』  6 水泉穴 ( 郄穴)
部位 : 内果尖と踵骨を結ぶ線上で、太渓穴直下の陥中にあり。
取り方:足関節を90度曲げ、内果尖と踵骨の後端を結ぶ線と、太渓穴より垂直に下りる線の交点で、踵骨の上に取る。

7 腹溜(ふくりゅう)穴  : 経金母穴 ・ 所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:太谿穴の上2寸で、アキレス腱の前に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 腹溜 ふくりゅう (二穴)
取穴: 内踝の後への通り踝の上二寸。
灸法:灸五壮七壮。
針法:針三分、
主治:腸鳴、痢病、鼓腸(腹部が膨満し、太鼓のように張る病)、 胃熱虫を動し、 涎(よだれ)を出し、血痔を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 7.復溜(経金)
経絡説から言って腎水経の経金である即ち水の母穴である所から腎経の虚を補うに最も都合がよく、手の尺沢(肺金の水穴一子穴)や兪穴の腎兪等と共に使って最も効のある穴である事は誰に認められている通りである。
腎経の虚証とは、
体重く、身冷え、足腰寒く小便赤黄、盗汗、陰虚火動の熱、物忘れ、精力減退、耳鳴、耳聾(じろう:耳が聞こえないこと)、手足痺れ、腹が減っていて食べられない等の症を伴つている時である。
此れを現代医学的に言うと次の様なものに多く当る。
(1) 生殖器、特に婦人病、精力減退
(2) 泌尿器(腎臓、膀胱)の病
(3) 肺結核、其の他結核性疾恵、心臓病
(4)高血圧、脳溢血、半身不随、中枢性の運動麻痺、瘘弱(不全麻痺:部位に痺れは残るが、ある程度動く)
(5)腰痛、脚気、耳病
以上の様な場合に腎虚証が多いから、復の施術が適しているのである。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』  7 腹溜穴 : 経金母穴 ・
部位 :太渓穴の上方2寸、アキレス腱の前縁にあり。
取り方:太渓穴の上方2寸の陥凹部で、アキレス腱の前縁に取る。

8 交信(こうしん)穴   所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:腹溜穴の前方、腹溜穴と脛骨内側縁の間に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 交信 こうしん (二穴)
取穴: 腹溜(ふくりゅう)と相並び付る間に筋を隔(へだ)つ、 復溜は後へ、交信は前すこし上めに点す。
灸法:灸三壮。
針法:針四分、
主治:疝気、気淋(きりん:ストレスや悩み事などでトイレの回数が増える神経性頻尿)、 陰嚢はれ、婦人崩漏、 陰挺(いんつき)出るを治。
※ 疝気とは、男子が気の結ぼれから病気になる事です。男は下腹にしこりがない、ただ痛む。腸疝痛・正経の痛み・腰腹神経痛などです。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 8.交信
大体復溜に似ている、婦人病で出血、月経不順に効き、男子の気、淋病等に効く、又盗汗にも効くとされている。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』  8 交信穴
部位:内果の上方2寸、腹溜の前5分にあり。

9 築賓(ちくひん)穴   所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:太谿穴の上5寸で、腓腹筋下垂部とヒラメ筋の間に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 築賓 ちくひん (二穴)
取穴: 内踝の上5寸、 両筋の間にあり 。
灸法: 灸三壮五壮。
針法: 針三分、
主治: 疝気、癲(てん)かん、足の腨(はし)いたむを治す。
※ 疝気とは、男子が気の結ぼれから病気になる事です。男は下腹にしこりがない、ただ痛む。腸疝痛・正経の痛み・腰腹神経痛などです。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 9.築賓
鼠径ヘルニア(そけい部脱腸)、疝気、癲癇(くつち:てんかん)、狂、足のこむらはぎ(腓腹筋)の痛み等に効く。
また、沢田流では梅毒、淋毒、小児胎毒て下毒作用ありとされている。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 9 築賓穴
部位 :内果の上5寸、太谿と陰谷を結ぶ線上で、アキレス腱の前縁にあり。
取り方:交信穴上3寸、アキレス腱の前縁に取る。

10 陰谷(いんこく) 穴  : 合水自穴 ・ 所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:膝を少し屈曲し、膝窩横紋の内端で半腱様筋腱と半膜様筋腱の間に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 陰谷 いんこく (二穴)
取穴: 膝の折自の外に輔骨と云大骨あり、其下廉大筋の下、小筋の上。
灸法: 灸三壮。
針法: 針四分、
主治: 膝いたみ、 陰なへ、 男は蠱脹(こちちょう:鼓脹:腹部が膨満し、太鼓のように張る病)、の如く 、 女は妊のごとくなるを治す。

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』  10 陰谷 穴  : 合水自穴 ・
本穴は腎水経の水穴であり、腎経の主であるため、水性としては最も性格のはっきりした穴である。
ゆえに原穴同様、補法にも瀉法にも腎経中の代表として取穴される。
また、この穴の主治症としての特徴は婦人病の中でも出血して止まらず腹が張り、呼吸することもできない等というときに用いられる。
また、男子では陰痿(いんい:竿が立たない:勃起不全 (ぼっきふぜん、 英: Erectile Dysfunction; ED))に用いられる。
慢性淋病にも効く、局所的にはいろいろな原因によって膝の痛む場合にも用いられ効果がある。

(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』  10 陰谷穴 : (合水自穴)
部位 :膝窩横紋上のハッキリとした腱の曲泉側にあり。
取り方:膝を60度ぐらい曲げると、膝窩横紋上にハッキリとした腱が出るので、その腱の曲泉側に取る。
ハッキリとした腱とは、半腱様筋腱の腱。

◎  京門(けいもん)穴 : 腎経の募穴 :所属経絡:足の少陽 胆経・・25
取穴部位:第12肋骨前端下際に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 京門 けいもん (二穴)
取穴:  直に章門(しょうもん肝経)の後十一枚めの肋骨の先、すこしへこみある陥み、俗に後章門といふ処なり。
灸法: 灸三壮、
針法: 針三分、留こと七呼。
主治: 腸鳴り 、小腹いたみ、肩いたむを治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』京門穴:腎経の募穴:所属:胆経・25
腎の募穴、すなわち 、腎気の通ずるところであるから 、経絡治療では腎経の虚実に本治法として常に使う穴である 。
標治法としては、膀胱炎、 小使赤く濁る等に用い、また、腸炎、腸疝痛、腰痛、脊柱起立筋痙攣、を治す。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 京門穴:腎経の募穴:所属経絡:胆経・25
部位  : 第12肋骨尖端の下際
監骨の腰中、背を挟むにあり、季助の下1寸8分 『鍼灸甲乙経』

◎ 腎兪(じんゆ)穴 : 腎経の兪穴 :所属経絡:膀胱経・ 21
取穴部位:第2・第3腰椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』腎兪 じんゆ (二穴)
取穴: 脊の十四椎の下、左右へ一寸五分づっ、臍(へそ)と平し 。
灸法: 灸三壮、
針法: 針三分、留こと七呼、 《針誤治:もし刺て腎に中(アタ)れば嚔(ひ:くしゃみが出)て六日後に死す。》
主治: 五労七傷、虚して嬴痩(えいそう)、耳聾ず、下部冷、淋濁、 目暗く 、溺血、遺精、腰膝脚いたみ、消渇、身熱し 、振寒、多食しても痩、面黄黒く、腸鳴、四肢だるく 、洞洩食化せず、身浮腫るを治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 腎兪穴:腎経の兪穴:膀胱経・ 23、
【筋肉】 胸腰筋膜、下後鋸筋、脊柱起立筋
【血】  腰動・静脈
【神経】 腰神経後枝、肋間神経
【主治症】
腎兪は、腰部では最も運動するところであり、腹腔内臓、下の違和、疾病の場合にいずれも痛み、圧痛、無力感、屈伸不能、倦怠などの自覚症状が現われるところである。
特に下腹部内臓の腎臓、膀胱、生殖器、大腸直腸などに起こった違和感は、腎兪に現れることが多い。
したがって足、腰のやまいのほかに内臓に起った疾患に対しては、非常に多く使われる。
東洋医学では腎臓の機能はたんに必尿器の機能のみでなく、生命力の根元であり、生殖作用を主につかさどり、精神機能の一部を分担し、耳や骨に関係し、また水の臓として泌尿器の作用をもつかさどっていると考えた。
経絡はこれらの作用と関連ある点(経穴)を循るようになっている。
したがって東洋医学的にいえば、次に示す腎の虚実の証にはすべて用いられ、効果がある。
腎の虚実に関係し腎兪を使うやまいの例を挙げると、次のようなものがある。
(1)生殖器疾患: 婦人科疾患、男子生殖器疾患、精力減退
(2)必尿器疾患: 腎臓、膀胱、尿道における疾患
(3)呼吸器疾患: 肺、胸膜、腹膜などにおける疾患
(4)耳病、心臓病
(5)神経系疾患: 下腹部、腰仙部、下肢部における神経痛、あるいは知覚神経麻痺、運動麻痺
(6)さらに経絡治療においては、肝・胆経の虚証の場合は補法を、肺、脾の虚実には対経的に、また腎兪を補瀉の要穴として広く用いることが多い。
このように腎兪は腎経の兪穴であり、腎経の関与するやまいにはほとんど用いられ、全身の経穴のうちで最も多く用いられる。
さらに周辺の穴のうち『命門』は、左右腎兪穴の中央の脈にあって、その主治は内臓性諸出血に特効のあるほか、一般的に必尿器、生殖器、腰痛に効く。
腎兪の外方約15分のところにある同じ膀胱の志室穴は、また必尿器、生殖器、消化器疾患に効果があるが、尿器、生殖器疾患などの治効には共通性がある。
またその近くでやや斜め上方にある京門穴(第12骨端ニアリ)は、胆経に属してはいるが腎の募穴であり、腎経の穴である腎兪と表裏一体をなすものである。
したがってその使用目的も共通性を有していることは膀胱のやまい、腸炎、腰痛などに効くことによってもわかる。
[参考]
腎兪は「腎を治する所」の義であって、この兪に対する募穴は京門である。
内経によれば、腎は先天の原気の宿るところであって、精と志を蔵し、一身の精力の発源地であると言われている。
(代田文誌「鍼灸治療基礎学」より)
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』  腎兪穴 : 腎経の兪穴 : 膀胱経 21
部位  : 第14の椎(第2腰椎)の下脇え1寸5分。  『杉山流三部書』

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※  上記の経穴説明はここまでとします。

【詳細 歴代取穴部位 『鍼灸重宝記』『経穴主治症の研究』コーナー】

では、五行穴、五兪穴・五要穴・原穴・郄穴・絡穴を中心に記載しました。

理由は病気の根本原因を改善する為の施術手技「本治法」を有効に活用する為です。

【参考説明】

「本治法」
本治法は経絡鍼灸治療の根幹です。
「本治法」とは、
病気の根本原因を改善する為の施術手技です。
病気を治す方向を最良のものとする、
一番大事な一番初めに行なう鍼の施術手技です。
本治法の方法は、
十二経絡の「気」を調整し、「血」の流れを順行させ、
全身の健康状態を改善することで、病気を治す「自然治癒力」を増強させる手技です。
病気の根本原因を改善する為の施術手技に成ります。

本治法として使用する経穴は、
五行穴、五兪穴・五要穴・原穴・郄穴・絡穴です。
本治法の実技方法は、
脉状に適合した「補法、瀉法」を行います。
そして、「良い脉」に導きます。
「良い脉」とは、平位の脉状で、艶と程よい締まりの有るのびやかな脉です。
「良い脉」になると、病気は根本的に改善の道に進みます。

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10 陰谷(いんこく) 穴  : 合水自穴 ・ 所属経絡:足の少陰腎経 ・

からの続く経穴を述べます。(27、 兪府(ゆふ)穴まで。 )——————————————————————————————–

11、 横骨(おうこつ) 穴    所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:曲骨穴の外5分、肓兪穴の下5寸に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 11. 横骨穴
【主治症】
これから以降は、腹部の腎経諸穴の臍の両側5分の肓兪(こうゆ)穴までは
任脈、胃経、脾経の諸穴と同様の治効があり、下腹部諸穴は生殖器、必尿器等のやまいに効く。
横骨は曲骨(任脈)とならび、いずれも婦人病のほかに膀胱炎、淋病、虚弱、失精等に効く。

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12、 大赫(だいかく) 穴    所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:中極穴の外5分、肓兪穴の下4寸に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 12. 大赫 穴
【主治症】
横骨と同様、虚労失精、すなわち衰弱した男子によくみられる。
わずかな身体あるいは精神的刺数によって起る射精現象に効く。
また、陰痿にもよく効く。

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13、 気穴(きけつ) 穴     所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:関元穴の外5分、肓兪穴の下3寸に取る.
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 13. 気穴穴
【主治症】、
月経不調、臍下の癪(しゃく)が上下して苦しむもの等に効く。

【参考:ゆっくり堂鍼灸院 HP】 癪(しゃく) 解説

五五難



難経五十五の難に日く、
病に積(しゃく)あり、聚(じゅう)あり、
腹中に積と聚と言う二つの塊が出来る事がある。
積(癪:しゃく)は五蔵の陰気が滞り積(つも)って出来たもので、
陰気から出来た積は陰性で沈んで下に深く伏して所在する。
聚(じゅう)は六府の陽気が滞り集(あつま)って出来たもので、
陽気から出来た聚は陽性で浅く浮いていて移動する。

〔本間祥白先生の積聚解説から〕
積は陰の塊りであって、しっかりした根を持っていて動かない、
治療しても直ぐ消えるようなことなく永い治療を要する慢性病である。
聚は陽の塊であるから治療中に動いたり消えたりする、治療して治し易い病である。

〔井上恵理先生の積聚解説から〕
積と言うのは我々が腹を手で押し下げてみると、ちゃんと形にな って現れている。
聚と言うのは押し下げては判らない。お腹の上をソーッと撫でると判る。
そして痛みの方も、 積の方は 「ああ、ここが痛いんですね? 」 「そこが痛 いんです。」と判る。
ところが聚の方は、スー ツと撫でている内に「ああ先生、そこが痛い。」
そこかなと思って手を持って行くと、 痛みがなくなって別の所に動く。
これは皆さんも経験が あるだろうと思いますが、お腹をソーッと撫でると何かありそうなんです。
あるかなと思うとなくて、またこっちの方にポコッと出て来る。
またそこの所を押さえると向こうの方へ動く。あれは聚です。
痛む所がいつも一定していない。そっちへ行ったりこっちへ行ったりする。
ですから感覚的にみて積と聚と言うものは、
浮いているものと沈んでいるものと言う区別がある。
それから固定したものと固定しないものと言う区別がある。
痛む所も決まっているのと決まっていないのとの区別がある。
これが積聚の区別ですね。
積と言うのは陰の病であり、
聚と言うのは陽の病であると考えればいいと思います。

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14、 四満(しまん) 穴     所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:石門穴の外5分、肓兪穴の下2寸に取る.
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 14. 四満穴
【主治症】
月経不順、臍下の液が上下して苦しむもの。
その他、大腸炎、臍下が冷えてきりきり痛む場合に鍼したり、施灸を多く行うとたいへん楽になる。

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15、 中注(ちゅうちゅう)穴  所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:陰交穴の外5分、肓兪穴の下1寸に取る.
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 15. 中注穴
【主症】
月経不順、子宮周囲炎、結合織炎等の小骨盤内の炎症に効く。

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16、 肓兪(こうゆ)穴     所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:臍の外5分に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』
16.  肓兪(こうゆ)穴  (千金方、外台秘要方には肓の字を盲字に作る) R. 16. Roang-iu(KI-16)
部位  : 腹部、臍の両側5分にある。
取り方: 腹部正中線の両側5分で、臍の中心の両側5分、臍輪の外方に当る。
【筋肉】腹直筋
(血管】下腹壁動・静脈
【神経】第10肋間神経前皮枝および筋枝
【主治症】
経の流注から見ると、腎経は肓のところで腎に属するとあり、腎のやまいに関係が深いわけであるが、古典では腎のやまいに効くようには書いてなく、胃痛、腸仙痛、便秘等についてだけ記載してある。
しかし、実際には復溜、腎兪等とともに腎経の虚あるいは実証に使って見て非常に効果があることがわかる。
著者は腹部の腎の募(京門)と同じような考えで呼吸器病、精力減退、婦人病等に常に用いられている。

【参考】
(千金方、外台秘要方には肓の字を盲字に作る)
肓 :音読み:コウ・ 訓読み:むなもと。 意味:むなもと。横隔膜の上の深い部分を指す。
盲 :音読み:モウ・ボウ。 訓読み:めくら。 意味: 目が見えないこと、その人。くらい。光がない。道理の分からぬ人。
千金方 :
唐時代に編纂された医学書、主に漢方薬に関する治療法や処方が記されている。
外台秘要 (げだいひよう) :
752年(天宝11)に王燾(おうとう)が編纂した中国臨床医学書。40巻。
内科疾患が主な対象であるが,その他の疾患も含んでいる。当時存在していた医書からの引用文のみで構成され,病因とか病状についての短い記述も含むが,大部分は薬物処方である。

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17、 商曲(しょうきょく)穴  所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:下脘穴の外5分、肓兪穴の上2寸に取る.
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 17._ 商曲穴
【主症】
上腹、下腹の痛み、ときには婦人科疾患から起る癪聚(しゃくじゅう)の痛みに応用される。

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18、  石関(せきかん)穴  所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:建里穴の外5分、肓兪穴の上3寸に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』 石関 せきかん(二穴)
取穴: 陰都(ゐんと)の下一寸。
灸法: 灸三壮。
針法: 針一寸、
主治: 嘔吐、 しゃくり、腹いたみ、気淋、大小便通ぜず、心下堅満、脊強り、目赤く 、女の血塊を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 18. 石関穴
【主治症】
胃痙攣(神経性胃痛)、その他胃のやまい、婦人病からきた上腹の痛み、膀胱のやまいにもしばしば用いられる。

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19、  陰都(いんと)穴  所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:中脘穴の外5分、肓兪穴の上4寸に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』 陰都 いんと(二穴)
取穴: 腹通谷の下一寸。
灸法: 灸三壮。
針法: 針三分、
主治: 心満、逆気、腹鳴、肺脹、 目赤いたむを治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 19.  陰都穴
【主治症】
心部膨満、胃病のほかに喘息にも効果がある。

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20、 腹通谷(はらつうこく)穴  所属経絡:足の少陰腎経 ・
取穴部位:上脘穴の外5分、肓兪穴の上5寸に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』 腹通谷 はらつうこく(二穴)
取穴: 幽門の下一寸、上院の左右へ五分づつ。
灸法: 灸三五(15)壮。
針法: 針五分、
主治:口喎み不言、心恍(しんこう:心がうつろ)、 目赤いたみ、痰飲、嘔吐、 しゃくじゅ(積聚しゃくじゅう:難経 第五十五難)を治。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 20. 通穀穴
【主治症】
胃の諸症に効果がある。
また、心部と関連のある心臓病や呼吸器病からくる喘息、咳嗽にも効く。
この部を鍼して柔らげると胸が楽になって咳が鎮静する場合が多い。

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21、  幽門(ゆうもん) 穴   所属経絡:足の少陰腎経 ・  取穴部位: 巨闕穴の外5分、肓兪穴の上6寸に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 幽門 ゆうもん (二穴)
取穴: 臍(へそ)の上六寸、 巨闕穴の左右へ各五分 (一日、一寸五分づつ) づつひらく。
灸法: 灸五壮。
針法: 針一寸、
主治:小腹脹満、涎沫を嘔吐し 、いきれもだへ、胸みちいたみ、不食、欬逆、健忘、膿血をくだし、 目赤いたむを治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 21.   幽門 穴
【主治症】
嘔吐を止めるのに効くことは任脈の鳩尾・巨開と同様である。
また胃の激痛を止めるのにも効果がある。
この場合腹中にまだ飲食物があり、腹が膨満している場合には、ここに鍼を施すことによって幅吐を催すことができる(吐鍼)。その他、健忘症にも応用される。
通谷同様、咳を止めるのに効果があり、吃逆を止めるのにも効く、きわめてよく用いら
れる経完である。
『聚英』によると、腎経が足から上って腹中の横骨にきてから上行する
幽門までの11穴は、すべていちように「目赤ク痛ミ内眥ヨリ始マルヲ主ル」と記載してあるが、これは解釈も困難であり、実際の臨床的にもこの一線が特別に特徴あることはまだ研究されていない。

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22、 歩廊(ほろう)穴    所属経絡:足の少陰腎経 ・  取穴部位:中庭穴の外2寸、第5肋間に取る.
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 22. 歩廊(ほろう)穴
【主治症】・
局所的、内部臓器対症的な考え方から心臓病や肺、気管支、肋間神経等に起る病症に効くようになっていることは、これより述べる胸部の諸の特質で、その範囲のそとにはでないようである。
『聚英』本文にも「胸脇支満、痛ミ胸=引キ鼻塞ガッテ通ゼズ、息スルコトヲ得ズ、呼吸少気、咳逆、堀吐、食ヲ嗜(タシナ)マズ、臀ラ挙ゲルコトヲ得ザル病症ヲ主ドル」とあり、前述のやまいのほかに、しやっくりや大胸筋の関係で手を挙げることができないような症に効くように書かれているだけである。
また、消化器、食道、その他の原因で食物がうまく下りない場合、肋骨カリエス等にも用いられる。

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23、 神封(しんぽう)穴    膻中穴の外2寸、第4肋間に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 23. 神封(しんぷう)穴
【主治症】
(22. 歩廊(ほろう)穴 と同じ)

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24、 霊墟(れいきょ)穴   所属経絡:足の少陰腎経 ・  取穴部位:玉堂穴の外2寸、第3肋間に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 24. 霊墟(れいきょ)穴
【主治症】
(22. 歩廊(ほろう)穴 と同じ)

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25、 神蔵(しんぞう)穴   所属経絡:足の少陰腎経 ・  取穴部位:紫宮穴の外2寸、第2肋間に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 25. 神蔵(しんぞう)穴
【主治症】
(22. 歩廊(ほろう)穴 と同じ)

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26、 彧中(いくちゅう)穴  所属経絡:足の少陰腎経 ・  取穴部位:華蓋穴の外2寸、第1肋間に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 26. 或中(わくちゅう)穴
【主治症】
(22. 歩廊(ほろう)穴 と同じ)

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27、 兪府(ゆ ふ)穴    所属経絡:足の少陰腎経 ・  取穴部位:璇璣穴の外2寸、鎖骨の下際に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 27. 兪府(ゆ ふ)穴
【主治症】
ほぼ前同様であるが、
胸部の最上部にあって特に咳のでる場合に用いられるが、甲状腺肥大にも効く。

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五臓の色体(よそおい)

基礎:水・腎・膀胱・
五記:合・
五募:栄え・合わせて入れよ、逆気

して泄るべし。
病因:精、志・智恵・五音(羽音・唇音、マ行・極短高清い(1音低い))・
豚・冬・夜・北・湿・耳・骨・髪。
病症:液・黒色・腐・かん鹹(塩からい)・しん呻(うめく)・唾液・驚く・慄(ふるえる)
養生法その他:(もやし)・豆・
生数:一、
成数:六・

五柄戸: 壬(みずのえ)癸(みずのと)。

逆気して泄すとは:
冷えのぼせて上気し、肩こり、頭痛・頭重痛、血圧亢進。
大小便過多、或いは過少。汗が出る。涙が出る。
種々の出血、吐血、下血等、

総て逆上して、もれ、出ずるものを言い、これ腎水の証。

腎は先天の原気、即ち生命の根源を蔵す。

生殖、利尿を主する。

その病は、
逆気しても泄らす、飢えて食を欲せず(空腹感あるも食べるとすぐ満腹感)、
面色黒く息づかい荒く,咳唾すれば血あり、立ちくらみ、咽頭痛み口渇き、
心脅かされるが如く慢性下痢或いは便秘し、むくみ、心下痛、黄疸、出血、
臥す事を好みて痩せる、足の裏熱して痛む。 骨、生殖器の病をなす。頻便・残便感。
浅い眠り、多夢。足の冷え。顔のほてり。  小便の出が悪い。

これを鍼灸実践床例にとれば、
救急重篤な患者の応急処置として、湧泉・復溜穴に補法を加える。
又は腎の主りである下腹部を温める。
健康体は常に頭寒足熱を旨とするが、病体の者は足が冷え頭部の、のぼせ、痛みを訴える。
これに対する処置は、三陰交、太谿に留置鍼を施し、然谷・湧泉穴の現す所見に従い施灸をすると良い。

足の少陰腎経の主治症としては、
まず大局的に生気の回復を図り、男女生殖器、泌尿器疾患を治し、
更に心下部の苦悶や胃腸、心臓、呼吸器、咽喉の病にも著効を上げることができる。

・・・・・・・・・

腎水経の変動、五大病症:

①足の冷え、のぼせ(逆気)、
②総て体液の漏れ出で出血、
③元気衰弱、
④泌尿器・生殖器疾患。

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腎水の変動、分類実践例。

① 食欲の質問。 :食欲はあるが食べられない。
② 大便について。:慢性の下痢。慢性の便秘。大便が出てもスッキリしない。不安定。
お腹の裏が引きつる。 一週間以上の便秘。コロコロ便。(兎便)
③ 小便について。:おねしょ(尿失禁)。夜間に小便に行く。尿量が多く色は希薄。不安定。
:尿に泡が多い。尿の色が赤茶色。
④ 睡眠について。:眠りが浅い。怖い夢を見る。夜間、トイレに起きる。 朝早く目が覚める。
⑤ 皮膚について。:足の裏がほてる。
⑥ 肩や背中の状態:慢性の頚肩腕症候群。 五十肩で骨や軟骨に異常。 右上の背中の痛み。
⑦ 腰部の状態。 :生理痛。生理不順。おりもの。生理の量が多い。 生理の量が少ない。
肩や背中がの重だるさ。 後屈で痛み。下肢にかけての痛み。
⑧ 膝の状態。  :膝に水が溜まる。膝関節変形。 腰痛を伴う。
⑨ 頭部の状態。 :後頭部の痛み。頭頂部の痛み。頭の向きを変えるとメマイがする。
⑩ 腹部の状態。 :下痢を伴う腹痛。 夜間の頻尿を伴う腹痛。 しぶり腹。
⑪ 風邪引きに伴う症状。:寒さを背中にゾクゾク感じる。のどの真ん中が痛む。
⑫ 四肢の状態。 :足先が冷たい。 朝、手足が浮腫む。
⑭ 全身の状態。 :浮腫。熱無く震えがくる。
上焦の汗(虚熱で腎が弱り虚熱が胸に上がり胸苦しくなり汗が出る)

・・・・・・・

子午治療は肺膀大腎

大腸経のツボ:偏歴(絡穴)・温溜(げき穴)  肺経のツボ:列缺(絡穴)・孔最(げき穴)
奇経治療の適応側は『病側優先』とする。:任脈(肺経:列欠)-陰キョウ脈(腎経:照海)
本治法:腎虚証(定則):復溜(自経の経金、母穴)・尺沢(肺の合水穴)

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⑦ルート 足の太陽膀胱経

黄帝内経・素問・霊蘭秘典論 第八、六節
(コウテイダイケイ・ソモン・レイランヒテンロン)

膀胱者.      (ぼうこうは)
州都之官     (しゅうとのかん).
津液藏焉     (しんえきこれにくらす).
氣化則能出矣. (きかするときはすなわちよくいず)

※、十二経の兪穴は総てこの膀胱経に属する。

※、五要穴とその性格

五行穴と共に各経に共有する要穴に原、郄、絡、募、兪の五つがある。
本会ではこれを五要穴と称する。
このうち原、郄、絡穴は概ね手足の肘および膝関節より先に、また、募穴は腹部に、兪穴は背腰部にある。
ただし、陰経においては原穴が兪土穴と共存している。

※、 兪 穴 (ゆけつ)

兪穴の兪は病を治癒せじめる所、治す所という意である。
東洋医学では、陰病は陽に行くと言い、いわゆる慢性痼疾になると、この背部の兪穴に硬結や緊張、弛緩等の所見が現われ、診断治療の重要ポイントとなっている。
また、兪穴は臓腑診断にも欠かすことのできない穴である。
例えば、肺は背の三椎につき、腎は背の十四椎につくなどと言われるが、五臓六腑はそれぞれその兪穴を目標に診断し、治療が行なわれるわけである。
この兪穴は灸穴としても愛用されるが、更に同じ高さの督脈経上の諸穴や、その骨際に華佗穴を求め、兪穴に準じた治療をし、効果を上げることができる。

※、陰経兪穴 (全て膀胱経にある。)

〔肝兪穴  :肝木:⑫足の厥陰肝経 :兪穴〕  【肝兪穴: 肝経の兪穴】
〔心兪穴  :心火:⑤手の少陰心経 :兪穴〕  【心兪穴: 心経の兪穴】
〔厥陰兪穴 :相火:⑨手の厥陰心包経:兪穴〕 【厥陰兪穴:心包経の兪穴】
〔脾兪穴  :脾土:④足の太陰脾経 :兪穴〕  【脾兪穴: 脾経の兪穴】
〔肺兪穴  :肺金:①手の太陰肺経 :兪穴〕  【肺兪穴: 肺経の兪穴】
〔腎兪穴  :腎水:⑧足の少陰腎経 :兪穴〕  【腎兪穴: 腎経の兪穴】

※、陽経兪穴  (全て膀胱経にある。)

〔胆兪穴  :肝木:⑪足の少陽胆経 :兪穴〕 【胆兪穴: 胆経の兪穴】
〔小腸兪穴 :心火:⑥手の太陽小腸経:兪穴〕 【小腸兪穴: 小腸経の兪穴】
〔三焦兪穴 :相火:⑩手の少陽三焦経:兪穴〕 【三焦兪穴: 三焦経の兪穴】
〔胃兪穴  :脾土:③足の陽明胃経 :兪穴〕 【胃兪穴: 胃経の兪穴】
〔大腸兪穴   :肺金:②手の陽明大腸経:兪穴〕 【大腸兪穴: 大腸経の兪穴】
〔膀胱兪穴 :腎水:⑦足の太陽膀胱経:兪穴〕 【膀胱兪穴: 膀胱経の兪穴】

膀胱者.州都之官(しゅうとのかん).津液藏焉(しんえきこれにくらす).氣化則能出矣.

十二経の兪穴は総てこの膀胱経に属する。

その病は、
外邪を受けると頭、項、肩背、腰足の後面第五指(小指)に及んで、強張り、激痛を発する。
虚する時は、これらの部がコリ疲れて、冷え痺れ虚痛する。
鼻水、じく衂(鼻血)、痔の病、M等を発する。また、便秘、利尿に関係がある。

臓象論より、
膀胱は水性で背の第十九椎(第二仙椎)つき、 中極穴の部にある袋である。
その上口は陰交穴の部にあるあるといわれるが、これは治療点としての診方である。
小腸より分かれた水分は、この部より膀胱に浸み透り、蓄えられ時を得て尿として排泄される。

内経を中心とした流注・・・・

足の太陽膀胱経     Bladder Meridian BL

〇 流注・経穴

⑥ルート手の太陽小腸経の終わる所、目の内皆(ナイシ・まなじり・目尻)晴明穴より上って髪際に至り、神庭穴の部にて左右交わり、上行して通天(つうてん)穴の部より督脈経の百会穴に至って左右交わり、中に入って脳を絡い出でて項(コウ・うなじ・くびすじ)に下る。
支脈は百会より左右に別れて耳の上角に上る。
本経は項を下って大椎を過ぎり、背の両側1寸半を下り、各臓腑の兪穴を連ねて腰の中に入り、腎を絡い膀胱に属会する。
更に臀部を通り、大腿の後側を下って膝膕(シッコク・膝窩の中)中に入る。
別に天柱穴より別れた第2側線は、背の両傍3寸の背腰部を下り、臀部を経て髀枢(環跳穴)を過ぎり、膝膕の部にて本経と合する。 ※ 髀枢:素問・霊枢の経穴名 現在の環跳穴の別名。
下腿の後側を経て外果の後ろ(アキレス腱外側)を通り、足の外側を経て第5指の外端の至陰(しいん)穴に至る。

⑦ルート 足の太陽膀胱経 内経を中心とした流注図   c2082

c2082

⑦ルート 足の太陽膀胱経(63穴)

1、 睛明(せいめい) 内眼角の内1分、鼻根との間に取る.
2、 攅竹(さんちく) 眉毛の内端陥凹部に取る.
3、 曲差(きょくさ) 神庭穴と頭維穴を結ぶ線上で、神庭穴の外1寸5分に取る.
(注)神庭穴と頭維穴の間を3等分し、神庭穴、曲差穴、本神穴、頭維穴と等間隔に取る.
4、 五処(ごしょ)    曲差穴の後5分、上星穴の外1寸5分に取る.
5、 承光(しょうこう)   曲差穴の後2寸、五処穴の後1寸5分に取る.
6、 通天(てんつう)   曲差穴の後3寸5分、承光穴の後1寸5分に取る.
7、 絡却(らくきゃく)   曲差穴の後5寸、通天穴の後1寸5分に取る.
8、 玉枕(ぎょくちん)   絡却穴の後、脳戸穴の外1寸3分に取る.
9、 天柱(てんちゅう)   瘂門穴の外、1寸3部に取る.(注)頭半棘筋の膨隆部の外縁に当たる.
10、大杼(だいじょ)【骨会】 第1・第2胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.

11、風門(ふうもん)     第2・第3胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.

12、肺兪(はいゆ) 【肺経の兪穴】  第3・第4胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.
13、厥陰兪(ケツインユ)【心包経の兪穴】 第4・第5胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.
14、心兪(しんゆ) 【心経の兪穴】  第5・第6胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.
15、膈兪(かくゆ) 【八会穴:血会】 第7・第8胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.
16、肝兪(かんゆ) 【肝経の兪穴】  第9・第10胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.
17、胆兪(たんゆ) 【胆経の兪穴】  第10・第11胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.
18、脾兪(ひ ゆ) 【脾経の兪穴】  第11・第12胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.
19、胃兪(い ゆ) 【胃経の兪穴】  第12胸椎・第1腰椎棘突起間の外1寸5分に取る.
20、三焦兪(サンショウユ)【三焦経の兪穴】 第1・第2腰椎棘突起間の外1寸5分に取る.

21、腎兪(じんゆ)   【腎経の兪穴】 第2・第3腰椎棘突起間の外1寸5分に取る.
22、大腸兪(ダイチョウユ)【大腸経の兪穴】 第4・第5腰椎棘突起間の外1寸5分に取る.
23、小腸兪(ショウチョウユ) 【小腸経の兪穴】 正中仙骨稜第1仙椎棘突起部の下外方1寸5分に取る.
24、膀胱兪(ボウコウユ) 【膀胱経の兪穴】 正中仙骨稜第2仙椎棘突起部の下外方1寸5分に取る.

25、中膂兪(ちゅうりょゆ) 正中仙骨稜第3仙椎棘突起部の下外方1寸5分に取る.
26、白環兪(はくかんゆ)  正中仙骨稜第4仙椎棘突起部の下外方1寸5分、仙骨裂孔の外1寸5分に取る.
27、上髎(じょうりょう)  第1後仙骨孔部に取る.
28、次髎(じりょう)     第2後仙骨孔部に取る.
29、中髎(ちゅうりょう)   第3後仙骨孔部に取る.
30、下髎(げりょう)     第4後仙骨孔部に取る.

31、会陽(えよう)  尾骨下端の外5分に取る.
32、承扶(しょうふ) 殿溝の中央に取る.  (注)坐骨神経幹が深部を走る.
33、殷門(いんもん) 後大腿部のほぼ中央、承扶穴と委中穴を結ぶ線のほぼ中央に取る.(注)坐骨神経幹が深部を走る.
34、浮郄(ふげき)  委陽穴の上1寸、大腿二頭筋の内縁に取る. (注)総腓骨神経幹が走る.
35、委陽(いよう)  膝窩横紋の外端、大腿二頭筋の内縁に取る. (注)総腓骨神経幹が走る.

36、委中(いちゅう) 【合土穴】 膝窩横紋の中央に取る.(注)脛骨神経が深部を走る.膝窩動脈が通る.

37、附分(ふぶん)     第2・第3胸椎棘突起間の外3寸に取る.
38、魄戸(はくこ)     第3・第4胸椎棘突起間の外3寸に取る.
39、膏肓(こうこう)    第4・第5胸椎棘突起間の外3寸に取る.こうこう膏肓
40、神堂(しんどう)    第5・第6胸椎棘突起間の外3寸に取る.

41、言喜(い き)     第6・第7胸椎棘突起間の外3寸に取る.
42、膈関(かくかん)    第7・第8胸椎棘突起間の外3寸に取る.
43、魂門(こんもん)    第9・第10胸椎棘突起間の外3寸に取る.
44、陽綱(ようこう)    第10・第11胸椎棘突起間の外3寸に取る.
45、意舎(いしや)     第11・第12胸椎棘突起間の外3寸に取る.
46、胃倉(いそう)     第12胸椎・第1腰椎棘突起間の外3寸に取る.
47、肓門(こうもん)    第1・第2腰椎棘突起間の外3寸に取る.
48、志室(ししつ)     第2・第3腰椎棘突起間の外3寸に取る.
49、胞肓(ほうこう)    正中仙骨稜第2仙椎棘突起部の下外方3寸に取る. (注)次髎穴に並ぶ.
50、秩辺(ちつぺい)    正中仙骨稜第3仙椎棘突起部の下外方3寸に取る. (注)中髎穴に並ぶ.

51、合陽(ごうよう)    委中穴の直下3寸に取る.
52、承筋(しょうきん)   委中穴の下、腓腹筋の最もふくらんだところで、内側頭と外側頭の筋溝に取る.
(委中穴の下、ほぼ5寸に当たる)
53、承山(しょうざん)

54、飛陽(ひよう) 【絡穴】 崑崙穴の上7寸、腓腹筋下垂部の外縁、腓腹筋とヒラメ筋との間に取る.

55、跗陽(ふよう)     崑崙穴の上3寸で、アキレス腱の前に取る.

56、崑崙(こんろん) 【経火穴】 外果の最も尖ったところの高さで、外果とアキレス腱の間、陥凹部に取る.

57、僕参(ぼくしん)     崑崙穴の直下、踵骨外側面の陥凹部に取る.
58、申脈(しんみゃく)    外果直下5分に取る.

59、金門(きんもん) 【郄穴】  申脈穴の前下方、踵立方関節の外側陥凹部に取る.

60、京骨(けいこつ) 【原穴】  第5中足骨粗面の後下際、表裏の肌目陥凹部に取る.

61、束骨(そくこつ) 【兪木穴】 第5中足指節関節の後、外側陥凹部に取る.

62、足通谷(あしつうこく) 【栄水穴】 第5中足指節関節の前、外側陥凹部に取る.

63、至陰(しいん) 【井金穴】     足の第5指外側爪甲根部、爪甲の角を去ること1分に取る.

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【膀胱経の募穴】 3 中極(ちゅうきょく)穴   ・所属経絡:任脈・
取穴部位:神闕穴の下4寸、曲骨穴の上1寸に取る.

【膀胱経の兪穴】 24 膀胱兪(ぼうこうゆ) 穴       所属経絡:膀胱経・
取穴部位:正中仙骨稜第2仙椎棘突起部の下外方1寸5分に取る.

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現代経絡鍼灸実践例から治療穴について考察する。

足の太陽膀胱経は、少陰腎経と表裏関係をなしているので、五臓六腑と全て関係があり、
その付穴がこの経に属している。
よって、肩こり・腰背痛・坐骨神経痛・頭痛・目・耳・の病、脳の狂い・癲癇・脳血管障害・
老化・利尿・痔疾を治す穴がある。
この経が実するとき、目を抜くが如き、頭が割れるが如き、背腰足の筋引き裂かれるが如き痛みを呈する。
また、この経虚する時は、冷えしびれて運動不全となる。
また、この経のそれぞれお特徴として、睛明・天柱穴は目・鼻・頭痛・頭蓋骨内疾患に効く。
また、各兪穴はそれぞれの臓腑の主治穴である。
中でも、膏肓・腎兪・志室穴等は慢性病の治療に欠かすことは出来ない。
特に、この経と流注を同じくする督脈経上の腰陽関・命門・大椎・身柱・あもん・百会・印堂穴は、
それぞれ同位の兪穴と主治症が類似して特効を上げる。
また、
末端の至陰穴は少陰腎経の移行部になり、刺絡によりこの経の変動を調節し、
施灸によっては、逆子を正常位に保つことができる。

⑦ルート 足の太陽膀胱経の

【詳細 歴代取穴部位 『鍼灸重宝記』『経穴主治症の研究』コーナー】

五行穴、五兪穴・五要穴・原穴・郄穴・絡穴を中心に記載します。
理由は病気の根本原因を改善する為の施術手技「本治法」を有効に活用する為です。

注1、文一行目は鍼灸学校にての流注番号、五行穴・五要穴・相生剋関係、経穴名、取穴部位の記載です。
※五行穴:井木穴・栄火穴・兪土穴・経金穴・合水穴
※五要穴:原穴・郄穴・絡穴・募穴・兪穴
※相生(母子)相剋関係:自穴・子穴・畏穴・剋穴・母穴
注2、(☆)記号は『鍼灸重宝記』の取穴、灸法、針法、主治です。
注3、(△)記号は『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』です。
注3、(〇)記号は『東洋はり医学会』の取穴部位と取り方です。

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1、睛明(せいめい)穴  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:内眼角の内1分、鼻根との間に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』  睛明(せいめい) (二穴)
取穴: 自の内眥(うちまなじり)一分ほど外 、目と鼻との間陥み。
灸法: 禁灸。
針法:針一分、
主治:と り め、目遠く見こと能ず、悪風、涙出、弩肉(いしゆみにく)、省目(とりめ)を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 1.睛 明 (せいめい)穴
【主治症】
主として眼病に効くことになっているが、余り用いられない。
しかし、結膜炎や鼻涙管閉塞の場合に糸状交一壮の施、または一番鍼を涙管に沿って5ミリぐらい刺入することによって充血が去るものである。
また小児の搐搦(ちくでき:ひきつけ.けいれんする.)にも効果がある。

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2、攅竹(さんちく)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:眉毛の内端陥凹部に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』  攅竹(さんちく) (二穴)
取穴: 両眉の頭、すこし毛の中へ入、陥の中。
灸法:禁灸、
針法:針一分。
主治:目くらく涙出、眼赤いたみ、 瞳かゆく 、臉瞯(せんかん)動し 、頬いたみ、尸厥(しかばねけつ)、
風眩、 てんかん、 狂乱、鬼魅をつかさどる。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 2.攅竹(さんちく)穴
【主治症】
眼病、頭痛、癲癇や精神異常に効果がある。
灸はあまり適しないが、鍼は浅く刺入する。
鍉鍼によって圧し押さえると眼から頭にかけてすらっとして気持よくなるものである。

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3、曲差(きょくさ)穴  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:神庭穴と頭維穴を結ぶ線上で、神庭穴の外1寸5分に取る. (注)神庭穴と頭維穴の間を3等分し、神庭穴、曲差穴、本神穴、頭維穴と等間隔に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』  曲差 ( 二穴)
取穴: 神庭の傍ら左右へ一寸半づっ、 前の髪際よ り五分上にあり 。
灸法:灸三壮、
針法:針三分、
主治:
目明(めあきらか)ならず、 衂血(はなぢ)、 鼻瘡(はなただれ)、 心煩、 頭頂いたみ、 頂き腫るを治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』  4.曲差 (きょくさ)穴
【主治症】
鼻のやまいに効き、衂血、鼻塞、鼻療等が挙げられているが、蓄膿症にもよく効くようである。
降りの臨泣穴(胆経)もまたよく似た効果があるので使われる。

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4、五処(ごしょ)穴  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:曲差穴の後5分、上星穴の外1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 五処 ( 二穴)
取穴: 曲差より 後へ五分。
灸法:灸三五壮、
針法:針三分、留ること七呼。
主治:脊こはばり反張、 てんかん、 頭風、 めまひを主る。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』  5. 五 処(ごしょ)
【主治症】
視力減退、発熱による頭痛や脳病に効く。

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5、承光(しょうこう)穴  所属経絡:膀胱経・
取穴部位: 曲差穴の後2寸、五処穴の後1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 承光 ( 二穴)
取穴: 曲差の後へ二寸。
灸法:針法:針灸共に忌。
主治:記載なし。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』  6. 承 光 (しょうこう)穴
【主治症】
脳疾患による発熱・頭痛・眩量、または眼や鼻のやまいに用いられる。

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6、通天(てんつう)穴  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:曲差穴の後3寸5分、承光穴の後1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 通天 ( 二穴)
取穴: 曲差より後へ三寸半、 百会の左右へ一寸半づっひらく。
灸法:灸三壮、
針法:針三分、とどむること七呼。
主治: 癭瘤(えいりゅう:こぶ)、はなぢ、清涕を出し、頭ふらつき、項いたむを主どる。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』  7.通天 (つうてん)穴
【主治症】
鼻のやまい。衂血、項頸重痛、口喎斜(顔面神経麻痺)等の症によく効く。

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7、絡却(らくきゃく)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位: 曲差穴の後5寸、通天穴の後1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』絡却 ( 二穴)
取穴: 曲差の後へ五寸。
灸法:灸三壮。
針法:針三分、留ること五呼、
主治: 頭ふらつき 、耳なり 、腹はり 、 目の内障(そこひ)を生ずるを主どる。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』  8. 絡却(らくきゃく)穴
【主治症】
目の内障(そこひ:視力障害をきたす眼疾患)や種々の脳疾患に効く。

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8、玉枕(ぎょくちん)穴    所属経絡:膀胱経・
取穴部位: 絡却穴の後、脳戸穴の外1寸3分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 玉枕 ( 二穴)
取穴: 曲差の後へ八寸半、頭の中行より左右へ一寸五分づっ開きて。
灸法:灸三壮、
針法:針は禁穴なり 。
主治:目眩、 目いたみ、頭項いたみ、鼻塞り香臭を聞ざるを治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』  9.玉枕(ぎょくちん) 穴
【主治症】
脳疾患による激烈な頭痛のほかに、目や鼻のやまいに効く。

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9、天柱(てんちゅう)穴    所属経絡:膀胱経・
取穴部位: 瘂門穴の外、1寸3部に取る.(注)頭半棘筋の膨隆部の外縁に当たる.

(☆)
『鍼灸重宝記』 天柱 ( 二穴)
取穴: 項の後の髪際の中行より左右へ一寸三分づっ開きて、大筋の外廉、陥の中。
灸法: 禁灸、
針法:針二分五分、留ること三呼して、瀉すること五吸。
主治:頭風、鼻・香臭を聞ず、頭(かし)らふらつき、脳痛み重く 、頂いたみ、項強るを主どる。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』  10.天柱(てんちゅう)穴
【主治症】
脳神経疾患や目、鼻、耳等の頭部諸器官の疾患一般に効果がある。
胆経の風池穴とならんで脳神経系疾患には忘れることのできない経穴である。
この穴が用いられる病名を挙げれば、頭痛、血圧亢進、半身不随を始めかぞえきれない。

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10、大杼(だいじょ)穴 : 【骨会】   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:骨会 第1・第2胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 11. 大 杼(だいじょ) : 【骨会】
【主治症】
これより以下、風門、肺兪、厥陰兪(けついんゆ)までの4穴は上背部にあって、いづれも呼吸器疾患にすぐれた効果のある経穴である。風邪による発熱、咳嗽、咽喉炎から結核性疾患に至るまで非常によく使われる。

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11、 風門(ふうもん)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第2・第3胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 風門 ふうもん(二穴)
取穴: 背の二椎の下、両旁へ一寸五分づっ。
灸法: 灸五壮。
針法: 針五分三分 、留こと七呼、
主治: 癰疸(ようたん:皮膚や皮下に生ずる、急性で激痛のある化膿(かのう)性炎症。)、身熱、上気、気短く 、欬逆、胸背痛、嘔吐、傷寒、頭項強り 、 目瞑(目をつぶる) 、胸熱を治ス。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』  12. 風門(ふうもん)穴
【主治症】
風邪の入口であるという意味での風門であるが、また適当な治療によって風門は、風の出口ともなるのである。
風邪による証といえば東洋医学では、いわゆる発熱、頭痛、咳嗽、食欲不振、倦怠等を伴ら感冒から、言語障害、諸種運動・知覚神経の障害、卒中、中風に至るまでみな風証である。
また風邪と寒邪が兼ねて侵せば悪性気管支炎や肺炎、胸膜炎になることもある。
風門穴はこれらのうちで特に風邪や寒邪によって、鼻、咽喉、気管支、肺臓を侵された発熱症によく効くものである。
あるいは呼吸器疾患による肩疑りにもよく効く。

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12、肺 兪(はいゆ)穴  【肺経の兪穴】   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第3・第4胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』 肺兪(はいゆ)(二穴)
取穴: 三椎の下、両旁へ一寸五分づっ。
灸法: 灸百壮五十壮。
針法: 針三分五分 、留ること七呼、気を得てすなはち瀉す、
《針法誤治:刺し肺に中(あた)れば欬(せき)て三日に死す、》
主治 : 労瘵(ろうさい:肺浸潤・肺結核のこと。)、口舌乾き、上気、腰脊強いたみ、寒熱、気短、喘満、虚煩、肺痿、咳嗽、肉いたみ、 皮癢(ひよう:痒み)、嘔吐、不食、狂い走り 、背僂(せろう:かがむ)を治す。
特徴・症状・治法:
太陽(⑥小腸経・⑦膀胱経)と少陽(⑩三焦経・⑪胆経)と併病、頭項強りいたみ、或は眩冐(げんぼう:めまいをおかす)、心下痞硬(ひこう:塊つかえる)に太陽(膀胱)の経の肺兪・肝兪を刺べし 。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』  13.肺兪穴【肺経の兪穴】
【主治症】
肺臓の付着する位置であるとされるところから、肺経の兪穴である。
肺に関する種々の疾患を治す代表気である。
胸部の肺の募穴である中府穴と表裏をなし、東洋医学概念による肺に関する疾患、すなわち鼻、咽喉、気管、肺、胸膜等の呼吸器系統から皮膚に至るまでの疾患に治効がある。
また黄疸のような脾臓のやまいや、腎経のやまいなどにも、経絡理論に基づき、用いて効果があることは、臨床的にも認められている。

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13、 厥陰兪(けついんゆ)穴  【心包経の兪穴】 所属経絡:膀胱経・  ・
取穴部位: 第4・第5胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 厥陰兪 けついんゆ(二穴)
取穴: 四椎の下、左右へ一寸五分づつ。
灸法: 灸七壮。
針法:針三分、
主治:欬逆、 牙痛(歯の痛み)、 心(胸)いたみ、胸満、 嘔吐、 煩悶を主る。 即ち心包絡の兪なり 。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 14. 厥陰兪 【心包経の兪穴】・
【主治症】
肺兪と心兪の中間にあるので、その治効としては上下いずれにも通ずるが、肺兪の呼吸器系と心兪の心臓病の両方にも効果が認められる。
また39、膏肓(こうこう)と並んで肩こり、肩癖(けんぴき)に効果がある。

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14、 心兪(しんゆ)穴  【心経の兪穴】  所属経絡:膀胱経・ 所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第5・第6胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 心兪 しんゆ  (二穴)
取穴: 五椎の下、左右へ一寸五分づつ。
灸法: 禁灸、 千金に曰(いわ)く、中風、心急には心兪を灸すること百壮。
針法: 針三分、留ること七呼、気を得て即瀉す、
《誤治針法:刺て心に中(あた)れば癒して即死、》
主治: 中風、 冐絶(ぼうぜつ:冒し途絶える)、てんかん、狂走を主る。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 15. 心兪穴【心経の兪穴】
【主治症】
心は心の臓の位置するところ、またこのやまいを治するところである。
心臓の働きは東洋医学では精神作用を問どるところ、血(けつ)の生するところとされている。
したがってここに生ずるやまい、精神異常、血液循環障害等に効果がある。
神経衰弱、ヒステリー、狂、癲癇、脳出血、あるいは脳充血による人事不省から心臓弁膜症、心悸亢進等はこの穴の主治症に属する。
また胃腸、特に胃の疾患に用いて効果のあるのは、五行からいって心火は脾土の母であるからである。

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15、 膈兪(かくゆ)穴    所属経絡:膀胱経・    【八会穴:血会】 ・
取穴部位:第7・第8胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 膈兪 かくゆ (二穴)・ 八会穴:血会・
取穴: 七椎の下、両芳へ去ること一寸五分づつ。
灸法:灸三壮三十壮、多く灸すれば心中に徹て悸惕(むなさわぎ:わななき恐れる)する、
針法:針三分、留こと七呼、若、刺て偏に中れば一歳を過ぎずして死す。
主治:
心痛周痺(心痛が経脈に従って上下流動する)、吐食、翻胃、骨蒸、手足怠惰して臥ことをこのみ、痃癖(けんぺき・けんべき:肩癖:肩凝り。)、欬逆、嘔吐、膈胃寒、痰飲、食下らず、熱病汗出ず、身おもく、 常に温にして不食、身いたみ、脇腹満、 自汗、 ねあせを治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』  17. 膈兪(かくゆ)穴・ 【八会穴:血会】
【主治症】
膈とは横隔膜のことであって、胸部と腹部を隔てる膜である。
膈の症とは飲食物がうまく通じないでつかえる、吐くなどの症をきたすことである。
食道狭窄から食道癌、あるいは神経性嘔吐、慢性胃炎や胃癌の場合もある。
このような病気で飲食物が下に通じないの症(胃癌など)によいとされている。
奇穴で四花の穴の2穴はほぼ膈兪にあたり、栄養をつけ、盗汗(ねあせ)のある呼吸器疾患や腹膜炎などの結核性疾患に効果があるとされているが、実際にもよく効くことは明らかである。

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16 、肝兪(かんゆ)穴 【肝経の兪穴】  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第9・第10胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』肝兪 かんゆ (二穴)
取穴: 九椎の下、両方へ相去こと各一寸五分。
灸法:灸三壮七壮、
針法:針三分、留ること六呼、
《誤治針法:刺て肝に中れば欬(せき)て五日に死す。》
主治:
多く怒り、黄疸、熱病の後目くらく、涙いで、目眩、気短く、欬血、目上視、欬逆、口乾き、寒疝、筋寒へ、熟痙、筋急に相引、転筋腹に入り、 欬して胸脇に引て痛み、反折り上視し 、驚狂、はなぢ、唾血、短気、積聚(しゃくじゅう)を治。
※、積聚(しゃくじゅう)は、難経 第五十五難にリンクしてご覧ください。

五五難

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』  18. 肝兪穴【肝経の兪穴】
【主治症】
心兪以下腰殿部にいたるまでの穴は、胃腸その他消化器系の疾患に効果があることは、内臓体壁反射の学説からいっても肯定される。
肝兪は胃痙攣(神経性胃痛)、慢性の胃弱、黄疸等の胃・肝臓疾患に効く。
また肝の穴であり、肝は精神作用の内、意志と感情方面に関係しているといわれるから、肝が弱ると気力が衰え、感情がたかぶり、神経衰弱、ヒステリー、不眠症等を起す。
眩量(めまい)、怒る、筋が引きつる等の症状も肝の症(証)とされているところから、このような場合にも効く。
不眠症の名穴とされ、鍼を下に向け2寸ぐらい刺入する。これを左右とも行なう。
また場合によっては、30分ぐらい置鍼しておくと、すやすやと眠りにつくこともある。
肝は目に関係しているところから、眼病のすべてに用いて効果があるものである。
特に視力減退、夜盲症には欠くことのできない経穴である。

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17、 胆兪(たんゆ)穴   【胆経の兪穴】 所属経絡:膀胱経・
取穴部位 : 第10・第11胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 胆兪 たんゆ (二穴)
取穴: 十椎の下、両旁各一寸五分づつ。
灸法: 灸三壮五壮、
針法: 針三分五分、留ること七呼、
《針誤治:刺て胆に中れば一日に死す。》
主治:頭痛、振寒汗出ず、脇下腫、心腹張、 口苦く 、舌かはき 、咽痛乾き、嘔吐、骨蒸、労熱、 不食、 目黄を治。
四花の上二穴は膈兪(かくゆ)、下二穴は胆兪(たんゆ)なり
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 19. 胆兪穴 : 【胆経の兪穴】
【主治症】
肝と胆は表裏一体であるところから、肝兪と胆兪もまた治効は一体である。
消化器、特に肝臓や胆嚢のやまいに効果がある。
胆石仙痛や胃痙攣(神経性胃痛)の場合には背部までとおる痛みが、胆兪付近にあり、強い圧痛も現れるのが常である。
また胸膜炎の場合にも効果がある。
頭痛、目のやまいにも効く。
背部の穴に対応して腹部の募穴である日月(胆)、または肝兪に対応して期門(肝)などは、陰陽相応じてともに使われる重要な穴である。

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18、 脾  兪(ひゆ)穴  【脾経の兪穴】  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第11・第12胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 脾兪 ひゆ (二穴)
取穴: 十一椎の下、両旁へ相去こと一寸五分づっ。
灸法:灸三壮五壮、
針法:針三分、留こと七呼、
《針誤治:刺て牌に中れば呑酸して五日に死す。》
主治:
多食して身痩、鹹(塩からい)き汁を吐き、けんべき、積聚(しゃくじゅう)、脇下みち、洩利、痰瘧(たんぎゃく)寒熱、水腫れ、気脹、脊に引ていたみ、黄疸、不食を治。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 20. 脾兪穴  【脾経の兪穴】
【主治症】
脾臓は現在の膵臓であり、消化器としては重要な器官であるという考えはいまもむかしも同じである。
胃の疾患を始め消化器系疾患の全般に効果がある。
その他、脚気、糖尿病、神経衰弱等にも脾経の関与するやまいとして広く使われ効果がある。
また、急性関節リウマチ(リウマチ熱)にもよく効く。

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19、 胃 兪(い ゆ)穴   【胃経の兪穴】   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第12胸椎・第1腰椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 胃兪(いゆ)(二穴)
取穴: 十二椎の下、両旁へ一寸五分づつ。
灸法:灸三壮七壮。
針法:針三分、留ること七呼、
《誤治》
主治: 中湿、霍乱、胃冷、腹脹て鳴り 、翻胃、嘔吐、不食、多食して痩蠃(やせつかれ)、目暗く 、腹いたみ、むねわき支満、脊いたみ、筋痙攣を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 21. 胃 兪 穴 : 【胃経の兪穴】
【主治症】
脾兪とともに消化器疾患一般に効くが、その中でも胃痙攣(神経性胃痛)、または急性胃炎からくる激痛には、ここに深く刺入することによって頓挫的に効果がある。効果てきめんとはこのことである。

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20、 三焦兪(さんしょうゆ)穴  【三焦経の兪穴】  所属経絡:膀胱経・
取穴部位: 三焦経の兪穴 第1・第2腰椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 三焦兪 さんしょうゆ (二穴)
取穴: 十三椎の下、左右へ一寸五分。
灸法: 灸三壮五壮。
針法: 針三分五分、留ること七呼、
主治: 積じゅ、脹満、不食蠃痩(食欲不振で疲れ痩せた)、傷寒頭痛、吐逆、肩背腰強り、小便渋り 、泄注、腹脹、腸鳴り 、 目眩、頭痛を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 22. 三焦兪(サンショウユ) 【三焦経の兪穴】
【主治症】
三焦とは、上焦、中焦、下焦の天人地3部のわけ方からきているが、飲食物が口に入ってから出るまでの系列、すなわち消化栄養系と排系とを指しているのである。
したがって消化器系の疾患や尿器系の腎臓、膀胱等のやまいにも用いられる。
また、頭痛、眩量、肺結核にも効くとされている。

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21、 腎兪(じんゆ)穴 【腎経の兪穴】  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第2・第3腰椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 腎兪 じんゆ (二穴)
取穴: 脊の十四椎の下、左右へ一寸五分づっ、臍(へそ)と平し 。
灸法: 灸三壮、
針法: 針三分、留こと七呼、
《針誤治:もし刺て腎に中れば嚔(ひ:くしゃみが出)て六日に死す。》
主治: 五労七傷、虚して嬴痩(えいそう)、耳聾ず、下部冷、淋濁、 目暗く 、溺血、遺精、腰膝脚いたみ、消渇、身熱し 、振寒、多食しても痩、面黄黒く、腸鳴、四肢だるく 、洞洩食化せず、身浮腫るを治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 23. 腎兪穴   【腎経の兪穴】
【主治症】
腎兪は腰部では最も運動するところであり、腹腔内臓、下肢の違和、疾病の場合にいずれも痛み、圧痛、無力感、屈伸不能、倦怠などの自覚症状が現われるところである。
特に下腹部内臓の腎臓、膀胱、生殖器、大腸、直腸などに起こった異和は、腎兪に現れることが多い。
したがって足、腰のやまいのほかに内臓に起った疾患に対しては、非常に多く使われる。
東洋医学では腎臓の機能はたんに泌尿器の機能のみでなく、生命力の根元であり、生殖作用を主につかさどり、精神機能の一部を分担し、耳や骨に関係し、また水の臓として必尿器の作用をもつかさどっていると考えた。
経絡はこれらの作用と関連ある点(経穴)を循るようになっている。
したがって東洋医学的にいえば、次に示す腎の虚実の証にはすべて用いられ、効果がある。
腎の虚実に関係し腎兪を使うやまいの例を挙げると次のようなものがあ
る。
(1) 生殖器疾患・婦人科疾患、男子生殖器疾患。精力減退
(2) 泌尿器疾患・腎臓、膀胱、尿道における疾患
(3) 呼吸器疾患・肺、胸膜、腹膜などにおける疾患
(4) 耳病、心臓病
(5) 神経系疾患・・・下腹部、腰仙部、下肢部における神経痛、あるいは知覚神経麻痺、運動麻痺
(6) さらに経絡治療においては肝・胆経の虚証の場合は補法を、肺経、脾経の虚実には対的に、また腎兪を補の要穴として広く用いることが多い。
このように腎兪は腎経の兪穴であり、腎経の関与するやまいにはほとんど用いられ、全身の経穴のうちで最も多く用いられる。
さらに腎兪周辺の穴のうち命門は、左右腎穴の中央の脈にあって、その主治は内臓性諸出血に特効のあるほか、一般的に必尿器、生殖器、腰痛に効く。
腎兪の外方約1寸5分のところにある同じ膀胱経の志室穴は、また泌尿器、生殖器、消化器疾患に効果があるが、泌尿器、生殖器疾患などの治効には共通性がある。
またその近くでやや斜め上方にある京門穴(第12肋骨端ニアリ)は、胆経に属してはいるが腎経の募穴であり、腎の兪穴である腎と表裏一体をなすものである。
したがってその使用目的も共通性を有していることは膀胱のやまい、腸炎、腰痛などに効くことによってもわかる。
〔参考〕
腎兪は「腎を治する所」の義であって、この兪に対する募穴は京門穴である。
内経によれば、腎は先天の原気の宿るところであって、精と志を蔵し、一身の精力の発源地であると言われている。
(代田文誌「鍼灸治療基礎学」より)

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〇奇穴.  気海兪(きかいゆ)穴
部位 : 第3腰椎棘突起下の外方1寸5分にある。

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 24. 気海兪(きかいゆ)穴
【主治症】
腰痛、痔瘻、腸仙痛

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22、 大腸兪(だいちょうゆ)穴  【大腸経の兪穴】   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第4・第5腰椎棘突起間の外1寸5分に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』 大腸兪 だいちょうゆ (二穴)
取穴: 十六椎の下、左右へ一寸五分づつ。
灸法: 灸三壮、
針法: 針三分、留ること六呼。
主治: 中燥、脊強り腰痛み、腹いたみ、腸鳴り、 多食して身痩、大小便結、 洩利、 白痢腸癖を治す。 。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 25. 大腸兪穴 【大腸経の兪穴】
【主治症】
主として腰痛のほかに、大便の下るやまい(下痢や赤痢など)に効くように書かれてあり、赤痢には著効があるが、また便秘にもよく効く。
普通の体格の人で約 5cmは刺入できる。
痔のやまいにも効く。 直腸、肛門は大腸の一部であるから当然である。

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〇奇穴.  関元兪(かんげんゆ)穴 
部位  : 腰部、第5腰椎棘突起下の外方1寸5分にある。

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』
【主治症】
腰痛、急性および慢性下痢、膀胱麻痺、婦人諸病

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23、 小腸兪(しょうちょうゆ)穴 【小腸経の兪穴】  所属経絡:膀胱経・
取穴部位 : 正中仙骨稜第1仙椎棘突起部の下外方1寸5分に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』 小腸兪 しょうちょうゆ (二穴)
取穴: 十八椎の下、 左右へ一寸五分づつ。
灸法: 灸三壮、
針法: 針三分、 留こと六呼。
主治: 中暑、 小便赤く、 淋癧(りんれき:尿意は頻繁にあるが、尿がほとんど出ない)、遺溺、脹満(ちょうまん:ふくれみつ)、 [ 疒+丂 ]痛み、泄痢(せり:下痢便が漏れる)膿血五色、 脚はれ、 五痔、づっう 、 虚乏、津液すくなく 、 消渇、 口かはき、 帯下を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 27. 小腸兪穴 【小腸経の兪穴】
【主治症】
漢方医学では、小腸は小便を必別(ひべつ・大便中より水分をわけること)するところとされるので、その兪穴である小腸兪は小便に関するやまい、すなわち腎、膀胱などのやまいに効く。
「小便赤く渋(しぶ)り淋瀝(りんれき・少ししかでないの意)」等はその証である。
また、大便中に膿や血液を混えて下す病である大腸の赤痢性、結核性あるいは梅毒性炎症等の場合にも、この小腸兪はぜひとも使わなければならない。
糖尿、痔のやまいにも効く。
小腸兪から膀胱兪、中膂兪、白環兪、上、次、中、下の八髎兪はみな仙骨部にあって男女生殖器疾患に関係がある。
小腸兪は婦人帯下(たいげ・こしけの意)のやまいに効く。帯下には赤と白とがある。
子宮や卵管等のやまいからくるものである。

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24、 膀胱兪(ぼうこうゆ)穴  【膀胱経の兪穴】  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:正中仙骨稜第2仙椎棘突起部の下外方1寸5分に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』 膀胱兪 ぼうこうゆ  (二穴)
取穴: 十九椎の下、両穿へ一寸五分づつ。
灸法: 灸三壮七壮、
針法: 針三分、留ること六 呼。
主治: 風労、脊強り、小便赤黄、遺溺、陰瘡(いんそう:陰経の怪我)、少気、脛寒拘急(けいかんこうきゅう:脛(すね)が寒くなり筋肉がひきつる。)、腹満、大便かたく 、洩利(えいり:小便をもらす)、腹いたみ、 脚膝力なく 、 女子瘕聚(かじゅう:)を治す。
参考:癥(ちょうしゃくじゅう):腹部の「しこり」子宮内膜症・筋腫・ガン・原因不明のしこり。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 28. 膀胱兪穴  【膀胱経の兪穴】
【主治症】
『鍼灸聚英』には、小便赤黄、遺溺とあり、小便赤黄は「ウロビリン」の著しく増加したもので、猩紅熱のような急性伝染病、溶血性黄疽の場合などであるが、別本には溺赤(デキセキ)ともある。これは血尿のことで、急性腎炎、腎臓結核、腎臓腫瘍、腎盂腎炎、急性膀胱炎、膀胱癌、急性尿道炎、尿路結石などにくる場合が多い。
膀胱兪の場合はむしろ後者(血尿)に特に用いて効を現わすものというべきである。
婦人の下腹部の腫物や子宮座等にも治効がある。

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25、 中膂兪(ちゅうりょゆ)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位 : 正中仙骨稜第3仙椎棘突起部の下外方1寸5分に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 29. 中膂兪(ちゅうりょゆ)穴
【主治症】
腹膜炎のように腹の張るやまい、腰痛、脚痛、糖尿病のほかに婦人腹の冷えによる不妊症の場合、また、便中血液を混ずるような大腸や小腸の出血性の悪性のやまいにも効く。

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26、 白環兪(はくかんゆ)穴  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:正中仙骨稜第4仙椎棘突起部の下外方1寸5分、仙骨裂孔の外1寸5分に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 30. 白環兪(はくかんゆ)穴
【主治症】
自環は婦人科疾患のほかに、脊髄の麻痺に基づく大小便の不通、手足の麻痺等に応用される。
痔疾にもよく効く。

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27、 上髎(じょうりょう)穴     所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第1後仙骨孔部に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 31.  上髎穴
【主治症】
「八髎総べテ腰痛ラ治ス」とあるが、この腰痛は神経痛あるいは、いわゆる筋肉リウマチ (腰筋筋膜症)もあれば、また内臓疾患からきているもの(内臓起因性腰痛)もある。
男女生殖器疾患、カリエス(骨髄組織が乾酪性壊疽に陥った化膿や炎症が状態。)、脊髄・腎臓・機胱のやまいからきている場合もある。
いずれの場合でも直接、間接に効果がある。
上醪は婦人科疾患に特に効果があり、子宮内膜炎、子宮後屈のときの自帯下の著しいものや月経不順によい。
このほか自環同様、大小便不通、片麻痺のような中枢性疾患にも効果がある。

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28、 次髎(じりょう)穴      所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第2後仙骨孔部に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 32. 次髎穴
【主治症】
男女生殖器疾患、腰痛、泌尿器疾患に効果がある。

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29、 中髎(ちゅうりょう)穴  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第3後仙骨孔部に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 33. 中髎穴
【主治症】
男女生殖器疾患、ことに婦人科疾患、坐骨神経痛、あるいは腰脚部の神経麻痺、疝気、腎、膀胱のやまいに効く。
また肺結核にも効く。

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30、 下髎(げりょう)穴    所属経絡:膀胱経・

取穴部位:第4後仙骨孔部に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 34. 下髎(げりょう)穴
【主治症】
上・次・中髎と同様、下焦のやまい、生殖器、泌尿器、直腸、肛門等におけるやまい、ならびに腰、脚のやまいに効くが、『鍼灸説約』には肺結核の場合の四花の穴と同様に効果があると書いてあるが、下髎もまた消化器系の力を高め、体力を強めて結核性のやまいに特効を現わすという意味である。

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31、 会陽(えよう)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:尾骨下端の外5分に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』 会陽 えよう (二穴)
取穴: 亀尾と尻骨と両旁の陥み。
灸法: 灸五壮。
針法: 針八分、
主治: 腹寒、熱気、寒気、泄瀉、久痔、下血、陽気虚乏、陰汗しめるを治す。

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 35. 会陽(えよう)穴
【主治症】
主として、肛門のやまいで痔出血、痔核、脱肛にはすぐれた効果があり、腹が冷えてくだり腹にも効く。

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32、 承扶(しょうふ)穴   所属経絡:膀胱経・

取穴 : 殿溝の中央に取る.  (注)坐骨神経幹が深部を走る.
『本間祥白取穴』
部位 : 殿溝の中央の部、すなわち殿髪(でんすらへき)中央に当る。取り方:
殿部の下部、坐骨結節の下の横紋(殿溝)のほぼ中央で、正しく伏臥し、足を伸ばし、力を緩め、坐骨結節から起始する大腿二頭筋長頭の腱の外縁に取る。強圧すると痛みが響く。坐骨神経幹の経路である。

(☆)
『鍼灸重宝記』 承扶 しょうふ (二穴)
取穴: 尻の下、股陰上衡文(ふとすじ)正中。
灸法:灸三壮。
針法:針七分 、
主治:腰脊相引ていたみ、 久しき痔、 尻はれ、 大便かたく 、小便通ぜざるを治。

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』  50. 承扶(しょうふ)穴
【主治症】
骨神経痛、腰背痛に効き、体虚して精をなす場合にも効く。

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33、 殷門(いんもん) 穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:後大腿部のほぼ中央、承扶穴と委中穴を結ぶ線のほぼ中央に取る.(注)坐骨神経幹が深部を走る.
(☆)
『鍼灸重宝記』 殷門 いんもん (二穴)
取穴: 承扶の下六寸。
灸法: 禁灸。
針法: 針七分、
主治: 腰脊いたみ伸屈ならず、外腿腫、重きを持て瘀血(おけつ:古血)いたみ、泄注を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 51. 殷門(いんもん) 穴
【主治症】
腰背痛、坐骨神経痛

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34、 浮郄(ふげき)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:委陽穴の上1寸、大腿二頭筋の内縁に取る. (注)総腓骨神経幹が走る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 浮郄 ふげき (二穴)
取穴: 委陽(いよう)の上一寸。
灸法:灸三壮。
針法:針五分、
主治:霍乱転筋、大小便熱してかたく 、 脛(すね)の外いたみ、髀枢不仁(ヒスウフジ:ふともも:大腿かなわざる)を治す。

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 52. 浮郄(ふげき)穴
【主治症】
霍乱(かくらん),転筋(腓腹筋痙攣)、便秘、膀胱炎。

【参考 『鍼灸重宝記』 】
霍乱(かくらん)
霍乱は、外暑熱に感じ、内飲食生冷に傷られ、たちまち心腹疼み、吐瀉、発熱、悪かん、頭痛、眩暈、煩燥し、手足ひへ、脉沈にして、死せんとす。転筋、腹に入るものは死す。
又、吐せず、瀉せず、悶乱するを乾霍乱という、治しがたし。
▲転筋は、卒に吐瀉して、津液かはき、脉とぢ、筋つづまり攣り、 はなはだしきは嚢縮り、舌巻ときは治しかたし。
男は手にて其陰嚢を引き、女は両の乳を引て、中ヘ一処に寄すべし。これ妙法なり。
▲腹脹、急にいたむときは、針をまづ幽門に刺べし。
此穴に刺ば、かならず吐逆するぞ。 しかれども痛増て、目など見つむることあり。
苦しからず、さて気海・天枢に針すべし。
▲霍乱には、陰陵泉・支溝・尺澤・承山。
▲腹痛には、委中。
▲吐瀉には三里・関冲。
▲胸満悶、吐せずは、幽門に針すべし。
———————
杉山三部書、 病証の治療穴から。
霍乱(かくらん)の病状には、
【灸】中脘・巨闕・章門・神闕穴に施灸。
治療穴として、下脘・鳩尾・上脘穴を使用する。
【刺絡】委中穴に刺絡する。
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35、 委陽(いよう)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:膝窩横紋の外端、大腿二頭筋の内縁に取る. (注)総腓骨神経幹が走る.
(☆)
『鍼灸重宝記』 委陽 いよう (二穴)
取穴: 承扶の下一尺六寸、膕中(かくちゅう:ひざの裏側のくぼんだ部分。ひかがみ。)の横文の外側の頭、両筋の間。
灸法:灸三壮。
針法:針七分、
主治:腰脊いたみ陰中に引、小便通ぜず、てんかん、小腹かたく 、傷寒大熱を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 53.  委陽(いよう)穴
【主治症】
中風による半身不髄、脊髄炎による腰部、下肢の麻痺のほかに・膀胱炎によい。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 35、委陽(いよう)
(部位) 膝の外側、委中穴の外方2寸

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36、 委中(いちゅう)穴   【合土穴】 所属経絡:膀胱経・

取穴部位:膝窩横紋の中央に取る. (注)脛骨神経が深部を走る.膝窩動脈が通る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 委中 いちゅう (二穴)
取穴: 足膕中(かく:ひざの裏側のくぼんだ部分。ひかがみ。)の横文の中央、陥なる中。
灸法: 灸三壮。
針法: 針五分、留ること七呼、委中の大脉を刺ことなかれ、
主治: 腰脊膝いたみ、遺溺、小腹かたくはり 、身痺(しび)れ、髀枢(ヒスウ:ふともも:大腿かなわざる)痛み ( 血を出す) 、傷寒、四肢熱し 、 熱病汗出ず(血をとる) 、大風髪眉ぬけおちたる者に刺て血を出すべし 。

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 54. 委中(いちゅう)穴 【合土穴】
【主治症】
委中の特色は、手の尺沢と同じように静脈の浮いているところであり、むかしから瀉血療法に用いられた。
急性熱性疾患、高血圧症、脳出血、急性膝関節炎、リウマチ等のときに応用される。
いまの医師は、高血圧、脳溢血の救急の場合、肘関節の静脈より瀉血を行うが、むかしは委中から取るのが常であった。
委中は急性の場合にも使うが、また前述のやまいで慢性の痼疾(長びいて治りにくい)にも使って効果がある。
今村了庵著の『医事啓源』という本に、委中瀉血の項があるが、これによると「腰痛、脚腫、難産、不月、瘡、梅毒、下実二係ル者二効有リ」とあり、婦人病、膝関節のリウマチや下半身に熱性、陽証性疾患のある場合に治効があるとされたのである。

(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』  36、委中(いちゅう) 穴 :  【合土穴】
(部位)膝窩の中央、横紋上の動脈にあり。
(取り方) 足を少し曲げると膝窩に横紋が現れる、その横紋のほ
ぼ中央で動脈上に取る。

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37、 附分(ふぶん)穴  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第2・第3胸椎棘突起間の外3寸に取る.
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 36. 附分(ふぶん)穴
【主治症】
附分以下秩辺までの背部の第3行線は、膀胱経兪穴線の副線と
もいうべきものであって、大体の諸兪穴の補助の線であるともいえる。
附分は風門の外方にあり、風門が風邪の治療であるように、風邪のため、頸や肩が痛んで引きつり、頸を動かすこともできないような場合によい。

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38、 魄戸(はくこ)穴  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第3・第4胸椎棘突起間の外3寸に取る.
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 37. 魄戸(はくこ)穴
【主治症】
肺兪(はいゆ)【肺経の兪穴】の外方にあって、呼吸器疾患の気管支炎、肺結核、胸膜炎、あるいは喘息等に効く、特に咳が甚しく、幅吐して、胸苦しい場合にここに治療するのがよい。
また後頸部が引きつって頸を廻せない場合にもよい。

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39、  膏肓(こうこう)穴  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第4・第5胸椎棘突起間の外3寸に取る.
【参考】13、厥陰兪(ケツインユ)【心包経の兪穴】 外1寸5分に取る.  ゴロ、死ななくて結構。
(☆)
『鍼灸重宝記』  膏肓 こうこう (二穴)
取穴: 四椎の下、五の椎の上にちかし、脊中を左右へ相去こと各三寸、
灸法: 口伝に胛(かいがらほね)骨のきはに一指を側置ほどに點すべし 。
:後に 気海 ・丹田・関元 ・中極、 四穴の内一穴 左足の三里とに灸して火気を引下てよし。 灸百壮五百壮まで 。
針法: 記載なし
主治: 虚損、伝尸、骨蒸、遺精、痩つかれ 、健忘、痰飲、 しゃくり、 上気、 発狂を主る。
膈噎(かくえつ:むせぶ) 、 心中妨悶、 項背こわり 、 目病、 気病、 諸病治せずといふことなし 。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 38.  膏肓(こうこう)穴 (別名、けんぺき)
【主治症】
膏肓(こうこう)穴は呼吸器疾患、肩関節、肩こり、精神疲労等の場合に圧痛が現われ、ここを圧し押さえると一時気分がよくなるので、むかしから診察、または治療の場所として使われたものである。
◎、呼吸器疾患、ことに盗汗のような場合にここに灸するのがよい。
呼吸器疾患、神経衰弱、あるいは心臓病等で非常に衰弱した場合に、ここに灸してすぐれた効果のあったことが、多くの古典に書き残されている。
また現在、われわれがこれを追試してもよく実証されるところである。
ただしこのようなやまいにはドーゼ(刺激量)の問題をよく考慮して刺激過剰にならないよう十分注意して当らなければならない。
また高血圧等の場合にもよく効く。
膏肓穴は厥陰兪の外方にあり、治効はやや似ているが•膏肓の方が主体となる穴で、腎兪とならぶ名穴である。——————————————————————————————–

40、 神堂(しんどう)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第5・第6胸椎棘突起間の外3寸に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 神堂 しんどう  (二穴)
取穴: 五椎の下、左右へ三寸づつ開。
灸法:灸五壮三壮。
針法:針三分五分、《誤治》
主治: 腰背強り、悪寒発熱、胸腹満、気逆上攻、時に饎(シ: むす)る鐘る を治す。

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 39. 神堂(しんどう)穴
【主治症】
心兪と同様であるが、主に肩背痛を治する。

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41、 譩譆 (いき)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第6・第7胸椎棘突起間の外3寸に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』  譩譆 いき  (二穴)
取穴: 六椎の下、左右へ三寸づつ開く、肩膊の内かど 。
灸法: 灸五壮より百壮まで。
針法:  針三分 、留ること七呼、あるひは六分、留ること三呼、 瀉五吸、
主治: 大風汗出ず、労損臥ことを得ず、瘧疾、背もだへ、気満腹脹、気眩(めまい)、むねわき(胸が波打つ様な症状かも) 、腰背痛み、目いたみ、 鼻衂(はなぢ)、 端逆、臂膊(ひじかた)内廉いたみ、 食時頭痛、 五心熱を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 40. 譩譆 (いき)穴
【主治症】
胸膜炎、肋間神経痛などで胸部が痛む場合、あるいは胸筋、背筋リウマチ(筋筋膜症)に応用される。

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42、  膈関(かくかん)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第7・第8胸椎棘突起間の外3寸に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』 膈関 かくかん  (二穴)
取穴: 七椎の下、 左右へ三寸づつ、 陥の中。
灸法: 灸三壮。
針法: 針五分、
主治: 背痛み、悪寒、脊強り、不食、 しゃくり、涎唾(エンダ:よだれつば)多 く、胸もだへ、 大使調はず、小使黄なるを治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 41.  膈関(かくかん)穴
【主治症】
膈兪穴【八会穴:血会】の外方にあり、膈兪穴の主治症と同じように飲食物がうまく通じない、すなわち膈の症に効くのである。食道痙攣、食道癌、胃の噴門部にやまいのある場合等に用いられる。
また背の痛む場合にもよい。

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43、 魂門(こんもん) 穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第9・第10胸椎棘突起間の外3寸に取る.

【参考】16 、肝兪(かんゆ)穴 【肝経の兪穴】  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第9・第10胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 魂門 こんもん(二穴)
取穴: 九椎の下、左右へ三寸づつ開き。
灸法:灸三壮。
針法:針五分、
主治:背より心に引いたみ、尸厥(しけつ:突然倒れて人事不省となり仮死状態になる) 、腹鳴、大小便ととのはざる を治す。

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 42. 魂門(こんもん) 穴
【主治症】
肝兪の外方にあって、消化器疾患に、肝兪の補助穴として用いられる。
肝臓病、胃痙攣(神経性胃痛)等に効く。
ことに回虫による腹痛の場合に、魂門の上の膈関からその下の陽綱にかけて右側に強い圧痛が現われることが多く、回虫の診断によく用いられることがある。

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44、 陽綱(ようこう)穴  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第10・第11胸椎棘突起間の外3寸に取る.

【参考】17、 胆兪(たんゆ)穴   【胆経の兪穴】 所属経絡:膀胱経・
取穴部位 : 第10・第11胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 43. 陽綱(ようこう)穴
【主治症】
胆兪穴【胆経の兪穴】の外側にあって、右側の穴は肝臓病、胆石仙痛に、また、神経性胃痛に効果があり、用いられる。

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45、 意舎(いしや)穴       所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第11・第12胸椎棘突起間の外3寸に取る.

【参考】18、 脾兪(ひゆ)穴  【脾経の兪穴】  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第11・第12胸椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 意舎 いしや (二穴)
取穴: 十一椎の下、左右へ三寸づつ開。
灸法: 灸五十壮百壮。
針法: 針五分、
主治: 腹満泄瀉(せしゃ:下痢便を下す。)、小便赤黄、嘔吐、不食、消渇、 目黄なるを治す。。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 44. 意舎(いしや)穴
【主治症】
脾兪(ひゆ)穴【脾経の兪穴】 の外方にならび、消化器病の慢性・急性いずれの場合にも脾兪の補助穴として用いられる。
また、神経性胃痛や胆石仙痛の鎮痛穴でもある。

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46、 胃倉(いそう)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第12胸椎・第1腰椎棘突起間の外3寸に取る.

【参考】19、 胃 兪(い ゆ)穴   【胃経の兪穴】   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第12胸椎・第1腰椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 45. 胃倉(いそう)穴
【主治症】
胃兪 【胃経の兪穴】の外方にあって、意舎と同様にすべての消化器病に効くが、特に神経性胃痛や胆石仙痛、その他消化器疾患による腹痛に鎮痛効果がある経穴である。
鍼でも灸でもよく効くが、鍼は少し深く刺入する方がよい。
この効果は魂門、陽綱、意舎、胃倉、育門の5穴とも同じである。
また糖尿病にも効く。

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47、 肓門(こうもん)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第1・第2腰椎棘突起間の外3寸に取る.

【参考】20、 三焦兪(さんしょうゆ)穴  【三焦経の兪穴】  所属経絡:膀胱経・
取穴部位: 第1・第2腰椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 肓門 こうもん  (二穴)
取穴: 十三椎の下、左右へ三寸づつ開。
灸法: 灸二壮、あるひは三十壮。
針法: 針五分、
主治: 心下いたみ、大便かたく 、婦人の乳病を治す。

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 46.  肓門(こうもん)穴
【主治症】
三焦兪とならび、痞根穴と同様、胃や腸の痛みに効く。
特に下腹部の痛みには育門が効く。
また便秘にもよい。
『聚英』には婦人乳房疾患にも効くように書いてあるが、著者はまだ応用して見たことがない。
ある肺結核の末期の患者が、喘息発作を起した場合、肓門に2寸の鍼を上方に向けて刺入したところ、頓挫的に軽快させたことが数回あったが、この穴は救急的にいろいろな奇効を現わす穴のようである。

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48、  志室(ししつ)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第2・第3腰椎棘突起間の外3寸に取る.

【参考】21、 腎兪(じんゆ)穴 【腎経の兪穴】  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第2・第3腰椎棘突起間の外1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 志室 ししつ (二穴)
取穴: 十四椎の下、左右へ三寸づつ開。
灸法: 灸三壮七壮。
針法: 針五分、
主治: 陰腫いたみ、腰背こはり、すくみ、食せず、遺精、淋病、吐逆、両のわき痙攣りいたみ、霍乱を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 47. 志室(ししつ)穴
【主治症】
腰や背の痛みに最もよく効くが、また生殖器、泌尿器疾患等にも腎兪と同様よく使われる。

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49、 胞肓(ほうこう)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:正中仙骨稜第2仙椎棘突起部の下外方3寸に取る. (注)次髎(じりょう)穴に並ぶ.

【参考】28、次髎(じりょう)穴    第2後仙骨孔部に取る.

【参考】24、膀胱兪(ボウコウユ) 【膀胱経の兪穴】
正中仙骨稜第2仙椎棘突起部の下外方1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 胞肓 ほうこう  (二穴)
取穴: 十九椎の下、左右へ三寸づつ。
灸法: 灸三十五壮五十壮。
針法: 針五分 、
主治: 腰背いたみ、腹脹(フクチョウ:はらふくれ)、食化ず、淋病、大小便通ぜざるを治。

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 48. 胞肓(ほうこう)穴
【主治症】
腰、殿部痛に効くが、また大小便閉によく効く。
大小便閉は脳脊髄疾患からくることもあるので一概に言えないが、小便閉(尿閉)は膀胱や尿道の腫瘍、結石、婦人科疾患等によって尿道を圧迫することによって起ることもある。
大便、すなわち便秘にはさまさまな原因があるが、そのうちで悪性のものは急性腸閉塞、急性盲腸炎等である。
置鍼や多壮灸によって奇効を現わすことがある。

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50、 秩辺(ちつぺい)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:正中仙骨稜第3仙椎棘突起部の下外方3寸に取る. (注)中髎穴に並ぶ.

【参考】29、中髎(ちゅうりょう)穴   第3後仙骨孔部に取る.

【参考】25、中膂兪(ちゅうりょゆ) 穴
取穴部位:正中仙骨稜第3仙椎棘突起部の下外方1寸5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』 秩辺 ちつぺい  (二穴)
取穴: 二十椎の下、左右へ三寸づつ。
灸法: 灸三壮。
針法: 針三分五分、《誤治》
主治: 五痔、小便赤、腰痛を治ス。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 49. 秩辺(ちつぺい)穴
【主治症】
胞肓(ほうこう)穴と同様に膀胱、尿道、直腸、肛門の排泄作用に異状のある場合によく反応の現われる穴で、痙攣と緩解しこれを通じる。
また、特にも効くことは、白環兪、会陽、長強等とともに忘れてはならない穴である。

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51、  合陽(ごうよう)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:委中穴の直下3寸に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』  合陽 ごうよう(二穴)
取穴: 委中の下三寸。
灸法: 灸五壮。
針法: 針六分、
主治:
腰脊こはり腹に引ていたみ、陰股熱、[月十行]痠腫(?サンシュ:)、寒疝(かんせん:寒邪に侵されて下腹部の痛む病気)、 陰嚢いたみ、崩漏、 帯下を治ス。。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 55. 合陽(ごうよう)穴
【主治症】
主として腰背痛、下腿の痛む場合と婦人科疾患に効く。
特に子宮出血に効き、また精巣炎にも効く。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 51、合陽(ごうよう)
(部位) 下腿後側の正中、委中の下方3寸

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52、  承筋(しょうきん)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:委中穴の下、腓腹筋の最もふくらんだところで、内側頭と外側頭の筋溝に取る. (委中穴の下、ほぼ5寸に当たる)
(☆)
『鍼灸重宝記』 承筋 しょうきん (二穴)
取穴: 腨腸(こむら筋)の中央の陥中、脛(すね)の後、合陽のとをり 、足跟(そくこん:かかと)より七寸上。
灸法: 灸三壮、
針法: 禁針。
主治: 腰背いたみ、痙痺(ケイヒ:ひきつりしびれる)、腨跟(こむらかかと)いたみ、鼻血、 霍乱、転筋を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 56.  承筋(しょうきん)穴
【主治症】
膀胱経のこれより以下の穴は、一般に背や腰、下腿の後側の痛みや腫れに効くといわれている。
特に承筋、承山の穴は腓腹筋上にあって脚気、霍乱等に現われる転筋(こむらがえり)、すなわち腓腹筋痙攣に特効ある穴である。
また承筋、承山、飛陽の3はいずれも特に効果があり、承筋、承山2穴は便秘に効果があるとされ、よく用いられる穴でもある。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 52、承筋(しょうきん)
(部位) 下腿後側の正中、委中の下方5寸

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53、 承山(しょうざん)穴  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:委中穴の下、腓腹筋内側頭と外側頭の筋溝下端に取る。

(☆)
『鍼灸重宝記』  承山 しょうざん (二穴)
取穴: 合陽の通り、腨(こむら)の肉高起て止る所の肉の分 、陥なる中。
灸法: 灸五壮。
針法: 針七八分、気を得て即瀉し 、 はやく針を出す、
主治: 大便通ぜず、痔はれ、 戦慄(せんりつ:恐ろしくてからだが震える)、 かっけ腫いたみ、 霍乱(カクラン:日射病:激しい吐き気・下痢などを伴う急性の病気)、 転筋、 不食、 傷寒の水結を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 57.  承山(しょうざん)穴
【主治症】
承山は外果の上7寸、取り易い穴で、よく用いられるが、承筋穴のところでも述べた通り、腓腹筋、疾、便秘に効き、脚気の場合に、欠くことのできない穴でもある。
また下肢後念、小児引きつけ、下肢の麻痺にもよく効く穴である。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 53、承山(しょうざん)穴
(部位) 下腿後側の正中、外果の上7寸で飛場の内上方、アキレス腱の腓腹筋移行部

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54、 飛陽(ひよう)穴  :  【絡穴】  ・ 所属経絡:膀胱経・
取穴部位:崑崙穴の上7寸、腓腹筋下垂部の外縁、腓腹筋とヒラメ筋との間に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』  飛陽 ひよう (二穴)
取穴: 承山と相並ぶ、承山は膕(かく:ひざの裏側のくぼんだ部分)の中央通りの下、 飛陽は外踝の後通りの上、踝の上七寸に点す。
灸法: 灸三壮、
針法: 針三分。
主治: 痔腫れいたみ、體(たい:身体)おもく 、脚腨(あしこむら)はれいたみ、 目眩、 目痛、 てんかん、 寒瘧(かんぎゃく:おこり) を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 58. 飛陽(ひよう)穴 : 【絡穴】
【主治症】
飛陽(ひよう)穴は、痔や足の症状を治すのによいが、これより以下膀胱経の穴は脳をはじめ、目、耳、鼻等の頭部器官の疾患に特殊な関係を有するところである。
経絡論からいえば膀胱経は頭部に起っているからである。
飛陽は目眩、狂、癲癇、鼻出血、逆上等の上部実証の症状があるときに取穴される。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 54、飛陽(ひよう) 穴 :  【絡穴】
(部位) 外果の上方7寸、腓腹筋の外縁にあり。
(取り方)アキレス腱の外側縁に沿って押し上げていくと、7寸の所で腓腹筋の側頭に突きあたる、ここに取る。
ここは承山穴(こむらの下の分肉の間)の外方にあたる。

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55、  跗陽(ふよう)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:崑崙穴の上3寸で、アキレス腱の前に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』  跗陽 ふよう  (二穴)
取穴: 飛陽の下回四寸、外踝の上三寸、 筋骨の問。
灸法: 灸三壮五壮。
針法: 針六分、留ること七呼、
主治: 霍乱(カクラン:日射病:激しい吐き気・下痢などを伴う急性の病気)転筋(テンキン:こむら返(がえ)り)、 腰足痛、頭重く、寒熱あるを治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 59.  跗陽(ふよう)穴
【主治症】
足のやまい一般に効く。す
なわち腓腹筋痙攣、足の麻痺、神経痛等である。
また、腰痛にもよい。

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56、  崑崙(こんろん)穴  【経火穴】   ・ 所属経絡:膀胱経・
取穴部位:外果の最も尖ったところの高さで、外果とアキレス腱の間、陥凹部に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』  崑崙 こんろん (二穴)
取穴: 足の外踝の後へ踝の下 、跟骨(かかと)の上の前め、 陥なる中。
灸法:灸三壮、妊婦には禁。
針法:針三分五分 、留こと十呼、
主治:腰尻足腫いたみ、頭肩背いたみ、 目眩、 目痛、 おこり、汗多く 、 咳端、はなぢ、陰腫いたみ、 胞衣下らず、 小児の驚癇(きょうかん)を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 60.  崑崙(こんろん)穴
【主治症」
腰、足背の痛み、脚気に効果があるほか、量、目痛、頭痛、血、肩拘急等を伴う諸種のやまいに効く。
高血圧症もその一つである。
また、足関節炎、リウマチに効き、小児引きつけにも効く。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 56、崑崙(こんろん)穴 :   【経火穴】
(部位) 外果尖の後方、アキレス腱前縁陥中にあり。
(取り方)外果の最も高い所とアキレス腱前縁の間、踵骨の上の陥凹部に取る。

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57、  僕参(ぼくしん)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:崑崙穴の直下、踵骨外側面の陥凹部に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』  僕参 ぼくしん  (二穴)
取穴: 崑崙(こんろん)の下、跟骨(かかと)のわれめ陥なる中。
灸法: 灸七壮。
針法: 針三分、
主治: 足痿(なえ)る 、脚気、膝腫、転筋、嘔吐、 尸厥(しけつ:突然倒れて人事不省となり仮死状態になる)、癲癇(てんかん)、狂言を治す。

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 61.  僕参(ぼくしん)穴
【主治症】
霍乱(かくらん) 、転筋、脊髄前角炎後遺症、リウマチによる足の透弱、膝関節炎のほか、癲癇や意識障害等にも効く。

【参考】
霍乱(かくらん) 【『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例】
霍乱は、外暑熱に感じ、内飲食生冷に傷られ、
たちまち心腹疼み、吐瀉、発熱、悪かん、頭痛、眩暈、煩燥し、
手足ひへ、脉沈にして、死せんとす。転筋、腹に入るものは死す。
又、吐せず、瀉せず、悶乱するを乾霍乱という、治しがたし。
▲転筋は、卒に吐瀉して、津液かはき、脉とぢ、筋つづまり攣り、 はなはだしきは嚢縮り、舌巻ときは治しかたし。
男は手にて其陰嚢を引き、女は両の乳を引て、中ヘ一処に寄すべし。これ妙法なり。
▲腹脹、急にいたむときは、針をまづ幽門に刺べし。
此穴に刺ば、かならず吐逆するぞ。 しかれども痛増て、目など見つむることあり。
苦しからず、さて気海・天枢に針すべし。
▲霍乱には、陰陵泉・支溝・尺澤・承山。
▲腹痛には、委中。
▲吐瀉には三里・関冲。
▲胸満悶、吐せずは、幽門に針すべし。
———————
杉山三部書、 病証の治療穴から。
霍乱(かくらん)の病状には、
【灸】中脘・巨闕・章門・神闕穴に施灸。
治療穴として、下脘・鳩尾・上脘穴を使用する。
【刺絡】委中穴に刺絡する。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 57、僕参(ぼくしん)穴
(部位)外果の後下方で踵骨隆起の前外側、崑崙の下方1寸5分

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58、  申脈(しんみゃく)穴   所属経絡:膀胱経・
取穴部位:外果直下5分に取る.

(☆)
『鍼灸重宝記』  申脈 しんみゃく  (二穴)
取穴: 外踝の下五分 、陥みの中。
灸法:灸三壮。
針法:針三分、 留ること七呼、
主治:風目眩、腰足いたみ、冷痺(れいひ:冷たくてしびれた)、労極(ロウキョク:過労がきわまって生じた病)、癲癇(てんかん)ひるおこるを治す。

(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 62.  申脈(しんみゃく)穴
【主治症】
癲癇、眩量に効果があり、脊髄癆のように足が次第に表弱して立つことができないものに使われる。
また足関節の捻挫のときに損傷しやすいところであるから、崑崙、僕参とともによく用いられる。

(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 58、申脈(しんみゃく)穴
(部位) 外果の直下5分、陥中にあり。
(取り方)外果の直下、外果下縁より5分位の所を探れば割れ目がある、ここに取る。
但し奇経穴ではやや後方になる。

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59、  金門(きんもん)穴  【郄穴】  ・ 所属経絡:膀胱経・
取穴部位:申脈穴の前下方、踵立方関節の外側陥凹部に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』  金門 きんもん (二穴)
取穴: 申脈(しんみゃく)の下一寸。
灸法:灸三壮。
針法:針一分、
主治:霍乱(カクラン:日射病:激しい吐き気・下痢などを伴う急性の病気)、転筋(テンキン:こむら返(がえ)り)、 尸厥(しけつ:突然倒れて人事不省となり仮死状態になる)、てんかん、暴疝(ボウセン:激しい下腹部痛)、脚膝痛み 、身戦、小児口をはり頭を揺かし身反を治す。。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 63. 金門(きんもん)穴  【郄穴】
【主治症】
郄穴であるので多くは次のような激症に効果がある。
癲癇、小児引きつけ、霍乱(かくらん)、転筋、脱腸による嵌頓(かんとん:ヘルニア)を起したような場合(暴疝・にわかに引きつり痛む)に、金門穴に2・30番くらいの太い鍼を刺して効果があることがしばしばである。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 59、金門(きんもん)穴 :   【郄穴】
(部位)  外果の前下方陥凹部、立方骨と踵骨の関節部にあり。
(取り方) 外果の下方5分に申脈穴を取り、これと京骨穴を結んだ線上で、その中程を指で探ると立方骨と踵骨の接合する陥凹部がある、ここに取る。

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60、  京骨(けいこつ)穴   【原穴】  ・ 所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第5中足骨粗面の後下際、表裏の肌目陥凹部に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』  京骨 けいこつ (二穴)
取穴: 足の外側大骨の下、小指の本節の後へ陥みの中。
灸法: 灸五壮七壮。
針法: 針三分、留ること七呼、
主治: 頭痛、頸項腰背足 [骨十行]いたみ、筋攣(つ)り、、 目の内眥(うちまなじり)赤くただれ、白翳(はくえい:白い影:白内障かな)、目眩、瘧(おこ)り、喜驚き(喜び、驚き:心腎相剋の病的感情かな) 、不食、心痛を治す 。
【参考】
瘧(おこ)りとは、
瘧とは外邪によって正気が損なわれるもの。
瘧の症状は、急に寒気がして震えてくる、暫くして震えが止まると急に熱が出てきて熱くなると言う様な寒熱が交々(こもごも)きたるというものです。
瘧という字は、体を損なうものだと考えれば意味がつく訳です。
〔虐:虎が人をE=ツメで引っかく、疾だれ、の病気の意味:漢字源より。〕
【参考yukkurido.HP】
瘧(おこ)りとは、
南北病証論 六、瘧論 (ぎゃくろん)井上恵理 先生の解説と言葉の意味:
詳しくはリンクしてご覧ください。

六、瘧論 (ぎゃくろん)


(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 64.  京骨穴   【原穴】
【主治症】
衂血、頸・肩こり、目赤等に伴う慢性脳充血症や角膜翳(かくまくえい:角膜の濁る病気。角膜のかげ=自斑)等に効く。
また股関節痛にも使われる。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 60、京骨(けいこつ)穴 :  【原穴】
(部位) 第5中足骨粗面の後下部赤自肉の間にあり。
(取り方) 足の小指側を踵の方より赤自肉に沿って指先の方に押していくと、ほぼ中央で骨のたかまりに突きあたる。その陥凹部に取る。

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61 束骨(そくこつ)    【兪木穴】  ・ 所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第5中足指節関節の後、外側陥凹部に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』  束骨 そくこつ (二穴)
取穴: 足の小指の外側本節の後 、赤自肉の際、陥なる中。
灸法: 灸三壮、
針法: 針三分、留ること三呼。
主治: 腰脊脚頭項いたみ、耳聾、悪寒、 目眩、身熱し 、肌肉動き、 目眥(うちまなじり)赤くただれ、泄瀉、痔瘧(ぢぎゃく)、 てんかん、癰疔(ヨウチョウ:はれもの:細菌感染によって起こり、膿瘍)を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 65. 束骨穴  【兪木穴】
【主症】
京骨と同様、衂血、目赤く、眩量、後頸部のこり等を伴うような症に効く。
脳充血、高血圧症によい。
また腰痛にも効く。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 61、束骨(そくこつ)穴 :  【木穴】
(部位) 第5中足指節関節の後ろの陥中、赤白肉の間にあり。
(取り方)第5中足骨、外側の赤自肉の間を前へ押していくと、関節のたかまりに突きあたる。この陥凹部に取る。

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62、 足通谷(あしつうこく)穴   【栄水穴】  ・ 所属経絡:膀胱経・
取穴部位:第5中足指節関節の前、外側陥凹部に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』  通谷 つうこく (二穴)
取穴: 足の小指の外側ら 本節の前、陥みの中。
灸法: 灸三壮、
針法: 針二分、留ること五呼。
主治: 頭重、 めまひ、 項いたみ、 胸満、 食化ず、を治す。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 66. 足通谷穴  【栄水穴】
【主治症】
頭痛、頭重、眩量、衂血、項痛、目かすむ、すなわち脳充血、高血圧症によく効く。
これらの多くは腎虚火実の証である。
また、場合によっては脳貧血にも効く。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 62、足通谷(あしつうこく)穴 :  【栄水穴】
(部位) 第5中足指節関節の外側にしてやや前の赤自肉の陥中にあり。
(取り方)足の第5指外側を指先の方から第5中足指節関節の方へ押し上げていくと、たかまりに突きあたる。この赤白肉の間に取る。

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63、  至陰(しいん)穴   【井金穴】  ・ 所属経絡:膀胱経・
取穴部位:足の第5指外側爪甲根部、爪甲の角を去ること1分に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』  至陰 しいん (二穴)
取穴: 足の小指の外側 、爪の生際の角をさること一二分。
灸法: 灸三壮、
針法: 針一二分、留ること五呼。
主治: 寒瘧(かんぎゃく)汗出ず、心煩、足下熱し 、 小便利せず、 遺精、 目いたみ翳(えい:影)を生じ 、 鼻塞り 、 頭重く 、 胸脇いたむを治。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 67. 至陰穴   【井金穴】
【主治症】
足冷え、頭重、鼻づまり、胸脇痛む等の症によい。
感冒による肋間神経痛等もこの一症である。
本治法としては膀胱経(水)の母(金)穴であるので、その虚を補うのに用いる都合のよい経穴である。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 63、至陰(しいん) 穴 :  【井金穴】
(部位)  足の第5指外側爪甲根部を去ること1分にあり。
(取り方) 井穴のある所を軽く押してみると微かなシワが 2、3本あって、その先がくっついていて韮葉の先の尖った所のようになっている。。爪際よりわずかに押し上げると指骨に突きあたる。ここに取る。

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『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』

【本間祥白先生の註(ちゅう:解説)】

『十四経発揮」、「鍼灸聚英』等以外の中国書で、
足の膀胱経は 63のほかに、さらに4穴を加えているものがあり、
現代のフランスやドイツの鍼灸界もみなこれに従って 67穴としている。
ゆえに
これらの穴を次に添加することとする。

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3. 肩衝(びしょう)穴 V. 3. Mei-therong (BL-3)

部位  :前頭部、眉頭の上方髪際に入ること5分、神庭(頭部正中、前髪際を入る5分)と曲差(神庭の外側15分)の間にある。

主治症 : 五癇、頭痛、鼻塞

【五癇参考】 『鍼灸重宝記』
29、癲癇 くつち  (てんかん)
癲癇は元、母の胎内に在て、驚を受く。
五種あつて、五蔵に応ずといへども、心の一蔵に帰す。
驚ときは、神舎を守らず。
舎、空き則ば、痰涎、心竅に迷ひ、ふさぎ、たましゐ出入せざるによりて、卒に倒臥て、
手足びくめかし、口眼引つり、あるひは、さけびよばはり、沫を吐く。
暫にしてよみがへる。
【針】大椎・水溝・百会・神門・金門・巨闕・崑崙・筋縮・湧泉。
【灸】百会・鳩尾・上脘・陽蹻(ひるおこる)・陰蹻(よるおこる)に。
———————
杉山三部書、 病証の治療穴から。
癲癇の病状には、鳩尾・人中・間使・肝兪・上脘・天突穴を使用する。

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16. 督兪(とくゆ)穴     V. 16. Tou-iu (BL-16)

部位 : 背部、第6胸椎棘突起下の外方1寸5分にある。すなわち心兪(第5 胸椎棘突起下の外方1寸5分)と騙兪の間に当る。

主治症 : 胸膜炎、肺結核、神經性胃痛

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24. 気海兪(きかいゆ)穴 V. 24. Tsri-rae-iu (BL-24)

部位 : 腰部、第3腰椎棘突起下の外方1寸5分にある。すなわち腎兪(第2 腰椎辣突下の外方1寸5分)と大腸兪との間に当る。

主治症 : 腰痛、痔瘻、腸仙痛

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26. 関元兪(かんげんゆ)穴 V. 26. Koann-iuann-iu (BL-26)

部位 : 腰部、第5椎棘突起下の外方1寸5分にある。すなわち大腸兪(第4腰椎辣突起下の外1寸5分)と小腸との間に当る。

主治症  : 腰痛、急性および慢性下痢、膀胱麻痺、婦人諸病

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【膀胱経の募穴】
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3 中極(ちゅうきょく)穴  【膀胱経の募穴】  ・ 所属経絡:任脈・
取穴部位:神闕穴の下4寸、曲骨穴の上1寸に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』中極 ちゅうきょく(一穴)
取穴: 臍(へそ)の下四寸。
灸法: 灸五壮より百壮まで、
針法: 針六分、留ること十呼、気を得て即ち瀉す。子なき婦には四度針すれば子あり 、又孕(はら)婦にはいむ。
主治:
積塊心に上り 、疝気(せんき:腰や下腹の内臓が痛む病気。)、陰寒陽気虚憊(きょはい:弱り疲れる)、水腫、 小便頻数、遺精、 さんご悪露行らず胎衣下らず、 月経調ず、 子門腫いたみ、 淋病、恍惚、 尸厥(しけつ:突然倒れて人事不省となり仮死状態になる)、 飢えても食すること能はず、を主る。
子なき婦には四度針すれば子あり 、又孕(はら)婦にはいむ。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 3. 中極(ちゅうきょく)穴  【膀胱経の募穴】 所属経絡:任脈・
【主治症】
曲骨と同様、生殖器、尿器疾患に効く。
淋疾、産後の悪露くだ(おりもの)、胎盤下らず、月経不順、子宮筋腫、子宮痙攣などの婦人病、
また男子淋疾、精巣炎、尿道炎、陰痿、精力減退に効く。
尿器のやまいとしては膀胱炎、腎炎等に効く。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』 中極穴  【募穴】  任脈
(部位)臍の下 4寸  『杉山流三部書』

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【膀胱経の兪穴】
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24、 膀胱兪(ぼうこうゆ)穴  【膀胱経の兪穴】  所属経絡:膀胱経・
取穴部位:正中仙骨稜第2仙椎棘突起部の下外方1寸5分に取る.
(☆)
『鍼灸重宝記』 膀胱兪 ぼうこうゆ  (二穴)
取穴: 十九椎の下、両穿へ一寸五分づつ。
灸法: 灸三壮七壮、
針法: 針三分、留ること六 呼。
主治: 風労、脊強り、小便赤黄、遺溺、陰瘡(いんそう:陰経の怪我)、少気、脛寒拘急(けいかんこうきゅう:脛(すね)が寒くなり筋肉がひきつる。)、腹満、大便かたく 、洩利(えいり:小便をもらす)、腹いたみ、 脚膝力なく 、 女子瘕聚(かじゅう:)を治す。
参考:癥瘕積聚(ちょうかしゃくじゅう):腹部の「しこり」子宮内膜症・筋腫・ガン・原因不明のしこり。
(△)
『本間祥白(著)鍼灸実用経穴学、経穴主治症の研究』 28. 膀胱兪穴  【膀胱経の兪穴】
【主治症】
『鍼灸聚英』には、小便赤黄、遺溺とあり、小便赤黄は「ウロビリン」の著しく増加したもので、猩紅熱のような急性伝染病、溶血性黄疽の場合などであるが、別本には溺赤(デキセキ)ともある。これは血尿のことで、急性腎炎、腎臓結核、腎臓腫瘍、腎盂腎炎、急性膀胱炎、膀胱癌、急性尿道炎、尿路結石などにくる場合が多い。
膀胱兪の場合はむしろ後者(血尿)に特に用いて効を現わすものというべきである。
婦人の下腹部の腫物や子宮座等にも治効がある。
(〇)
『東洋はり医学会:取穴部位・取り方』膀胱兪穴  【兪穴】  膀胱経
(部位)第19の椎(第2仙椎)下脇え1寸5分 『杉山流三部書』

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●● 制作にあたり、

福島弘道著作「経絡治療学原論」を参考文献にしました。
イラストは青木幸雄さんです。経穴文章構成は山口一誠です。

本資料は病人様が病気を治す一助として使用されることを目的としています。
また、
経絡鍼灸療法・経絡漢方薬を個人的に勉学される方に提供します。
したがって、
商業目的での、無断転載.引用はご遠慮願います。

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・ - 参考図書 ・ -

柳下登志夫先生の臨床考察「腎水の変動 」

「経絡治療学原論上巻臨床考察‐基礎・診断編」よりの抜粋。

【 】は山口一誠の考察文です。

詳しくは、

経絡治療学原論(上巻)臨床考察 ―基礎・診断編― をお読みください。

発刊:東洋はり医学会

東洋はり医学会:発刊書籍リンク先
http://www.toyohari.net/book.html

元東洋はり医学会会長の筆者:柳下登志夫先生が、
福島弘道著「経絡治療学原論(上巻)」をテキストとし講義した中で、
臨床上重要な箇所を抜粋したものです。
柳下登志夫著  定価3,000円 (送料400円) A5 230貢

※ 筆者:柳下登志夫先生の60年に及ぶ治療経験、
1日100人を越える患者さんと向き合い、臨床を通して古典を再検討したものです。
時代により変わりつつある患者さんの病に十二分に対応できるバイブルとなっています。
現代に生きる経絡治療家には必携の書籍です。

臨床考察「腎水の変動 」総論

臨床考察41: 四診法: 問診 頁:144・平成17年4月 収録

十二経の病症と問診。

問診に当たって十二経病症は、虚実が表裏に出る事を認識しておく必要がある。

五臓六腑および十二経の病症と問診。

ここでは原論を記し、私(柳下)の臨床上の注意(付記)を一言ずつ付け加えておく。

七、膀胱および膀胱経

原論:
この経は鍼灸師にとって最も縁の深い部位を支配している。従って、額、頭頂、頭後、後頸、背、腰、大腿、下腿、下腿の後側にあたり、この経実する時は熱して腫痛し、 虚する時は冷えて痺れ、痛み、足の第一趾(指)用いられず。
目、鼻の病、逆上頭痛、癇癪(かんしゃく)、精神障害、尿意頻数および尿閉、膀胱痛、便秘、痔疾、悪寒、発熱、太陽病。

(付記):
注意すべきは、とにかく鍼を深く刺鍼しがちになる事である。
この経は、浅き処置して効を上げる時、後に誤治反応の様な不快感を残さない。

八、腎および腎経

原論:
先天の元気を主るが故に、この経が虚すれば恐怖し、精神不安、飢えて食を浴せず(食欲はあるが食べられない。)顔面黒色、視力障害、難聴、意識不鮮明、性欲減退、痙攣縮小、疲労困憊、腰、下腹部冷痛す。
これ動ずる時は咳嗽、血痰、胸痛、寝汗、あくび、くさめ、咽頭腫痛、逆上、動悸(うごきわななく)、黄疸、下痢、脊柱と大腿内側痛、下肢の運動麻痺と冷感、足底の熱感と疼痛。

(付記):
この経は薬害によっても大いに侵され鍼灸師を惑わし、その一方では、腎経を久しく(長く)用いてこれが動じ、病症を引き起こすに至ることもあり、術者は、この経に施術した後、数日に渡る観察・診察が重要である。

表題: 臨床考察27: 病因論・ 素質〔五行体質〕 頁:94・平成15年11月 収録

5、腎水体質

虚体・実体共に手足、特に足先が本人の自覚が無くても冷たく、また本人が冷えを自覚している場合もあるが、逆気が元で起こる病気に罹りやすい。

虚実共に現代医療による循環器疾患の為長い間施療・投薬を受けているが根治していない。
また耳鳴り難聴等は一定の治療が終わると投薬すらされず、一生仲良く付き合うようと言われる場合が多い。
陽性〔実証〕体質者は運動器疾患は骨の変形になり、症状が激しく重症に見えても治りが良い。

陰性〔虚証〕体質者の改善は中々はっきりしない。

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⑧ルート 足の少陰 腎経

表題: 臨床考察37:病症論 十二経病 ⑧足の少陰腎経 頁:130・平成16年12月 収録

【腎の変動: 】

腎経の虚は人を老いさせ、日常生活が過ごし難く、慢性疲労症候群に似た状態になる。
これは腎経を中心を考えると良い。
腎経は基本的には生殖・利尿に関与し、耳・骨・髪に症状が現れ、逆気して泄らす、殊(こと)に心が脅かされ、恐れ戦いて心休まず、身痩せて心身ともに衰弱する。
腎経を考える時これらの病症に対して宜しく対処できるものである。

表題: 臨床考察19: 足の少陰 腎経 頁:66・平成15年2月 収録

【救急法:腎経。】

【鍉鍼の手技:鍉鍼の頭部を湧泉穴に当て、尾部を「トットーン、トットーン」と叩く。】

【治療穴:湧泉穴は障害児が痙攣を起こし意識不明時の治療穴である。】

腎経を救急法として用いる場合は、患者の状態の観察が蜜でなければならない。
障害児の中には、よく痙攣を起こし意識を失う子がいる。
その様な時、鍉鍼の頭部を湧泉穴に当て、尾部を「トットーン、トットーン」と叩く。
忽(たりま)ち痙攣は止み、意識を取り戻す。
その際、湧泉穴は適応側であるという条件が必要である。

【救急法:腎経。】

【治療穴:復溜穴は逆気している時の補法が有効】

【誤治になる。】【注意が必要】

また救急法として復溜穴は逆気している時の補法が有効を上げられるが、顔色が青ざめて、手足の先が冷え手いるときには注意が必要である。

元気虚損、冷えのぼせ、じっとして居れず悶える等の救急法は言うに及ばず、現代医療でも生命に係わると診られる慢性病にもこの経が大きく係わっている為、この経の補瀉は有効かつ欠かせない。
いずれにせよ、こうゆう処置には細心の注意を要する。

表題: 臨床考察23: 腎臓 頁:81・平成15年6月 収録

【治療穴:子宝のツボ:先天の原気と後天の原気を組み合わせると子宝に恵まれる。】

腎臓は巧みな仕組みによって子孫を残す働きをしているというが、実際の治療上は腎臓の働きに加えて脾臓との釣り合い関係に注意を要する。
〔治験例〕 治療室に着た男性が病院の検査で精子の奇形が多く運動力に欠け、数も少ないと診断された。
そこで鍼灸治療を受けたいと言う。
この時、然らばと腎経を主に鍼灸を施しても成績は中々上がらず、却って勃起不能になる事さえある。
これに脾経を加えて証を立てると、良好な結果が得られる事が多い。(証は腎脾相剋・肝脾相剋・等々)

【治療穴:子宝のツボ:2:女性例・先天の原気と後天の原気との相互作用で子宝に恵まれる。】

病理学的には異常が認められないにもかかわらず、また種々あれこれ現代医学的な方法を施しても成功しないので、鍼灸も一緒にやって貰いたいと言って来る女性がいる。
この時も腎に加えて脾経の処置が大きく物を言う。(証は腎虚脾実・肝虚脾実・等々)

腎臓の蔵する先天の原気も、脾臓の後天の原気との相互作用によってのみ確かな働きをする。
考えれば至極当たり前なことで、初心者向けの話になってしまった感がある。

【腹診:臍下丹田付近の虚実を確実に察知する事から始めるのが良い。】

腎間の動気については少し誤解されている向きがあるが、臍下丹田に動気をハッキリ感じ取れるか、また微かにしか感じられない、或いは全く感じられない様な患者もいる。
しかしその辺りが正常ならば良く、先ずは丹田付近の虚実を確実に察知する事から始めるのが良い。

【治療穴:復溜穴は腎臓疾患・排尿器疾患に効果あり。 】

現代医学により腎臓疾患であるといわれた患者に対して、証が腎経の虚も含むものが立ち、復溜穴を補う治療を続けていると「復溜穴」と現代医学でいう「腎臓」との間には、こんなに深い関係があったのかと考えさせられる事がある。
東洋医学で言う人造の働きである尿排泄との関係の深さを知らされる。

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⑦ルート 足の太陽 膀胱経

表題: 臨床考察23: 膀胱腑 頁:84・平成15年6月 収録

水分穴の所で受けた尿を、中極の部にある膀胱腑が蓄え、時を得て体外に排泄する。
しかしこの時、邪気に冒されさまざま様々な病症を現す。
術者はこれに対し治療を施すが、他の臓腑への影響が大きいことを考慮に入れる必要がある。

【鍉鍼の手技: 短い鍉鍼は浅く、長い鍉鍼は、深いところに影響する。】

例えば、短い鍉鍼を用いた場合は浅く影響を及ぼす。
しかし古典にいう長い鍉鍼を使えば、深いところまで影響する。

【治療穴:中極穴:膀胱・婦人科〔子宮〕・大腸は鍉鍼の長さで影響を考える。】

もちろん鍉鍼の扱い方で効果が異なるのは当然であるが、膀胱・婦人科〔子宮〕・大腸等に対して中極穴の持つ性格を生かして鍉鍼を使い分ける事をすると、容易に目的を到達する事ができる。

表題: 臨床考察37:病症論 十二経病  ⑦足の太陽膀胱経 頁:129・平成16年12月 収録

膀胱経は顔・頭部より体の後面を経て足先まで続く経絡であり、鍼灸家として使う経穴も甚だ多く、

【治療穴: 《天枢穴》を始め 】

《天枢穴》を始め背腰部では一・二行線と、言わば面になって走行しており、しかもかく臓腑の兪穴もここにある。
そして病症も激しい実証から緩(ゆる)やかな虚証・新病・久病・・・我々経絡治療を行う者にとって誠に関わりの深い経絡である。―

【治療方法:左右の観察と処置 】

【治療穴:大腿部・承山穴付近】

もし、右の大腿部あるいは承山穴付近にイボや皮膚炎・硬結等がある場合は、勿論その部は邪気が客している状態なのでそこも処置を施すが、同じ位置の左を観察すると往々にしてそこに細絡・血絡をはじめ反応がある。
この反応を処置して成果を上げられる時も多い。

【誤治反応と対処法:膝の病で委中穴辺りのに虚は、鍼数や灸の数を増やすと、誤治が防げる。】

また、膝の病で委中穴を中心に虚している時などはこれを補うと、小便が出難くなったりしる場合もあるので、鍼数や知熱灸・糸状灸を行う場所の数を増やすと、遠隔部への誤治が防げる。
また、病院に行き急性の症状は取れたが、夕方になると微熱が上がり体がだるく気分も悪いと言う様な患者には、膀胱経をはじめ陽経に虚性の邪があり、これを補中の瀉で瀉すと健康体に戻る。
虚性の邪の存在を認め補中の瀉法の技術を身に付けると、失敗が少なく成功への門戸が広く開かれる。

表題: 臨床考察19: 足の太陽 膀胱経 頁:64・平成15年2月 収録

膀胱経は外邪性に関する実の病から、慢性的な虚に起因するものに至るまでその範囲が広く、部分的にも脳神経・目・鼻・耳に始まり臓腑に纏わる兪穴、〔で構成されている。〕

【左志室穴(第二腰椎左に3寸)辺りの結状物は要注意。】

なかでも志室穴あたり、特に左の固い骨の様な結状物は腰、下肢の異常をもたらすと共に、進んでは腹内・骨盤内の臓腑やそれら周辺の病変に大いに係わることになる。
治療的価値よりも予防的価値を重視すべきである。
〔よって、本治法を中心として、未病を治す治療が必要な人である。〕

【膀胱経は陽経であり、感受性高い、現象を踏まえた治療方法を望む 。】

その他、臀部下肢に至っても、この経の流注は範囲が広く、急性・慢性病を問わず反応点が多く現れる。
これらの処置は欠かせないが、とかく鍼が深く灸は硬いひねりで壮数も多くなりがちだが、この経は陽経であり、感受性の高い経絡である事を思い起こしてみたい。
外邪が侵入し易く、激しい症状を起こし易い。
それは治療方法もその現象を踏まえて処方すべきである。

【治療穴:涙目には晴明穴 】

涙目には晴明穴、慢性的な流涙で眼窩に炎症が起こりなかなか治らない患者もいる、身体の分泌液や物質が、あるべき場所に在れば問題はないが、それが表に出たり場所が変わった時には邪物・汚物となる。

【治療穴:天柱穴 】

天柱穴はその名に相応しく、上焦の病に対し或いは全身の種々な病症に対し用いて、陰に陽うに働き有効な経穴である。

【治療穴:心兪穴・魄戸・膏盲穴等は心臓疾患・精神神経障害、心気症等に有効なツボである。 】

兪穴名と現代医学の内臓との関連性は深いものの、やはり兪穴は東洋医学的な働きが強い。
例えば心兪穴およびその近傍に位置する魄戸(はくこ)・膏盲穴等も含めて心臓疾患はもとより意識障害に関係する疾患、精神神経障害、心気症等にも大きな効果が得られる。

【 腎臓疾患の時には浅く反応が出る】【腎経は反応が深い 】

また腎兪穴と腎臓疾患とは少し反応の出方も異なり、腎経は深いというが、腎臓疾患の時には意舎・胃倉・志室・京門・章門辺りに浅く反応が出ることが多い。

【誤治防止の鍼法:数鍼施す&遠隔部に影響する穴】

また膝関節症・足関節症に対しては深い鍼よりも浅い鍼の方が良いという人もいるが、委中・委陽・崑崙等はその一穴を補瀉すると遠隔部にも影響するので、刺鍼はその周囲の場所に数を増やして数鍼施すと遠隔部への影響も少なく、目的が達せられる。


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