難経六十九難 と 補法・瀉法
小項目 番号 e201
① 難経六十九難について。
「難経」(なんぎょう)は、中国の東晋(とうしん)時代(317年 – 420年)に編纂された、黄帝内経のダイジェスト版「81の問答集」です。
この中で69番に記載されている内容が経絡鍼灸では、「本治法」の治療原則で最も重要なものになります。
六十九難の治療原則の要点を箇条書にします。
① 虚する時はその母を補う。(法則1)
② 実する時はその子を瀉す。(法則2)
③ 補法と瀉法を共に用いる場合は、まず補法を先にして正気を補い、後に瀉法を行う。「補法優先の原則」(法則3)
④ その一経絡のみが病んでいて、他の経絡に関係しない時は、相生(母子)関係や相剋関係を考えることなく、その経絡のみに補瀉を行う。「正経自病の原則」(法則4)
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難経六十九難はこの4つに集約されます。
これは経絡治療における補瀉の大原則です。
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難経 第六十九難 につての解説はこちらをご覧ください。
リンク
ゆっくり堂の『難経ポイント』第六十九難
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あらためて、
本治法とは、病気の根本原因を改善する為の施術手技です。
本治法の方法は、十二経絡の「気」を調整し、「血」の流れを順行させ、全身の健康状態を改善することで、病気を治す「自然治癒力」を増強させる手技です。
本治法として使用する経穴は、五行穴・五要穴・原穴・郄穴・絡穴です。
本治法の実技方法は、脉状に適合した「補法、瀉法」を行います。
そして、「良い脉」に導きます。
「良い脉」とは、平位の脉状で、艶と程よい締まりの有るのびやかな脉です。
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ここでは、本治法と標治法のいずれにも利用されている手技の方法を述べます。
補法の手技、その1。
「虚のツボを診つける方法。」
① 左手の示指しの指腹にてツボをさがす。
② 指腹は経絡の流れにしたがって、基本の取穴場所を参考に生きたツボを探す。
③ 極めて軽く皮膚に触れながら進める。
④ 虚のツボの指腹感覚は、
冷えている。
軟らかい。
押すと患者は心地よさを感じる場所である。
⑤ 指腹を進めると、
指が自然に止まるところ。
指が吸い付くところ。
指にベタッと触れるところ。
これらの場所が「虚のツボ」です。
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補法の手技その2。
補法の刺入方法
虚のツボを捕らえたら、正しい鍼の刺入方法を述べます。
補法の刺入方法の手順。
① 上半身の力を抜いて、心おだやかに手技をおこなう。
② 経に従い取穴。
③ 押手を軽く構え、穴所を凹ませない程度に密着させる。
④ 刺手は、鍼柄を指腹で柔らかく持ち、鍼全体を感じ、鍼柄と鍼体の境目に意識を集中させる。
⑤ 押手と穴所によって鍼尖に空気を触れさせない様にしながら、鍼体がたわまないよう、鍼尖を柔らかく穴所に接触させる。
⑥ 軽く押すと同時に押手は鍼先の方向を確かなものにする程度の左右圧をかける。
⑦ 鍼尖が自然に吸い込まれるまで待ち、患者の脉拍に合わせて、2拍押し、力を抜き1拍置く、これを繰り返し目的の深さ、2~4ミリ程度刺入する。
⑧ 催気の感覚を良くするためには、刺手の指先感覚が鍼先にある気持ちで手技をおこなうと、穴所の気の動きが感覚できる。患者の呼吸に応じて吸気で穴がしまり、吐気で穴がゆるむ。フワフワと鍼響が伝わる。
⑨ 催気をえたならば、押手の左右圧をスーッ加え、すばやく抜鍼と同時に、鍼口を閉じる補法を行う。
※ これが古典にいわく補法の手技 「心に円を持てば補」「蚊虻の止まるがごとき」 鍼術です。
※ これが、患者の意識にのぼらない痛みのない刺鍼法です。
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刺鍼感覚(患者の感じ方の感想)
良い鍼をうけると、患部にフワフワと温かい感じが起こる。また、その経の影響する、腹部の緊張が解け、冷えていれば温かくなる。
また、外虚内実の場合は、痛みが改善する。
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刺鍼感覚(施術者の感じ方)
良い鍼をすると、目的の深さの部で、鍼尖がゆるむ感じを覚え、その響きが押手の左右に伝わり、また同時に刺手の指先から肘の方に「くすぐったい様」な感覚を覚える。
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補法の用鍼 (使用する鍼の種類)は、銀鍼の1番~3番鍼を使用します。
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※ 補法の刺入方法の手順。(最新版)
【補法】基本刺鍼
①経に随いごく軽く取穴する。
②押手を軽く構える。
③竜頭を極めて軽く持ち、その鍼を押し手の母指と示指の間に入れる。
④鍼先を静かに穴所に接触させる。
⑤とどめたまま、鍼がたわまないように静かに押し続ける。
(その際、患者の気の状態によって、鍼が進んだり、進まなかったするので、術者は無理に鍼を進めようとしない。)
⑥鍼先が動かなくなったのを度とする。
⑦押し手の中に鍼があるのが分かるくらいの左右圧、ゆっくりとかける。
⑧抜鍼と同時に押し手にて穴所(けつしょ)に蓋をする。
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瀉法の手技
瀉法の手技その1。
瀉法は邪気を除くもの。
瀉法の目的は邪実である。
実するものは之を瀉す。
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実のツボの特徴。
Ⅰ:視覚的に捕らえるポイント。
白い斑。
粉をふいた部位。
赤い斑点。
シミ。
ホクロ。
大きいホクロの際。
シワの先端。
シワの交点。
毛穴。
Ⅱ:指腹(頭)感覚的に捕らえるポイント。
「実のツボを診つける方法。」
① 左手の示指しの指腹(頭)にてツボをさがす。
② 指腹は経絡の流れに逆らって、基本の取穴場所を参考に生きたツボを探す。
③ 極めて軽く皮膚に触れながら進める。
④ 実のツボの指腹感覚は、
フワフワしている。
指の滑りがいい。
気(邪気)を感じる。
硬く熱がある。
押せば痛みが出る。
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瀉法実技の手順(基本)
(1)経絡の流れに逆って取穴し、押出を構える。
(2)刺手は竜頭をある程度しっかり持ち、すみやかに刺入し、抜き刺しを行う。(鍼先は絶えず動かし止めない)
(3)抵抗が取れたら、押手にて、ゆっくり下圧をかけ、 ゆっくり鍼を抜きあげ、先鍼が鍼口離れても尚、下圧をかけ続ける。
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瀉法の用鍼 (使用する鍼の種類)は、ステンレス鍼の1番~3番鍼を使用する。
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※ 瀉法の刺入方法の手順。(最新版)
【瀉法】
①経に逆らい取穴する。
②押出を軽く構える。
③竜頭は補法よりやや強めに持ち、その鍼を押し手の母指と示指の間に入れる。
④鍼先を穴所に接触させる。
⑤押す・止めるを繰り返す。(刺動法:目的の深さまで鍼先を刺入する。)
⑥鍼が止まる(抵抗を)度として、
鍼が滑らないよう押し手の母指と示指でしっかり保持し、鍼先の方向に下圧をかける。
⑦刺し手は押し手の下圧と共にもっていく。
⑧下圧の限度は押し手で感じる。(鍼先が進まない所)
⑨鍼口は閉じずに、ゆっくりと抜鍼する。
⑩抜鍼後一呼吸おいて、押し手を取る。
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