七、痢病

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   七、痢病(りびょう)

                              小項目 番号 c327

  • 南北経驗醫方大成による病証論 第七、痢病(りびょう )
  • 南北経驗醫方大成による病証論・井上恵理先生・講義録を参考に構成しています。。
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 第七、痢病 の原文

今人、患痢者、古方謂之滞下是也。
得病之由、
多因脾胃不和、飲食過度。 停積干腸胃之間、不得剋化。
而又爲風寒暑湿之氣干之、故爲此疾。
傷熱下痢則赤、
傷冷則白、
傷風純下清血。
傷湿則下、如豆羹汁。
冷熱交併、赤白兼下。
又有如魚脳髄者。
治法
當先用通利之薬、疎滌臓腑積滞、
然後辧、
以冷熱風湿之證、用薬調治。
熱赤者清之
冷白者温之。
風湿者分利之。
冷熱相兼者温涼以整之。
仍須、先調助胃氣。
切不可驟用、罌栗穀、詞子、之薬。止澁之。
便停滞不能疎泄、未有不致危者。
几下痢之脉。宜微小。
不宜浮洪。
宜滑大。
不宜弦急。
身寒則生。
身熱則死。
間有瘧痢兼者。
惟當分利陰陽理脾助胃。
因毒物致痢者。宜解之。
不可一概而論也。


以上で、第七、痢病の原文を終わります。
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第七、痢病 の 原文と訳文読み(カタカナ)。

今人、患痢者、古方謂之滞下是也。
イマノヒト リヲワズラウモノ コホウニ コレヲ リゲトイウ
得病之由、
ヤマイヲ ウル ヨシハ
多因脾胃不和、飲食過度。 停積干腸胃之間、不得剋化。
オオクハ ヒイ ワセズ インショク カドスルニヨッテ チョウイノ アイイダニ テイシャクシテ コッカ スルコトヲ エズ
而又爲風寒暑湿之氣干之、故爲此疾。
シカシテ マタ フウカンショシツノ キノタメニ コレニ オカサレル ユエニ コノシツヲ ナス
傷熱下痢則赤、
ネツニ ヤブラルレバ リヲクダスコト スナワチ アカシ
傷冷則白、
レイニ ヤブラルレバ スナワチ シロシ
傷風純下清血。
カゼニ ヤブラルレバ モッパラ セイケツヲ クダス
傷湿則下、如豆羹汁。
シツニ ヤブラルレバ スナワチ ツコウシュウ ノ ゴトキ モノヲ クダス
冷熱交併、赤白兼下。
レイネツ コモゴモニ アワスレバ シャクハク カネ クダス
又有如魚脳髄者。
マタ ギョショウノ ゴトク ナルモノ アリ
治法
チホウハ
當先用通利之薬、疎滌臓腑積滞、
マサニ マズ ツウリノ クスリヲ モチイテ ゾウフノ シャクタイヲ ソジョウ シテ
然後辧、
シカシテ ノチニ ベンズルニ
以冷熱風湿之證、用薬調治。
レイ ネツ フウ シツノ ショウヲモッテ クスリヲ モッテ チョウワスベシ
熱赤者清之
アカキモノハ コレヲ キヨクシ
冷白者温之。
シロキ モノハ コレヲ アタタメ
風湿者分利之。
フウ シツノ モノハ コレヲブンリシ
冷熱相兼者温涼以整之。
レイネツ アイカネル モノハ オンリョウヲ モッテ コレヲ トトノエヨ
仍須、先調助胃氣。
ナオ スベカラク マズ イノキヲ チョウジョスベシ
切不可驟用、罌栗穀、詞子、之薬。止澁之。
セツニ アワテテ オウゾク カシ ノクスリヲモチイテ コレヲシジョウ スハベカラズ
便停滞不能疎泄、未有不致危者。
スナワチ テイタイシテ ソセツスルコトアタワザレバ イマダ キチ ササザルモノアラズ
几下痢之脉。宜微小。
オヨソ ゲリノ ミャクハ ビショウニ ヨロシ
不宜浮洪。
フ コウ ニ ヨロシ カラズ
宜滑大。
クワツ ダイ ニ ヨロシ
不宜弦急。
ゲン キュウ ニ ヨロシ
身寒則生。
ミ ヒユル トキハ イク
身熱則死。
ミ ネツ スル トキハ シス
間有瘧痢兼者。
ママ ギャクリ カネオコル モノアリ
惟當分利陰陽理脾助胃。
タダマサニ インヨウヲ ブンリシ ヒヲ リシテ イヲ タスクベシ
因毒物致痢者。宜解之。
ドクブツニ ヨッテ リヲ イタスモノハ コレヲ カイスベシ
不可一概而論也。
イチガイニシテ ロンズベカザルナリ
 ・
以上で、第七、痢病 の 原文と訳文読み(カタカナ)を終わります。
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南北経驗醫方大成、第七、痢病 の訳文(読み下し文)

 今の人、痢を患う者、古方に、之(これ)を滞下〔タイゲ〕という。
これなり。病を得るの由(よし)は、多くは脾胃和せず、飲食過度するによって、腸胃の間に停積して、剋化〔コッカ〕することを得ず。
しかして、又、風寒暑湿の氣の為に之に、これに犯さる、故に此の疾を成す。
熱に傷〔やぶ〕らるれば、痢を下す事、則ち赤し、
冷に傷らるれば、則ち白し、
風に傷らるれば、もっぱら清血を下す。
湿に傷らるれば、則ち豆羹〔トウコウ〕汁の如きものを下す。
冷熱、交々に併(あわ)すれば、 赤白、兼下す。
 治法は、
まず通利の薬を用いて臓腑の積滞を疎滌(そじょう)して、
然(しか)して後に弁ずるに、
冷熱風 湿の症を以て、薬を用いて調和すべし、
然て赤き物は、これを清くし、
冷えて白き物は、これを温め、
風 湿の物は、これを分利し、
冷熱、相兼ねる物は、温涼をもって、これを整えよ。
よって、すべからく、まず胃 の気をを調助すべし、
切に、あわてて罌栗穀(おうぞくこく)、詞子(かし)、の薬を用いて、そしてこれを止澁(しじょう)、すべからず。
すなわち停滞して疎泄すること能わざれば、
未だ危致ささざる物あらず、
およそ下 痢の脉は微小に宜(よろ)し、
浮洪に宜しからず、
滑大に宜し、
弦急に宜しからず、
身冷ゆる時は生く、
身 熱する時は死す。
間々(まま)、瘧痢兼ね起こる物あり、
惟(ただ)、まさに陰陽を分利し、脾を利して、胃を助く べし、
毒物によって痢を致す物は、これを解すべし、
一概にして論ずべからざる也。
¨
以上、第七、痢病の訳文を終わります。
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南北経驗醫方大成、第七、痢病 の解説文

                    山口一誠のオリジナル文章
  • 中国の明(みん、1368年-1644年)の時代の医学書「醫書大全」に下痢症についての東洋医学の見解が記載されています。
  • 下痢症の起こる理由について説明します。
  • 下痢症が起こる原因は、食べ過ぎ、飲み過ぎの暴飲暴食により、脾〔膵臓〕と胃が調和しなくなり食物が腸と胃の間にたまって消化する事が出来ない為です。
  • また、暴飲暴食をしている人が風寒暑湿の外邪に晒〔さら〕されて、さらに酷い下痢症を起こすことになります。
  • 暴飲暴食をしている人が外邪〔1風邪・2寒邪:冷邪・3暑邪・4湿邪・5燥邪・6火邪:熱邪〕に侵(おか)されたときの、 六種類の便の状態について説明します。
    1.熱邪に侵される時は、赤い下痢便になります。
    2.冷邪(寒邪)に侵される時は、白い下痢便になります。
    3.風邪に侵される時は、清血がでます。
    4.湿邪に侵される時は、消化不良の下痢便になります。
    5.冷えると身体は熱を出す作用があり、熱を出すと冷え様とするので、白い便が出たり、赤い便が出たりします。
    6.この他に、子供の下痢便では、キョロキョロした寒天状の消化不良の下痢便になる事があります。
  • 下痢症の治療方法について説明します。
  • 漢方薬での治療方法としては、
    まず初めに下剤の漢方薬を処方します。
    これは、臓腑に滞っている飲食物を下してしまう事が目的です。
    その後で冷熱風湿の症状を診て症状に適した漢方薬をあたえます。
  • 鍼灸での治療方法としては、
    虚証を中心に補法を行ない経絡の調和が主になります。
    胃腸カタルの泄瀉(つつくだしの事で、ドッと出て気持ちの良い下痢。嘔吐、吐き気を伴う場合もあり)には脾虚証の治療方法が多いです。
    大腸カタルの痢病(渋り腹の事で、裏急後重があり、何回も便所に行きたがる下痢)には腎虚証の治療方法が多いです。
    子供の〈赤痢様〉の下痢で熱がある場合は、
    皮膚鍼、脾経、胃経、心包経、三焦経、次に腹と背中を軽く皮膚鍼、脉が実の時は、金門とか三間の瀉血もよい。
    そうすると一晩で熱も下痢も治まる。
    中毒して下痢もなく発疹するジンマシンの様な物には、裏内庭の灸がよく効く。
  • 症状別の漢方薬の治療方法について。
  • 1.熱邪に侵される時は、冷やす漢方薬を処方します。
    2.冷邪(寒邪)に侵される時は、温める漢方薬を処方します。
    3.風邪と湿邪に相兼ね侵される時は、これを分利する漢方薬を処方します。
    4.冷熱相兼ねる時は、温涼の漢方薬を処方しこれを整えます。
  • 下痢症を治す漢方薬の注意点として、
    胃の気を整える事を第一として、慌てて下痢を止める漢方薬を処方してないけません。
    下痢を止めた為に出でる物が出なくなり非常に危険な状態になります。
    下痢を止めようとせず出る物は出した方が良いのです。
  • 鍼灸での治療方法としては、
    風邪・冷邪・湿邪による下痢症には、これは温めるのが一番良く、大人は知熱灸、子供は温湿布がよいです。
    大便をたくさん出して治します。
  • 下痢症の脉状について説明します。
    下痢症が改善しやすい脉状は、
    微小(びしょう)の脉:微(かす)かに小さい脉状です。
    滑大(かつだい)の脉:滑脉は実脉のようで虚脉、そして大脉は大きいけれど力がない脉状です。
    これらの脉状の患者は改善効果が早く出ます。
    下痢症が改善しにくい脉状は、
    浮洪の脉:浮いて洪水の様な脉状です。
    弦急の脉:ピンと張って速い脉状です。
    これらの脉状の患者の治療は難しいです。
  • 下痢症の患者で、
    身体が冷えている人は改善して生きることができます。
    熱が下がらない時は死にます。
  • 時には、瘧(ぎゃく)の病状と下痢症を兼ねるものがあります。
    患者の陰陽虚実をよく診断して、脾を整え胃の働きをよくする治療をしなさい。
    そして明らかに毒物による下痢症の時は解毒の処置をします。
    下痢症は複雑であり、風邪によって起こる胃腸性の下痢などと色々な症状があります。
    東洋医学の診断治療法に精通して正しい治療をしましょう。
以上、第七、痢病の解説を終わります。
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第七、痢病 の詳細解説コーナー

第七、痢病 の原文・訳文・解説

原文:今人、患痢者、古方謂之滞下是也。
訳文:今の人、痢を患う者、古方に、之(これ)を滞下〔タイゲ〕という。
解説:
中国の明(みん、1368年-1644年)の時代の医学書「醫書大全」に下痢症についての東洋医学の見解が記載されています。
¨
痢病:井上恵理先生の講義解説より】 〈 痢病とは 〉 P75下段、
この痢という症は、古典では瀉利〔シャリ〕、又は泄瀉〔セシャ〕という言葉を使っています。
痢病は私達の治療室でたくさん診るので、良く覚えておけばよろしいと思います。
「今の人」この本が出来た時代、六百年前の事です。
「痢を患う者、古方に、滞下という」古方はそれ以前の本。
現代では滞下というのは女の人の腰気(こしけ)〔おりもの〕の事で、痢病を滞下とは云っていませんが、
それ以前の古典、黄帝内経等では、〔痢病に〕滞下を使っています。
¨
〈 二つの痢病 〉P76上段 ~ P76下段より。
下痢の事も後世になり、明の時代、我国では元禄時代に、痢の事を痢病と泄瀉の二つに分けています。
泄瀉はつつくだしの事で、ドッと出て気持ちの良いもの、現代医学でいえば、胃腸カタルが泄瀉です。
痢病は、渋り腹の事で、下るほど気持ちが悪いものです。現代医学でいえば、大腸カタルが痢病です。
〔痢病の症状は〕裏急後重(お尻が下へさがる感じ、肛門の抜けるよ うな感じ)があり、何回も便所に行きたがるのが痢病です。
現代では下痢といって同じにしているが、臨床において、治療法が違ってくるのです。
原文:得病之由、
訳文:これなり。病を得るの由(よし)は、
解説:
下痢症の起こる理由について説明します。
¨
痢病:井上恵理先生の講義解説より】 〈 病の起こる理由 〉P76下段より。¨
「病を得るの由は」病の起こる理由は、多くは、
¨
原文:多因脾胃不和、飲食過度。 停積干腸胃之間、不得剋化。
訳文:多くは脾胃和せず、飲食過度するによって、腸胃の間に停積して、剋化〔コッカ〕することを得ず。
解説:
下痢症が起こる原因は、食べ過ぎ、飲み過ぎの暴飲暴食により、脾〔膵臓〕と胃が調和しなくなり食物が腸と胃の間にたまって消化する事が出来ない為です。
¨
痢病:井上恵理先生の講義解説より
「脾と胃が和せず」脾と胃が調和しない為か、あるいは飲 食過度の為に起こる
「過度するによって、腸胃の間」食べた物が腸と胃の間に
「停積」たまって
「剋化する ことを得ず」消化する事が出来ない。
原文:而又爲風寒暑湿之氣干之、故爲此疾。
訳文:しかして、又、風寒暑湿の氣の為に之に、これに犯さる、故に此の疾を成す。
解説:
また、暴飲暴食をしている人が風寒暑湿の外邪に晒〔さら〕されて、さらに酷い下痢症を起こすことになります。
¨
痢病:井上恵理先生の講義解説より
そうゆう状態に風寒暑湿の外因に犯され痢病になるのです。
いいかえれば痢病の内因は飲食労倦であるという事です。
いわいる
内因の七情〔怒、喜、憂、思、悲、驚、恐〕の気に犯された、
いわいる脾胃の不調和、
それから飲食の邪が内因として起こった所へ、
風寒暑湿の外邪に犯された為、痢病になるのです。
食べ物を、食べないのも良くないが、食べ過ぎるのも良くない。
「脾胃和せず」という事は、現代医学的にいえば、心因性の胃炎が起こっている。
頭を使う人が食べ過ぎるのです。栄養の取り過ぎです。
食べる人は、身体を使う人であるのに、現代は逆になり、どちらも病気になる様に出来ているのです。
原文:
傷熱下痢則赤、
傷冷則白、
傷風純下清血。
傷湿則下、如豆羹汁。
冷熱交併、赤白兼下。
又有如魚脳髄者。
訳文:
熱に傷〔やぶ〕らるれば、痢を下す事、則ち赤し、
冷に傷らるれば、則ち白し、
風に傷らるれば、もっぱら清血を下す。
湿に傷らるれば、則ち豆羹〔トウコウ〕汁の如きものを下す。
冷熱、交々に併(あわ)すれば、 赤白、兼下す。
魚の脳髄の如くなる者あり。
解説:
暴飲暴食をしている人が外邪〔1風邪・2寒邪:冷邪・3暑邪・4湿邪・5燥邪・6火邪:熱邪〕に侵(おか)されたときの、
六種類の便の状態について説明します。
1.熱邪に侵される時は、赤い下痢便になります。
2.冷邪(寒邪)に侵される時は、白い下痢便になります。
3.風邪に侵される時は、清血がでます。
4.湿邪に侵される時は、消化不良の下痢便になります。
5.冷えると身体は熱を出す作用があり、熱を出すと冷え様とするので、白い便が出たり、赤い便が出たりします。
6.この他に、子供の下痢便では、キョロキョロした寒天状の消化不良の下痢便になる事があります。
¨
痢病:井上恵理先生の講義解説より】 〈 病の状態 〉
「故に此の疾を成す」病気の状態は、
「熱に傷〔やぶ〕らるれば、痢を下す事、則ち赤し、」
熱に犯される時は、赤い便が出る。血便ではない。便は黄色を貴〔とうと〕しとする。
「冷に傷〔やぶ〕らる時は、白い便がでる。風にに傷られた時は初めて清血を下す。」血を下す様になる。
「湿に傷らる時は、下す事、豆羹汁の如し」(豆腐を作る前の粕が混じった状態)の消化不良の下痢便を下す。 白も消化不良、
「冷熱、交々に併すれば」熱と冷えが交互に来る。
冷えると身体は熱を出す作用があり、熱を出すと冷え様とするので、白い便が出たり、赤い便が出たりする。
「魚の脳髄の如くなる者あり。」(子供がよく出す、キョロキョロした寒天状の消化不良を下す。)
¨
解説捕捉:
人体に害を与える外邪は6種類あります。
〔1風邪・2寒邪:冷邪・3暑邪・4湿邪・5燥邪・6火邪:熱邪〕です。
原文:治法
訳文:治法は
解説:
下痢症の治療方法について説明します。
原文:當先用通利之薬、疎滌臓腑積滞、然後辧、以冷熱風湿之證、用薬調治。
訳文:まず通利の薬を用いて臓腑の積滞を疎滌(そじょう)して、然(しか)して後に弁ずるに、冷熱風 湿の症を以て、薬を用いて調和すべし、
解説1:
漢方薬での治療方法としては、
まず初めに下剤の漢方薬を処方します。
これは、臓腑に滞っている飲食物を下してしまう事が目的です。
その後で冷熱風湿の症状を診て症状に適した漢方薬をあたえます。
¨
解説2:
鍼灸での治療方法としては、
虚証を中心に補法を行ない経絡の調和が主になります。
胃腸カタルの泄瀉(つつくだしの事で、ドッと出て気持ちの良い下痢。嘔吐、吐き気を伴う場合もあり)には脾虚証の治療方法が多いです。
大腸カタルの痢病(渋り腹の事で、裏急後重があり、何回も便所に行きたがる下痢)には腎虚証の治療方法が多いです。
子供の〈赤痢様〉の下痢で熱がある場合は、
皮膚鍼、脾経、胃経、心包経、三焦経、次に腹と背中を軽く皮膚鍼、脉が実の時は、金門とか三間の瀉血もよい。
そうすると一晩で熱も下痢も治まる。
中毒して下痢もなく発疹するジンマシンの様な物には、裏内庭の灸がよく効く。
¨
痢病:井上恵理先生の講義解説より
これは薬ですが、
「通利の薬」まず下剤を用いる
「臓腑の積滞を疎鱗すべし」臓腑に滞っている飲食物を下してしまい、
その後で「弁ずる」考える。
冷熱風湿の症状を診て薬を調治するのがよい
¨
痢病:井上恵理先生の講義解説より】 〈 鍼の治療 〉 P77下段より。
まず痢病の症は、脉が虚しているほど治りやすい。
実する脉は危険で、手をつけないほうが利口です。
通利の薬を用いる代わりに、虚証を中心に補法を行なう。
私の経験からいえば、
痢病というのは、腎虚証が多い。
それから泄瀉は脾虚証が多い。
腎虚か脾虚によって決めることが出来る。
その証に合ったものは治しやすい。
この泄瀉の方には嘔吐、吐き気を伴う。
それから冷熱風湿の証は、薬 用いる時、重要だが、
我々、経絡の方では、経絡の調和が主になるのです。
¨
 二つの痢病 〉P76上段 ~ P76下段より。
下痢の事も後世になり、明の時代、我国では元禄時代に、痢の事を痢病と泄瀉の二つに分けています。
泄瀉はつつくだしの事で、ドッと出て気持ちの良いもの、現代医学でいえば、胃腸カタルが泄瀉です。
痢病は、渋り腹の事で、下るほど気持ちが悪いものです。現代医学でいえば、大腸カタルが痢病です。
〔痢病の症状は〕裏急後重(お尻が下へさがる感じ、肛門の抜けるよ うな感じ)があり、何回も便所に行きたがるのが痢病です。
現代では下痢といって同じにしているが、臨床において、治療法が違ってくるのです。
赤痢〉 p77-
これは伝染病の一つで、治療してはいけない物ですが、これも痢病の一つです。
清血を下す、或いは赤い便が出る、熱症を起こす。
その為、脉が沈んでなく非常に危険である。
ところが、初めから熱が出るのでなく、
私達が往診で扱った病人ですが、
熱があり、下痢がある。
医者で、疫痢らしいので検査して菌が出れば隔離するという事で頼まれた。
子供ですから皮膚鍼、脾経、胃経、心包経、三焦経、次に腹と背中を軽く皮膚鍼、脉が実の時は、金門とか三間の瀉血もよい。
そうすると一晩で熱も下痢も治まる。
疫痢という事で医者が来るが、熱も下痢もないので、もう少し待って見ようという事で良くなる。
しかし赤痢とか疫痢とか名前がついたら治療してはいけません。
治療していけないのでなく法律上の問題です。
¨
参考資料
日本において、細菌性赤痢は、
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の三類感染症に指定されており、感染が確認されたら医師は速やかに保健所に報告する義務がある。
かつては二類感染症に指定されており、拡散を防止するために状況に応じて隔離入院させる必要があったが、
2006年(平成18年)12月8日の法改正と同時に三類感染症に変更され、強制隔離措置は廃止された。
¨
下痢と中毒〉 p78-
中毒して下痢する場合がある。
我々の体が正常であれば、悪い物は鼻について食べないのだが、食べるからいけないのです。
食べ物は、口と鼻につく、正常な場合は吐く、これが一番軽く、次が下痢で生理的作用です。
下痢であれば中毒の場合も、おもしろいほど病気は治るのです。
中毒して下痢もなく発疹するジンマシンの様な物も裏内庭の灸がよく効く。
俯せにして、足の第二指の裏側の一番高い所へ墨をつけ、指を引っ張りながら曲げ墨のついた所に、一点灸の半米粒の知熱灸で熱くなる迄、
又、 一回食傷りして、それが食べれない人も裏内庭が案外、熱くない。
もう一つはあた食傷りの場合、傷(あた)った物を黒焼にして粉にして飲むと冶る。
水の場合は和紙に侵して黒焼にする。慢性の中毒症によい。
¨
原文:
熱赤者清之
冷白者温之。
風湿者分利之。
冷熱相兼者温涼以整之。
仍須、先調助胃氣。
切不可驟用、罌栗穀、詞子、之薬。止澁之。
便停滞不能疎泄、未有不致危者。
訳文:
然て赤き物は、これを清くし、
冷えて白き物は、これを温め、
風 湿の物は、これを分利し、
冷熱、相兼ねる物は、温涼をもって、これを整えよ。
よって、すべからく、まず胃 の気をを調助すべし、
切に、あわてて罌栗穀(おうぞくこく)、詞子(かし)、の薬を用いて、そしてこれを止澁(しじょう)、すべからず。
すなわち停滞して疎泄すること能わざれば、
未だ危致ささざる物あらず、
解説:
症状別の漢方薬の治療方法について。
1.熱邪に侵される時は、冷やす漢方薬を処方します。
2.冷邪(寒邪)に侵される時は、温める漢方薬を処方します。
3.風邪と湿邪に相兼ね侵される時は、これを分利する漢方薬を処方します。
4.冷熱相兼ねる時は、温涼の漢方薬を処方しこれを整えます。
下痢症を治す漢方薬の注意点として、
胃の気を整える事を第一として、慌てて下痢を止める漢方薬を処方してないけません。
下痢を止めた為に出でる物が出なくなり非常に危険な状態になります。
下痢を止めようとせず出る物は出した方が良いのです。
鍼灸での治療方法としては、
風邪・冷邪・湿邪による下痢症には、これは温めるのが一番良く、大人は知熱灸、子供は温湿布がよいです。
大便をたくさん出して治します。
¨
痢病:井上恵理先生の講義解説より】〈 下痢の治療 〉P78下段より。
「熱して赤き物は、これを涼しくし」所謂、冷藥。
「冷えて白き物は、これを温める、
風湿の物は、これを分利し、
冷熱相兼ねる物は、温涼をもって、これを整えよ」これは漢方薬の方、
だいたい子供の下痢は胃腸カタルを起し目を引きつける。
こうゆう時は温めるのが良い。
子供の患者、目ひきつけ医者をよんで、注射して熱は下がったが、腹がパンパンに張り苦しんでいる。
食べ過ぎたから、温湿布をさせ、大便がたくさん出て治った。
これは温めるのが一番良く、大人 は知熱灸、子供は温湿布がよい。
「よって、すべからく、まず胃の気を調助すべし、切に、あわてて罌栗穀( おうぞくこく)、詞子(かし)、の薬を用いて、そしてこれを止澁(しじょう)、すべからず」
慌て薬で 下痢を止める事を慎まなければいけない。
我々は下痢を止めようとせず、出る物は出した方がよい。
「即ち停滞して疎泄すること能わ ざれば、未だ危を致ささざるものあらず」
下痢を止めた為に、出でる物が出なくなり非常に危険である。
¨
原文:
几下痢之脉。宜微小。
不宜浮洪。
宜滑大。
不宜弦急。
訳文:
およそ下 痢の脉は微小に宜(よろ)し、
浮洪に宜しからず、
滑大に宜し、
弦急に宜しからず、
解説:
下痢症の脉状について説明します。
下痢症が改善しやすい脉状は、
微小(びしょう)の脉:微(かす)かに小さい脉状です。
滑大(かつだい)の脉:滑脉は実脉のようで虚脉、そして大脉は大きいけれど力がない脉状です。
これらの脉状の患者は改善効果が早く出ます。
下痢症が改善しにくい脉状は、
浮洪の脉:浮いて洪水の様な脉状です。
弦急の脉:ピンと張って速い脉状です。
これらの脉状の患者の治療は難しいです。
¨
痢病:井上恵理先生の講義解説より】〈 病気の予防 〉P78下段より。
「およそ下痢の脉は微小に宜(よろ)し、浮洪に宜しからず、滑大に宜し、弦急に宜しからず」
〔下痢の脉状は〕
微かに小さい脉がよい、
浮いて洪水の脉はよくない、
滑脉は実脉のようで虚脉、大は大きいけれど力がない、
これはよりピンと張っている脉はよくない。
原文:
身寒則生。
身熱則死。
訳文:
身冷ゆる時は生く、
身 熱する時は死す。
解説:
下痢症の患者で、
身体が冷えている人は改善して生きることができます。
熱が下がらない時は死にます。
¨
痢病:井上恵理先生の講義解説より】〈 病気の予防 〉P78下段より。
身体が冷えている人は生きる。
熱している時は死ぬ
原文:
間有瘧痢兼者。
惟當分利陰陽理脾助胃。
因毒物致痢者。宜解之。
不可一概而論也。
訳文:
間々(まま)、瘧痢兼ね起こる物あり、
惟(ただ)、まさに陰陽を分利し、脾を利して、胃を助くべし、
毒物によって痢を致す物は、これを解すべし、
一概にして論ずべからざる也。
解説:
時には、瘧(ぎゃく)の病状と下痢症を兼ねるものがあります。
患者の陰陽虚実をよく診断して、脾を整え胃の働きをよくする治療をしなさい。
そして明らかに毒物による下痢症の時は解毒の処置をします。
下痢症は複雑であり、風邪によって起こる胃腸性の下痢などと色々な症状があります。
東洋医学の診断治療法に精通して正しい治療をしましょう。
¨
解説捕捉:
瘧(ぎゃく)の病状:
1日とか2日おきに周期的に悪寒戦慄と発熱を繰り返すという特徴のある病状のこと。
¨
痢病:井上恵理先生の講義解説より】〈 病気の予防 〉P78下段より。
「間々」時には
「瘧痢、兼ね作(おこ)る物あり」瘧痢によって起こる病気がある。
「惟(ただ)、まさに陰陽を分利し、脾を利して、胃を助くべし、毒物によって痢を致す物は、宜しくこれを解すべし」
必ずしも下痢だけで扱えない物もある。
脾を補って、胃を助けるようにする。
毒を解くようにする。
「一概にして論ずべからず」
一通りに考えず、痢病は複雑であり、色々な症状があり、気をつけなければいけない。
風邪によって起こる胃腸性の下痢がある。
今の医学では、風邪が解からず、胃腸だけ言ってるが、そういうと、みんなが解かつた様な気になるのです。
以上、第七、痢病 の原文・訳文・解説 をおわります。
—————————————

【南北経驗醫方大成、第七、痢病:井上恵理先生の講義解説より】

   〔 〕内は山口一誠の文字です。
¨
  P75上段
痢というのは、痢病〔リビョウ〕といわれるもので、今でいえば下痢の事です。
〔訳文〕 P75上段
『 今の人、痢を患う者、古方に、之(これ)を滞下〔タイゲ〕という。
これなり。病を得るの由(よし)は、多くは脾胃和せず、飲食過度するによって、腸胃の間に停積して、剋化〔コッカ〕することを得ず。
しかして、又、風寒暑湿の氣の為に之に、これに犯さる、故に此の疾を成す。
熱に傷〔やぶ〕らるれば、痢を下す事、則ち赤し、
冷に傷らるれば、則ち白し、
風に傷らるれば、もっぱら清血を下す。
湿に傷らるれば、則ち豆羹〔トウコウ〕汁の如きものを下す。
冷熱、交々に併(あわ)すれば、 赤白、兼下す。
魚の脳髄の如くなる者あり。』
〔訳文〕 p77-
『 治法は、
まず通利の薬を用いて臓腑の積滞を疎滌(そじょう)して、
然(しか)して後に弁ずるに、
冷熱風 湿の症を以て、薬を用いて調和すべし、
然て赤き物は、これを清くし、
冷えて白き物は、これを温め、
風 湿の物は、これを分利し、
冷熱、相兼ねる物は、温涼をもって、これを整えよ。
よって、すべからく、まず胃 の気をを調助すべし、
切に、あわてて罌栗穀(おうぞくこく)、詞子(かし)、の薬を用いて、そしてこれを止澁(しじょう)、すべからず。
すなわち停滞して疎泄すること能わざれば、
未だ危致ささざる物あらず、
およそ下 痢の脉は微小に宜(よろ)し、
浮洪に宜しからず、
滑大に宜し、
弦急に宜しからず、
身冷ゆる時は生く、
身 熱する時は死す。
間々(まま)、瘧痢兼ね起こる物あり、
惟(ただ)、まさに陰陽を分利し、脾を利して、胃を助く べし、
毒物によって痢を致す物は、これを解すべし、
一概にして論ずべからざる也。 』
¨
〔言葉の意味〕
〖豆〗 トウ・ズ(ヅ)・まめ
〖羹〗(音読み)「コウ」「カン」(訓読み)「あつもの」意味:あつもの。肉と野菜を入れて煮た吸い物。 「羹湯(コウトウ)」とも呼ぶ。
¨
〈 痢病とは 〉 P75下段、
この痢という症は、古典では瀉利〔シャリ〕、又は泄瀉〔セシャ〕という言葉を使っています。
痢病は私達の治療室でたくさん診るので、良く覚えておけばよろしいと思います。
「今の人」この本が出来た時代、六百年前の事です。
「痢を患う者、古方に、滞下という」古方はそれ以前の本。
現代では滞下というのは女の人の腰気(こしけ)〔おりもの〕の事で、痢病を滞下とは云っていませんが、
それ以前の古典、黄帝内経等では、〔痢病に〕滞下を使っています。
¨
〈古典の読み方〉 P75下段、
古典を読む時、大事な事は、古方にあるものを、今の考えで理解すると間違った解釈をする事があります。
最近ある人が、古典を読むのには、古字を知らなくてはいけない。
文字には、 一つ一つ意味があり発生、起源からたずね、いいかげんな現代の解釈で古字を解明するのは間違いだといつています。
なるほど、そうかもしれませんが、ところが、文字とか言葉というのは時代によって、同じ言葉でも違った意味に使われる事が多いのです。
例えば、晒(さら)すと泊〔とま〕まるですが、晒すは日へんに西と書く、泊まるは、さんずいに自と書く、これは間違って使われていると言われています。
日が西に傾けば、さらすはおかしい、これは「とまる」です。
さんずいの水で白は、「とまる」はおかしく、これは「さらす」です。
そういう風に文字というのは、時代によつて変ってくるのです。
内経は、臨床の解釈本ですから、その時代の人が読めば解かるのですが、今では、内経の解釈本の「類経」を解説し、それを我々が読んで解釈しているのです。時代が、そうしているのです。
古典を読む場合、注意する事は、そういう事です。
この様に、滞下を、腰気と読んだら、意味が解からなくなります。
これは下痢の事です。
¨
〈 二つの痢病 〉P76上段 ~ P76下段より。
下痢の事も後世になり、明の時代、我国では元禄時代に、痢の事を痢病と泄瀉の二つに分けています。
泄瀉はつつくだしの事で、ドッと出て気持ちの良いもの、現代医学でいえば、胃腸カタルが泄瀉です。
痢病は、渋り腹の事で、下るほど気持ちが悪いものです。現代医学でいえば、大腸カタルが痢病です。
〔痢病の症状は〕裏急後重(お尻が下へさがる感じ、肛門の抜けるよ うな感じ)があり、何回も便所に行きたがるのが痢病です。
現代では下痢といって同じにしているが、臨床において、治療法が違ってくるのです。
¨
〈 病の起こる理由 〉P76下段より。
「病を得るの由は」病の起こる理由は、多くは、
「脾と胃が和せず」脾と胃が調和しない為か、あるいは飲 食過度の為に起こる
「過度するによって、腸胃の間」食べた物が腸と胃の間に
「停積」たまって
「剋化する ことを得ず」消化する事が出来ない。
そうゆう状態に風寒暑湿の外因に犯され痢病になるのです。
いいかえれば痢病の内因は飲食労倦であるという事です。
いわいる
内因の七情〔怒、喜、憂、思、悲、驚、恐〕の気に犯された、
いわいる脾胃の不調和、
それから飲食の邪が内因として起こった所へ、
風寒暑湿の外邪に犯された為、痢病になるのです。
食べ物を、食べないのも良くないが、食べ過ぎるのも良くない。
「脾胃和せず」という事は、現代医学的にいえば、心因性の胃炎が起こっている。
頭を使う人が食べ過ぎるのです。栄養の取り過ぎです。
食べる人は、身体を使う人であるのに、現代は逆になり、どちらも病気になる様に出来ているのです。
¨
〈 病の状態 〉
「故に此の疾を成す」病気の状態は、
「熱に傷〔やぶ〕らるれば、痢を下す事、則ち赤し、」熱に犯される時は、赤い便が出る。血便ではない。便は黄色を貴〔とうと〕しとする。
「冷に傷〔やぶ〕らる時は、白い便がでる。風にに傷られた時は初めて清血を下す。」血を下す様になる。
「湿に傷らる時は、下す事、豆羹汁の如し」(豆腐を作る前の粕が混じった状態)の消化不良の下痢便を下す。 白も消化不良、
「冷熱、交々に併すれば」熱と冷えが交互に来る。
冷えると身体は熱を出す作用があり、熱を出すと冷え様とするので、白い便が出たり、赤い便が出たりする。
「魚の脳髄の如くなる者あり。」(子供がよく出す、キョロキョロした寒天状の消化不良を下す。)
¨
〈 治療の方 〉P77上段 ~ P77下段より。
〔訳文〕
『 治法は、
まず通利の薬を用いて臓腑の積滞を疎滌(そじょう)して、
然(しか)して後に弁ずるに、
冷熱風 湿の症を以て、薬を用いて調和すべし、
然て赤き物は、これを清くし、
冷えて白き物は、これを温め、
風 湿の物は、これを分利し、
冷熱、相兼ねる物は、温涼をもって、これを整えよ。
よって、すべからく、まず胃 の気をを調助すべし、
切に、あわてて罌栗穀(おうぞくこく)、詞子(かし)、の薬を用いて、そしてこれを止澁(しじょう)、すべからず。
すなわち停滞して疎泄すること能わざれば、
未だ危致ささざる物あらず、
およそ下 痢の脉は微小に宜(よろ)し、
浮洪に宜しからず、
滑大に宜し、
弦急に宜しからず、
身冷ゆる時は生く、
身 熱する時は死す。
間々(まま)、瘧痢兼ね起こる物あり、
惟(ただ)、まさに陰陽を分利し、脾を利して、胃を助く べし、
毒物によって痢を致す物は、これを解すべし、
一概にして論ずべからざる也。 』
これは薬ですが、
「通利の薬」まず下剤を用いる
「臓腑の積滞を疎鱗すべし」臓腑に滞っている飲食物を下してしまい、その後で「
弁ずる」考える。
冷熱風湿の症状を診て薬を調治するのがよい。
¨
〈 鍼の治療 〉 P77下段より。
まず痢病の症は、脉が虚しているほど治りやすい。
実する脉は危険で、手をつけないほうが利口です。
通利の薬を用いる代わりに、虚証を中心に補法を行なう。
私の経験からいえば、
痢病というのは、腎虚証が多い。
それから泄瀉は脾虚証が多い。
腎虚か脾虚によって決めることが出来る。
その証に合ったものは治しやすい。
この泄瀉の方には嘔吐、吐き気を伴う。
それから冷熱風湿の証は、薬 用いる時、重要だが、
我々、経絡の方では、経絡の調和が主になるのです。
¨
〈赤痢〉 p77-
これは伝染病の一つで、治療してはいけない物ですが、これも痢病の一つです。
清血を下す、或いは赤い便が出る、熱症を起こす。
その為、脉が沈んでなく非常に危険である。
ところが、初めから熱が出るのでなく、
私達が往診で扱った病人ですが、
熱があり、下痢がある。
医者で、疫痢らしいので検査して菌が出れば隔離するという事で頼まれた。
子供ですから皮膚鍼、脾経、胃経、心包経、三焦経、次に腹と背中を軽く皮膚鍼、脉が実の時は、金門とか三間の瀉血もよい。
そうすると一晩で熱も下痢も治まる。
疫痢という事で医者が来るが、熱も下痢もないので、もう少し待って見ようという事で良くなる。
しかし赤痢とか疫痢とか名前がついたら治療してはいけません。
治療していけないのでなく法律上の問題です。
¨
〔参考資料〕
日本において、細菌性赤痢は、
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の三類感染症に指定されており、感染が確認されたら医師は速やかに保健所に報告する義務がある。
かつては二類感染症に指定されており、拡散を防止するために状況に応じて隔離入院させる必要があったが、
2006年(平成18年)12月8日の法改正と同時に三類感染症に変更され、強制隔離措置は廃止された。
¨
〈下痢と中毒〉 p78-
中毒して下痢する場合がある。
我々の体が正常であれば、悪い物は鼻について食べないのだが、食べるからいけないのです。
食べ物は、口と鼻につく、正常な場合は吐く、これが一番軽く、次が下痢で生理的作用です。
下痢であれば中毒の場合も、おもしろいほど病気は治るのです。
中毒して下痢もなく発疹するジンマシンの様な物も裏内庭の灸がよく効く。
俯せにして、足の第二指の裏側の一番高い所へ墨をつけ、指を引っ張りながら曲げ墨のついた所に、一点灸の半米粒の知熱灸で熱くなる迄、
又、 一回食傷りして、それが食べれない人も裏内庭が案外、熱くない。
もう一つはあた食傷りの場合、傷(あた)った物を黒焼にして粉にして飲むと冶る。
水の場合は和紙に侵して黒焼にする。慢性の中毒症によい。
¨
〈 下痢の治療 〉P78下段より。
「熱して赤き物は、これを涼しくし」所謂、冷藥。
「冷えて白き物は、これを温める、風湿の物は、これを分利し、冷熱相兼ねる物は、温涼をもって、これを整えよ」これは漢方薬の方、
だいたい子供の下痢は胃腸カタルを起し目を引きつける。
こうゆう時は温めるのが良い。
子供の患者、目ひきつけ医者をよんで、注射して熱は下がったが、腹がパンパンに張り苦しんでいる。
食べ過ぎたから、温湿布をさせ、大便がたくさん出て治った。
これは温めるのが一番良く、大人 は知熱灸、子供は温湿布がよい。
「よって、すべからく、まず胃の気をを調助すべし、切に、あわてて罌栗穀( おうぞくこく)、詞子(かし)、の薬を用いて、そしてこれを止澁(しじょう)、すべからず」
慌てて薬で 下痢を止める事を慎まなければいけない。
我々は下痢を止めようとせず、出る物は出した方がよい。
「即ち停滞して疎泄すること能わ ざれば、未だ危を致ささざるものあらず」
下痢を止めた為に、出でる物が出なくなり非常に危険である。
¨
〈 病気の予防 〉P78下段より。
「およそ下痢の脉は微小に宜(よろ)し、浮洪に宜しからず、滑大に宜し、弦急に宜しからず」
〔下痢の脉状は〕
微かに小さい脉がよい、
浮いて洪水の脉はよくない、
滑脉は実脉のようで虚脉、大は大きいけれど力がない、
これはよりピンと張っている脉はよくない。
身体が冷えている人は生きる。
熱している時は死ぬ
「間々」時には
「瘧痢、兼ね作(おこ)る物あり」瘧痢によって起こる病気がある。
「惟(ただ)、まさに陰陽を 分利し、脾を利して、胃を助くべし、毒物によって痢を致す物は、宜しくこれを解すべし」
必ずしも下痢だけで扱えない物もある。
脾を補って、胃を助けるようにする。
毒を解くようにする。
「一概にして論ずべからず」
一通りに考えず、痢病は複雑であり、色々な症状があり、気をつけなければいけない。
風邪によって起こる胃腸性の下痢がある。
今の医学では、風邪が解からず、胃腸だけ言ってるが、そういうと、みんなが解かつた様な気になるのです。
¨
〈関連質問〉p79-
¨
質問一
腸チフスは泄瀉ですか、痢病ですか。
¨

これは、前にいった傷寒で、前の冬に起きた物が、春を越え、夏に出た物です。
主症は下痢でなく、熱にあるのです。
質問二
慢性下痢について、医師は柔らかい食べ物を食べる様にいうが、私達には、他に何か方法がないですか。
¨
絶食が一番良い。
慢性下痢は、 一週間位食べない事、絶対に死なない。
お湯は飲ませる。
水はダメです。東洋医学では、味と臭いのない物は食べないという事、水や白湯は味がない。
お湯は味があるのです。
質問三
子供の慢性ひきつけですが、起きてない時の治療は、どうしたらよひですか。
¨

体が弱いからで、普段の体の調和が大事です。
子供によって治療が違うので、ひきつけ母治療は、ひきつけの時に行ないます。
常に胃腸が弱い、これは摂生が悪いのです、子供の好き嫌いは親が教えているのです。

以上【南北経驗醫方大成、第七、痢病:井上恵理先生の講義解説】を終わります。
・・

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

これより以下の文章は、
2012.年 7月 吉日・・ 記載HPアップした文章です。
5年前の文書も何か参考になればと思いそのまま掲載をいたします。

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井上恵理先生の講義録「南北経驗醫方大成による病証論」を取り上げるHPコーナーです。

「南北経驗醫方大成による病証論」の概要を山口一誠なりに分類と纏めを試みてみます。

【】〔〕内は、山口一誠の考えやタイトルです。

井上恵理先生の言葉は、私のような経絡鍼灸の初級者にとつては、難しく、理解の及ばない事が多いのですが、「南北経驗醫方大成による病証論」を分類考察することが、一人の治療家として次の世代に何かしら残せるとしたら、人間が幸せに生きるための私なりの仕事と思います。

日本では、六世紀の中頃、僧侶の人たちが、仏教と共に、病気を治す為の医術として、

鍼灸の技術を会得し、日本の地に暮らす人々に、その術を処置して健康に寄与して、

途切れることなく、今につたわり、

東洋はり医学会をして、

現代人に対する、治療法の研究・臨床実践・理論化を集団で行なっています。

そして、現代病に罹患した、人々の心と身体の治療をしています。

井上恵理先生は初期の東洋はり医学会の会員に古典理論を、 自らの実践理論を通して講義をされています。

「南北経驗醫方大成による病証論」を学ぶ事は、 現代の経絡理論と日々の臨床に結びつくと思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「南北経驗醫方大成 七、 痢 病 」の原文 。    P75上段1行目 ~ P79下段より。

今人、患痢者、古方謂之滞下是也。
 得病之由、多因脾胃不和、飲食過度。
 停積干腸胃之間、得剋化。
 而又爲風寒暑湿之氣干之、故爲此疾。
 傷熱下痢則赤、傷冷則白、傷風純下清血。
 傷湿則下、如豆羹汁。
 冷熱交併、赤白兼下。
 又有如魚脳髄者。

 治法當先用通利之薬、
 疎滌臓腑積滞、
然後辧、
 以冷熱風湿之證、用薬調治。
 熱赤者清之。
 冷白者温之。
 風湿者分利之。
 冷熱相兼者温涼以整之。
 仍須、先調助胃氣。
 切不可驟用、罌栗穀、詞子、之薬。止澁之。
 便停滞不能疎泄、未有不致危者。

 几下痢之脉。
 宜微小。
不宜浮洪。
 宜滑大。
 不宜弦急。
 身寒則生。
 身熱則死。
 間有瘧痢兼者。
 惟當分利陰陽理脾助胃。
 因毒物致痢者。
 宜解之。
 不可一概而論也。

::::::::::::::

井上恵理 先生の訳:

P75上段 ~ P75下段より。

「今の人、痢を患う者、古方に、之を滞下という。これなり。病を得るの由は、多くは脾胃和せず、飲食過度にするによって、腸胃の間に停積して、剋化することを得ず。しかして、又、風寒暑湿の氣の為に之に さる、故に此の疾を成す。熱に傷らるれば、痢を下す事、則ち赤し、冷に傷らるれば、則ち白し、風に傷らるれば、もっぱら清血を下す。湿に傷らるれば、則ち豆羹汁の如きものを下す。冷熱、」交々に併すれば、 赤白、兼下す。」

〈 治療の方 〉P77上段 ~ P77下段より。

「治法は先ず通利の薬を用いて臓腑の積滞を疎滌(そじょう)して、然(しか)して後に弁ずるに、冷熱風 湿の症を以て、薬を用いて調和すべし、熱して赤き物は、これを清くし、冷えて白き物は、これを温め、風 湿の物は、これを分利し、冷熱相兼ねる物は、温涼をもって、これを整えよ。よって、すべからく、まず胃 の気をを調助すべし、あわてて罌栗穀(おうぞくこく)、詞子(かし)、の薬を用いて、そしてこれを止澁
(しじょう)、すべからず。即ち停滞して疎泄すること能わざれば、未だ危致ささざる物あらず、およそ下 痢の脉は微小に宜(よろ)し、浮洪に宜しからず、滑大に宜し、弦急に宜しからず、身冷ゆる時は生く、身 熱する時は死す。間々、瘧痢兼ね起こる物あり、惟(ただ)、まさに陰陽を分利し、脾を利して、胃を助く べし、毒物によって痢を致す物は、これを解すべし、一概にして論ずべからざる也。」

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井上恵理 先生の解説と言葉の意味:

P75上段 ~ P75下段より。

痢というのは、痢病といわれるもので、今で言えば下痢の事です。P75上段

〈 痢病とは 〉P75下段より。
この痢という症は、古典では瀉利、又は泄瀉という言葉を使っています。
―「今の人」〔とは、〕この本が出来た次代、六百年前の事です。
「痢を患う者、古方に、之を滞下という」古方はそれ以前の本。
現代では滞下というのは女の人の腰気(こしけ)〔おりもの〕の事で、
―それ以前の古典、黄帝内経等では、〔痢病に〕滞下を使っています。

〈 古典の読み方 〉:パス・・・

〈 二つの痢病 〉P76上段 ~ P76下段より。
下痢の事も後世になり、明の時代、我国では元禄時代に、
痢の事を痢病と泄瀉の二つに分けています。
泄瀉はつつくだしの事で、ドッと出て気持ちの良いもの、
現代医学でいえば、胃腸カタルが泄瀉です。
痢病は、渋り腹の事で、下るほど気持ちが悪いものです。
現代医学でいえば、大腸カタルが痢病です。
〔症状は〕裏急後重(お尻が下へさがる感じ、肛門の抜けるよ うな感じ)があり、何回も便所に行きたがるのが痢病です。
現代では下痢といって同じにしているが、臨床において、治療法が違ってくるのです。―ここでは同じに扱 っています。―

〈 病の起こる理由 〉P76下段より。
「病を得るの由は」病の起こる理由は、多くは、「脾と胃が和せず」脾と胃が調和しない為か、あるいは飲 食過度の為に起こる「過度するによって、腸胃の間」食べた物が腸と胃の間に「停積」たまって「剋化する ことを得ず」消化する事が出来ない。そうゆう状態に風寒暑湿の外因に犯され痢病になるのです。
いわいる
内因の七情〔怒、喜、憂、思、悲、驚、恐〕の気に犯された、いわいる脾胃の不調和、それから飲食の邪が内因として起こった所へ、風寒暑湿の外邪に犯された為に痢病になるのです。食べ物を、食べないのも良くないが、食べ過ぎるのも良くない。「脾胃和せず」という事は、現代医学的にいえば、心因性の胃炎が起こっている。頭を使う人が食べ過ぎるのです。栄養の取り過ぎです。食べる人は、身体を使う人であるのに、現代は逆になり、どちらも病気になる様に出来ているのです。

〈 病の状態 〉

「故に此の疾を成す」病気の状態は、「熱に傷らるれば、痢を下す事、則ち赤し、」熱に犯される時は、赤い便が出る。血便ではない。便は黄色を貴しとする。「冷に犯される時は、赤い便が出る。」「風にに犯される時、初めて清血を下す。」=血を下す様になる。「湿に傷らる時は、下す事、豆羹汁の如し」(豆腐を作る前の粕が混じった状態)の消化不良の下痢便をする。白も消化不良。「冷熱、交々に併すれば」熱と冷えが交互に来る。冷えると身体は熱を出す作用があり、熱を出すと冷え様とするので、白い便が出たり、赤い便が出たりする。「魚の脳髄の如くなる者あり。」(子供がよく出す、キョロキョロした寒天状の消化不良の下痢便。)
:::::::::::::

井上恵理 先生の解説と言葉の意味:     P75上段 ~ P75下段より。

〈 鍼の治療 〉 P77下段より。

まず痢病の症は、脉が虚しているほど治りやすい。
実する脉は危険で、手をつけないほうが利口です。
通利の薬を用いる代わりに、虚証を中心に補法を行なう。私の経験からいえば、
痢病というのは、腎虚証が多い。それから泄瀉は脾虚証が多い。腎虚か脾虚によって決めることが出来る。
その証に合ったものは治しやすい。この泄瀉の方には嘔吐、吐き気を伴う。
それから痢熱風湿の証は、薬 用いる時、重要だが、我々、経絡の方では、経絡の調和が主になるのです。

〈 赤痢 〉パス・・

〈 下痢と中毒 〉P78上段より。

中毒して下痢する場合がある。我々の体が正常であれば、悪い物は鼻について食べないのだが、―〔食べた場合〕吐くのが一番軽い、次が下痢の生理的作用。―
裏内庭穴の灸は一点灸の半米粒大艾柱にて知熱灸で熱くなるまでやる。
食中毒で下痢なく発疹、蕁麻疹様、になった物のに適用、また食中毒でそれが食べれなくなつたものの改善にもなる。

〈 下痢の治療 〉P78下段より。

「熱して赤き物は、これを清くし」所謂、冷藥。
「冷えて白き物は、これを温め、風湿の物は、これを分利し、冷熱相兼ねる物は、温涼をもって、これを整えよ」これは漢方薬の方。
― 子供の下痢は胃腸カタルを起し引きつける。こうゆう時は温めるのが良い。
―医者の注射で熱は下がったが、腹がパンパンに張り苦しんでいる。食べ過ぎたから、温湿布をさせ、大便がたくさん出て治る。
大人 は知熱灸、子供は温湿布がよい。―「よって、すべからく、まず胃の気をを調助すべし、あわてて罌栗穀( おうぞくこく)、詞子(かし)、の薬を用いて、そしてこれを止澁(しじょう)、すべからず」慌てて薬で 下痢を止める事を慎まなければいけない。―出る物は出したほうが良い。「即ち停滞して疎泄すること能わ ざれば、
未だ危致ささざる物あらず」下痢を止めた為に、出でる物が出なくなり非常に危険である。―

〈 病気の予防 〉P78下段より。

「およそ下痢の脉は微小に宜(よろ)し、浮洪に宜しからず、滑大に宜し、弦急に宜しからず」〔下痢の脉状は〕微かに小さい脉がよい、浮いて洪水の脉はよくない、滑脉は実脉のようで虚脉、大は大きいけれど力がない、これよりピンと張っている脉はよくない。身体が冷えている人は生きる。身熱する時は死す。
「間々」時には「瘧痢、兼ね起こる物あり」瘧痢によって起こる病気がある。「惟(ただ)、まさに陰陽を 分利し、脾を利して、胃を助くべし、毒物によって痢を致す物は、これを解すべし」必ずしも下痢だけで扱 えない物もある。脾を補って、胃を助けるようにする。毒を解くようにする。
「一概にして論ずべからず」一通りに考えず、痢病は複雑であり、色々な症状があり、気をつけなければい けない。風邪によって起こる胃腸性の下痢がある。

―〔判断でいきない事は医療機関での医師の検査を参考にすること。〕―
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2012.9. 吉日・・ 記載HPアップしました。

※ 詳しくは本文:「南北経驗醫方大成による病証論 井上恵理 先生 講義録」

発行:東洋はり医学会、をお読みください。

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