肝木経の変動 c204

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     肝木経の変動

                                小項目 番号 c204

⑫ ルート 足の厥陰肝経

現代経絡鍼灸実践例から鍼灸古典文献を検証する。(素門霊蘭秘典論 第八、一章、三節)

肝將軍之官.謀慮出焉(策謀・思慮は肝より出る)

生体の意志の発動や行動に大きく関与する重要臓器である。

すなわち、この経と肝臓に病変が起こると「眼・筋・爪」に症状が現れ、血色が悪くなり、 病症としては「メマイ・筋の引きつり或いは弛緩してよろめく・イライラして怒り出し、 頭痛・胸痛・腰痛等」を発症する。

足の厥陰肝経は肝臓を中心として内分泌ホルモン系の総元締めといえる。

外邪との戦いにおいて、この経は常に病実となる場合が多い。

そして、その病が慢性化すると生気が虚損し、虚証をていする。

その病は、

眩暈し、胸肋や心下満ちる。
男女生殖器病、腰痛甚だしく、面垢づきて身体に光沢なく、 神経症(イライラ)、胸満ち(胸痛)、嘔気し、下痢する。
脱腸、尿閉あるいは失禁する。
解毒に関する皮膚病、リュウマチ等をなす。

肝の旺気:

心下満やメマイ。
不眠、中途覚醒。
朝早く目が覚める。
頭痛。

めまい、差し込み、苦悶、激痛等、総ての激しい苦痛に耐えんとして、心下部に力を入れるさま、これ肝木の証となる。

使用穴の考察:

この経に所属する13の穴はすべてが上記病症の改善に役立つ、
特に、期門・章門・曲泉・蠡溝(れいこう)・太衝・太敦等は使用頻度の高い名穴である。

内経を中心とした流注・・・・

足の少陽胆経の交わりを受けて第一指三毛の太敦(だいとん)穴に始まり、第一・第二中足骨の間を上がり、 内果の前に至り、下腿内側三陰交に交わり、骨縁を上がって膝の内側、曲泉穴を経て大腿の内側を上がり、 股動脈の所より腹に入り、陰毛の部より外陰部を循る。
ゆえに、交接器は肝経の支配である。
更に、腹を上がって任脈の関元穴の部より左右に別れて期門穴の部にて胃を挟み、肝に属会し、 日月穴の部にて胆を絡(まと)う。
経脈は更に上がって、胸中に入り胸腺、気管、咽喉、甲状腺を経て眼系を循り、額より頭に上がり松果体、 脳下垂体を歴絡し百会(ひゃくえ)穴に至り督脈に会する。
支脈は眼より別れて下に下り唇をめぐる。
また、肝に属する所、期門穴より別れて胸中に入り、肺を循り、下って中脘穴の部に至り、 手の太陰肺経の始まる所に交わって終わる。

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肝木経の変動の五大病症:

①心窩部につかえある。
②脇腹張り痛む。
③目眩する。
④筋ゆるんでくよくよする。
⑤内分泌疾患。

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五臓の色体(よそおい)表。

基礎: 木・肝・胆・五記:井・五募:兪・ 井戸より、出て心下満ち。
病因: 魂(持続力)・仁・五音(角音・舌音、タ行・中位・ミ音) 鶏・春・朝・東・風・眼・筋(筋肉質)・爪病症: 色・青色・そう(あぶら臭:木の皮をはがした臭い)・酸味・ 涙・怒る・握る・
養生法その他:行く・ 韮(にら)・麦・成数:六・ 五柄戸: 壬(みずのえ)・癸(みずのと)。

心下満ちとは、めまい、差し込み、苦悶、激痛等、総ての激しい苦痛に耐えんとして、心下部に力を入れるさま、これ肝木の証。

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肝木の変動、分類実践例。

① 食欲について。: 食欲はないが食べられる。脂こい物は食べられない。吐き気。消化不良。
② 大便について。: 未消化の下痢がザーッと出る。便秘と下痢が交互にくる。
③ 小便について。: 尿失禁。尿がでない。
④ 睡眠について。: 不眠症。 興奮して眠れない。
⑤ 皮膚について。 : 爪にツヤがない。サメ肌。肌、カサカサして艶がない。薬疹(薬の副作用)
⑥ 肩や背中の状態。: 肩こり。 慢性の頚肩腕症候群。右肩甲間部のこり。五十肩。
⑦ 腰部の状態。: 前かがみ(前屈)で腰痛が悪化。 腰を回すと腰痛が悪化(胆経)。  寝返りが困難(肝実)。下肢にかけての痛みを伴う。 側腹部にかけて痛む。
⑧ 膝(ひざ)の状態。: 膝の靱帯や腱に病変。膝がカクッとなる。
⑨ 頭部の状態。: 側頭部の痛み。 頭蓋内部の痛み。 回転性のメマイ。
⑩ 腹部の状態。: わき腹の痛み。卵巣の病気。上腹部の痛み。(へそより上)下腹部の痛み。
⑪ 風邪引きに伴う症状。:ストレスで熱をだす。鼻水。 鼻詰まり。吐き気。
風邪にあたると体調不良。
⑮ 動作、話し方: てきぱきとした動作、話し方。声が大きい。
⑯ 病の背景。 : 長時間歩いて疲れた。風を冷たく感じた。

⑫ルート 足の厥陰肝経 内経を中心とした流注図

c2041

 

⑫ ルート 足の厥陰肝経(13穴)外経の穴の名前・役割・場所の表

順番  経穴名 ふりがな 役割 取穴
1   大敦 だいとん   井木自 穴  足の第1指外側爪甲根部、爪甲の角を去ること1分に取る
2   行間 こうかん  栄火子穴  第1中足指節関節の前、外側陥凹部に取る
3   太衝 たいしょう  兪土原穴  足背にあり、第1・第2中足骨底間の前、陥凹部に取る
4  中封 ちゅほう  経金剋穴  内果前1寸、前脛骨筋腱の内側下際の陥凹部に取る
5   蠡溝 れいこう  絡穴  内果の上5寸、脛骨内側面上の陥凹部にとる
6   中都 ちゅうと  郄穴  内果の上7寸、脛骨内側面上の陥凹部にとる
7   膝関 しつかん  膝を伸展し、曲泉穴の直下で脛骨内側顆の下縁に取る
8   曲泉 きょくせん  合水母穴  膝を深く屈曲し、膝窩横紋の内端に取る
9  陰包 いんぽう  曲泉穴と足五里穴を結ぶ線上で、大腿骨内側上顆の上4寸、縫工筋と薄筋の間に取る.
10  足五里 あしごり 大腿内側にあり、気衝穴の外下方3寸、大腿動脈拍動部に取る
11  陰廉 いんれん  大腿内側にあり、気衝穴の外下方2寸、大腿動脈拍動部に取る
急脈 きゅうみゃく  奇穴 (鹿住先生:恥骨結節の下縁に取る。)
12  章門 しょうもん 脾経の 募穴 第11肋骨前端下際に取る
13 期門 きもん  肝経の募穴 第9肋軟骨付着部の下際に取る

⑪ルート 足の少陽胆経

膽(たん)者.中正之官(ちゅうせいのかん).決斷出焉.(靈蘭祕典論篇 第八、一章、四節)

強い意志と決断力を有し、裁判官の任。(人物を鑑別する役目)

胆経は身体の側面をめぐるので、半表半裏の病を起す。即ちM病の如く感熱往来して汗で、 目のまなじり、缺盆、脇の下が腫れ痛む。また、口苦く鬱滞し、太いあくびをする。
脇痛み、寝返りできず。更に病が進むと、面垢づき光沢なく、クヨクヨしてよろめく。
臓象論:木性、背の第十椎(胸椎)につき、胆汁の袋である。

亢進すれば痛みを発し、弱ければよろめく。

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⑪ 足の少陽胆経

足の少陽胆経は足の厥陰肝経と表裏肝経にあり、その流注は身体外側部、少陽の部を通る特徴がある。
その病は、眼・筋・爪に現れ、めまいや頭痛、耳鳴り、寒熱往来し腰痛、足の外側、
足の甲の外廉(かど)等に痛みや痺れ、運動不全等が現れる。
その病症は肝木に属するものが多く、そのうち陽症は胆経の実証として現れる。
頭部における、瞳子リョウ・頭竅陰・完骨・風池(胆経)・翳風(エイフウ)穴(三焦経)は、
めまいや頭痛、耳鳴りの治療穴として良く用いられる。
肩の肩井(けんせい)穴はテンリョウ穴(三焦経)曲垣(小腸経)などと共に肩こりに良く効く名穴である。
また、淵腋(えんえき)穴付近の圧痛点を目当てに取穴し、腋下点として皮内鍼や施灸により、
この付近の鎮痛に即効をもたらす。
日月・帯脈・居リョウ穴等は期門(きもん)穴と共にこの部の内臓疾患の諸病を改善する。
また、環跳(かんちょう)穴は下肢全体の疼痛、麻痺、運動不全に効く。
外丘(がいきゅう)・光明・足臨泣穴はこの経の虚実・補瀉に欠かせない大事な穴である。

内経を中心とした流注・・・・

手の少陽三焦経の交わりを受けて、瞳子(どうしりょう)穴より始まり、こめかみ部をめぐり、
耳上を経て耳後の完骨穴に至り、返って睛明穴(足の太陽膀胱経)に至り、また返ってひたい額より、
膀胱経の外側を通って風池(ふうち)穴にいたり、下って肩に至り後にめぐ廻って大椎穴(督脈経)に入り、
大杼(だいじょ)穴、(膀胱経)秉風(へいふう)穴(手の太陽小腸経)を経て、缺盆(けつぼん)穴(足の陽明胃経)に入る。
支脈は風池穴より耳の中に入り、耳前に出て再び瞳子リョウ穴に循りケンリョウ穴(手の太陽小腸経)
頬車(きょうしゃ)・大迎穴(足の陽明胃経)をめぐって、缺盆穴に入り、前のものと合する。
これより胸中に入り、期門(きもん)穴の部にて肝を絡い、日月の部で胆に属会する。
さらに、第十一肋骨先端の章門(しょうもん)穴(足の厥陰肝経)を循り、下って恥骨の上より股関節中に入る。

また、本経は缺盆穴より腋下に出で、側胸部を下り斜め前方に行き、日月穴に至り、第十二肋骨先端の京門穴を経て側腹部を下り、
股関節に入り先のものと合する。これより大腿、下腿の側面を下り外果の前外側を経て、
足の第四指外端の爪甲根部(そうこうこんぶ)の足竅陰(あしきょういん)穴に終わる。
支脈は足背の足臨泣(あしりんきゅう)穴より別れて、
母指外端の太敦(だいとん)穴、足の厥陰肝経の起始部に交わる。

⑪ 足の少陽胆経 内経を中心とした流注図 c2042

c2042

・⑪ ルート 足の少陽胆経 (43穴)外経の穴の名前・役割・場所の一覧。

1  瞳子髎 (どうしりょう)    外眼角の外5分に取る.
2  聴会 (ちょうえ)     耳珠も前下方で、口を開けば陥凹のできるところに取る.
(注)浅側頭動脈拍動部に取る.
3 客主人 (きゃくしゅじん)  頬骨弓中央の上際に取る. (注)上関穴とも呼ぶ.
4 頷厭(がんえん)    頭維穴と懸釐穴を結ぶ線上で、頭維穴の下1寸に取る. (注)額角髪際の頭維穴と懸釐穴との間を3等分し、上から頷厭穴、懸顱穴、懸釐穴を取る.
5 懸顱(けん ろ)    頭維穴と懸釐穴を結ぶ線上で、頭維穴の下2寸、コメカミのほぼ中央に取る.
6 懸釐(けん り)    頭維穴の下3寸で、側頭下髪際と前兌髪際との接点に取る.
7 曲鬢(きょくびん)   角孫穴と和?穴の中間に取る.
8 率谷(そつこく)    角孫穴の上1寸5分に取る.
9 天衝(てんしょう)   耳後髪際の上2寸の部から前3分に取る.
(注)耳後髪際とは、耳輪の最も後方に突出した部の後髪際とする.
10 浮白(ふはく)    耳後髪際の上1寸に取る.
11 頭竅陰 (あたまきょういん)  浮白穴と完骨穴のほぼ中央で、乳様突起基底部の後、陥凹部に取る.
12 完骨(かんこつ)   乳様突起中央の後方で、髪際を4分入ったところの陥凹部に取る.(注1)乳様突起中央とは、乳様突起が外方へ最も突出した部とする.(注2)深部を後頭動脈が通る.
13 本神(ほんじん)   神庭穴と頭維穴を結ぶ線上で、頭維穴の内方1寸5分に取る.
(注1)神庭穴、曲差穴、本神穴、頭維穴の4穴は等間隔にある.
(注2)外眼角の直上に当たる.
14 陽白(ようはく)   眉毛中央の上1寸に取る.
15 頭臨泣 (あたまりんきゅう)  瞳孔の直上で、神庭穴と頭維穴を結ぶ線上との交点に取る.
16 目窓(もくそう)   頭臨泣穴の後1寸に取る.
17 正営(しょうえい)  頭臨泣穴の後2寸、目窓穴の後1寸に取る.
18 承霊(しょうれい)  頭臨泣穴の後3寸5分、正営穴の後1寸5分に取る.
19 脳空(のうくう)   頭臨泣穴の後5寸、承霊穴の後1寸5分で、脳戸穴の外方2寸に取る.
20 風池(ふう ち)   乳様突起下端と瘂門穴との中間で、後髪際陥凹部に取る.
(注)僧帽筋と胸鎖乳突筋の筋間の陥凹部髪際にある.
21 肩井(けんせい)   肩?穴と大椎穴を結ぶ線のほぼ中間で、乳頭線上に取る.
22 淵腋(えんえき)   腋窩中央の下方3寸で、中腋窩線上の肋間に取る.
(注)乳頭の高さには前正中線より外方へ膻中穴、神封穴、乳中穴、天池穴、天谿穴、輒筋穴、淵腋穴の7穴が並ぶ.
23 輒筋(ちょうきん)  淵腋穴より乳頭へ向かい1寸に取る.
24 日月(じつげつ)  胆経の募穴  期門穴の直下5分に取る.
25 京門(けいもん) 腎経の募穴   第12肋骨前端下際に取る.
26 帯脈(たいみゃく)      章門穴の下1寸8部で、臍と同じ高さの水平線上に取る.
27 五枢(ごすう)      帯脈穴の内下方3寸で、上前腸骨棘の内側に取る.
28 維道(いどう)      五枢穴の内下方5分に取る.
29 居髎(きょりょう)    維道穴から環跳穴に向かい下3寸に取る.
30 環跳(かんちょう)    側臥して股関節を深く屈し、股関節横紋の外端、大転子の前上方陥凹部に取る.
31 中瀆(ちゅうとく)    大腿骨外側上顆の上5寸で、腸脛靭帯と大腿二頭筋の間に取る.
32 足陽関(あしようかん)   陽陵泉穴の上3寸で、大腿骨外側上顆の上際で、腸脛靭帯と大腿二頭筋腱の間に取る.
33 陽陵泉 (ようりょうせん) 合土穴  筋会 膝をたてて腓骨頭の前下際に取る. (注1)陰陵泉穴と内外相対す. (注2)総腓骨神経が浅・深腓骨神経に分岐するところに当たる.
34 陽交(ようこう)      外果から陽陵泉穴に向かい上7寸に取る.
35 外丘(がいきゅう) 郄穴  外果の上7寸、陽交穴の後方で長腓骨筋とヒラメ筋の間に取る.
36 光明(こうめい) 絡穴   外果から陽陵泉穴に向かい上5寸に取る.
37 陽輔(ようほ) 経火穴   外果の上4寸の部より前3分に取る.
38 懸鐘(けんしょう) 髄会  外果から陽陵泉穴に向かい上3寸に取る.
39 丘墟(きゅうきょ) 原穴  外果の前下方、足部を外転背屈し、最も陥凹するところに取る.
40 足臨泣(あしりんきゅう) 兪木穴  第4・第5中足骨底間の前、陥凹部に取る.
41 地五会(ちごえ)  第4中足指節関節の後、外側陥凹部に取る.
42 きょうけい俠谿(きょうけい) 栄水穴  第4中足指節関節の前、外側陥凹部に取る.
43 足竅陰(あしきょういん) 井金穴  足の第4指外側爪甲根部、爪甲の角を去ること1分に取る.

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・ - 参考図書 ・ -

柳下登志夫先生の臨床考察「肝木の変動」

「経絡治療学原論上巻臨床考察‐基礎・診断編」よりの抜粋。

【 】( )は山口一誠の考察文です。

詳しくは、

経絡治療学原論(上巻)臨床考察 ―基礎・診断編― をお読みください。

発刊:東洋はり医学会
http://www.toyohari.net/book.html

元東洋はり医学会会長の筆者:柳下登志夫先生が、
福島弘道著「経絡治療学原論(上巻)」をテキストとし講義した中で、
臨床上重要な箇所を抜粋したものです。
柳下登志夫著  定価3,000円 (送料400円) A5 230貢

※ 筆者柳下登志夫の60年に及ぶ治療経験、
1日100人を越える患者さんと向き合い、臨床を通して古典を再検討したものです。
時代により変わりつつある患者さんの病に十二分に対応できるバイブルとなっています。
現代に生きる経絡治療家には必携の書籍です。

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臨床考察41: 四診法: 問診   頁:148・平成17年4月 収録

十二経の病症と問診。

問診に当たって十二経病症は、虚実が表裏に出る事を認識しておく必要がある。

・五臓六腑および十二経の病症と問診。
ここでは原論を記し、私(柳下)の臨床上の注意(付記)を一言ずつ付け加えておく。

十一、胆および胆経

原論:

この経は身体の半表半裏(側面)を通過するが故に、側頭、側頸、腋窩、側腹、股関節、大腿・下腿の外側等、この経の過ぐる所に当たり熱腫、冷感、麻痺、腫瘤等を発し、足の第四趾用いられず。またその病は、息して口苦しく、心下部不快感、イライラして咳唾す。皮膚光沢無く、頭痛、顎下痛み、寒熱往来して汗出とろめく。

(付記):

比較脉診に当たってはこの経が実を示す頻度が高く、処置したくなるものである。しかし、容易に他の脉位と平らかにならず、ついつい刺鍼し過ぎてしまう。その結果は、頭のてっぺんから足先まで及んで、良くなれば患者・術者共に喜べるが、負に出るときは共に災難を引き寄せる破目に陥る。禁鍼・禁灸穴のような経絡である。

十二、肝および肝経

原論:

ホルモン系(内分泌)に関与し、国に於ける将軍の官(国防大臣)と言われるが如く、邪気防衛の第一線を主る。従って、その症状は気高ぶり風邪による証を現す。振顫(しんせん:ふるえる)、めまい、心下季肋痛、視力現弱、難聴、頭痛、頬部腫痛、腰痛、陰嚢肥大、婦人性器痛、嘔吐、下痢、脱腸、尿失禁、閉尿、顔色および全身垢づきて光沢なし。

(付記):

この経は情動に係わりが深く、これを正常に保たせる働きは「精神安定剤」等の比ではない。
両刃の剣の使い方を定める。 診断は綿密に。

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足の厥陰肝経

表題:臨床考察37:病症論 十二経病 ⑫足の厥陰肝経 頁:132・平成16年12月 収録

【肝の変動: 治療穴・誤治】

原論には種々書かれているが、
肝経を補瀉する場合は特にこの経が人の情動・感情の変化に影響脂、
従ってこれらの変化にとって引き起こされる病症に治療に効を奏する。
【誤治:】
それには違いないが一つ誤ると患者を怒らせ周囲の人との人間関係を歪めたり、
又、瀉が過ぎると患者をして世をはかなみ、その結果なくたもよかった苦しみや、
良からぬ状態に追いやる。
肝経の補瀉は、肺経を補瀉する時に増して情動・感情の変化を観察しながら進める必要がある。

表題: 臨床考察27: 病因論・ 素質〔五行体質〕頁:94・平成15年11月 収録

1、肝木体質

治療室への出入り、衣服の脱着も早く、周囲を意識しない。
脉診をしようとすると自分から手を出すか、術者の動きに合わせず手を動かさない。
問診中、術者の質問事項に加えて自分の考え方や感じも訴える等々・・
陽性〔実証〕体質者は、
病状があっても我慢するか、逆にテレビや健康雑誌を信じて実行し、病気を悪化させる場合がある。
陰性〔虚証〕体質の患者は、
血色が悪く、病気を悪い方にばかり考えたり、わが身の不運を嘆き、気の病、脳神経障害等にも罹りやすい。眼・筋・爪に病邪を受ける事が多い。

臨床考察:47 脉診  (原論上p365)頁:167・平成17年11月 収録

【 肝木体質者の例 】【 証決定の手がかり。】

・素因脉の臨床考察

その方法として「経絡別色体表(縦読み)」を基に考察してみる。

「本文―原論上p164p366辺り」 肝木体質の患者に例をとると、逞(たくま)しく行動し、人情に厚く、世話好き(魂仁)、歯切れのよいテキパキした中音(角音)、常に命令的な口調を発し(呼ぶ)、五畜に例えて鶏の如き活発な動きをする。

解説 ― これを例にとると「人情に厚く、世話好き」「逞(たくま)しく行動する」等は分かりにくい、しかし、脉診しようとすると、患者のほうから手を動かす。かなり病状が重いにも拘らず、歯切れ翌テキパキと喋る。小さな事も手早く行う、等は術者が気をつけて観察するならば直ぐ分かる。案外証決定の際の手がかりとなる。

「本文」 病歴としては、常に風証(めまいそして心下満ちる)に侵されやすく、眼・筋・爪等に関する病を患い、血色悪く、その色青く、臭いは臊(そう)=〔あぶら臭い=木の皮をはいだ時に出る臭い〕、味は酸味を好み、呼び叫ぶが如き声を発して涙を流しやすい。怒って拳を握る等の状態を現わす。―

【 誤治:肝木体質の患者と誤治症状の見極め=自己の施術との因果関係を常に意識せよ。】

解説 ― こうゆう患者の多くは、眩暈を起して、心下満ちるという病症を起し易い。
しかし、これ等の病症は誤治によっても起し易いのである。施術中、或いは治療後、時間を経てこれ等の病状を訴えられた時には、自己の施術との因果関係をよくよく追って、重なる誤治という羽目に堕ちらないよう十分な注意が必須である。
また眼・筋・爪等に関する病を患い易い。 しかしこれも誤治によって引き起こされる場合も多い。
術者は、須(すべか)らく患者に誤治を気付かれない内にこれを察知し、対応しなければならない。

【 問診:味覚の問診は柔軟且、密なる思考を必要とする。】

味覚は酸味を好むとあるが、この辺りは少し詳しく問診する必要がある。
味の好みはもちろん、経絡の乱れによって変わる時もあるが、味覚は生来備わっている状態に加え、
社会環境・親・家族の好み・仕事の環境等々により、頗(すこぶ)る異なる結果を呈するものでる。
診察に際しては柔軟且、密なる思考を必要とする。

肝木体質の人は「実すれば怒る、虚すればくよくよと取り越し苦労をする」という面が強調されている。
しかし肝木が実し、世の中が嫌になり、涙を流してただ横になりたいという状態に陥る患者もいる。
観察は鋭く、そして捉えた結果は、原則に当て嵌まらない事もある事実を知っておこう。

「本文」では体質と脉位について論じられているが、
これは患者の体を通して得られた治療結果で、我々はこの上に何を加えていくか?・・・→ 理想的脉状診の構築にはげまなければならない。
「本文―原論上p367辺り・難経十三難 にも、」しかし、かくの如く常に体質と脉位の一致が診られるのであれば問題はないのであるが、病状が進み痼疾難病となるか、或いは初めから劇症、重症を呈するものは、むしろこの体質以外に変動を現すことになる。特にそれが相剋的に現れるものを難病と診るのである。

表題: 臨床考察21: 足の厥陰肝経の臨床考察 頁:72・平成15年3月 収録

【 皮膚・眼・筋・爪を治す肝経のツボ 】
【 筋・爪の形が変わっているものは「血」の変化 】

肝経の補瀉は眼・筋・爪に対し影響が現れやすいがなんと言っても皮膚に変化をもたらす。
目の変化も早いが、筋・爪の形が変わっているものは「血」の変化なので、もとえ戻すには治療回数と時間がかかる。

【 胸腺の賦活は肝経の働きそのもの 】

経絡治療学原論には現代医学に於ける組織がいくつも挙げられているが、
肝経の働きである外邪に対する防御機構についても、
例えば胸腺の免疫機構における白血球の生理的機能強化は、肝経の働きそのものと言えよう。・・・

表題: 臨床考察23: 臓象論の臨床的考察。頁:84・平成15年6月 収録

【肝木の変動:引きつりの痙攣はこれを瀉し。】
【肝木の変動:力なく起立できない、真っ直ぐに歩けない時はこれを補す事 】

肝の臓は意思や感情を支配し筋を主るので、引きつりの痙攣はこれを瀉し、力なく起立できない、真っ直ぐに歩けない時はこれを補す事になる。

【 肝木の変動:治療のポイント:処置は、陰的にゆっくりとゆる緩やかに行う。 】

肝の臓の気血の変化は速やかで、激しく陽的なので、対処する処置は陰的にゆっくりと緩やかに行う。

表題: 臨床考察22: 臓象論・2、肝臓 頁:76・平成15年5月 収録

【 診断:背の第九胸椎辺りが肝の変動ポイントになる。】

背の第九椎背付近は肝臓の診断から治療まで大いに役立つ。
もちろん西洋医学的肝臓疾患ではなく、東洋医学に於ける肝臓の疾病に対してである。

【 肝経の診察は感情・情動・精神的な変化を見逃すな。】

肝臓の処置に当たり我々は術者としての一般的診察や、
その結果についての観察はもちろんのことだが、感情・情動・精神的な変化については他の経絡に対するそれよりも注意が必要である。
特に実を実せしめた際にはその反応が顕になって患者の人間的な触れ合いに不具合を生じることさえある。

表題: 臨床考察20: 足の厥陰肝経 頁:68.69・平成15年3月 収録

五臓の色体表の中でも五畜:鶏に配され、
その変化は激しく変わり易い性格をもっている「経絡」とされている。

肝の病症に眩暈がある。眩暈も重いものから、いつも軽いメマイがし続けているというものまであり、なかなか治らない。これらの多くは肝経の虚よりもやや実というものがある。肝経への補瀉には手法の手加減を必要とする場合が〔あり〕他の経絡に比べて難しい。

【 弱い肝の邪実の処理が真の健康を提供できる。】

吐き気の強い時の処置も難しい。軽い吐き気が続く患者で、食べれば食べられるが、いつまでも胃の中に食物があって、気を緩めると吐きそうになると言う。この場合、脾経・胃経に気をとられて肝経の実(弱い実)を見落としがちになる。見え隠れする肝の邪実を追ってこれを瀉す。日常生活は可能だが、どこか健康に影を落とす人に、真の健康の喜びを味わってほしい。その目的の達成の為には弱い肝の邪実の処理が必要不可欠である。

肝経では、これが虚せばクヨクヨと物事を案じ、欝状態に近づく。

【 肝経の僅かな気の滞りを虚と見間違いこれを補うと誤治になる。】

肝実は怒る。――肝経の僅かな気の滞りを虚と見間違いこれを補うと、患者は怒りっぽくなり、家族や身近な人との口論や争いを起こなりがちになる。   肝経の経絡の虚実は、情動の変化に深く係わる。

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足の少陽胆経

臨床考察37:病症論 十二経病 ⑪足の少陽胆経 頁:131・平成16年12月 収録

【胆経の変動: 治療穴・誤治】
胆経についても書き始めると限りなくあるが、
頭痛に対して足臨泣・丘墟穴に加えて反応を目当てに地五会・懸鐘穴等も効果著明。
この径も長い経絡であるが風池穴から耳の中を通り瞳子髎に行き大迎穴に行く支脈は顔周辺の病に卓効を示す。
又、精神的・感情的な方面にも影響が大きい。
側胸・側腹・股関節そして足の第四指・第五指付近の損傷等々適応症が並ぶが、
正治・誤治ともに施術側の反対側に影響が出やすい事にも注意が必要。

39:丘墟:原穴:外果の前下方、足部を外転背屈し、最も陥凹するところに取る.

表題:臨床考察22: 臓象論3、胆の腑 頁:77・平成15年5月 収録

【 脉診:胆経の脉を診て「実脉」と、口が苦い苦情。】
【本治法:胆経「実脉」を瀉すと口が苦い苦情が取れる。】

患者の中には口が苦いという人がいるが、その原因も色々・・・
しかし胆経の実によっている場合もかなりある。
病症の検討を始め他の診察も必要だが、胆経の脉が実している場合もかなりある。

胆経もまた精神面に大きく関与し、意思決定と行動力は「胆の腑」の虚実によると言われている。
日常生活は意思決定の連続であり、これに基づく行動によって生活は成り立っている。
《 証に係わらず胆経の脉を観察し、施術方法を凝らすことも必要である。》

表題: 臨床考察20:足の少陽胆経の臨床考察 頁:67,68・平成15年3月 収録

身体の半表半裏を広く廻り、その経穴も鍼灸家にとって日常用いる頻度の高いものが多い。

【治療穴:】
瞳子髎・聴会・は勿論、頭痛・目・耳の病に・・・。
翳風・風池は全身の違和感解消に効果がある。また風池(胆経)・風門(膀胱経)・風府(督脈)は共に風邪に深く係わり、風邪は最初から最後まで風池穴に深く係わって離れない。

【治療穴:】
懸鐘穴〔たぶん肩井穴〕は肩こり治療の中心的役割を果たし、帯脉・五枢・維道・居髎穴は我々にとって診断から治療に渡り、必要欠くべからざる経穴である。

人工関節を進められている患者も、何とかして股関節症の苦しみから逃れたいと鍼灸治療にその願いを託す時も多いが、胆経はこのような際にもその任を果たして大である。

また膝より下の経穴は肝経と表裏をなしており、精神的な活動にも大いに係わる。

表題: 臨床考察21: 足の少陽胆経の臨床考察 頁:68.69・平成15年3月 収録

【治療穴:病院で面倒診てもらえない結膜出血を治すツボ】

・・胆経・・の主治症:結膜出血・・瞳子髎・承泣・陽白・晴明穴等に処置をし、
側頭部眼窩部やそれら等の周辺の表治法によって数日で緩解する。
その際「こんなことがなるべく起こらないように」と患者を説得し、時々通院するようにそれとなく進める。

【 治療穴:耳・頚肩部・眩暈の治療にも胆経 】

耳を始め頚肩部の病、眩暈に対しても肝経・腎経・脾経等の陰経に捕らわれ過ぎず、胆経の処置をしてその功大である。

【胆経の実邪をとれば、長年、患者を苦しめていた愁訴をあっさり纏めて解消する事が出来る。】

胆経の脉は他の脉と比較すると、実になっていることが多く、またそれが患者の健康に対する不安感をいだかせる元になっている場合もある。例えば寒熱往来で、朝は気持ちが良いが夕方から熱が上がり始め、身体のあちこちに愁訴が現れる。このような時もし胆経が実脉を示していれば、これを瀉す時は長い合い間、患者を苦しめていた愁訴をあっさり纏めて解消する事が出来る。見落としがちな胆経の実邪の仕業に注意・・。

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