十二、腰部の鍼灸治療

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十二、腰部の鍼灸治療

このコーナーでは臨床に直接役立つ経絡鍼灸の証決定・本治法・標治法の方法を述べます。

参考文献は、小里勝之(こさとかつゆき)先生の臨床発表「論考:身体各部の病症と経絡鍼灸治療」を
ベースにして、 ここに、『鍼灸重宝記』と、HPゆっくり堂の経絡鍼灸教科書を加えて構成します。
また、適宜、東洋はり医学会の臨床経験文を参考に考察を行います。


鍼灸師の先生方のご意見・間違いの指摘・などを、当院へお送りくだされば幸いです。

腰は腎の主るところ。
経絡は膀胱経がめぐり、側腹には胆経がめぐっている。
また皮毛は肺金、肌肉は脾土、筋は肝木、骨は腎水が主るところがあり、
証を定めるのに参考になる。
腰痛は肩凝りと共に鍼灸家の門を訪れる者が非常に多く、大方は治癒に導く事が出来る。これらの患者は最初は病院で検査を受けて大部分が腰椎に何らかの異状を発見されるが、
鍼灸治療を施して再度検査してみると軽症の者は異状を認めないほどに改善される。
また、大部分は多少の異状を認めたまま、苦痛を感じない程度に治癒するものである。

病の種類 弁証 ・ 特徴 刺鍼の深さ
腰痛で骨に異状 腎水の証:
腰を少し曲げていると楽で、
その様にすることができないものは腎虚の証
やや深めの刺鍼する。
筋に異状を認めたものは 肝木の証:
立ち上がって腰を少し曲げてもギクッと痛む。
やや深めの刺鍼する。
寒風の邪に犯された皮毛の病 肺金の証:
腰痛で寝返りの出来ないほどの激痛。
ごく浅く刺鍼する。
肌肉の炎症や損傷によるもの 脾土の証:
長く腰掛けていられないものや、
座っていると、苦痛を感じる症状。

   ゆっくり堂鍼灸院の治療例
 症例  経過 主証決定、治療方法、その効果
女性 43歳

ぎっくり腰

洗濯物を干そうとして横に置いた洗濯籠から
タオルを持ち上げた瞬間腰に激痛が走り腰が痛みだした。
洗濯ものもそのままにして、タクシーにて来院されました。

証決定:肺虚肝実

本治法:
右太淵、太白を補法
左中都を瀉法

標治法として、
側腹部の実所見を瀉法、腹部の虚を補法、
腸骨そけい靭帯付着部辺りの虚実補瀉法、
臀部から背腰部、頸部の面的虚実補瀉法、
ひざ裏の虚実補瀉法、
足底の陰陽点の虚実補瀉法をおこないました。
立位になってもらい前屈をしてみますと、
当然ですが痛みが残っていますので、
痛む部に鍼をあて運動鍼を施し、
険脉して今日の治療を終了しました。

連続3日来院され完治されました。

   ぎっくり腰を防ぐ方法、

「治療例 (24):ぎっくり腰」症例の後に「腰痛症改善の参考資料」を書いています。
これを読んでもらえると「ぎっくり腰」の予防になると思います。
リンクしてご覧ください。
http://yukkurido.jp/shinkyu/tirei/ti024/

腰痛の治療、『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例より

腰痛(こしのいたみ)  特徴
 腰は一身の大関、六經の懸るところ。
 太陽(膀胱経)の腰痛は項脊尻に引、せなか重し。
 陽明(胃経)の腰痛は左右へかへりみられず、強り、かなしむ。
 少陽(胆経)の腰痛は針にて皮をさくがごとし、俛仰ならず。
 大陰(脾経)の腰痛は熱して、腰に横木あるが如く、遺尿す。
 少陰(腎経)の腰痛は張弓のごとく、黙々として心わろし。
 脾に熱たたかふときは、腰痛み、俛仰せられず、腹満て泄す。
 腎に邪熱あれば、腰痛み、脛しびれ、舌かはく。
 腰は腎の府、多くは色欲を過し、腎を労傷すれば、常に腰を痛ましむ。
日軽く夜重きは瘀血(おけつ)なり。
陰雨に遇ひ、久しく坐して発るは湿なり。
腰背重、走注串き痛は痰なり。
頭痛、悪寒、発熱するは風寒による。
腰冷るは中寒なり。

 腰痛症状と治療穴
 【灸】腎兪・膀胱・腰兪・志室・崑崙に灸し。
 【針】崑崙・肩井・環跳・陰市・三里・陽輔に針。
 ▲委中より血をとるべし。
 ▲両腿水のごとく冷、腰脇肋いたむは尺澤・三陰交・合谷・陰陵・行間・三里・手三里。
 ▲腰痛動がたきは風市・委中・行間。
 ▲腰脊強痛には腰兪・委中・湧泉・小腸兪・膀胱兪。

脇痛 わきいたみ
 特徴  治療穴
両脇痛は肝火盛に、本、気実するなり。
咳嗽して、いたみ走注し、痰の声あるは痰なり。
左の脇に塊ありて痛処を移さざるは死血。
右の脇に塊ありて飽悶するは食積なり。
肝積は左に在、肺積は右にあり。
【針】日月・京門・腹哀・風市・章門・丘墟・中瀆(ちゅうとく)・期門。
 【灸】肝兪・絶骨・風市。

『鍼灸重宝記』記載、治療穴

腰痛(こしのいたみ)の症状と治療穴、該当部位と該当穴の主治。

▲腎兪・膀胱・腰兪・志室・崑崙に灸し。

腎兪【灸】

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膀胱【灸】

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腰兪【灸】

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志室【灸】

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崑崙【灸】

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▲崑崙・肩井・環跳・陰市・三里・陽輔に針。【針】

崑崙【針】

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肩井【針】

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環跳【針】

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陰市【針】

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三里【針】

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陽輔【針】

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▲委中より血をとるべし。

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▲両腿水のごとく冷、腰脇肋いたむは尺澤・三陰交・合谷・陰陵・行間・三里・手三里。

尺澤

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三陰交

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合谷

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陰陵

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行間

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三里

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手三里

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▲腰痛動がたきは風市・委中・行間。

風市

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委中

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行間

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▲腰脊強痛には腰兪・委中・湧泉・小腸兪・膀胱兪。

腰兪

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委中

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湧泉

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小腸兪

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膀胱兪

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