三、暑論

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   三、暑論

                              小項目 番号 c313

 南北経驗醫方大成による病証論
第三、暑論(しょろん)
南北経驗醫方大成による病証論・井上恵理先生・講義録を参考に構成しています。。
※ 2016年10月21日掲載。

第三、暑論 のポイント

  • 暑(しょ)は熱であり、熱は生命力の源です。
    平熱、人間は脇下36.5℃の時、腹部内臓の温度は37℃になります。
    この内臓温度37℃の時、ミトコンドリア活性が一番いい状態です。
    肝心脾肺腎の内臓が正常に働き60兆個の細胞に酸素と糖分を運んでくれるのです。
    人間が天の川銀河、太陽系の第三惑星「地球」に生を受けていられるのは太陽の恵みがあるからです。
    南北経驗醫方大成による病証論 第三、暑論(しょろん)では、
    生命力の源「暑気(しょき)」について説明されています。
    人間の身体に於いての「暑気」は、心にやどり産熱して身体の恒常性を維持する機能です。
    天空と地上の暑気が程よく作用するとき人間の身体も平穏に過ごす関係にあります。
    しかし正しい「暑の気」が「暑邪(しょじゃ)」となると熱病を起こします。
    そして、熱病を改善する古(いにしえ)の治療法が述べられています。
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第三、暑論の原文

暑之為氣
在天為熱
在地為火
在人臓為心
是以暑之中人、先著於心
凡中之者
身熱頭痛、煩渇口燥、甚則昏不知人、
手足微冷、或吐、或瀉、或喘、或満
入肝則眩暈頑痺
入脾則昏睡不覚
入肺則喘満痿躄
入腎則消渇
其脉、多沈伏。
一時昏中者、切不可便與冷水、並訃濕地
〔訃(フ)はpcでは変換できない正しくは目とトの作りで目トです。〕
古法
當以熱湯、先灌、
及用布衣、浸熱湯熨、臍下及気海
續續以湯淋布上、令暖氣透徹臍腹。
俟其蘇生進以、黄連香薷散、五冷散、
若體虚者、冷香飲子
霍乱吐瀉、来復丹、二気丹。
夾食則、用胃苓湯 。
若挟風則、其脉沈而浮。
證有搐搦、
當於黄連香薷散内、加羌活、煎服
却不可作驚癇、治之
多到不救
此方及巖氏累用之、而有験者。
若旅途中
卒然暈倒
急扶在陰涼所
掬道上熱土、於臍上、撥開作竅
令人尿於其中
以待求熱湯
並生薑或大蒜
各一塊嚼爛以湯送下、
立醒
以上、暑論原文、終わる。
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第三、暑論の 原文と訳文読み(カタカナ)。

暑之為氣、
ショ ノ キ タルコト
在天為熱、
テン ニ アリ テハ ネツ タリ
在地為火、
チ ニ アリ テハ ヒ ナリ
在人臓為心、
ヒト ノ ゾウ ニ アリ テハ シン ナリ
是以暑之中人、先著於心、
コレヲ モッテ ショ ノ ヒト ニ アタルコト、マズ シン ニ ツク
凡中之者、
オヨソ コレニ アタル モノハ
身熱頭痛、煩渇口燥、甚則昏不知人、
シンネツ シ ズツウ シ、ハンカツ シテ クチ カワク、 ハナハダシキ トキハ コン シテ ヒト シラズ
手足微冷、或吐、或瀉、或喘、或満。
テ アシ ビレイシ、アルイハ トシ、アルイハ シャシ、アルイハ ゼンシ、アルイハ マンス、
入肝則眩暈頑痺
カン ニ ハイル トキハ ゲンウンシ ガンヒス
入脾則昏睡不覚
ヒ ニ ハイル トキハ コンスイ シテ サメズ
入肺則喘満痿躄
ハイ ニ ハイル トキハ ゼンマン イヘキス
入腎則消渇
ジン ニ ハイル トキハ ショウカツス
其脉、多沈伏
ソノ ミャク、オオクハ チン フ ス
一時昏中者、
イチジニ コンチュウ スル モノハ
切不可便與冷水、並訃濕地
シキリニ レイスイヲ アタウベカラズ、 ナラビニ シッチニ フサシメズ
古法
コホウ
當以熱湯、先灌、
マサニ ネットウ ヲ モッテ マズ ソソグ
及用布衣、浸熱湯熨、臍下及気海
オヨビ フイ ヲ モチテ、 サイカ オヨビ キカイ ニ ノスベシ
續續以湯淋布上、令暖氣透徹臍腹
ゾクゾクニ ユヲ モッテ フ ジョウニ ソソギ、ダンキヲ シテ サイフクニ シントウ セシメルベシ
俟其蘇生進以、黄連香薷散、五冷散、
ソノ ソセイスルヲ マチテ ススムルニ、オウレン コウジュサン ゴレイサン ヲ モチイヨ
若體虚者、冷香飲子。
モシカラダキョノモノハ、レイコウ インシ ヲ モチユ
霍乱吐瀉、来復丹、二気丹。
カクラントシャセバ、ライフクタン、ニキタン ヲ モチユ
夾食則、用胃苓湯 。
ショクヲハサムトキハ、イレイト ヲ モチユ
若挟風則、其脉沈而浮。
モシ カゼヲ カスル トキハ、 ソノ ミャク チン ニシテ フ
證有搐搦、
ショウ ニ チクデン アリ
當於黄連香薷散内、加羌活、煎服
マサニ オウレンコウジュサン ノウチニ、キョウカツ ヲクワエ センジ フクスベシ
却不可作驚癇、治之
カエッテ キョウカン トシテ、 コレヲ チス ベカラズ
多到不救
オオクハ スクコト イタラズ
此方及巖氏累用之、而有験者
コノホウ スナワチ ゲンシガ シキリニ モチイテ ケン アルモノナリ
若旅途中
モシ リョト ノウチニ
卒然暈倒
ソツゼン トシテ ウントウ セバ
急扶在陰涼所
キュウニ タスケテ インリョウ ノトコロ ニアラシメ
掬道上熱土、於臍上、撥開作竅
ロジョウノ ネツドヲ スクッテ、サイジョウニオイテ、ハツカイシテ アナヲナシ
令人尿於其中
ソノナカニ ヒトヲシテ ニョウセシメ
以待求熱湯
モッテ ネットウヲ マチモトム
並生薑或大蒜
ナラビニ ショウキョウ アルイハ タイソウ
各一塊嚼爛以湯送下、立醒
カッカク イッコンヲ シャクランシ ユヲモッテ オクリクダセバ、 タチドコロニ サム
以上、原文と訳文読み(カタカナ)終わる。

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南北経驗醫方大成、第三、暑論 の訳文(読み下し文)

暑(しょ)の気たる事、
天に在りては、熱たり、
地に在りては火たり、
人の臓に在りては心たり、
これを以て暑の人に中(あた)たる事、まず心につく、
およそ、これに中る者は、
身熱し頭痛し、煩渇(はんかつ)して口渇く、甚(ハナハダ)しき時は昏(こん)して人を知らず、
手足微冷(びれい)し、或いは吐し、或いは瀉し、或いは喘し、或いは、満す。
肝に入いる時は眩暈、頑痺(がんひ)す、
脾に入いる時は、昏睡(こんすい)して覚(さ)めず。
肺に入いる時は喘満痿躄(いへき)す。
腎に入いる時は消渇(しょうかつ)す。
其の脉、多くは沈伏する。
一時に昏中する者は、
切りに冷水を与うべからず、並びに湿地に訃(ふ)さしめず。
古法
当(まさ)に熱湯を以(もっ)て、まず注ぐ、
及び布衣を用いて熱湯に浸し臍下(さいか:臍の下)、及び気海〔穴〕に熨(の)すべし、
次々に湯を以て、布上に注ぎ暖気をして臍腹に浸透せじめるべし
其の蘇生するを待って進むるに、
黄連香薷散(オウレン コウジュサン)、五苓散(ゴレイサン)を用いよ。
若(も)し體(からだ)虚の者は、冷香飲子(レイコウインシ)。
霍乱(かくらん)、吐瀉せば、来復丹、二気丹、
食を夾(は)さむ時は、胃苓湯を用ゆ。
若し風を挟る時は、其の脉、沈にして浮。
症に搐搦(ちくだく)あり、
当に黄連香薷散の内に羌活(キョウカツ)を加えて煎じ服すべし。
却(かへ)って驚癇(きょうかん)となしてこれを治すべからず。
多くは救わざる事を到らず。
比の方、乃ち厳氏が、累(しき)りに之れを用いて験ある者に在り。
若し旅途の中に、
卒然として暈倒せは、
急に扶けて陰涼の所に在らしめ、
道上の熱土を掬(すく)て臍上に置いて、撥開(はつかい)して竅(あな)をなし、
其の中に人をして尿せじめ
以て熱湯、
並びに生薑(ショウキョウ)、或は大蒜(タイソウ:にんにく)、
各々一塊を嚼爛(シャクラン)し湯を以て送り下せば立ち所に醒む
以上、訳文(読み下し文)終わる。

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第三、暑論 の解説文コーナー

※ 解説文は【井上恵理先生の講義解説】を参考にした山口一誠のオリジナル文章です。

第三、暑論の解説

  •  「暑気(しょき)」と「身体」の関係について説明します。
    暑気は、天空に於いては太陽の熱を意味します。
    地上では暑気は、暖房をとる火を意味します。
    人間の身体に於いての「暑気」は、心にやどり産熱して身体の恒常性を維持する機能です。
    天空と地上の暑気が程よく作用するとき人間の身体も平穏に過ごす関係にあります。
    天地の暑気が過剰になると「暑邪(しょじゃ)」となり、熱病を起こします。
    そして、暑邪はまず初めに心を侵(おか)します。
    心が暑邪に侵された時の症状は、
    身体が熱くなり、頭痛し、喉(のど)が渇(かわ)き、口が粘(ねば)くて乾いて声が枯れます。
    そして暑邪が甚(ハナハダ)しい時は、人事不省(じんじふせい)になります。
    また、暑邪の症状が長引くと、
    手足が冷え、物を吐いたり、或いは下痢し胸息れ、或いは胸が脹るような痛みが出ます。
    暑の邪は、まず心に侵入しますが、他の臓に侵入する事もあります。
    暑邪が肝に侵入すると、眩暈(めまい)が起こり、頑固な治りにくい麻痺の症状が起こります。
    暑邪が脾に侵入すると、昏とんとして眠り続けます。
    暑邪が肺に侵入すると、喘満し、胸が満ちたける様になり、ゼイゼイと呼吸がぜれつます。
    暑邪が腎に侵入すると、乾きの病で喉が乾きます。
    暑邪に侵された時の多くの脉状は、沈脉にして伏脉になっています。
    急に暑邪に侵され倒れた者の症状と対処法の注意について説明します。
    症状は、切(しき)りに喉の乾きを訴えます。
    この時に、すぐに冷水を与えてはいけませんし、湿った所に寝かしてはいけません。
    古(いにしえ)の治療方法について。
    まず初めに、熱湯に布切を浸しを能く絞って、これで身体を拭いてやります。
    及び熱湯に浸した布切で臍下及び気海穴、丹田穴あたりを温めます。
    それからさらに、連続してお湯を注いで腹に湿気が透る様にします。
    倒れた者が覚醒(かくせい)したら、次の漢方薬を処方します。
    黄連香薷散か五苓散の漢方薬を服用させます。
    もし、その患者の体が弱つている時は冷香飲子を用います。
    霍乱(かくらん:日射病)で、吐けば来復丹、二気丹を用います。
    食事が食べられる時は胃苓湯を用います。
    もし暑邪に風邪が合わせて入いると、脉状は沈脉になったり浮脉になったりします。
    暑邪に侵された症状に、搐搦(ちくだく)症があります。
    これは引きつけ、手が震え、目がひっくり返る症状が出ます。
    搐搦症には、黄連香薷散に羌活を加え煎じて飲ませます。
    搐搦を起こしているのに、驚癇(きょうかん:子供では驚風、大人では癲癇(てんかん))と間違えて治療すると救う事が出来ません。
    驚癇(きょうかん: 驚いて痙攣を起す。)とは、子供では驚風、大人では癲癇(てんかん)のことです。
    症に合わない治療をすると命を救う事は出来ません。
    この治療は、厳用和(げんようわ) という漢方医が臨床で多く用いた効果のある治療法です。
    旅に出て薬もない時、
    にわかに暑を受けて倒れた時は、
    急(いそ)いで助け起こし、涼しい所に連れていって寝かせます。
    道端の土を持ってきて、
    臍の上にのせ中を開け、
    その中に小便をする、
    その間に湯を沸かし、
    生菫(生姜)、と大蒜を
    各々一塊を噛みくだいて湯で飲ませると、
    立ち所に症状は改善し目覚めます。
以上、第三、暑論の解説を終わる。

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第三、暑論の詳細解説コーナー


※ 解説文は【井上恵理先生の講義解説】を参考にした山口一誠のオリジナル文章です。

第三、暑論の原文・訳文・解説


原文:暑之為氣
訳文:暑(しょ)の気たる事、
解説:「暑気(しょき)」と「身体」の関係について説明します。

原文:在天為熱
訳文:天に在りては、熱たり、
解説:暑気は、天空に於いては太陽の熱を意味します。

原文:在地為火
訳文:地に在りては火たり、
解説:地上では暑気は、暖房をとる火を意味します。

原文:在人臓為心
訳文:人の臓に在りては心たり、
解説:人間の身体に於いての「暑気」は、心にやどり産熱して身体の恒常性を維持する機能です。
天空と地上の暑気が程よく作用するとき人間の身体も平穏に過ごす関係にあります。

原文:是以暑之中人、先著於心
訳文:これを以て暑の人に中(あた)たる事、まず心につく、
解説:天地の暑気が過剰になると「暑邪(しょじゃ)」となり、熱病を起こします。
そして、暑邪はまず初めに心を侵(おか)します。

原文:凡中之者
訳文:およそ、これに中る者は、
解説:心が暑邪に侵された時の症状は、
原文:身熱頭痛、煩渇口燥、甚則昏不知人、
訳文:身熱し頭痛し、煩渇(はんかつ)して口渇く、甚(ハナハダ)しき時は昏(こん)して人を知らず、
解説:身体が熱くなり、頭痛し、喉(のど)が渇(かわ)き、口が粘(ねば)くて乾いて声が枯れます。
そして暑邪が甚(ハナハダ)しい時は、人事不省(じんじふせい)になります。

原文:手足微冷、或吐、或瀉、或喘、或満
訳文:手足微冷(びれい)し、或いは吐し、或いは瀉し、或いは喘し、或いは、満す。
解説:また、暑邪の症状が長引くと、手足が冷え、物を吐いたり、或いは下痢し胸息れ、或いは胸が脹るような痛みが出ます。
解説:暑の邪は、まず心に侵入しますが、他の臓に侵入する事もあります。
原文:入肝則眩暈頑痺
訳文:肝に入いる時は眩暈、頑痺(がんひ)す、
解説:暑邪が肝に侵入すると、眩暈(めまい)が起こり、頑固な治りにくい麻痺の症状が起こります。
原文:入脾則昏睡不覚
訳文:脾に入いる時は、昏睡(こんすい)して覚(さ)めず。
解説:暑邪が脾に侵入すると、昏とんとして眠り続けます。
原文:入肺則喘満痿躄
訳文:肺に入いる時は喘満痿躄(いへき)す。
解説:暑邪が肺に侵入すると、喘満し、胸が満ちたける様になり、ゼイゼイと呼吸がぜれつます。
原文:入腎則消渇
訳文:腎に入いる時は消渇(しょうかつ)す。
解説:暑邪が腎に侵入すると、乾きの病で喉が乾きます。
原文:其脉、多沈伏。
訳文:其の脉、多くは沈伏する。
解説:暑邪に侵された時の多くの脉状は、沈脉にして伏脉になっています。
原文:一時昏中者、
訳文:一時に昏中する者は、
解説:急に暑邪に侵され倒れた者の症状と対処法の注意について説明します。
原文:切不可便與冷水、並訃濕地
訳文:切りに冷水を与うべからず、並びに湿地に訃(ふ)さしめず。
解説:症状は、切(しき)りに喉が乾きを訴えます。
この時に、すぐに冷水を与えてはいけませんし、湿った所に寝かしてはいけません。
原文:古法
訳文:古法
解説:古(いにしえ)の治療方法について。
原文:當以熱湯、先灌、
訳文:当(まさ)に熱湯を以(もっ)て、まず注ぐ、
解説:まず初めに、熱湯に布切を浸しを能く絞って、これで身体を拭いてやります。
原文:及用布衣、浸熱湯熨、臍下及気海
訳文:及び布衣を用いて熱湯に浸し臍下(さいか:臍の下)、及び気海〔穴〕に熨(の)すべし、
解説:及び熱湯に浸した布切で臍下及び気海穴、丹田穴あたりを温めます。
原文:續續以湯淋布上、令暖氣透徹臍腹。
訳文:次々に湯を以て、布上に注ぎ暖気をして臍腹に浸透せじめるべし
解説:それからさらに、連続してお湯を注いで腹に湿気が透る様にします。
原文:俟其蘇生進以、
訳文:其の蘇生するを待って進むるに、
解説:倒れた者が覚醒(かくせい)したら、次の漢方薬を処方します。
原文:黄連香薷散、五冷散、
訳文:黄連香薷散(オウレン コウジュサン)、五苓散(ゴレイサン)を用いよ。
解説:黄連香薷散か五苓散の漢方薬を服用させます。
原文:若體虚者、冷香飲子
訳文:若(も)し體(からだ)虚の者は、冷香飲子(レイコウインシ)。
解説:もし、その患者の体が弱つている時は冷香飲子を用います。
原文:霍乱吐瀉、来復丹、二気丹。
訳文:霍乱(かくらん)、吐瀉せば、来復丹、二気丹、
解説:霍乱(かくらん:日射病)で、吐けば来復丹、二気丹を用います。

原文:夾食則、用胃苓湯 。
訳文:食を夾(は)さむ時は、胃苓湯を用ゆ。
解説:食事が食べられる時は胃苓湯を用います。
原文:若挟風則、其脉沈而浮。
訳文:若し風を挟る時は、其の脉、沈にして浮。
解説:もし暑邪に風邪が合わせて入いると、脉状は沈脉になったり浮脉になったりします。

原文:證有搐搦、
訳文:症に搐搦(ちくだく)あり、
解説:暑邪に侵された症状に、搐搦(ちくだく)症があります。
これは引きつけ、手が震え、目がひっくり返る症状が出ます。
原文:當於黄連香薷散内、加羌活、煎服
訳文:当に黄連香薷散の内に羌活(キョウカツ)を加えて煎じ服すべし。
解説:搐搦症には、黄連香薷散に羌活を加え煎じて飲ませます。

原文:却不可作驚癇、治之
訳文:却(かへ)って驚癇(きょうかん)となしてこれを治すべからず。
解説:搐搦を起こしているのに、驚癇(きょうかん:子供では驚風、大人では癲癇(てんかん))と間違えて治療すると救う事が出来ない。驚癇(きょうかん: 驚いて痙攣を起す。)とは、子供では驚風、大人では癲癇(てんかん)のことです。
原文:多到不救
訳文:多くは救わざる事を到らず。
解説:症に合わない治療をすると命を救う事は出来ません。
原文:此方及巖氏累用之、而有験者。
訳文:比の方、乃ち厳氏が、累(しき)りに之れを用いて験ある者に在り。
解説:この治療は、厳用和(げんようわ) という漢方医が臨床で多く用いた効果のある治療法です。
原文:若旅途中
訳文:若し旅途の中に、
解説:旅に出て薬もない時、
原文:卒然暈倒
訳文:卒然として暈倒せは、
解説:にわかに暑を受けて倒れた時は、
原文:急扶在陰涼所
訳文:急に扶(たす)けて陰涼の所に在らしめ、
解説:急(いそ)いで助け起こし、涼しい所に連れていって寝かせます。
原文:掬道上熱土、
訳文:道上の熱土を掬(すく)て
解説:道端の土を持ってきて
原文:於臍上、撥開作竅
訳文:臍上に置いて、撥開(はつかい)して竅(あな)をなし、
解説:臍の上にのせ中を開け、
原文:令人尿於其中
訳文:其の中に人をして尿せじめ
解説:その中に小便をする、
原文:以待求熱湯
訳文:以て熱湯、
解説:その間に湯を沸かし
原文:並生薑或大蒜
訳文:並びに生薑(ショウキョウ)、或は大蒜(タイソウ:にんにく)、
解説:生菫(生姜)、と大蒜を
原文:各一塊嚼爛以湯送下、立醒
訳文:各々一塊を嚼爛(シャクラン)し湯を以て送り下せば立ち所に醒む
解説:各々一塊を噛みくだいて湯で飲ませると立ち所に醒める。
以上、第三、暑論の詳細解説を終わる。
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【井上恵理先生の暑論講義解説より】

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今回は、暑(あつ)さに傷(きず)つけられる暑(しょ)の事を申し上げます。
「暑(しょ)の気たる事、天に在りては、熱たり、地に在りては火たり、人の臓に在りては心たり、これを以て暑の人に中(あた)たる事、
まず心につく、およそ、これに中る者は、身熱し頭痛し、煩渇(はんかつ)して口渇く、甚(ハナハダ)しき時は昏(こん)して人を知らず、
手足微冷(びれい)し、或いは吐し、或いは瀉し、或いは喘し、或いは、満す。」
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言葉の意味(Weblio辞書):
〔煩渇(はん かつ)〕
しきりに欲しがること。切望すること。 「肉や物質の満足が否定出来なくて,-して居る/青春 風葉」
【煩い】わずらい:煩うこと。
•精神的な苦しみ。悩み。煩わしさ。 「―多き人の世」
•肉体的な苦しみ。病気。 「長(なが)の―」
〈自然と体〉p43.
所謂、暑と言うのは暑さの事でありますが、是は暑の気という者、寒の気でも、風の気でも同じですが、
こういう自然と人間が同じであるという考え方、人間の体は小宇宙であるという考え方と一致する物で、こうした考え方は東洋医学独特の物です。
しかし、我々の体は、小宇宙なり、天、地、自然と同じだというのは間違っています。
我々の体は、天、地、自然の中に生きている為に、この影響を受けるという事です。
例えば暑さ寒さも彼岸迄といいますが、春と秋の彼岸では、秋の彼岸の方が温度は高いのです。
春の彼岸は寒さに同調した体に暖かさが気持ち良く感じ、秋の彼岸は、暑さに秋風が涼しく気持ち良く感じる訳です。
気持ち良く感じる事は同じですが、温度、湿度等の天地、自然の法則から言うと同じではないのです。
〈全体的見方〉p44.
天にあっては熱という。
天の気を暑気、暑の気は熱になる。
地に在っては人という、暖房をとる火です。
天に在る熱は太陽です。
陽に在っては熱であり、陰になっては人工的、火です。
火は熱を出し、熱は火を生じる。
こうゆう風に天地、陰陽の交流がなる訳です。
こういう事を陰とか陽とか、熱とか火とか別個に分けて考えると東洋の医学は解からなくなります。
これは陰虚だ、陽実だといっても実は同じなのです。
陰が虚しているから陽の実が解るんです。
陽の方を主として取るべきか、陰の方を主として取るべきか、という事は、
治療の結果が、どちらが早く、その証を調和する事が饉来るかによって、陰か陽かと決める訳です。
全てを一つの中に見るのが証であり、治療であるので、そこだけで、どちらか決める事は出来ない訳です。
¨
例えば、人の前は陰である、後は陽である。
こう決めて全ての背中に出るのは陽の病気であり、前に出るのは陰の病気であると決める事は出来ない訳です。
五味において酸を好む者は肝であると言えるが、
肝の実証か、虚証かは問題である。
生理的にいって、
病気の場合は、自分の体に悪い物を食べたがる。
体の調子が良い時には、体の不足している物を食べたがる。
という事で酸の味で診断する事は、体が虚か実か、
生理的な物か病気的な物かで決めなければいけないのです。
酸が好きだから肝虚だとは決められないのです。
そんな事で決められるなら勉強はいらない訳です。
¨
〔山口のまとめ。〕
病気的な時は、自分の体に悪い物を食べたがる。と診断する。
病気的な時は、その虚実をわきまえ治療の対象にする。
¨
生理的、健康状態では、体の不足している物を食べたがる。
生理的、健康状態では、その人の好み体質に分類する。
〈心と熱〉p44.
人の臓にありては心である。
だから心は熱を出す事により機能するのです。
我々の体温があるという事は心に熱がある事です。
この熱が下がっていけば死んでしまう訳です。
それでは熱の低い人は、心が弱いかというと、そうでもないのです。
所謂、低温で働ける心もあれば、高温でも働ける心もあるのです、
極端であれば、病的になり、心を傷(やぶ)る事になる。
熱がなくなっても、高くなりすぎても心は傷られる。
これは高熱の時に脈拍が早くなる事で解る訳です。
ところで平熱でも、人によって個人差があります。
個人差なんか考えたら、今の医学は成り立たないので、平熱を三十六度八分と決めて、データーを出すのです。
〈心の症状〉p44.
熱を受けると、まず心に入る訳で、これ〔暑〕に中(あた)ると体が熱してくる。
頭痛、煩渇、これは頻(しき)りに喉(のど)が渇(かわ)く事、
口が渇くと、喉が渇くは違う。
口が乾く時には、水を飲みたがらず、口が粘(ねば)くて乾いて声が枯れるので水ですすぎたくなる。
喉が乾くは、水を飲みたがる。
このカツの字も、渇、喝、燥、の字があり、同じ意味だが時代によって使われた。
暑が深く入って体を傷(やぶ)る時は、人事不省(じんじふせい)になる。
そして手足、冷え、物を吐いたり、下痢、胸息れ、喘というのは喘息を思うが、胸息れの時もいう。
喘息は息がぜれつく。
喘渇は乾いて胸がおかしくなる。
咽渇、喘咽は飲む事によりおかしくなる。
あるいは満す。これは脹る事です。
胸が脹るようになる、お腹が脹る、唯満すといえば腹満で腹が脹る。
心満といえば胸が脹る。この心満とか、心虚、心痛、これは心臓でなく胸がという風にとればよい。
〈熱と知恵〉 p45.
これは暑の邪は、まず心に著(つ)くが、他の臓に入いる事もある。
熱は全てに影響を与える。
熱気焼却(しょうきゃく)という仏教の言葉がある。
不動様は後(うしろ)に魁(かい)を背負っている。
あれは知恵の炎で、知恵が多くあれば、全ての事から守る事が出来るという事で不動教の教えを形に現した物です。
全身、真黒で何にも染まらず、知恵の炎で形においても心においても迷わないという事です。
所謂、熱という者は、人間の体にあっては知恵でありどんな者にも迷わされない。
治療もそうです。
多くの事を知り整理し、自分の物にする事が治療の発達です。
我々が講義に行くと、秘伝、口伝を許してくれと言われるが経絡治療には、それはないのです。
誰でも出来る様になるのが経絡治療です。
その為に一つの理論構成をする訳です。
〈肝脾肺腎と暑邪〉p45.
「 肝に入いる時は眩暈、頑痺(がんひ)す、脾に入いる時は、昏睡(こんすい)して覚(さ)めず。肺に入いる時は喘満痿躄(いへき)す。腎に入いる時は消渇(しょうかつ)す。」
肝に入いれば眩量、頑痺する。
眩量はめまい。
頑痺は頑固な治りにくい麻痺と考える。
痺は、固くなる、使えなくなる。
機能が減退する意味です。
例えば感覚的麻痺も痺であり、筋肉が堅くなるのも痺です。
脾に入いる時は昏睡して覚めず、脾に入いると昏とんとして眠り続ける。番睡状態になる。
肺に入いる時は喘満し、胸が満ちたける様になり、ゼイゼイと呼吸がぜれつく。
痿躄(いへき)とは、体の手足が効かなくなる事です。
腎に入いる時は消渇する。乾きの病で喉が乾く。
〈脉と治療法〉 p45.
「 其の脉、多くは沈伏する。 一時に昏中する者は、切りに冷水を与うべからず、並びに湿地に訃(ふ)さしめず。
古法。当(まさ)に熱湯を以(もっ)て、まず注ぐ、及び布衣を用いて熱湯に浸し臍下(さいか:臍の下)、及び気海〔穴〕に熨(の)すべし、
次々に湯を以て、布上に注ぎ暖気をして臍腹に浸透せじめるべし 」。
暑さの脉は、沈にして伏、沈というのは浮かべてなく沈めてある事です。
伏というのは沈めても無く沈以下になり脉がほとんど無くなった所にある脉です。
一時に昏中する者とは、急に暑邪で倒れた者で切(しき)りに喉が乾くが、すぐに冷水を与えてはいけないし、湿った所に寝かしてはいけない。
古い方法に、熱湯をもって拭いてやる、布衣は布切れで、それで浸して臍下及び気海穴、丹田穴あたりを温めてやる事です。
その上に布上に湯を注いで腹に湿気が透る様にする事です。
〈薬の用い方〉p46.
 「其の蘇生するを待って進むるに、黄連香薷散(オウレン コウジュサン)、五苓散(ゴレイサン)を用いよ。
若(も)し體(からだ)虚の者は、冷香飲子(レイコウインシ)。
霍乱(かくらん)、吐瀉せば来復丹、二気丹、食を夾(は)さむ時は、胃苓湯を用ゆ。
若し風を挟る時は、其の脉、沈にして浮。症に搐搦(ちくだく)あり、当に黄連香薷散の内に羌活(キョウカツ)を加えて煎じ服すべし。
却(かへ)って驚癇(きょうかん)となしてこれを治すべからず。
多くは救わざる事を得ず。
比の方、乃ち厳氏が、累(しき)りに之れを用いて験ある者に在り。」
¨
言葉の意味(Weblio辞書):
香薷散. こうじゅさん. (飲). 解表祛暑・化湿和中. 香薷15g・白扁豆12g・厚朴12g. 水煎服あるいは酒を少量加えて煎服。
冷香飲子【處方】草果仁(五錢)附子(一錢)橘紅(一錢)炙甘草(一錢)【功效與作用】治老人虛人,伏暑煩躁,引飲無度,惡心疲倦,服涼藥不得者。
来复丹《局方》编辑
【用法】上药用五灵脂、二橘皮为细末,次入玄精石末及前二气末,拌匀以好滴醋打糊为丸,如豌豆大。每服30粒,空腹时用粥饮吞下,甚者50粒。小儿3~5粒,新生婴儿1粒。小儿慢惊风或吐利不止,变成虚风搐搦者,用5粒研碎,米饮送下;老人伏暑迷闷,紫苏汤下;妇人产后血逆,上抢闷绝,并恶露不止,及赤白带下,并用醋汤下。
【功用】和济阴阳,理气止痛,祛痰开闭。
【主治】心肾不交,上盛下虚。痰厥气闭,心腹冷痛,大便泄泻。
胃苓湯(イレイトウ):
【働き】食あたり、お腹のゴロゴロ、下痢、嘔吐、腹痛などを改善します。体力が中くらいの人で、胃腸に水分が停滞しているときに向きます。
【組成】•厚朴(コウボク)•蒼朮(ソウジュツ)•沢瀉(タクシャ)•猪苓(チョレイ)•陳皮(チンピ)•白朮(ビャクジュツ)•茯苓(ブクリョウ)•桂皮(ケイヒ)•生姜(ショウキョウ)•大棗(タイソウ)•甘草(カンゾウ)
【却(かへ)って】《副》普通に期待されるところとは反対に。むしろ逆に。 「歩いたほうが―早い」
驚癇(きょうかん) 驚いて痙攣を起す。
小児の病気の事を「驚癇(きょうかん)」と呼んだ。
子供の脳はものすごい勢いで発達していきます。 しかし未だ未熟なため、言葉で伝えるには限界があり、 疳の虫症状を現します。
¨
目が覚めたら黄連香薷散、五苓散の薬を飲ませる。
体が弱つている人は冷香飲子を用いる。
霍乱(かくらん)で、吐けば来復丹、二気丹。
食事が食べられる時は胃苓湯。
もし風が暑に入いると、脉が沈になったり浮になったりする。
搐搦(ちくだく)これは引きつけ、手が震え、目がひっくり返る、この時は、黄連香薷散に羌活を加え煎じて飲ませる。
搐搦を起こしているのに、子供では驚風、大人では癲癇(てんかん)と間違えて治療すると救う事が出来ない。
この治療は、巌氏という人が用いて知られている。
〈旅で暑邪の時) p46.
「若し旅途の中に、卒然として暈倒せは、急に扶けて陰涼の所に在らしめ、道上の熱土を掬(すく)て臍上に置いて撥開(はつかい)して竅(キョウ:あな)をなし、
其の中に人をして尿せじめ以て熱湯、並びに生薑(ショウキョウ)、或は大蒜(タイソウ:にんにく)、
各々一塊を嚼爛(シャクラン)し湯を以て送り下せば立ち所に醒む 」
¨
旅に出て薬もない時、にわかに暑を受けて倒れた時は涼しい所に連れていって寝かせる。
道端の土を持ってきて臍の上にのせ中を開け、その中に小便をする、
尿とは小便、その間に湯を沸かし生菫(生姜)、と大蒜を噛みくだいて湯で飲ませると立ち所に醒める。
〈鍼の治療〉  p46.
この大成論は、湯液家が書いたので風寒暑湿燥火という邪が論じられているが、
¨
鍼の方では、暑湿寒の治療法や理論がなく、
例えば、
中暑は霍乱(かくらん)、
下痢は泄瀉、痢病、
嘔吐、喘(ぜり)つくは喘咳、
喘急と別の形で扱います。
「鍼灸溯洄集:シンキュウ サッカイ シュウ」の本に霍乱(かくらん)、に二症あり、飲食に破れ、風寒暑湿に感じてなる。
湿霍乱は、腹痛、疼痛、吐瀉、下瀉、手肢、厥冷し六脉沈んでたよる事なす。
乾霍乱は最も治し難く死する事ついに有り。
手足厥冷し脉沈伏にして吐く事も、下す事も出来ず腹が渋る様に痛い、その時は委中に深く刺して血を出せ。
霍乱を起こすと腓返(こむらがえ)りを起こすので、陰陵泉、承山を深く刺す。
胸中、満悶(まんもん)して吐かんと発するには幽門を深く刺す。
吐瀉するには、尺沢、手の三里、関衝を浅く刺す。
転筋とは腓返(こむらがえ)りで、足の腱が引っばって動かない者には承筋、跗陽(ふよう)を深く刺す。
そこで問題になるのは、
暑を受けた邪というのは、熱があって吐いて下して、目を引きつける症状です。
¨
55 跗陽(ふよう)  所属経絡:膀胱経・ 取穴部位:崑崙穴の上3寸で、アキレス腱の前に取る.
『鍼灸重宝記』  跗陽 ふよう  (二穴)
取穴: 飛陽の下回四寸、外踝の上三寸、 筋骨の問。
灸法:灸三壮五壮。
針法:針六分、留ること七呼、
主治:霍乱(カクラン:日射病:激しい吐き気・下痢などを伴う急性の病気)転筋(テンキン:こむら返(がえ)り)、 腰足痛、頭重く、寒熱あるを治す。
〈適応と不適応〉 p47.
唯一つ問題になるのは、熱が出たり、吐いたり、下したりして脉が沈んでいるのは治療して治る。
というのは暑の邪は沈伏、脉が沈むのが正常である。
ところが、脉が浮大の時は治らず危険です。
これは暑邪だけでなく、下痢の時、脉が沈の時は治療して良いが、浮いている時は治療したらだめです。
例えば、疫痢、赤痢、腸チフスは、最初は脉は沈んでいるので治療可能ですが、三〜四日経つと脉が浮いてくる。
この時はおもわしくない。
腸チフスの熱は、最初一遍間上がり続け、一週間高熱で、一週間で下がる。
何にも食べてなくて摂生よければ、三週間で、大抵治る。
〈邪を受ける体〉 p47.
文明国家には、コレラの流行はありません。
栄養が良く体が丈夫であるからです。
コンラは熱と酸に弱い。
だから体が正常で平熱が高く、胃酸が活発であれば死んでしまう。
こういう考え方は、コンラだけでなく全ての疾病にいえる事です。
酒が悪いというが、酒の飲み方が問題である。
たくさん飲める人は飲まないがよい。
いくらでも飲める人は、体がどうかしているのだから鍼をして少しで酔える様になったら飲んでもよいのです。
そして、どこでも気分良く暮らす方法を考えるべきです。
治療していると、頭を捻ったり苦しんだりします。
体に害になるほど頭を悩ましてはいけない。
どうせ死ぬのは相手で自分ではないんだからと気楽に考えてやると脉も解りやすい。
というのは、私も最初は悩んだからです。
往診して患者を診てると、どう成ったか考え過ぎて眠れない事が随分ありました。
それほど真面目に成ったら体を壊します。
( 暑邪と風邪の違い 〉 p47.
暑邪を受けた時は、手足が厥冷し、脉沈んで熱がある。
風邪の時は熱が出ると同時に脉浮大になる。
例えば、
熱がある。吐き気がする、下しがある、手足が厥冷する、脉沈んでいる。
暑かな、風かな、という事で比較して診る事です。
そして暑邪なら治るから治療する。
風邪なら危険だからという事になる。
そういう区別をする為、こういう勉強をする訳です。
我々が患者を診る上に於いて、臨床に役に立つ様に考えて診る事である。
そうでないと勉強が空諭に終わってしまう訳です。
〈熱の治療〉 p48.
熱は体に出るが、手足には熱が回らず冷たくなる。
子供の病気の時、冷やす事を考えるが間違いです。
足を温める事を考えなくてはいけない。
足を温めると熱が下がり、目が引付けることも絶対にないのです。
冷やす事を、すぐに考えるが、温める事は考えない。
冷やして熱を取る事は大体間違っている。
熱を取る為、冷やすのではなく気持が良いから冷やすのです。
それは治療法でなく看護法なのです。
温める事は治療法になる。
気血を調和する。
上に参ぶっている熱を下げる事が出来る。
内臓疾患があると冷え症になる。
それは炎症が腹の方にあるので、腹の方に血液が集まって行き、足の方に血液が回らないから冷えるんで、反対に足の方を温めると血液が流れてくるのです。
以上の文は2016.10.21.掲載です。
—————————————-

これより以下の文章は、
2012.年に・・ HP記載アップした文章です。
4年前の文書も何か参考になればと思いそのまま掲載をいたします。

井上恵理先生の講義録「南北経驗醫方大成による病証論」を取り上げるHPコーナーです。

「南北経驗醫方大成による病証論」の概要を山口一誠なりに分類と纏めを試みてみます。

暑論の分類考察をするに当たって。

井上恵理先生の言葉は、私のような経絡鍼灸の初級者にとつて、

鍼灸師の理論と技術よりも、「経絡鍼灸師の心得」の方に心動かされます。

初めに、私、山口一誠が学ばなければならない「経絡鍼灸師の心得」を

井上恵理先生の言葉を参考にして、纏めてみます。

① 多くの古典を知り、
現代の臨床を統括する経絡理論構成を整理し、
自分のものにする事が経絡治療家としての発達に成ります。

② 勉学と技の習得に王道はありませんが、
最短のは道は、
東洋はり医学会と会員先生の全ての書籍を学習し、
指導教官の手技を体で真似る事だと私は思います。

③ 自分の身体に害をあたえるほど頭を悩ましてはいけない。

④ 気楽に考えてやると脉も解りやすい。

⑤ 古典を学ぶのは風寒暑湿燥火の区別をする為に、勉強をするのです。

⑥ 全てを一つの中に見るのが証であり、治療である。

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 三 、暑論

「南北経驗醫方大成 三 、暑論 」の原文   P43上段1行目 ~ より。

暑之為氣、在天為熱、在地為火、在人臓為心、是以暑之中人、先著於心、
凡中之者、身熱頭痛、煩渇口燥、甚則昏不知人、手足微冷、或吐、或瀉、或喘、或満。

入肝則眩暈頑痺。入脾則昏睡不覚。入肺則喘満痿躄。入腎則消渇。

其脉、多沈伏。一時昏中者、切不可便與冷水、並寝湿地。

古法。當以熱湯、先注及用布衣、浸熱湯熨、臍下及気海次々以湯淋布上、令暖氣透徹臍腹。俟其蘇生進以、黄連香?散、五冷散、若體虚者、冷香飲子。霍乱吐瀉来復丹、二気丹。夾食則、用胃苓湯 。若挟風則、其脉沈而浮。證有?搦、當於黄連香?散内、加羌活、煎服。却不可作驚癇、治之。多到不救 。此方及巖氏累用之、而有験者。

若旅途中、卒然暈倒、急扶在陰涼所、掬道上熱土、於臍上撥開作竅、人尿於其中以待求熱湯、並生薑或大蒜、各一塊嚼爛以湯送下、立醒。
ーーーーーーーーーーーー

井上恵理 先生の訳:

暑の気たる事、天に在りては、熱たり、地に在りては火たり、人の臓に在りては心たり、これを以って暑 の人に中(あた)る事、まず心につく、およそ、これに中る者は、身熱し頭痛し、煩渇して、口渇く、甚だしき時は昏(こん)して人を知らず、手足微冷(びれい)し、或いは吐し、或いは瀉し、或いは喘し、或いは満す。

肝に入るときは、眩暈、頑痺(ぐわんひ)す。 脾に入るときは、昏睡して覚めず。 肺に入るときは、 喘満痿躄(いへき)す。 腎に入るときは、消渇す。

暑さの脉は、沈にして伏、沈というのは浮かべたなく沈めてある事です。
伏と言うの沈めても無く沈以下になり脉がほとんど無くなった所にある脉です。
一時に昏中する者とは、急に暑邪で倒れた者でし切りに喉が渇くが、すぐに冷水を与えてはいけないし、湿った所に寝かしてはいけない。

古い〔治療〕法に、熱湯をもって拭いてやる、布切れを熱湯に浸して臍下、気海、丹田あたりを温めてや る事です。その布上に湯を注いで腹に湿気が透るようにする事です。

其の蘇生するをもって進むるに、黄連香?散、五冷散、を用いよ。
若し體虚の者は、冷香飲子。霍乱吐瀉せば来復丹、二気丹、食を夾む時は、胃苓湯を用ゆ。若し風を挟むる時は、其の脉、沈にして浮。症に畜搦あり、当に黄連香?散の内に羌活を加えて煎じ服すべし。却って驚癇となして、これを治すべからず。
多くは救わざる事を得ず。此の方、及巖氏が、累(しき)りに之を用いて験ある者に在り。

若し旅の途中に、卒然として暈倒せは、急にう扶(たす)けて陰涼の所に在らしめ、道上の熱土を掬(すくっ)て臍上に置いて撥開(はっかい)して竅をなし、其の中に人をして尿せしめ以て熱湯、並びに生薑(しょうが)、或いは大蒜(ニンニク)各々一塊を嚼爛(しゃらん)し湯を以って送り下せば立ち所に醒む。

P43上段1行目 ~ より。

井上恵理 先生の解説と言葉の意味:

暑と言うのは暑さの事です、―これは暑の気というものです。
天にあっては、熱という。天の気を暑気、暑の気は熱になる。地に在りては火という、暖房をとる火です。天に在る熱は太陽です。陽に在っては熱であり、陰に在っては人工的、火です。火は熱を出し、熱は火生じる。
こうゆう風に天地、陰陽の交流がなる訳です。

心は熱を出す事により機能するのです。〔生きている人間に〕体温があるという事は心に熱が有るからで。

熱を受けると、まず心に入る訳で、これに中ると身体が熱して頭痛する。
煩渇して、これは頻(しき)りに喉が渇く事。― 喉が渇く時には、水をのみたがりる。― 口渇く:口が渇く時には、水をのみたがらず、口が粘くて乾いて声が枯れるので、水ですすぎたくなる。

暑が深く入って身体を傷る時には、人事不省(ふせい)になる。
そして手足が冷え、物を吐いたり、下痢、胸息れ、喘というのは喘息と、胸息れの時もいう。
喘息は息がぜれつく。或いは満す。これは張る事です。胸が張るようになる、
お腹が張る、事。心満といえば、胸が張る事です。

肝に入るれば、眩暈、頑痺する。
眩暈は、めまい。頑痺は、頑固な治りにくい麻痺。
頑痺の「痺」は、固くなる、使えなくなる。機能が減退する意味です。
例えば感覚的麻痺も痺であり、筋肉が固くなるのも痺です。

脾に入ると、昏とんとして眠り続ける。昏睡状態になる。

肺に入る時は、喘満し、胸が満ちたける様になり、ゼイゼイと呼吸がぜれつく。
痿躄(いへき)とは、身体の手足が効かなくなる事です。

腎に入るときは、消渇す。渇きの病で喉が渇く事です。

暑さの脉は、沈にして伏、沈というのは浮かべてなく沈めてある事です。
伏と言うのは、沈めても無く沈以下になり脉がほとんど無くなった所にある脉です。

一時に昏中する者とは、急に暑邪で倒れた者でし切りに喉が渇くが、すぐに冷水を与えてはいけないし、湿った所に寝かしてはいけない。

古い〔治療〕法に、熱湯をもって拭いてやる、布切れを熱湯に浸して臍下、気海、丹田あたりを温めてやる事です。その布上に湯を注いで腹に湿気が透るようにする事です。
目が覚めたら、黄連香?散、五冷散、の漢方薬を飲ませる。霍乱で吐けば来復丹、二気丹、食事が食べられる時は、胃苓湯。
もし風が暑に入いると、その脉は、沈になったり浮になったりする。
チク搦の意味、これは引きつけ、手が震え目がひっくり返る。この時は、黄連香?散の内に羌活を加えて煎じて飲ませる。
〔注意〕チク搦を起こしているのに、子供では驚風、大人では驚癇(てんかん)と間違えて治療すると救うことが出来ない。

この治療は巖氏という人が用いて知られている。

旅に出て薬もない時、にわかに暑を受けて倒れた時は涼しい所に連れて行って寝かせる。道端の土を持ってきて臍の上にのせ中を開け、その中に小便をする。
その間に湯を沸かし生姜とニンニクを噛み砕いて湯で飲ませると立ち所に醒める。

P43下段8行目~P45上段終行目 より。

〈自然と体〉より。

―原文:暑之為氣、― 先生の訳:暑の気たる事、
― 先生の解説:
暑と言うのは暑さの事です、―これは暑の気というものです。―
〔人間も小宇宙の一つとして〕―天、地、自然の中に生きている為に、
この影響を受けています。

〈全体的見方〉より。

―原文:在天為熱、在地為火、
―先生の訳:天に在りては、熱たり、地に在りては火たり、
―先生の解説:
天にあっては、熱という。天の気を暑気、暑の気は熱になる。地に在りては火という、暖房をとる火です。天に在る熱は太陽です。陽に在っては熱であり、陰に在っては人工的、火です。火は熱を出し、熱は火を生じる。
こうゆう風に天地、陰陽の交流がなる訳です。

【全てを一つの中に見るのが証であり、治療である。】

【陰陽虚実のいずれの組み合わせを「本証」と判断するかは、より効果的に気血の調整が出来るかで診分ける。】

こうゆう事を陰とか陽とか、熱とか火とか個別に分けて考えると東洋の医学は解らなくなります。
これは陰虚だ、陽実だといっても実は同じなのです。
陰が虚しているから、陽の実が解るんです。
陽の方を主として取るべきか、陰の方を主として取るべきか、という事は、治療の結果が、どちらが早く、その証を調和することが出来るかによって、陰か陽かと決める訳です。
全てを一つの中に見るのが証であり、治療であるので、そこだけで、どちらか決める事は出来ない訳です。
例えば、人の前は陰である。後ろは陽である。
こう決めて全ての背中に出るのは陽の病気であり、
前に出るのは陰の病気であると決めることは出来ない訳です。

【食べ物の好み(五味)変動経絡の虚実の診分け方】

五味において酸を好む者は肝であると言えるが、肝の実証か、虚証かかは問題である。生理的にいって、病気の場合は、自分の身体に悪いものを食べたがる。
身体の調子が良い時には、身体の不足しているものを食べたがるということで、
酸の味で診断する事は、身体が虚か実か、生理的なものか、病気的なものか
で決めなければいけないのです。
酸が好きだから、肝虚だとは決められないのです。

〈心と熱〉より。

―原文:在人臓為心、
―先生の訳:人の臓に在りては心たり、
―先生の解説:― 心は熱を出す事により機能するのです。

〔生きている人間に〕体温があるという事は心に熱が有るからです。
この熱が下がっていけば死んでしまいます。 ―
〔熱が高すぎても低すぎても〕極端であれば、心を傷る事になる。―

〈心の症状〉より。

―原文:
是以暑之中人、先著於心、凡中之者、身熱頭痛、煩渇口燥、甚則昏不知人、
手足微冷、或吐、或瀉、或喘、或満。

―先生の訳:
これを以って暑の人に中(あた)る事、まず心につく、およそ、これに中る者は、身熱し頭痛し、煩渇して、口渇く、甚だしき時は昏(こん)して人を知らず、手足微冷(びれい)し、或いは吐し、或いは瀉し、或いは喘し、或いは満す。

―先生の解説:
熱を受けると、まず心に入る訳で、これに中ると身体が熱して頭痛する。
煩渇して、これは頻(しき)りに喉が渇く事。
― 喉が渇く時には、水をのみたがりる。
― 口渇く:口が渇く時には、水をのみたがらず、
口が粘くて乾いて声が枯れるので、水ですすぎたくなる。
暑が深く入って身体を傷る時には、人事不省(ふせい)になる。
そして手足が冷え、物を吐いたり、下痢、胸息れ、喘というのは喘息を思うが、胸息れの時もいう。
喘息は息がぜれつく。
喘渇は乾いて胸がおかしくなる。
咽渇、喘咽は飲むことによりおかしくなる。
或いは満す。これは張る事です。胸が張るようになる、お腹が張る、事。
心満といえば、胸が張る事です。

唯満ス、といえば腹満で腹が張る。 心満といえば、胸が張る。
この、心満とか、心虚、心痛、これは心臓ではなく、胸がという風にとればよい。

〈熱と知恵〉より。

【多くの古典を知り、現代の臨床を統括する経絡理論構成を整理し、自分のものにする事が経絡治療家としての発達に成ります。】

【勉学と技の習得に王道はありませんが、最短のは道は、東洋はり医学会と会員先生の全ての書籍を学習し、指導教官の手技を体で真似る事だと私は思います。】

―暑の邪は、まず心に着くが、他の臓に入る事もある。
熱は全てに影響を与える。
熱気焼却(ねつきしょうきゃく)という仏経の言葉がある。
不動様は後ろに魁(かい)を背負っている。
あれは知恵の炎で、知恵が多くあれば、
全ての事から守る事ができると言う事で不動教の教えを形にしたものです。
全身、真っ黒で何者にも染まらず、
知恵の炎(ほのお)で形においても心においても迷わないという事です。

所謂、熱というものは、
人間の身体にあっては知恵でありどんな者にも迷わされない。
治療もそうです。
多くのことを知り整理し、自分のものにする事が治療の発達です。―

経絡治療には、
秘伝、口伝、はないのです。
誰でも出来るようになるのが経絡治療です。
その為に一つの理論構成をする訳です。

〈 肝脾肺腎と書邪 〉より。   P45下段1行目~ より。

―原文:
入肝則眩暈頑痺。入脾則昏睡不覚。入肺則喘満痿躄。入腎則消渇。

―先生の訳:
肝に入るときは、眩暈、頑痺(ぐわんひ)す。 脾に入るときは、昏睡して覚めず。 肺に入るときは、喘満痿躄(いへき)す。 腎に入るときは、消渇す。

―先生の解説と言葉の意味:
肝に入るれば、眩暈、頑痺する。眩暈は、めまい。
頑痺は、頑固な治りにくい麻痺。
頑痺の「痺」は、固くなる、使えなくなる。機能が減退する意味です。
例えば感覚的麻痺も痺であり、筋肉が固くなるのも痺です。
脾に入ると、昏とんとして眠り続ける。昏睡状態になる。
肺に入る時は、喘満し、胸が満ちたける様になり、ゼイゼイと呼吸がぜれつく。
痿躄(いへき)とは、身体の手足が効かなくなる事です。
腎に入るときは、消渇す。渇きの病で喉が渇く事です。
〈脉と治療法〉より。    P45下段13行目~ より。

―原文:
其脉、多沈伏。一時昏中者、切不可便與冷水、並寝湿地。
古法。當以熱湯、先注及用布衣、浸熱湯熨、臍下及気海次々以湯淋布上、
令暖氣透徹臍腹。

―先生の訳:
其の脉、多くは沈伏する。
一時に昏中する者は、切に冷水を与うべからず、並びに湿地に寝さしめず。
古法。
当に熱湯を以って、先ず注ぐ、及び布衣を用いて熱湯に浸し臍下、
及び気海に熨すべし、次々に湯を以って、
布上に注ぎ暖気して臍腹に浸透せしるべし。

―先生の解説:
暑さの脉は、沈にして伏、沈というのは浮かべてなく沈めてある事です。
伏と言うのは、沈めても無く沈以下になり脉がほとんど無くなった所にある脉です。
一時に昏中する者とは、急に暑邪で倒れた者でし切りに喉が渇くが、すぐに冷水を与えてはいけないし、湿った所に寝かしてはいけない。

古い〔治療〕法に、熱湯をもって拭いてやる、
布切れを熱湯に浸して臍下、気海、丹田あたりを温めてやる事です。
その布上に湯を注いで腹に湿気が透るようにする事です。

【沈脉はというのは、浮かてなく沈めてある脉状の事です。】

【伏脉は、沈めても無く沈脉以下になり脉がほとんど無くなった所にある脉です。】

〈薬の用い方〉より。    P46上段7行目~ より。

―原文:
俟其蘇生進以、黄連香?散、五冷散、若體虚者、冷香飲子。霍乱吐瀉来復丹、二気丹。夾食則、用胃苓湯 若挟風則、其脉沈而浮。證有?搦、當於黄連香?散内、加羌活、煎服。却不可作驚癇、治之。多到不救。此方及巖氏累用之、而有験者。

―先生の訳:
其の蘇生するをもって進むるに、黄連香?散、五冷散、を用いよ。若し體虚の者は、冷香飲子。霍乱吐瀉せば来復丹、二気丹、食を夾む時は、胃苓湯を用ゆ。若し風を挟むる時は、其の脉、沈にして浮。症に? あり、当に黄連香?散の内に羌活を加えて煎じ服すべし。却って驚癇となして、これを治すべからず。
多くは救わざる事を得ず。

此の方、及巖氏が、累(しき)りに之を用いて験ある者に在り。

―先生の解説:
目が覚めたら、黄連香?散、五冷散、の漢方薬を飲ませる。霍乱で吐けば来復丹、二気丹、食事が食べられる時は、胃苓湯。
もし風が暑に入いると、その脉は、沈になったり浮になったりする。
?搦の意味、これは引きつけ、手が震え目がひっくり返る。この時は、黄連香?散の内に羌活を加えて煎 じて飲ませる。
〔注意〕?搦を起こしているのに、子供では驚風、大人では驚癇(てんかん)と間違えて治療すると救うことが出来ない。

この治療は巖氏という人が用いて知られている。

【先生の訳:若し風を挟むる時は、其の脉、沈にして浮。】

【先生の解説:もし風が暑に入いると、その脉は、沈になったり浮になったりする】
〈 旅で暑邪の時 〉より。  P46下段1行目~ より。

―原文:
若旅途中、卒然暈倒、急扶在陰涼所、掬道上熱土、於臍上撥開作竅、人尿於其中以待求熱湯、並生薑或大蒜、各一塊嚼爛以湯送下、立醒。

―先生の訳:
若し旅の途中に、卒然として暈倒せは、急にう扶(たす)けて陰涼の所に在らしめ、道上の熱土を掬(すくっ)て臍上に置いて撥開(はっかい)して竅をなし、其の中に人をして尿せしめ以て熱湯、並びに生薑(しょうが)、或いは大蒜(ニンニク)各々一塊を嚼爛(しゃらん)し湯を以って送り下せば立ち所に醒む。

―先生の解説:
旅に出て薬もない時、にわかに暑を受けて倒れた時は涼しい所に連れて行って寝かせる。道端の土を持ってきて臍の上にのせ中を開け、その中に小便をする。その間に湯を沸かし生姜とニンニクを噛み砕いて湯で飲ませると立ち所に醒める。
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1939年(昭和十四年)経絡鍼灸の理論と法則が世界で始めて確立された。

〈 鍼の治療 〉より。  P46下段12行目~ より。

この大成論は湯液家(とうえきか)が書いたので風寒暑湿燥火という邪が論じられているが、鍼の方では、寒暑湿の治療法や理論がなく、

例えば中暑は霍乱(かくらん)、下痢は泄瀉(せしゃ)痢病(りびょう)嘔吐、喘(ぜり)つくは喘息、喘急と別の形で扱います。

「鍼灸遡洄(さっかい)集」の本に、

霍乱に二症あり、飲食に破れ、風寒暑湿に感じてなる。

①湿霍乱は、腹痛、疼痛、吐瀉、下瀉、手肢、厥冷し六脉沈んでたよる事なす。

②乾霍乱は、最治し難く死することついに有り。

【鍼の方では、寒暑湿の治療法や理論がない、が。】

【中暑の鍼治療法として・・・】

〔刺絡法:委中穴に深く刺して血を出す対象は、手足厥冷し脉沈伏にして吐く事も、下す事も出来ず腹が渋る様に痛い病症の時に委中穴を用いる。〕

〔陰陵泉・承山穴に深く刺す対象は、霍乱で腓返(こむらがえ)りの症状の時。〕

〔幽門穴を深く刺す対象は、胸中、満悶して吐かんと発する症状の時。〕

〔尺沢・手三里・関衝穴に浅く刺す対象は、吐瀉する症状の時。〕

〔承筋・?揚穴に深く刺す対象は、腓返り(転筋)で、足の腱が引っ張って動かない症状の時。〕

【暑邪の特徴】

暑を受けた邪というものは、熱があって吐いて、下して、目を引きつける症状です。

【中暑と霍乱を考えるー山口一誠の考察です。】

〔中暑とは、暑が蔵に中(あ)った症状を指している。?〕
〔霍乱に二症あり、飲食に破れ、風寒暑湿に感じてなる。
①湿霍乱は、腹痛、疼痛、吐瀉、下瀉、手肢、厥冷し六脉沈んでたよる事なす。
②乾霍乱は、最治し難く死することついに有り。これ本文より。〕
〈 暑邪に対する適応と不適応 〉より。         P47より。

〔鍼灸治療の暑邪の適応者:脉が沈んでいるのは治療して治る。〕

熱が出たり、下したりして、脉が沈んでいるのは治療して治る。というのは暑の邪は沈伏、脉が沈むのが正常である。

〔鍼灸治療の暑邪の不適応者:脉が浮大の脉状の時は危険です。〕

これは暑邪だけでなく、
下痢の時、脉が沈の時は治療して良いが、
浮いる時は治療したらダメです。

〈 邪を受ける身体 〉より。  P47より。

【経絡治療家の心得を井上経理先生が話されています。】

―〔患者の〕治療をしていると〔治療家自身がその事で〕頭を捻ったり、苦しんだりします。― 私も最初は悩んだんです。
往診して患者を診ていると、どう成ったか考え過ぎて眠れない事が随分ありました。
―〔自分の〕身体に害をあたえるほど頭を悩ましてはいけない。
〔これも、治療家が人に成るための心得です。〕―
気楽に考えてやると脉も解りやすい。

〈 暑邪と風邪の違い 〉より。  P47より。

暑邪(しょじゃ)を受けた時は、手足が厥冷し、脉沈で熱がある。
風邪(ふうじゃ)の時は、熱が出ると同時に脉浮大になる。
例えば、熱がある。吐き気がする。下しがある。手足厥冷する。脉沈である。
〔この時〕暑邪かな、風邪かな、ということで比較して診るんです。
そして、
暑邪なら治るから治療する。
風邪なら危険だからと言う事になる。
そういう区別をする為に、こうゆう勉強をする訳です。
我々が臨床を診る上に於いて、臨床に役に立つように考える診る事である。
そうでないと勉強が空論に終わってしまう訳です。

〈 熱の治療 〉より。  P48より。

熱は体にでるが、手足には熱が回らず冷たくなる。
子供の病気の時、冷やす事を考えるが間違いである。足を温める事を考えなくてはいけない。
足を温めると熱が下がり、目が引き付ける事も絶対にないのです。

―熱を取る為、冷やすのではなく、

気持ちが良いから冷やすのです。

これは治療法ではなく看護法なのです。―

温める事は治療法になる。

気血を調和する。

上に昇っている熱を下げる事ができる。

内臓疾患があると冷え性になる。

それは炎症が腹の方にあるので

、腹の方に血液が集まって行き、

足の方に血液が回らないから冷えるんで、

反対に足の方を温めると血液が流れてくるんです。

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※ 詳しくは本文:「南北経驗醫方大成による病証論 井上恵理 先生 講義録」

発行:東洋はり医学会、をお読みください。

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