脾土経の変動c206

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   脾土経の変動

                            小項目 番号  c206

④ルート:足の太陰脾経

現代経絡鍼灸実践例から鍼灸古典文献を検証する。(素門霊蘭秘典論 第八、一章、五節)

脾胃者.倉廩之官(そうりんのかん).五味出焉

脾と胃は食料倉庫の管理者

太陰脾経は陽明胃経と表裏関係にあり、営衛の生成、吸収、全身への伝与、碑と共に後天の原気を主っている。
脾経は消化吸収に関する総合的な機能複合体と考える。
すなわち、口よリ食道を通して胃の腑に受けた五味(食事)を脾の共同作業により吸収し、
胃の気(活動エネルギー)を末端諸機関に伝与する役割である。
脾経は腹部の深部をことごとく支配関与している。

④ルート:足の太陰脾経:内経を中心とした流注・・・

③ルート陽明胃経の交わりを受けて、隠白穴より始り、足の内側の赤白肉の間を通り、内果の上方三寸の三陰交穴を過ぎ、膝の内側を通り、大腿の内側を経て、腹部に入り、これより任脈と側腹を横行しつつ上がる。
その経過は衝門より府舎に上がり横行して任脈の中極に行き、関元穴に上がり、再び外側の腹結、大横穴に行き、また任脈の下カン穴に至り、返って腹哀、日月、期門穴に上がる。
三たび任脈の上カン、中カン穴に至り、脾に属し胃を絡う。
そして、更に上行して胸に上がり心臓の部に終わる。
また、経脈はは腹哀穴より胸に上がって乳線の外方二寸の周栄より大包に下り、さらに反転上行して舌下に散るが如く終わる。

④ルート:足の太陰脾経 内経を中心とした流注図 c2061

c2061


④ルート:足の太陰脾経 (21穴)


1 隠白(いんぱく) 井木穴  足の第1指内側爪甲根部、爪甲の角を去ること1分に取る.
2 大都(だいと)  栄火穴  足の第1中足指節関節の前、内側陥凹部に取る.
3 太白(たいはく) 兪土原  足の第1中足指節関節の後、内側陥凹部に取る.
4 公孫(こうそん) 絡穴   太白穴の後1寸に取る.
5 商丘(しょうきゅう)    経金穴 内果の前下方陥凹部に取る.
6 三陰交 (さんいんこう)    内果の上3寸、脛骨内側縁の骨際に取る. (注1)内果の最も高いところから測る.(注2)足の太陰脾経・足の少陰腎経・足の厥陰肝経の足の三陰経が会いする.
7 漏谷(ろうこく)                内果の上6寸、脛骨内側縁の骨際に取る.
8 地機(ち き)     郄穴      内果の上8寸、脛骨内側縁の骨際に取る.
(注)脛骨内側顆の下際から下5寸に当たる.
9 陰陵泉 (いんりょうせん) 合水穴     脛骨内側顆の下、脛骨内側の骨際、陥凹部に取る.
(注)膝をたて、脛骨内側縁を擦上して指の止まるところに取る.
10 血海(けっかい)       大腿前内側にあり、膝蓋骨内上角の上2寸に取る.
血を調整する。血を下す、支持的はたらきあり。
11 箕門(きもん)           大腿前内側にあり、膝蓋骨内上角の上8寸、縫工筋と大腿直筋の間に取る.
12 衝門(しょうもん)  曲骨穴の外3寸5分、鼡径溝中の動脈拍動部に取る.
(注)大腿神経幹が走る.大腿動脈幹が通る.
13 府舎(ふしゃ)         大横穴の下4寸3分、衝門穴の上7分に取る.
14 腹結(ふっけつ)     大横穴の下1寸3分に取る.
15 大横(だいおう)     臍の外3寸5分に取る.
16 腹哀(ふくあい)    大横穴の上3寸、建里穴の外3寸5分に取る.
17 食竇(しょくとく)  中庭穴の外6寸、乳根穴の外2寸、第5肋間に取る.
18 天谿(てんけい)    ?中穴の外6寸、乳中穴の外2寸、第4肋間に取る.
19 胸郷(きょうきょう)  玉堂穴の外6寸、膺窓穴の外2寸、第3肋間に取る.
20 周栄(しゅうえい)  紫宮穴の外6寸、屋翳穴の外2寸、第2肋間に取る.
21 大包(だいほう)       脾の大絡 腋窩中央の下6寸、中腋窩線上の肋間に取る.

足の太陰脾経、その病は、
胃経と共に後天の原気を主るので、消化器の病はこの経に属する。
身体重く、関節痛み、疲れやすく、食事進まず、身体痩せて、心下部につかえて嘔吐し、あるいは、おくびをし不快であるが、放屁、便通すれば気持ちが良い。
腹痛、泄潟、便秘、黄疸、尿閉等を起す。股膝の内、腫れて足の第一指用いられず。
急性リュウマチは多くこの経に属す。
更に脾経は心臓を絡い、舌の根元に終わっているので、胸いきれ、心下痛、舌強 張り、浮腫みの病なす。
臨床上、心の病は脾虚症によるものが多い。
全身倦怠感。寝つきが悪く、床ばなれ悪い。

その流注から、足の母指内側(隠白穴)より始り、下腿大腿の内側を通り、腹に入ってその深部をことごとく支配し、横隔膜を貫き心経に交わり、さらに上行して舌の根元に至る。
したがって、腹部、胸部の内臓諸器官を総て支配しその病の治療に深く関与する。

急性病を呈する場合、本証は脾虚証となることが多い。
その現す病床は、全身倦怠、関節の痛み、食欲不振、嘔吐、下痢、胸苦しい、舌の強張りなどを現す。
これらを治す特効穴(ツボ)は隠白・太白・商丘・陰陵泉等である。
(しかし、腹部や胸部の穴は多くは局所の病症に使用する)
また、脾経は奇経の「衝脈」と流注を一部共有しているので、男女生殖器の病に効果のある穴が多い。
その内、三陰交・陰陵泉・血海・衝門穴は有名である。
また、地機は胃経の梁丘穴と共に急性下痢、腹痛に特効がある。
また、腎臓疾患は脾経の流注(ルート)により、本証は脾虚証となることが多い。

…………

脾土経の4大病症:

①消化・吸収障害、
②疲れやすく、
③身体重く、
④関節が痛む。
……………..

脾土経の変動:五臓の色体(よそおい)表。

基礎:土・脾・胃・五記:兪・五募:合・兪び、注ぎて身体重く節痛んで疲れたり。
病因:意思、智恵、信じる、五音:(宮音・喉音ア行、極く長く・低く・濁る、ド音、歌う)牛、土用、午後、中央、飲食・労倦、唇、肌肉、乳。
病症:味・黄色(土の色)・香・甘い・歌う・涎(よだれ)・思う・しゃっくり。
養生法その他:棗(なつめ)・き葵(あおい)・ぞく粟(あわ)・生数:五、成数:十・
五柄戸:つちのえ戊  つちのと己。

身体重く節痛んで疲れたり。:疲れ、むくみ、関節痛、だるい、太り過ぎ、痩せ過ぎ、これ脾土の証。

……………
脾土の変動、分類実践例。

① 食欲について。:食欲はあるが食べられない。ゲップが出て不快。食べてもすぐお腹がへる。
食欲旺盛。 常識では考えられないものまで食べて平気。 甘いものが好き。
② 大便について。:便秘。軟便。下痢。オナラをすると病状が改善する。
排便をすると病状が改善する。便意はあるが出ない。夜明け前に下痢をする。
③ 小便について。:尿が出にくい。 尿に泡が多い。
④ 睡眠について。:朝、起きれない。健忘症。寝ても寝たりない。
⑤ 皮膚について。:ヘルペス。 湿疹。
⑥ 肩や背中の状態:肩や背中がだるさ。
⑦ 腰部の状態。 :睡眠中、痛みで目が覚める。仙骨や仙腸関節が痛む。
⑧ 膝の状態。  :膝の痛み。膝の内側の痛み。膝の外側の痛み。膝に水が溜まる。膝の冷え。
⑨ 頭部の状態。 :前頭部の痛み。締めつけられる様な頭痛。メマイ・フラツキ・フッなる。
⑩ 腹部の状態。 :腹が張ってその痛みが移動する。下腹部の痛み。みぞおちの痛み。
精神的ストレスから腹痛。消化不良で清水を吐く。子宮の病変。
⑪ 風邪引きに伴う症状。:食生活の乱れからの風邪。徳利病。(アルコール飲み過ぎ)
働きすぎ 。 性生活の乱れ。嘔吐。 節々の痛み。
⑬ 流注より。  :天池、乳中、辺りのざらつき、痛み。

………….

子午治療は胃心包が脾三した。
心包経のツボ:内関(絡穴)・郄門(郄穴)
三焦経のツボ:外関(絡穴)・会宗(郄穴)

奇経治療の適応側は『病側優先』とする。

本治法:脾虚証(定則):太白(脾の兪土原・自穴)・大陵(心包経の原穴)

③ルート:足の陽明胃経

脾胃者.倉廩之官.五味出焉.

胃経は太陰脾経と表裏関係にあり、口より食堂を経て五味を受け、碑と共に後天の原気たるえい え営衛の生成、およびその全身への伝与を主っている。
ゆえに、 病気になると、胃の気の消長が、大きくその経過や予後の予測に関係する。
すなわち、病気や疲労の回復等、予後の判定に関与する。
また、この経の過ぎる所を支配し、その部、鼻・目・上歯・のど・乳房・肋間等の病を治し、心窩部に至って食欲および疲労回復、消化器系の疼痛、下痢等を治する穴が多い。
また、 鼠蹊部の帰来穴、気衝穴は男女生殖器疾患や下肢全体、特に膝関節の病に特効がある。
三里穴は全身の血流の調整をなす。貧血や誤治反応の調節をし、また全身的な健康灸として長期にわたって施灸が行なわれる。
また、後天の原気を主するのは、精神病に関係があり、その食欲不振にはこれを補い、陽実証で貪食不飽の際はこの胃経を瀉すことによって特効を上げる。
奇穴としての両膝眼は膝関節症によく効く。
また、 裏内庭は中毒性の食傷、車酔い等に知熱灸を施術する。

内経を中心とした流注・・・

②ルート手の陽明大腸経、迎香穴より、鼻茎を上がり、鼻の山根にて左右交わり再び別れ、目の内まなじり、を通り瞳の直下七部の承泣穴に至り、鼻の外側を下って上歯に入る。
出でて口の外側をぐるりと回り、下唇の下、承泣穴で左右交わり頤(おとがい)の下面を循って耳前に出て、頬骨弓をくぐつてセツジュ部に行き、客主人・懸釐・頷厭穴にて胆経に交わり、 上がって頭維穴を経て胆経の本神穴、督脈経の心庭穴に至る。
その支脈は頤より別れ喉頭を循り、胸骨と乳の間を下って、胃に属し碑を絡う。
下って気衝穴にて本経と合する。また、別に頤より別れて直行するものは缺盆穴より乳線ラインを通り、諸穴を連ねて腹直筋に沿って下り、気衝穴に至り、支脈を合して大腿の前外側を通り、膝頭を循り下腿の前外側を通り、足背にいたり、第二指の外端、厲兌(レイダ)穴に終わる。
また、支脈2本は三里より下腿外側を通り末端に終わるものと、もう一つは、衝陽穴より別れて、肝経の行間穴より指の下側を通り、脾経の始まるところ、隠白穴に至る。

③ルート:足の陽明胃経 内経を中心とした流注図 c2062

c2062


③ルート:足の陽明胃経 (45穴)

順番 ツボの名前 役割     場所
1 承泣(しょうきゅう)  瞳孔の下7分、眼窩下縁の中央、正視させて取る.
2 四白(しはく)  瞳孔の下1寸、眼窩下孔部、正視させて取る.
3 巨髎(こ りょう)  鼻孔の外8分、瞳孔線上に取る.
4 地倉(ちそう)  口角の外4分に取る.
5 大迎(だいげい)  下顎角の前1寸3分の陥凹部、動脈拍動部に取る.
(注)下部に顔面動脈が通る.
6 頬車(きょうしゃ)  耳垂下端と下顎角の間の陥凹部に取る.(注)皮下に耳下腺がある.
7 下関(げかん)  頬骨弓中央の下際陥凹部に取る. 咬筋
8 頭維(ず い)  額角髪際にあり、神庭穴の外4寸5分に取る.
9 人迎(じんげい)  喉頭隆起の外方1寸5分、動脈拍動部に取る.(注)頸動脈三角部、喉頭隆起の外方で頸動脈の拍動しているところにある.
高血圧症には頸動脈洞刺の部位として応用される. 総頚動脈
10 水突(すいとつ)  人迎穴と気舎穴の中央に取る.
11 気舎(きしゃ)  小鎖骨上窩中央に取る.
12 缺盆(けつぼん)  大鎖骨上窩にあり、鎖骨上際陥凹部、乳頭線上に取る.
(注)腕神経叢、鎖骨下動脈が深部にあり、拍動を触れる.
肺尖部に近いため刺鍼に注意を要する.
13 気戸(き こ)  鎖骨下際にあり、前正中線の外4寸、乳頭線上に取る.
(注)胃経の胸部各経穴は、前正中線の外4寸に取る.
14 庫房(こぼう)  第2肋骨上際にあり、乳頭線上に取る.
15 屋翳(おくえい)  第2肋間にあり、乳頭線上に取る.
16 膺窓(ようそう)  第3肋間にあり、乳頭線上に取る.
17 乳中(にゅうちゅう)  乳頭の中央で第4肋間に取る.
(注)乳頭はほぼ第4肋間に当たる.禁鍼・禁灸穴
18 乳根(にゅうこん)  第5肋間にあり、乳頭線上に取る.
19 不容(ふよう)  天枢穴の上6寸、巨闕穴の外2寸に取る.
20 承満(しょうまん)  天枢穴の上5寸、上?穴の外2寸に取る.
21 梁門(りょうもん)  天枢穴の上4寸、中?穴の外2寸に取る.
22 関門(かんもん)  天枢穴の上3寸、建里穴の外2寸に取る.
23 太乙(たいいつ)  天枢穴の上2寸、下?穴の外2寸に取る.
24 滑肉門(かつにくもん)  天枢穴の上1寸、水分穴の外2寸に取る.
25 天枢(てんすう) 大腸経の 募穴    臍の外2寸に取る.
26 外陵(がいりょう)  天枢穴の下1寸、陰交穴の外2寸に取る.
27 大巨(だいこ)  天枢穴の下2寸、石門穴の外2寸に取る.
28 水道(すいどう)  天枢穴の下3寸、関元穴の外2寸に取る.
29 帰来(きらい)  天枢穴の下4寸、中極穴の外2寸に取る.
30 気衝(きしょう)  天枢穴の下5寸、曲骨穴の外2寸に取る.
31 髀関(ひかん)  上前腸骨棘の下方、縫工筋と大腿筋膜張筋の間、陥凹部に取る.
32 伏兎(ふくと)  大腿部の前外側にあり、膝蓋骨外上角から髀関穴に向かい上6寸に取る.
33 陰市(いんし)  大腿部の前外側にあり、膝蓋骨外上角から髀関穴に向かい上3寸に取る.
34 梁丘(りょうきゅう) 郄穴 大腿部の前外側にあり、膝蓋骨外上角から髀関穴に向かい上2寸に取る.
35 犢鼻(とくび)  膝蓋骨下縁と脛骨上端との中間で膝蓋靭帯中に取る.
36 足三里(あしさんり) 合土穴   四総穴肚腹 膝を立て、外膝眼穴の下3寸に取る.(便法)膝を立て、脛骨の前縁を擦上して指の止まるところの外方陥凹部に取る.
37 上巨虚(じょうこきょ)  上巨虚(じょうこきょ)  膝を立て、足三里穴から解谿穴に向かい下3寸に取る.
38 条口(じょうこう)  足三里穴から解谿穴に向かい下5寸に取る.
39 下巨虚(かこきょ)  足三里穴から解谿穴に向かい下6寸に取る.
40 豊隆(ほうりゅう) 絡穴 外果の上8寸、条口穴の外方に一筋隔てた陥凹部に取る.
41 解谿(かいけい) 経火穴 足関節前面中央、前脛骨筋腱の外側陥凹部に取る.
42 衝陽(しょうよう) 原穴 足背にあり、第2・第3中足骨底間の前、陥凹部に取る.
43 陥谷(かんこく) 兪木穴 足背にあり、第2中足指節関節の後、外側陥凹部に取る.
44 内庭(ないてい) 栄水穴 足背にあり、第2中足指節関節の前、外側陥凹部に取る.
45 厲兌(れいだ) 井金穴 足の第2指外側爪甲根部、爪甲の角を去ること1分に取る.

・・・・・・・・・

胃経:  脾胃者.倉廩之官.五味出焉.

胃経が虚すると悪寒戦慄し、身の前寒く消化不良となって腹が張る。
また、実すると身の前熱して消化亢進し、貪食して不飽、常識では考えられない物まで食べて平気である。
鬱病を発し、更に進めば躁病となり走りわめく。
鼻の病、歯痛、顔面痛、扁桃炎、乳腫れ、心下痛、大腿部より漆関節、下腿前面、
足の先まで胃経の循る所が腫れ痛む。

臓象論より、
土性、背の第十二椎につき、胃カン〔息袋ね)上カン・中カン・下カン穴、
食道より五味(食物)を受け胃にて、腐熟され、脾の気をかりて砕きと溶かし吸収される。
これを胃の気と言い営(えい)となる。

 

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・ - 参考図書 ・ -

柳下登志夫先生の臨床考察「脾土の変動 」

「経絡治療学原論上巻臨床考察‐基礎・診断編」よりの抜粋。

【 】は山口一誠の考察文です。

詳しくは、

経絡治療学原論(上巻)臨床考察 ―基礎・診断編― をお読みください。

発刊:東洋はり医学会
http://www.toyohari.net/book.html

元東洋はり医学会会長の筆者:柳下登志夫先生が、
福島弘道著「経絡治療学原論(上巻)」をテキストとし講義した中で、
臨床上重要な箇所を抜粋したものです。
柳下登志夫著  定価3,000円 (送料400円) A5 230貢

※ 筆者:柳下登志夫先生の60年に及ぶ治療経験、
1日100人を越える患者さんと向き合い、臨床を通して古典を再検討したものです。
時代により変わりつつある患者さんの病に十二分に対応できるバイブルとなっています。
現代に生きる経絡治療家には必携の書籍です。


臨床考察「脾土の変動 」総論

臨床考察41: 四診法: 問診 頁:144・平成17年4月 収録

・十二経の病症と問診。

問診に当たって十二経病症は、虚実が表裏に出る事を認識しておく必要がある。

・五臓六腑および十二経の病症と問診。

ここでは原論を記し、私(柳下)の臨床上の注意(付記)を一言ずつ付け加えておく。
三、胃および胃経

原論:
身体の前を通過し、腹部膨満、胃部疼痛、嚥下困難、食欲不振、あくび、悪寒戦慄して精神不安定、鼻血、顔面麻痺、口角発疹(ヘルペス)、頚部腫痛、膝の腫脹、疼痛、および胃経の通りが腫れ痛み足の第二、第三趾(指)用いられず。

(付記):
患者の訴えで、身体の前が寒く、何もしたくないと言う時は虚を認め、じっとしていられず、走り、高き所に登り叫びたいという患者がいる。これは胃経の実で起こる。 これらは薬物治療である程度抑えられても、確実に消失させる事は難しく、胃経の虚実を調整する事により成功する。

四、脾および脾経

原論:
胃経と共に後天の原気を主るが故に、急性病の際は脾虚が多い。
消化障害、湿邪による病、浮腫、全身倦怠、体重節痛、食欲不振および過食、心下部疼痛、腹痛、下痢、膨満、舌根の硬直、動気、嘔吐、おくび、尿閉、・黄疸、膝の内側腫脹、冷感、足の第一趾(指)用いられず。

(付記):
ここに一言付け加ておかなければならない病症として「頭位置変換性の眩暈」である。
実が多く、虚は足が地に着かず身体がふらつく。

表題: 臨床考察27: 病因論・ 素質〔五行体質〕頁:94・平成15年11月 収録

3、脾土体質

肥満・痩身に関係があり、現代の日本は食に恵まれ、肥満の傾向にあり、そのための疾病に悩まされる。
陽性〔実証〕体質は、消化器関係の疾病に侵されると激しい症状を示すが治り易いタイプが多い。
しかし、〔肥満は命を脅かす生活習慣病の予備軍と考えて良い。よって、経絡鍼灸の適応症である。〕
陰性〔虚証〕体質は、病が慢性に陥りやすく長引く。他愛も無い周りの環境にも左右され易い。

表題: 臨床考察16: 経絡経穴の発見 頁:54・平成14年9月 収録

病症 : 【実すれば】:嘔吐下痢を起こし・・・

【虚すれば】:腹が張り、時には硬く盛り上がることもある。

例えば足の太陰脾経は公孫穴から分かれて足の陽明胃経に連絡する。
またもう一方の別枝は腹腔内にまで上行し消化器に纏わる。

【実すれば】:実すれば嘔吐下痢を起こし 現代医学的には「お腹に風邪のウイルスが入った」と言われるような症状を起こす。
(古典)昔は霍乱と言われた様な症状を呈する。
このような急性症状は取れてが、その後がはっきりしないといって〔鍼灸院に〕治療に来る患者がよくある。

【虚すれば】:これが虚した場合には、腹が張り、時には硬く盛り上がることもある。

〔治療穴は〕:こうゆう際には絡穴である公孫穴が治療の際に役立つ鍼経である。

「霊枢経脈篇」と言う裏づけは鍼灸師の治療に対する確信を硬くさせて余りあるものと信ずる。

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脾の変動:④足の太陰脾経

表題: 臨床考察36: 十二経の病症: ④足の太陰脾経 頁:128・平成16年10月 収録

脾経の病症も多く、用いる頻度も高い。しかしその際、選穴される太白・公孫・商丘・陰陵泉穴等は以外に的確にこれを捉えることが難しく、六部常位の脉の変化や、患者の体の変わり方に曖昧さを生じる。
しかしそれらは術者にとって有り難い事に、患者の自然治癒力によって支えられて治療ができている。
この点は、〔我が会での〕集団研究や個人個人の研鑽を待つところである。

表題: 臨床考察18:足の太陰脾経 頁:62・平成14年12月 収録

【誤治反応】

治療が終わると身体が軽くなって、来る時はやっと歩いてきたのに帰りは走って帰れそうに身体が軽くなったという患者がいる。
しかしだからと言って効果が上がったとばかりはいえない。

身体が軽くなり、色々仕事はできるたが、首の周りに湿疹や吹き出物が出来た。
あるいは急いで食べた訳でもないのに、胸に物が詰まって驚いた等と聞かされたら、その理由は脾実を補った為である。

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脾の変動:③足の陽明胃経

表題: 臨床考察36: 十二経の病症: ③足の陽明胃経 頁:127・平成16年10月 収録

胃経の外経に沿って病症があれば勿論〔脾の変動〕、実すれば食欲に異常を生じ、、特に冷たいものを好む。虚せば食欲無く、体の前面が冷え、寝るときはうつ伏せになり、人と接することを避ける。
実した時も人ごみを嫌い、他人との係わりを忘れ、発作的に荒々しい行動発作を起す。
しかもその行動について本人はハッキリと意識している。
意識しているのに、異常な行動を抑えられないという悲しむべき状態が起こる。
また虚した時は周りとの係わりを嫌いじっと動かず、部屋に引きこもる。(引きこも裏症候群となる)
経絡治療では、胃経を補瀉して効を奏することが多い。

表題:臨床考察18:足の陽明胃経 頁:62・平成14年12月 収録

【欠盆穴を中心とするナソ所見】

この径でまず注目しておきたいのは欠盆穴を中心とするナソ所見とその処置である。

【欠盆穴辺りのナソ所見は、躁鬱の治療穴】

胃経の病症に躁鬱が出てくるが、この辺りの処置で好転を診る。

【ムノ処理は局所治療・遠隔的に高価値】

【ムノ処理は注意を要する。禁鍼穴】

また、この経が鼠蹊部付近を通る時、ムノ処理に大きく係わる。
これもまた様々な病や症候に係わり、その処置に効果がある部である。
特質すべきは、これらの処置は局所治療に止〔留〕まらず、遠隔的に広い病症に関与し、臨床的に価値は高いが用い方には注意を要する。
禁鍼穴の所以であろう。

表題: 臨床考察23:胃の腑 頁:82・平成15年6月 収録

胃の腑は上脘穴の所で食道より食物を受け、体部が中脘穴、そして下脘穴より腐熟とろかされた内容物を小腸に送るという働きをしている。
五味を受け、胃の気、営血を臓し、脾臓と共に後天の原気の根源に関与している。

【診断触診::胃の腑の触診:任脉経上に硬い紐の様な索条物を触れる。】

しかし診断治療の場ではしばしば鳩尾穴上脘穴あるいは下脘穴にかけて、任脉経上に硬い紐の様な索条物を触れる。

【治療穴:胃の腑の硬い紐の様な索条物の治療は反応物の下端より始める。】

施療〔鍼灸治療〕は、この反応物の下端より始めると、治療回数を重ねるつどに建里・中脘・上脘・巨闕穴の方向で解消されて行き、それにつれて病も癒えてくる場合が多い。
大腹も目に見えて病状の変化を現す部のひとつである。


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