九、泄瀉
南北経驗醫方大成による病証論 井上恵理 先生 講義録 より。
南北病証論トップコーナが親hp
小項目 番号 c329
2016年4月3日掲載しました。
井上恵理先生の講義録「南北経驗醫方大成による病証論」を取り上げるHPコーナーです。
「南北経驗醫方大成による病証論」の概要を山口一誠なりに分類と纏めを試みてみます。
参考資料に『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例・杉山三部書、等を掲載しています。
【】〔〕内は、山口一誠の考えやタイトルです。
「南北経驗醫方大成 九、泄 瀉 」の原文
P84上段1行目 より。
泄瀉之證、経中所謂、飧瀉、澹瀉、洞瀉、濡瀉、溢瀉、水穀注下是也。
大腸為は五穀傳送之官。
脾胃虚弱、飲食過度、或為風寒暑湿之氣所中。皆能令人泄瀉。
如傷於風、其脉、必浮、下必帯血、當以胃風湯等駆散之。
如傷於寒所傷、脉、必沈細、腹肚切痛、下必黒、當以附子理中湯、治中湯等、
温暖之。
若傷於暑則、脉沈微、煩渇引飲、其下、如水、當以五苓散、来復丹以、分利之。
或挟食則、又當以胃苓湯、下蘇感圓、
若湿気所中、其脉沈緩、腰脚冷痺、小便自利不渇、其下黄黒、當以滲湿湯、藿香正気散調之。
因停食而泄者、下必臭類抱壊雞子。
或噫氣、作酸。先服感應圓、其食積而後理脾。
氣體虚弱、及年高之人、脾気虚敗而自利者、又當以四柱散蒄附圓。
若脾胃氣虚、精晨泄下、一、二次、二神、四神圓、主之。
又有腎氣虚而泄者、又須金鎖正元丹似固之。
凡治瀉之法、先理其中焦分利、水穀然後、断下、醫之大法如此。
若脚氣泄瀉、各以類求之。
滑泄一證、最忌五虚。
五虚者、脉細、皮寒、小氣、前後泄利、飲食不入者、是也。
若得麋粥、入胃泄瀉止則、可治也。
大腸為は五穀傳送之官。
脾胃虚弱、飲食過度、或為風寒暑湿之氣所中。皆能令人泄瀉。
如傷於風、其脉、必浮、下必帯血、當以胃風湯等駆散之。
如傷於寒所傷、脉、必沈細、腹肚切痛、下必黒、當以附子理中湯、治中湯等、
温暖之。
若傷於暑則、脉沈微、煩渇引飲、其下、如水、當以五苓散、来復丹以、分利之。
或挟食則、又當以胃苓湯、下蘇感圓、
若湿気所中、其脉沈緩、腰脚冷痺、小便自利不渇、其下黄黒、當以滲湿湯、藿香正気散調之。
因停食而泄者、下必臭類抱壊雞子。
或噫氣、作酸。先服感應圓、其食積而後理脾。
氣體虚弱、及年高之人、脾気虚敗而自利者、又當以四柱散蒄附圓。
若脾胃氣虚、精晨泄下、一、二次、二神、四神圓、主之。
又有腎氣虚而泄者、又須金鎖正元丹似固之。
凡治瀉之法、先理其中焦分利、水穀然後、断下、醫之大法如此。
若脚氣泄瀉、各以類求之。
滑泄一證、最忌五虚。
五虚者、脉細、皮寒、小氣、前後泄利、飲食不入者、是也。
若得麋粥、入胃泄瀉止則、可治也。
————————————-
井上恵理 先生の訳:
P84下段1行目 ~ P85上段5行目より。
泄瀉の証、経中に所謂、飧瀉(そんしゃ)、澹瀉(たんしゃ)、洞瀉(とうしゃ)、濡瀉(なんしゃ)、溢瀉(いつしゃ)、水穀注下是なり。
大腸は五穀傳送(でんそう)の官たり。
脾胃虚弱し、飲食過度し、或いは風寒暑湿の氣の為に中てられて、皆よく人をして泄瀉せしむ。
若し風邪に傷らるれば、其の脉、必ず浮、下すと必ず血を結ぶ、當に胃風湯等を以て、之を駆散すべし、
若し寒気に傷らるれば、其の脉、必ず沈細、腹肚切痛し、下す事、必ず青黒なり、當に附子理中湯、治中湯等を以て、之を温暖すべし、
若し暑に傷らるる則は、脉沈微、煩渇して飲を引く、其の下す事、水の若し、當に五苓散、来復丹を以て、之を分利すべし。
或いは食を挟む則は、また當に胃苓湯を以て、蘇感圓を下すべし、
若し湿気に中てられる則は、其の脉、沈緩し、腰脚冷痺し、小便自利して渇せず、其の下す事、黄黒なり、當に滲湿湯、藿香正気散を以て之を調うべし、
停食に因って泄する者は、下す事、必ず臭くして抱壊雞子に類す。
或いは噫気、酸を作す。先ず感應圓を服して、其の食積を推して、而うして後に脾を理せよ、
気體虚弱、及び年高(たけたる)の人、脾気虚敗して自利する者は、又當に投ずるに四柱散蒄附圓を以てすべし、
若し脾胃の気虚し、精晨に泄下する事、一、二次ならば、二神、四神圓、之を主る。
又腎気虚して泄する者あり、又須らく金鎖正元丹似て之を固くすべし、
凡そ瀉を治するの法、先ず其の中焦を理して、水穀を分利し、然して後、断下せよ、醫の大法、此の若し、
若し脚気の泄瀉ならば、各々類を以て之を求めよ。
滑泄の一証、最も五虚を忌む。
五虚とは、脉細、皮寒、小気、前後泄利、飲食入らざる者、之なり、
若し麋粥(かゆ)、胃に入るを得て泄瀉止む則は、治すべしなり。
大腸は五穀傳送(でんそう)の官たり。
脾胃虚弱し、飲食過度し、或いは風寒暑湿の氣の為に中てられて、皆よく人をして泄瀉せしむ。
若し風邪に傷らるれば、其の脉、必ず浮、下すと必ず血を結ぶ、當に胃風湯等を以て、之を駆散すべし、
若し寒気に傷らるれば、其の脉、必ず沈細、腹肚切痛し、下す事、必ず青黒なり、當に附子理中湯、治中湯等を以て、之を温暖すべし、
若し暑に傷らるる則は、脉沈微、煩渇して飲を引く、其の下す事、水の若し、當に五苓散、来復丹を以て、之を分利すべし。
或いは食を挟む則は、また當に胃苓湯を以て、蘇感圓を下すべし、
若し湿気に中てられる則は、其の脉、沈緩し、腰脚冷痺し、小便自利して渇せず、其の下す事、黄黒なり、當に滲湿湯、藿香正気散を以て之を調うべし、
停食に因って泄する者は、下す事、必ず臭くして抱壊雞子に類す。
或いは噫気、酸を作す。先ず感應圓を服して、其の食積を推して、而うして後に脾を理せよ、
気體虚弱、及び年高(たけたる)の人、脾気虚敗して自利する者は、又當に投ずるに四柱散蒄附圓を以てすべし、
若し脾胃の気虚し、精晨に泄下する事、一、二次ならば、二神、四神圓、之を主る。
又腎気虚して泄する者あり、又須らく金鎖正元丹似て之を固くすべし、
凡そ瀉を治するの法、先ず其の中焦を理して、水穀を分利し、然して後、断下せよ、醫の大法、此の若し、
若し脚気の泄瀉ならば、各々類を以て之を求めよ。
滑泄の一証、最も五虚を忌む。
五虚とは、脉細、皮寒、小気、前後泄利、飲食入らざる者、之なり、
若し麋粥(かゆ)、胃に入るを得て泄瀉止む則は、治すべしなり。
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九、 泄瀉 井上恵理先生の解説と言葉の意味:
P85上段
〈 泄瀉(せっしゃ)と病因 〉
泄瀉とは痢病(渋り腹)ではなく包下(つつくだ)しの事で、どっと出て気持良くなる者で、
今の医学では胃腸カタルと思えばよい、「経中」〔黄帝〕内経に
飧瀉(そんしゃ)、澹瀉(たんしゃ)、洞瀉(とうしゃ)、濡瀉(なんしゃ)、
溢瀉(いつしゃ)、水穀の注ぎ下る事があり、これが泄瀉(せっしゃ)の事です。
〔泄瀉に罹患する条件は〕
大腸は飲食物を伝える官〔でここに負荷がかかり〕
〔体質的に〕脾胃虚弱の者、飲食の食べ過ぎ、或いは風寒暑湿に傷(やぶ)られて罹患します。。
今の医学では胃腸カタルと思えばよい、「経中」〔黄帝〕内経に
飧瀉(そんしゃ)、澹瀉(たんしゃ)、洞瀉(とうしゃ)、濡瀉(なんしゃ)、
溢瀉(いつしゃ)、水穀の注ぎ下る事があり、これが泄瀉(せっしゃ)の事です。
〔泄瀉に罹患する条件は〕
大腸は飲食物を伝える官〔でここに負荷がかかり〕
〔体質的に〕脾胃虚弱の者、飲食の食べ過ぎ、或いは風寒暑湿に傷(やぶ)られて罹患します。。
〈 病因の脉と症 〉
P85上段
風に傷られると、脉は浮、下すと必ず血便が出る。胃風湯を以て之を駆散すべし、風による所の泄瀉は惡病です。今の伝染病、傷寒の病も此の類に入ると思う。
腎虚陽実証で治療するのも一つの方法です。
腎虚陽実証で治療するのも一つの方法です。
〔胃風湯:処方薬味:当帰(とうき)芍薬(しゃくやく)川きゅう(せんきゅう)人参(にんじん)白朮(びゃくじゅつ)茯苓(ぶくりょう)桂皮(けいひ)粟(あわ)〕
寒気に傷らるる時は、脉は沈細、腹が「切痛(せっつう)」きりきり痛む、必ず下すと青黒い便が出る。附子理中湯、治中湯等を以て温暖すべし、これは腎虚証でよい。
〔附子理中湯:「傷寒論」に収載されている人参湯に附子を加えた薬方薬 :処方薬味:人参・甘草・白朮各3.0乾姜2.0~3.0附子1.0 〕
暑に傷らるる時は、脉沈微で、〔咽が〕かわく、「飲を引く」水を飲みたがる、下す事、水の若し、五苓散、来復丹を以て分利すべし、この時は脾虚証が多い。
食を挟む時は、胃苓湯を用いる。
暑さに傷られ悪い飲食物を食べた「悪い食べ物」冷飲(ビール)冷食(アイス)の冷たい物で体を壊すように出来ている。
食を挟む時は、蘇感圓を以て下したがよい。この時は脾虚証が多い。
食を挟む時は、胃苓湯を用いる。
暑さに傷られ悪い飲食物を食べた「悪い食べ物」冷飲(ビール)冷食(アイス)の冷たい物で体を壊すように出来ている。
食を挟む時は、蘇感圓を以て下したがよい。この時は脾虚証が多い。
〔五苓散 :処方薬味: 猪苓(ちょれい)・茯苓(ぶくりょう)・蒼朮(そうじゅつ)・沢瀉(たくしゃ)・桂皮(けいひ)〕
〔胃苓湯 :(平胃散+五苓散)漢方の古典「万病回春まんびょうかいしゅん」(明代:西暦1587年)収載: 処方薬味: 猪苓ー2.5 蒼朮ー2.5 陳皮ー2.5 白朮ー2.5 厚朴ー2.5 茯苓ー2.5 沢瀉ー2.5
芍薬ー2.5 桂枝ー2.0 大棗ー1.5 生姜ー1.5 甘草ー1.0 〕
〔胃苓湯 :(平胃散+五苓散)漢方の古典「万病回春まんびょうかいしゅん」(明代:西暦1587年)収載: 処方薬味: 猪苓ー2.5 蒼朮ー2.5 陳皮ー2.5 白朮ー2.5 厚朴ー2.5 茯苓ー2.5 沢瀉ー2.5
芍薬ー2.5 桂枝ー2.0 大棗ー1.5 生姜ー1.5 甘草ー1.0 〕
〔エスマーゲン錠: 現代漢方がお勧めです。 :処方薬味:成分・分量 15錠中•ショウキョウエキス45mg •チンピエキス50mg •ニンジンエキス30mg •オウレン末300mg •カンゾウ末200mg •コウボク末330mg •ビャクジュツ末360mg •牛胆50mg •合成ケイ酸アルミニウム600mg •酸化マグネシウム50mg •炭酸水素ナトリウム1500mg •沈降炭酸カルシウム300mg 〕
湿気に傷らるる時は、脉、沈緩し、「腰脚」足腰、「冷痺」冷へ痺れ、「小便自利」小便を漏らす。「渇せず」喉がかわかない。下す便は、黄色で黒、これは滲湿湯等を用いる。この時は、腎虚、脾虚両方あるが通常は脾虚が先になる。
〔利水滲湿湯等: 水毒、湿邪を治す漢方剤類: 猪苓湯(ちょれいとう) ・防已黄耆湯 ・猪苓湯 ・五苓散 ・五皮散 ・茵蔯五苓散 など〕
〔猪苓湯(ちょれいとう) :処方薬味:猪苓・茯苓・沢瀉・阿膠・滑石各9g 〕
〔防已黄耆湯 :処方薬味:防已12g、黄耆15g、炒甘草6g、白朮9g 〕
〔茵蔯五苓散 :処方薬味:茵蔯蒿10g、五苓散5g 〕
〔猪苓湯(ちょれいとう) :処方薬味:猪苓・茯苓・沢瀉・阿膠・滑石各9g 〕
〔防已黄耆湯 :処方薬味:防已12g、黄耆15g、炒甘草6g、白朮9g 〕
〔茵蔯五苓散 :処方薬味:茵蔯蒿10g、五苓散5g 〕
「停食」食が滞る。消化しないので、臭い便が出る。或いは「噫気」おくびと、酸が出る。これは感應圓を服して食積をなくす。食べ過ぎているので温める。
私(井上恵理)は腹に知熱灸をして案外効果あり、これは脾虚証です。
体の弱い人、老人で脾気虚敗して便が固まらない者、これは四柱散蒄附圓を用いる。これは腎虚証です。
脾胃虚して「精晨」夜明け、朝方下痢する、老人性下痢で、腎虚証でよい。
一、二回の人ならば、二神、四神圓、を用いる。
腎虚の泄する者は、金鎖正元丹似て之を固くすべし。
体の弱い人、老人で脾気虚敗して便が固まらない者、これは四柱散蒄附圓を用いる。これは腎虚証です。
脾胃虚して「精晨」夜明け、朝方下痢する、老人性下痢で、腎虚証でよい。
一、二回の人ならば、二神、四神圓、を用いる。
腎虚の泄する者は、金鎖正元丹似て之を固くすべし。
〔四柱散蒄附圓 :処方薬味: 〕
〔金鎖正元丹 :太平記/巻第二十五、「此御労は腹の御病にて候へば、腹病を治〔す〕る薬には、金鎖正元丹・秘伝玉鎖円を合て御療治候べし。」とぞ申ける。 処方薬味:〕
〔金鎖正元丹 :太平記/巻第二十五、「此御労は腹の御病にて候へば、腹病を治〔す〕る薬には、金鎖正元丹・秘伝玉鎖円を合て御療治候べし。」とぞ申ける。 処方薬味:〕
〈 瀉の治法 〉
P85下段より。
凡そ瀉を治するの法、「中焦」脾を中心に考える。
そして、水穀を分利すること考える。
そして、水穀を分利すること考える。
飲食は、腸によって大便と小便に分かれるのだが、分かれないからです。
今の医学では、小便は腎臓から膀胱に入り、大便は胃腸から大便になる、 胃腸から分利するのは、可笑しいと思うが、臨床的に考えると当たっている事があるのです。
例えば下痢の時は小便が出ない。
便秘の時は小便が多くなる。
今の医学では、小便は腎臓から膀胱に入り、大便は胃腸から大便になる、 胃腸から分利するのは、可笑しいと思うが、臨床的に考えると当たっている事があるのです。
例えば下痢の時は小便が出ない。
便秘の時は小便が多くなる。
夜中に1、2回は起きる。これを分利する方法を取ればよいのです。
その為、水分穴(水をわける)水道穴〔胃経〕(水が通る)を考えているのです。
然して後に下しを止める、先に止めるのは良くない。
鍼ではこれが出来ないので辛いです。?
「醫の大法」治療はこの様にする。
脚気の泄瀉ならば、脚気は血病なので、そうゆう類を以て、これを求めなさい。
脚気の泄瀉ならば、脚気は血病なので、そうゆう類を以て、これを求めなさい。
「滑泄」
〈 五虚 〉P86上段より。【「滑泄(かつしゃ)」= 五虚のこと。】
「滑泄」便が無かったり下たり、〔する下痢症。〕
〔黄帝〕内経にいう五虚で、
1、「脉細」脉が虚、
2、「皮寒」皮膚が冷たい、
3、「小気」呼吸が浅い、
4、「前後泄利」大小便たれ流し、
5、「飲食入らざる」飲食入らない。
「五虚近づくべからず」この五虚があれば死の一歩手前で、医者が治療して殺したと言われるので近づかない。
若しこの人でもおかゆを食べて胃に治まれば、泄瀉が止み治す事が出来る。
〔黄帝〕内経にいう五虚で、
1、「脉細」脉が虚、
2、「皮寒」皮膚が冷たい、
3、「小気」呼吸が浅い、
4、「前後泄利」大小便たれ流し、
5、「飲食入らざる」飲食入らない。
「五虚近づくべからず」この五虚があれば死の一歩手前で、医者が治療して殺したと言われるので近づかない。
若しこの人でもおかゆを食べて胃に治まれば、泄瀉が止み治す事が出来る。
〈質問 〉 先ほどの朝下痢について、もう少し教えて下さい。 老人性下痢 で腎虚 の証 です。
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参考資料
『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例
痢病 しぶりはら
赤白ともに湿熱と作て治すべし。古へに腸?といひ、滞下といふは、みな今の痢病なり。
脉滑沈小はよし、弦急は死す。 もつはら血を下し、屋の雨漏のごとく、魚の脳髄の如なるは、皆死。
▲脾兪・関元・腎兪・復溜・長強・大腸兪・小腸兪・中脘・足三里・大谿に灸すべし。
おしなべて、気海・水分・天枢に針して奇妙なり。
いづれも五分づつ、いくたびも刺なり。ふかく刺べからず。
———————
杉山三部書、 病証の治療穴から。
痢病〔しぶり腹〕の病状には、白色の下痢便には、鳩尾・気海・関元・三里・下脘穴を使用する。腹痛を伴う下痢便には、上脘穴を使用する。脇腹が痛む下痢便には、章門穴を使用する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
泄瀉(せ しゃ) くだりはら
胃泄は、胃虚して尅化せず、黄色にて食物とろけず。
脾泄は、脾虚して五蔵に分散せざるゆへに、腹脹り、嘔逆す。
大腸泄は、大腸に寒邪あるにより、食後に腸いたむ。
小腸泄は、小腸いたみ、膿血をまじへくだして、小便しげし。
大瘕泄(だいかしゃ)は、裏急にして、しぶりて通じがたし、陰茎の中いたむ。五泄の證によりて治す。
【針】関元・復溜・長強・腹哀・天枢。
【灸】三里・気舎・中脘・大腸兪・小腸兪・脾兪・腎兪。おのおのえらひもちゆべし。
———————
杉山三部書、 病証の治療穴から。
8、泄瀉 腹の下る事
泄瀉の病状には、関元・大腸兪・気海・章門穴を使用する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
傷食 しょくだたり
飲食停滞するときは、脾胃傷れて、腹痛み、吐瀉をなし、或は悪寒、発熱、づつうして、傷寒のごとし。
外傷は、左の脉盛に、手の背熱し、鼻塞り、頭の角いたみ、身疼む。
内傷は、右の脉盛に、手中熱し、額の正中いたみ、腹いたみ、不食す。
▲脾兪・三里に灸し。
▲梁門・天枢・通谷・中脘に針すべし。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
腹痛 はらのいたみ
腹痛に九種あり。
綿々として増減なきは寒也。 乍痛乍止は熱痛なり。 食するときは腹痛み泄して、後に痛減ずるは宿食なり。
時に痛み、時に止み、面白く、唇紅にして、飢るときは痛みはなはだしく、 食するときはしばらく止ば虫痛なり。 痛處移らざるは死血なり。 脇下に引いたみ、聲あるは痰飲なり。 手にて腹を按に軟に痛やはらぐは虚なり。 腹硬く、手にて按ときは、いよいよいたむは實痛なり。
いづれの腹痛にも、先、腹に針灸すれば、かへつて痛ますものなり。
必まづ足の穴に針灸して、痛み和ぎてのち腹に刺すべし。
尋常のかろき腹痛には、まづ腹、滑肉門を重く押へて刺すべし。
▲もし腹痛はなはだしく、目眩き、死せんとするには隠白・湧泉に針して正気を付べし。
▲上脘・中脘・巨闕・不容・天枢・章門・気海・崑崙・大白・大淵・三陰交。
———————
杉山三部書、 病証の治療穴から。
腹痛の病状には、内関・天枢・上脘・中脘・胃兪・巨闕・梁門・石門・三陰交・三里穴を使用する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
大便について。五行変動比較より。
リンク:http://yukkurido.jp/keiro/bkb/c102/c209/%ef%bd%83301/c402/
肝木の変動: 未消化の下痢がザーッと出る。便秘と下痢が交互にくる。
心火の変動: 緊張すると下痢になる。
脾土の変動: 便秘。軟便。下痢。 オナラをすると病状が改善する。 排便をすると病状が改善する。 便意はあるが出ない。 夜明け前に下痢をする。
肺金の変動: 何度もトイレに行く。便を出して、脱肛する。
腎水の変動: 慢性の下痢。慢性の便秘。大便が出てもスッキリしない。不安定。 お腹の裏が引きつる。一週間以上の便秘。コロコロ便。(兎便)
赤白ともに湿熱と作て治すべし。古へに腸?といひ、滞下といふは、みな今の痢病なり。
脉滑沈小はよし、弦急は死す。 もつはら血を下し、屋の雨漏のごとく、魚の脳髄の如なるは、皆死。
▲脾兪・関元・腎兪・復溜・長強・大腸兪・小腸兪・中脘・足三里・大谿に灸すべし。
おしなべて、気海・水分・天枢に針して奇妙なり。
いづれも五分づつ、いくたびも刺なり。ふかく刺べからず。
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杉山三部書、 病証の治療穴から。
痢病〔しぶり腹〕の病状には、白色の下痢便には、鳩尾・気海・関元・三里・下脘穴を使用する。腹痛を伴う下痢便には、上脘穴を使用する。脇腹が痛む下痢便には、章門穴を使用する。
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泄瀉(せ しゃ) くだりはら
胃泄は、胃虚して尅化せず、黄色にて食物とろけず。
脾泄は、脾虚して五蔵に分散せざるゆへに、腹脹り、嘔逆す。
大腸泄は、大腸に寒邪あるにより、食後に腸いたむ。
小腸泄は、小腸いたみ、膿血をまじへくだして、小便しげし。
大瘕泄(だいかしゃ)は、裏急にして、しぶりて通じがたし、陰茎の中いたむ。五泄の證によりて治す。
【針】関元・復溜・長強・腹哀・天枢。
【灸】三里・気舎・中脘・大腸兪・小腸兪・脾兪・腎兪。おのおのえらひもちゆべし。
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杉山三部書、 病証の治療穴から。
8、泄瀉 腹の下る事
泄瀉の病状には、関元・大腸兪・気海・章門穴を使用する。
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傷食 しょくだたり
飲食停滞するときは、脾胃傷れて、腹痛み、吐瀉をなし、或は悪寒、発熱、づつうして、傷寒のごとし。
外傷は、左の脉盛に、手の背熱し、鼻塞り、頭の角いたみ、身疼む。
内傷は、右の脉盛に、手中熱し、額の正中いたみ、腹いたみ、不食す。
▲脾兪・三里に灸し。
▲梁門・天枢・通谷・中脘に針すべし。
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腹痛 はらのいたみ
腹痛に九種あり。
綿々として増減なきは寒也。 乍痛乍止は熱痛なり。 食するときは腹痛み泄して、後に痛減ずるは宿食なり。
時に痛み、時に止み、面白く、唇紅にして、飢るときは痛みはなはだしく、 食するときはしばらく止ば虫痛なり。 痛處移らざるは死血なり。 脇下に引いたみ、聲あるは痰飲なり。 手にて腹を按に軟に痛やはらぐは虚なり。 腹硬く、手にて按ときは、いよいよいたむは實痛なり。
いづれの腹痛にも、先、腹に針灸すれば、かへつて痛ますものなり。
必まづ足の穴に針灸して、痛み和ぎてのち腹に刺すべし。
尋常のかろき腹痛には、まづ腹、滑肉門を重く押へて刺すべし。
▲もし腹痛はなはだしく、目眩き、死せんとするには隠白・湧泉に針して正気を付べし。
▲上脘・中脘・巨闕・不容・天枢・章門・気海・崑崙・大白・大淵・三陰交。
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杉山三部書、 病証の治療穴から。
腹痛の病状には、内関・天枢・上脘・中脘・胃兪・巨闕・梁門・石門・三陰交・三里穴を使用する。
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大便について。五行変動比較より。
リンク:http://yukkurido.jp/keiro/bkb/c102/c209/%ef%bd%83301/c402/
肝木の変動: 未消化の下痢がザーッと出る。便秘と下痢が交互にくる。
心火の変動: 緊張すると下痢になる。
脾土の変動: 便秘。軟便。下痢。 オナラをすると病状が改善する。 排便をすると病状が改善する。 便意はあるが出ない。 夜明け前に下痢をする。
肺金の変動: 何度もトイレに行く。便を出して、脱肛する。
腎水の変動: 慢性の下痢。慢性の便秘。大便が出てもスッキリしない。不安定。 お腹の裏が引きつる。一週間以上の便秘。コロコロ便。(兎便)
————————————-
腹部の状態。五行変動比較より。
リンク:http://yukkurido.jp/keiro/bkb/c102/c209/%ef%bd%83301/c410/
肝木の変動: わき腹の痛み。 卵巣の病気。 上腹部の痛み(へそより上)。 下腹部の痛み。
心火の変動: 消化不良。 清水を吐く。
脾土の変動: 腹が張ってその痛みが移動する。 下腹部の痛み。 みぞおちの痛み。 精神的ストレスから腹痛。 消化不良で清水を吐く。 子宮の病変。
肺金の変動: 便秘を伴う腹痛。 昼間の頻尿を伴う腹痛。 気魄がなくなり腹痛。
腎水の変動: 下痢を伴う腹痛。 夜間の頻尿を伴う腹痛。 しぶり腹。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
長時間労働から発病(五蔵の色体(よそおい)表:五労)
肝木の変動: 長時間、歩く(行く)。
心火の変動: 長時間、PCを視る。
脾土の変動: 長時間、座る。
肺金の変動: 長時間、 臥す(寝ている)。
腎水の変動: 長時間、立つている。
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嘔吐 ゑづき 『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例
胃虚して吐する者あり、胃寒して吐する者あり、暑に犯さるる者あり、 飲食に傷られ、気結れて、痰聚り、みなよく人をして嘔吐をなす。
【針】気海・風池・大淵・三里。【灸】胃兪・三里。
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嘔吐(おうと) からえずき の 事 杉山三部書 東洋はり医学会篇
一、胃の腑 虚したる人 、寒気暑気に冒(おか)されされ 、食に傷(やぶ)られ 、或いは気結(むすぼ)れ 、痰(たん)集りて嘔吐するなり 。
治療穴:上脘 ・ 中脘(ちゅうかん)・鳩尾 ・巨闕(こけつ)・天突 ・三の兪(肺兪)穴 。
〔解説〕
嘔吐は吐逆なり。 中焦脾胃の病なり。 人身は胃を以って主となす、胃の気が虚せば(脾胃が不健康状態になっている人 ) 食せないのみか外邪に冒され、飲食物により、或いは内因により(七情の気の結(むすぼ)れ)また、痰が集まったりして嘔吐を起こす。
◎ 嘔:えずき (ゲェッ、ゲェッと云う声 )有りて、吐く物有り。
◎ 吐:えずきはなく、吐く物有り。
◎ からえずき: えずき有りて、吐く物無し。
【原因で分けると】
1、寒嘔:寒邪によりて嘔吐する。詠は沈、緊。四肢厥冷(ししけつれい)し、飲食下らず。
2、熱嘔:暑邪により嘔吐する。 詠は数、弦。咽渇(のどかわ)く、胃熱の証。
3、食嘔:過食、或いは悪き物を食し嘔吐す。
4、気嘔:七情の気の欝滞(うつたい:汚ない物を見て吐く等 〉・精神的嘔吐。
5、痰嘔:痰が胃の入口に集まりて嘔吐す。
6、涎嘔:上の五つに血が混じり、また唾(つば)涎(よだれ)に血の混じるを云う。これは七情の内、特に憂思過度にして、経絡を損傷し出血する。
この他、妊娠悪阻、脳症、脚気、薬物中毒、車酒酔等あり。
脉: 実大は治し難く、虚細は治し易し。
治療:大概集では本文の通りであるが、
腹部の状態。五行変動比較より。
リンク:http://yukkurido.jp/keiro/bkb/c102/c209/%ef%bd%83301/c410/
肝木の変動: わき腹の痛み。 卵巣の病気。 上腹部の痛み(へそより上)。 下腹部の痛み。
心火の変動: 消化不良。 清水を吐く。
脾土の変動: 腹が張ってその痛みが移動する。 下腹部の痛み。 みぞおちの痛み。 精神的ストレスから腹痛。 消化不良で清水を吐く。 子宮の病変。
肺金の変動: 便秘を伴う腹痛。 昼間の頻尿を伴う腹痛。 気魄がなくなり腹痛。
腎水の変動: 下痢を伴う腹痛。 夜間の頻尿を伴う腹痛。 しぶり腹。
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長時間労働から発病(五蔵の色体(よそおい)表:五労)
肝木の変動: 長時間、歩く(行く)。
心火の変動: 長時間、PCを視る。
脾土の変動: 長時間、座る。
肺金の変動: 長時間、 臥す(寝ている)。
腎水の変動: 長時間、立つている。
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嘔吐 ゑづき 『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例
胃虚して吐する者あり、胃寒して吐する者あり、暑に犯さるる者あり、 飲食に傷られ、気結れて、痰聚り、みなよく人をして嘔吐をなす。
【針】気海・風池・大淵・三里。【灸】胃兪・三里。
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嘔吐(おうと) からえずき の 事 杉山三部書 東洋はり医学会篇
一、胃の腑 虚したる人 、寒気暑気に冒(おか)されされ 、食に傷(やぶ)られ 、或いは気結(むすぼ)れ 、痰(たん)集りて嘔吐するなり 。
治療穴:上脘 ・ 中脘(ちゅうかん)・鳩尾 ・巨闕(こけつ)・天突 ・三の兪(肺兪)穴 。
〔解説〕
嘔吐は吐逆なり。 中焦脾胃の病なり。 人身は胃を以って主となす、胃の気が虚せば(脾胃が不健康状態になっている人 ) 食せないのみか外邪に冒され、飲食物により、或いは内因により(七情の気の結(むすぼ)れ)また、痰が集まったりして嘔吐を起こす。
◎ 嘔:えずき (ゲェッ、ゲェッと云う声 )有りて、吐く物有り。
◎ 吐:えずきはなく、吐く物有り。
◎ からえずき: えずき有りて、吐く物無し。
【原因で分けると】
1、寒嘔:寒邪によりて嘔吐する。詠は沈、緊。四肢厥冷(ししけつれい)し、飲食下らず。
2、熱嘔:暑邪により嘔吐する。 詠は数、弦。咽渇(のどかわ)く、胃熱の証。
3、食嘔:過食、或いは悪き物を食し嘔吐す。
4、気嘔:七情の気の欝滞(うつたい:汚ない物を見て吐く等 〉・精神的嘔吐。
5、痰嘔:痰が胃の入口に集まりて嘔吐す。
6、涎嘔:上の五つに血が混じり、また唾(つば)涎(よだれ)に血の混じるを云う。これは七情の内、特に憂思過度にして、経絡を損傷し出血する。
この他、妊娠悪阻、脳症、脚気、薬物中毒、車酒酔等あり。
脉: 実大は治し難く、虚細は治し易し。
治療:大概集では本文の通りであるが、
鍼灸重宝記には、
【灸】は脾兪・腎兪・関元・復溜 ・長強 ・大腸兪 ・小腸兪 ・中脘 ・足の三里・太谿。 【針】は気海・水分・天枢。
証に従い選ぶべしとある。
【灸】は脾兪・腎兪・関元・復溜 ・長強 ・大腸兪 ・小腸兪 ・中脘 ・足の三里・太谿。 【針】は気海・水分・天枢。
証に従い選ぶべしとある。
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膈噎(かくいつ) 翻胃(ほんい) かく『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例
膈噎(かくいつ) 翻胃(ほんい) かく『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例
憂思、労気より生ず。
噎(いつ)とは、食飲くだらずして噎る也。
膈(かく)とは、喉のおくに何やらさはり、吐ども出ず、呑ども下らず。
痰欝によつて気欝す。食をそのまま吐逆す。
翻胃は、朝食する物を夕に吐し、夕に食して晨に吐するは、病ふかくして治せず。
▲天突・石関・三里・胃兪・胃脘・鬲兪・水分・気海・臆譆・胃倉。
膈噎や翻胃は、七情が主な原因となって五臓の火を動かし津液を消耗させ、そのため痰が非常に多くなって脾胃を弱らせ、 食物が消化しにくくなったためにおこる。
先ず膈や噎となり、悪化すると翻胃にまでいたる。
膈とは朝食べたものを夕方になると吐き、夕方に食べたものは朝になると吐いてしまう病気のことであり、
噎とは食べたものが胃に収まることなくすぐ吐き出す病気である。
膈噎を病むものの便が羊や兎の糞のようにコロコロであれば死ぬ危険がある。
中脘は膈に用い、三里は噎に用いる。天突は膈にも噎にも用いる。太白や肺兪も用いるとよい。
噎(いつ)とは、食飲くだらずして噎る也。
膈(かく)とは、喉のおくに何やらさはり、吐ども出ず、呑ども下らず。
痰欝によつて気欝す。食をそのまま吐逆す。
翻胃は、朝食する物を夕に吐し、夕に食して晨に吐するは、病ふかくして治せず。
▲天突・石関・三里・胃兪・胃脘・鬲兪・水分・気海・臆譆・胃倉。
膈噎や翻胃は、七情が主な原因となって五臓の火を動かし津液を消耗させ、そのため痰が非常に多くなって脾胃を弱らせ、 食物が消化しにくくなったためにおこる。
先ず膈や噎となり、悪化すると翻胃にまでいたる。
膈とは朝食べたものを夕方になると吐き、夕方に食べたものは朝になると吐いてしまう病気のことであり、
噎とは食べたものが胃に収まることなくすぐ吐き出す病気である。
膈噎を病むものの便が羊や兎の糞のようにコロコロであれば死ぬ危険がある。
中脘は膈に用い、三里は噎に用いる。天突は膈にも噎にも用いる。太白や肺兪も用いるとよい。
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鍼灸重宝記 小野文恵 解説より
膈(かく)とは食物が口より胸膈を通るとき胸部に渋り滞りて胃まで容るることを得ずして、胸膈より吐き返すのである。
これに思膈、憂膈、喜膈、怒膈、悲膈の五種ありと云われる。
噎(いつ)とは食飲を呑み込まんとすれば、むせてのみこまれぬと云う、これは火邪が炎上して胃脘を乾すによると云う。
憂思気労食の各噎の五種ありと。
本文にては病因は憂思労気の内傷、その症は上に記したると意である。
痰と気の鬱とも云う。
翻胃(ほんい)は一応食せるものを半日にして吐すとある 。
他書によれば翻胃とは腎中冷へ極まるとき、食飲胃に入るとも、消化吸収を行うことを得ず、然りとて食飲をそのまま胃中に留め置くことも出来ないので、食せしものをそのまま吐き出すので翻胃と名づく云うのである。
而してこれは気及び痰の鬱結により始ると。
噎、膈、翻胃と云ふ順序的の経過である故に翻胃は治し難しとある。
黄帝内経には上膈・下膈と呼ぶとある。
膈(かく)とは食物が口より胸膈を通るとき胸部に渋り滞りて胃まで容るることを得ずして、胸膈より吐き返すのである。
これに思膈、憂膈、喜膈、怒膈、悲膈の五種ありと云われる。
噎(いつ)とは食飲を呑み込まんとすれば、むせてのみこまれぬと云う、これは火邪が炎上して胃脘を乾すによると云う。
憂思気労食の各噎の五種ありと。
本文にては病因は憂思労気の内傷、その症は上に記したると意である。
痰と気の鬱とも云う。
翻胃(ほんい)は一応食せるものを半日にして吐すとある 。
他書によれば翻胃とは腎中冷へ極まるとき、食飲胃に入るとも、消化吸収を行うことを得ず、然りとて食飲をそのまま胃中に留め置くことも出来ないので、食せしものをそのまま吐き出すので翻胃と名づく云うのである。
而してこれは気及び痰の鬱結により始ると。
噎、膈、翻胃と云ふ順序的の経過である故に翻胃は治し難しとある。
黄帝内経には上膈・下膈と呼ぶとある。
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翻胃(ほんい) 膈の事 杉山三部書 東洋はり医学会篇
夫れ(それ:それぞれ)膈噎(かくいつ)、翻胃(ほんい)の病は 、七情に冒(おか)され 、 五臓の火 、動(うご)ひて身の液(うるお)ひを耗(へら)し 、痰熾(たん さかん)にして脾胃衰え、食を腐し運ぶことならずして腐と成り 、 噎となり 、 翻胃となる 。
膈は朝(あした)に喰(くい)たる物を夕(ゆう)べに吐き、夕べに喰(くい)たる物を朝に吐く。
噎は喉(のど)より返るなり 、羊の糞の如くなるを為(する)ものは死す。
中脘(ちゅうかん)穴: 吐くによし 。
三里穴 :噎食(いつしょく)降(くだ)らざるによ し 。
天突穴: 膈噎(かくいつ)よ し 。
太白・肺兪。
〔解説〕
膈、噎、翻胃の三者共に吐く事であり、精神的圧迫、動揺により相火が燃え過ぎ(実する) 体内の水分が乾き、痰(津液が濃くなり結ぼれ鬱滞したもの )が盛んになり脾胃塞(ふさ)がり、為に脾胃が虚冷し(衰え)食物を消化し、下へ運ぶ事、が出来なくなり、噎をなし、膈となり、翻胃を起こすものである。
黄帝内経・素問・霊枢(こうていだいけい・そもん・れいすう)では上膈(噎、膈)下膈(翻胃)といっている。
1、噎(いつ):軽い症状で、咽でむせて吐く(嚥下困難)優噎、思噎、気噎、労噎、食噎の五つがある。
2、膈(かく):中等度の症状で、食後三、四時間から半日位で吐く (七情の気の傷れ、精神的動揺で食物が胃にお治まらない) 、努膈、憂膈、悲膈、驚膈、恐膈の五つがある。羊の糞の様な物を吐く時は死す。
3、翻胃(ほんい):重い症状で、食後半日から一、二日間位で吐く、食物が胃に入り、しばらくして吐く。【 胃が翻(ひるが)える。】
治療:本文中の、中脘穴:吐くによし、は 膈(かく)に用 いてよし。
鍼灸重宝記』針灸諸病の治例では、天突・石関・三里・胃兪・胃脘・膈(かく)鬲兪・水分・気海・臆譆・胃倉。なり。
夫れ(それ:それぞれ)膈噎(かくいつ)、翻胃(ほんい)の病は 、七情に冒(おか)され 、 五臓の火 、動(うご)ひて身の液(うるお)ひを耗(へら)し 、痰熾(たん さかん)にして脾胃衰え、食を腐し運ぶことならずして腐と成り 、 噎となり 、 翻胃となる 。
膈は朝(あした)に喰(くい)たる物を夕(ゆう)べに吐き、夕べに喰(くい)たる物を朝に吐く。
噎は喉(のど)より返るなり 、羊の糞の如くなるを為(する)ものは死す。
中脘(ちゅうかん)穴: 吐くによし 。
三里穴 :噎食(いつしょく)降(くだ)らざるによ し 。
天突穴: 膈噎(かくいつ)よ し 。
太白・肺兪。
〔解説〕
膈、噎、翻胃の三者共に吐く事であり、精神的圧迫、動揺により相火が燃え過ぎ(実する) 体内の水分が乾き、痰(津液が濃くなり結ぼれ鬱滞したもの )が盛んになり脾胃塞(ふさ)がり、為に脾胃が虚冷し(衰え)食物を消化し、下へ運ぶ事、が出来なくなり、噎をなし、膈となり、翻胃を起こすものである。
黄帝内経・素問・霊枢(こうていだいけい・そもん・れいすう)では上膈(噎、膈)下膈(翻胃)といっている。
1、噎(いつ):軽い症状で、咽でむせて吐く(嚥下困難)優噎、思噎、気噎、労噎、食噎の五つがある。
2、膈(かく):中等度の症状で、食後三、四時間から半日位で吐く (七情の気の傷れ、精神的動揺で食物が胃にお治まらない) 、努膈、憂膈、悲膈、驚膈、恐膈の五つがある。羊の糞の様な物を吐く時は死す。
3、翻胃(ほんい):重い症状で、食後半日から一、二日間位で吐く、食物が胃に入り、しばらくして吐く。【 胃が翻(ひるが)える。】
治療:本文中の、中脘穴:吐くによし、は 膈(かく)に用 いてよし。
鍼灸重宝記』針灸諸病の治例では、天突・石関・三里・胃兪・胃脘・膈(かく)鬲兪・水分・気海・臆譆・胃倉。なり。
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