小里方式の実技修練法
項目 番号 e206
初めに、
鍼灸師にとって、
患者の脉状を良くする技(整脉力)の向上は、患者の病気を改善する為の鍼術の永遠の課題です。
そして患者の脉を診る技量(検脉力)の向上は、患者の病気を診断する為の必要不可欠の要件です。
経絡 鍼灸研究会では、3人以上のメンバーで患者役、施術者、検脉者と役割分担をして、刺鍼の練習をします。
特に、施術者の整脉力の点検をしてより質の高い刺鍼技術の向上を一番の目標にしています。
整脉力・刺鍼技術の向上の為には、心技体の施術上の問題点を、一つの手技をするつどに、
検脉者から適切なアドバイスをもらう事が必須の条件になります。
これを
集団修練会の場でより的確に、整脉力の点検と刺鍼技術の向上が出来て、同時に検脉力の向上に繋がる、実技方式が作られています。
それが、「小里方式の実技修練法」です。
この指導法は、
東洋はり医学会、初代副会長、小里勝之先生(昭和59年没)考案による技術修練法で、
「小里方式の実技修練法 」と命名されています。
経絡鍼灸では、研修の場で活用されてきており、歴史ある学習法です。
その「小里方式の実技修練法 」内容は、
施術者(刺鍼者)、指導者(診脉者)、模擬患者の三人が一組になってその役割を次々と交代しながら研修を重ねる方法です。
それは、 A 、 B、 C の三人を一組として、
A は模擬患者となり 、
B は術者としてその要穴に刺誠し 、
C は指導者(検診者)となって模擬患者の脉所を押さえながら(B術者の)要穴への刺誠に対し 、
主証・取穴・刺誠技術などにつき脉状・腹証その他の望・聞・問・切とにらみ合わせて事細かな指導を与えるのです。
※ この習練法は、次々にその役割を交代しつつ、話し合いによって修練を進める事で、
鍼灸師一人一人の「整脉力・刺鍼技術」の向上と「検脉力」の向上を集団の力でお互いに引き上げていけます。
《 小里方式 、実際の実技の手順 》
1 : 刺鍼者の手順
* 刺鍼者は、以下の手順を言葉に出しながら各手技を行います。
* 各手技は検診者(指導者)の指示を聞きながら次の段階に進めます。
* その中で自らの刺鍼技術の改善点を見つけていきます。
( 補法の場合の各手技文言 )
(1)、「切経します。」
(2)、「取穴しました。」
(3)、「押手を構えました。」
(4)、「鍼を入れました。」
(5)、「接触させました。」
(6) 、「押し続けます。」
(7) 、「左右圧をかけます。」
(8)、「抜鍼 。」
(9) 、「押手を取りました。」
〔 補法の刺鍼手技の「注意点」〕
1、立つ姿勢は、足の母指にやや体重をかけ、術者の正中線の位置で取穴する様にする。
2、切経は四指を揃え手掌全体で、ゆっくりと軽く肘を引く意識で行う。
3、取穴は手関節と指関節を曲げないで伸ばした状態で、示指の中指側でごく軽く取穴する事。
4、鍼の角度が45度よりも立つ傾向があるので、刺手を押手と同じ形にして安定させ、鍼の角度を低くする。
5、鍼先を接触したら離れない様に、鍼を軽く押し続ける。※接触は痛くない様に注意。
6、抜鍼のタイミングは継続で研究中だが、今のところ術者の2・3呼吸程度が適当と思われる。
7、刺鍼中は関元穴に天空の気を集め、鍼を通して患者に正気を送り込む様に意識する。
※その際、鼻で息を吸い、口から息を吐くが、吸気よりも呼気をゆっくりと吐く事。
8、抜鍼時は、できれば患者が息を吸い腹が膨れた時に行うと効果が上がる。※呼吸の補瀉。
9、フタは押手の母指か示指で行うが、すばやくするには拇指と示指を余り動かさない。
肩甲骨を下げ、その圧が腕から指に伝わる様にする。※その際、脊柱はまっすぐのままで、曲げない事。
2 : 検診者の手順
(1) 六祖脉(脉状診)で表現します。(脉状診は、浮沈・遅数・虚実を用います。)
(2) 他に脉の硬軟を用いても良い。
*検診者(指導者)は脉の変化を速断して刺誠者(受講者)に伝え、その原因と修正の指示を与えます。
*検診者(指導者)は検脉で指示を与えるが、腹部の変化や他の体の良否も確認することも忘れてはならない。
〔 脉状変化について、検診者役(指導者)の点検ポイント等 〕
<取穴をする時の脉状の変化 >
・粗暴な取穴、切経が速すぎると「数」脉となる。
・示指を押しつけるようにして切経すると脉が「硬く」 なる。
*この現象は、示指1本で切経・取穴をするためで、この修正は中指・薬指・小指を安定させ力を抜く様指導します。
*示指で切経・取穴する際は 、示指の小指側よりの角付近で行う様に指導します。
また、指は曲げずに自然に力を抜いた形を指導します。
<押手を作り穴所におく時の脉状の変化について。〉
*押手はそっと重からず軽からず置く事を実際に見せながら指導する。
・押手の下面が開いたまま穴所におくと脉は「開き」、それに重さが加わっていると「硬さ」 も出る。
*この修正は、空中で押手を作らせ下面の聞かない所を確認させ押手を完成させます。
・押手の下面が合わさっていても穴所に押手を置いたときに重すぎたり、衝突的に置くと脉は「硬く」なり「数」にもなる。
く刺鍼時の脉状の変化について。〉
・鍼尖の接触が粗暴だと「チクッ」と痛みを感じさせると、 脉状は「数」「硬くなるか虚」になる。
*この修正は、鍼を軽く持たせ「そっ」と皮膚面に近づけ「そっ」と接触させると脉状が締まる事を指導する 。
更に、「スー」 と鍼を押し続けていると更に脉状は和緩を帯びてくることを自覚させるよう指導する 。
<抜鍼時の脉状変化について。>
・抜鍼に当たって抜き方が遅いため押手で誠口を閉じるのが遅くなると脉状は「開いて虚」 になる。
*これを修正するには、抜鍼は弦絶の知く素早く抜き 、 間髪を入れず押手の母指か示指でしっかりと鍼口を閉じる。
このような動作ができると次第に良い脉状になることを目標に指導する 。
<指導者の心得について。>
*小里方式の実技研修は受講者のレベルによって多少の指導方法に考慮すべき所があり 、また個人個人の足りない点も浮き彫りになる。
よって、指導者は刺鍼者の力量を把握した上で、
脉状観察もあまり細かな言い回しは避けると共に多くの注意点を指示せず 、刺鍼術向上を一歩改善する為のアドバイスを適切に指導する。
3 : 模擬患者の手順
模擬患者は下記の感じを指導者(検診者)の求めに応じて発言する 。
(I)切経、押手など切診さ れた感じはどうか ( 重すぎるとか、軽すぎるとか。)
(2)刺誠された感じはどうか ( 痛みが有るとか、気持ちが良いとか。) 、何か新しい自覚症が出てきた時はその感想を要領よく手短に述べます。
(3)「 抜鍼や鍼口の閉じ方、下圧のかけ方などの感じはどうか」も その感想を要領よく手短に述べます。
4 : その他の検診者
(第一検脉者以外の検脉者は次の項目も観察して、適宜その感想を要領よく手短に述べます。)
(I) 腹証の変化
(2) 皮膚の艶、 色の変化
(3) 耳前動脈の変化
(4) その他:何か新しい発見が出てきた時はその感想を要領よく手短に述べます。
・
以上
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小里方式のポイント
1、小里方式の主要な第一の目的は「臨床での刺鍼技術の向上の為の習練法」です。
2、第一の目的をより高度なものにする為には「検脉力の向上」が追究されます。
・
次の「参考資料コーナー」において参考資1、2、3、4を掲載していますので、
小里方式を実り多いものにするためにご一読ください。
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参考資料 コーナー
参考資1、わかりやすい経絡治療(第4版)著者:福島弘道 東洋はり医学会発行
わかりやすい経絡治療 p215より。
四、小里方式による臨床実技の修練法
伝統的な鍼灸術は技術八十 % といわれ、
その実技を手から手に伝えることは総ての研修者の渇望するところであります。
しかし、これは言うべくして不可能な難問題であります。
本会では、三人一組による実技修練法によって、
この不可能を可能にし、多くの経絡治療家の育成に大きく貢献しております。
この指導法は、その考案者小里勝之氏の名前を取って
「小里方式の実技修練法 」と命名しました。
即ち、 A・B・C を一組とし、
Aはモデル患者となり
Bは術者としてその要穴に刺鍼し、
Cは指導者となって、モデル患者の脉所を押えながら、
要穴への刺鍼に対し主証・取穴・刺鍼技術等につき、脉状・腹証その他の望間間切と脱み合わせて、
事細かな指導を与えるのであります。
この修練法は、
会員間の研修においては次々にその役割を交代しつつ、ディスカッションによって修練を進 めるのであります。
しかし、C が特定の指導者である場合にはA ・B のみが交代し、
受講者も十数人までは同時に立ち合うことができるのであります。
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参考資2、
「小里方式パート1、マニュアル」
( 3 ) 小里方式による臨床実技の習練法 p21
《 解 説》
本会では、三人一組による実技習練法によってこの不可能を可能にし 、多くの経絡治療家の育成に大きく貢献している 。
この指導法はその考案者、 故小里勝之氏の名前を取って、「小里方式の実技習練法」と命名された。
即ち、 A 、 B、 C を一組と して
A は模擬患者となり 、
B は術者としてその要穴に刺誠し 、
C は指導者(検診者)となって模擬患者の脉所を押さえながら(B術者の)要穴への刺誠に対し 、
主証・取穴・刺誠技術などにつき脉状・腹証その他の望・聞・問・切とにらみ合わせて事細かな指導を与えるのである 。
この習練法は、会員問の研修においては次々にその役割を交代しつつ、話し合いによって習練を進める事もできるのである 。
しかし 、C が特定の指導者である場合には A 、Bのみが交代し受講者も十数人までは同時に立ち合うこともできるのである。
《 実際の実技の手順 》
〔実技を始める前に〕
*講師は模擬患者に対して、受講者全員がかならず1本は鍼をするようにさせること。
それには、あらかじめ模擬患者の人数と受講者の人数を考慮しておく 。
*講師は受講者に脉の変化を判らせる目的で誘導的な発言はしない。
(脉くが締まりましたよ 、脉が遅くなりましたよ 、脉が沈みましたね、、 などは言わない 。)
「 今、鍼をしました。 脉を診て感じたままを言って下さい。」
も し く は 「脉が診やすくなりましたか ?」 位にしておく 。
1 : 刺鍼者(B:術者)の手順
(1) 「 取穴を する 」
(2) 「 押手を作り 穴所に置く 」
(3) 「 鍼を穴所に近づけ接触させる 」
(4) 「 刺入」
(5) 「 左右圧をかけて抜鍼する 」
* 刺鍼者は、この手順を言葉に出しながら行うが検診者(指導者)の指示を聞きながら次の段階に進める 。
* その中で自らの足りない点を見つけるか、 指示を受ける 。
2 : 検診者の手順
(1) 六祖脉(脉状診)で表現する 。(脉状診は、浮沈・遅数・虚実を用いる。)
(2) 他に脉の硬軟を用いても良い。
*検診者(指導者)は脉の変化を速断して刺誠者(受講者)に伝え、その原因と修正の指示を与える 。
*検診者(指導者)は検脉で指示を与えるが、腹部の変化や他の体の良否も確認することも忘れてはならない。
〔脉状変化について〕
<取穴をする時の脉状の変化 >
・粗暴な取穴、切経が速すぎると「数」脉となる。
・示指を押しつけるようにして切経すると脉が「 硬く 」 なる。
*この現象は、示指1本で切経・取穴をするためで、この修正は中指・薬指・小指を安定させ力を抜く様指導する 。
〔参考イ:「補法の注意点」を参照されたし〕
*示指で切経・取穴する際は 、示指の小指側よりの角付近で行う様に指導する。
また、指は曲げずに自然に力を抜いた形を指導する 。
<押手を作り穴所におく時の脉状の変化〉
*押手はそっと重からず軽からず置く事を実際に見せながら指導する。
・押手の下面が開いたまま穴所におくと脉は「開き」、それに重さが加わっていると「 硬さ 」 も出る。
*この修正は、空中で押手を作らせ下面の聞かない所を確認させ押手を完成させる。
・押手の下面が合わさっていても穴所に押手を置いたときに重すぎたり、衝突的に置くと脉は「硬く」なり「数」にもなる。
く刺鍼時の脉状の変化〉
・鍼尖の接触が粗暴だと「チクッ」と痛みを感じさせる 。 脉状は「数」「硬くなるか虚」になる。
*この修正は、鍼を軽く持たせ「そっ」と皮膚面に近づけ「そっ」と接触させると脉状が締まる事を指導する 。
更に、「 スー 」 と鍼を押し続けていると更に脉状は和緩を帯びてくることを自覚させるよう指導する 。
<抜鍼時の脉状変化>
・抜鍼に当たって抜き方が遅いため押手で誠口を閉じるのが遅くなると脉状は「開いて虚」 になる。
*これを修正するには、抜鍼は弦絶の知く素早く抜き 、 間髪を入れず押手の母指か示指でしっかりと鍼口を閉じる。
このような動作ができると次第に良い脉状になることを目標に指導する 。
*小里方式の実技研修は受講者のレベルによって多少の指導方法に考慮すべき所があり 、また個人個人の足りない点も浮き彫りになる。
しかし 、小里方式パート1(普通部2年)では脉状観察もあまり細かな言い回しは避けると共に多くの注意点を指示せず 1, 2 点にとどめそれを次固までの宿題とさせる 。
3 : 模擬患者の手順
模擬患者は下記の感じを指導者(検診者)の求めに応じて発言する 。
(I)切経、押手など切診さ れた感じはどうか ( 重すぎる とか、軽すぎる とか)
(2)刺誠された感じはどうか ( 痛みが有る とか、気持ちが良い とか) 、 何か新しい自覚症が出てきたとか。
*その発言も手短に要領よく発言すること。
(3)「 抜鍼や鍼口の閉じ方、下圧のかけ方などの感じはどうか」 などを周りの者に伝える 。
4 : その他の検診者
(I) 腹証の変化
(2) 皮膚の艶、 色の変化
(3) 耳前動脈の変化
(4) その他
:::::::::::::::::
〔参考イ:「補法の注意点」〕
1、立つ姿勢は、足の母指にやや体重をかけ、術者の正中線の位置で取穴する様にする。
2、切経は四指を揃え手掌全体で、ゆっくりと軽く肘を引く意識で行う。
3、取穴は手関節と指関節を曲げないで伸ばした状態で、示指の中指側でごく軽く取穴する事。
4、鍼の角度が45度よりも立つ傾向があるので、刺手を押手と同じ形にして安定させ、鍼の角度を低くする。
5、鍼先を接触したら離れない様に、鍼を軽く押し続ける。※接触は痛くない様に注意。
6、抜鍼のタイミングは継続で研究中だが、今のところ術者の2・3呼吸程度が適当と思われる。
7、刺鍼中は関元穴に天空の気を集め、鍼を通して患者に正気を送り込む様に意識する。
※その際、鼻で息を吸い、口から息を吐くが、吸気よりも呼気をゆっくりと吐く事。
8、抜鍼時は、できれば患者が息を吸い腹が膨れた時に行うと効果が上がる。※呼吸の補瀉。
9、フタは押手の母指か示指で行うが、すばやくするには拇指と示指を余り動かさない。
肩甲骨を下げ、その圧が腕から指に伝わる様にする。※その際、脊柱はまっすぐのままで、曲げない事。
以上
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参考資3、
「小里方式パート2、マニュ アル 」p35
《 解 説》
小里方式パート1(普通部2年)のマニュ アルを熟知し以下の点を上乗せする 。
*民主自主公開による集団研修においては 、
その根底に共通の理解に基づく集団指導体系が確立していなければならない。
しかもそれは、単なる観念論ではなく 、 臨床実践によ る実技の裏付けが不可欠である 。
そこで、 模擬患者の脉所に指を当てている指導者(検診者)によって、
施術者の要穴への刺鍼に付き 、
その主証・ 取穴・ 刺鍼技術等にわたり綿密に観察し 、
技術習練に不可欠な「 手から 手への」 指導が濃厚に与えられる 。
*一方では指導者や居並ぶ研修者の協同観察により 、
施術者の技術の良否が、望・間・問・切の裏付けによって確認されるよう実践し、独善と自我自賛が防止されなければならない。
《 実際の実技の手順 》
*この実技研修は、講習生が主となるよう指導者は考慮する 。
*模擬患者をベッドに上げる。
*指導者は、講習生に模擬患者の証を立てるよう指示する 。
その際、中級者向け証決定の手順で行なわせるが、小里方式の実技研修が目的なので速やかに結論が出るよう適宜アドバイスする 。
「術者は証決定に納得した者からまずあたる 」
*以下、 実技の進行は「小里方式パート1(普通部2年)」のマニュ アルに準じて進める 。
〔 検脉者の対応 〕
*脉状観察も「小里方式パート1(普通部2年)」のそれを厳守する 。
*講習生(普通部2年生)が検脉者の場合 。
「 手の経穴に手技が行なわれる時は、空いている手の脉を講習生が診る」
*その、講習生の脉を指導者が診る 。
*指導者は脉状を診ながら 術者の手技についての良否の指示をする 。
「 講習生の検肱者は 、指導者の指示に基づく脉の変化を憶える 」
「 足の経穴に手技が行なわれる場合、手技を加える 経脉が配当されている方の脉を講習生が診、 指導者は反対側の手の脉を診る 」
講習生は、手技が加えられた経脉の変化( 正実になったか、 虚してしまったかなど)を術者に伝える 。
また、 半る範囲での脉状の変化も伝える 。
*指導者はその発言が適正であれば手技を続行させ、不適当な場合は、術者・検脉者双方に修正の指示を出す 。
〔 模擬患者の対応〕
*講師は「小里方式パート1(普通部2年)」用マニュ アルを熟知しておき 、模擬患者の発言を導き出す。
「模擬患者は」 、 高等部の講習生として、 周りの者に判りやすく、術者が行う実技の手順にしたがって、体の変化、術者のその実技につき良否を伝える 。
(1) 切経・取穴をされた時の感じ 。
(2) 押手を作った時の軽重の感じ ( どうして重く感じるのか、 軽すぎるのかなど)
(3) 刺鍼された時の具体的な感じ 。
〔 その他の検診者〕
*講師は 、 術者・ 模擬患者・ 講師以外の班員は 、 その他の検診者となって以下の事を確認する様指示しておく 。
(1) 腹証の変化
(2) 顔色や眼の変化
(3)上肢・ 下肢の皮膚の色や艶・ むくみなどの変化
*これらの良否を見られるように指導し 、臨床上で活かせる様に習得させる 。
*この指導によって繰り返し研修を重ねる事で、小里方式における脉状観察と、望・聞・間・切の変化が認識できるようになるまで指導する 。
〔 実技研修における考慮点 〕
「 補潟の実技はいずれも 講習生から行なわせる 。」
*邪の脉状観察は、各論部分も考慮して理解できるよう指導する 。
「講習生には自分の意見を発言させるように誘導し 、 大きな間違いがあれば、 基礎理論に沿った解説を行なう 。」
*実技研修の最後に、 指導者は模擬患者に 、 模範刺誠を行い 、 講習生に確認させる 。
この際、指導者からの誘導発言はせず、講習生の自由な発言を求める 。
以上
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参考資4、
柳下登志夫先生「経絡治療、論説・講演集」 平成19年10月、(NO19) p183より。
小里方式の技術修練
小里方式につきましては今までに大勢の人が色々と話在したり 実際にやってきた事なので改めて私が言う事もないのですが、
ひとつ大変誤解している点があるので、 この点は直してもらいたいと思います。
それは小里方式というのは刺鍼技術の習練法だという事なのです。
でもたいてい証の立て方から始まって取穴もやって治療全体に渡って習練するのが小里方式だと思っているのです。
これは間違いです。
小里方式というのは
「証決定も出来る、取穴の技術も持っている、切診の技術も持っている、そういう人たちが小里方式で刺誠の技術を勉強する、
あるいは刺鍼中の脉診の技術の習練をする 」 と言うのが目的なのです。
小里方式の中で証決定の勉強をするのではない。
証決定には証決定の勉強があり取穴は取穴でやる、
切診は切診でやるという事です。
之は分けて勉強しないと時間ばかりかかっていざ刺鍼技術の勉強をしよう、
となると時聞がなくなって刺誠技術の方がおろそかになってしまう、
という事があるので注意してもらいたいと思います。
取穴がうまくいかないと良い脉が出ないという事には間違いありませんが
そこにばかり時聞を取ると本当の目的である刺鍼技術の勉強がおろそかになってしまう。
ここはよくよく気を付けてもらいたいと思います。
小里方式の時には、
もう皆さん証決定も取穴も切診も出来るのだから
そこのところはさっと通って刺鍼技術の習練に入る
というのが小里方式の本当のやり方と言う事になります。
では実際にはどうやるのか、という事ですが、
まず模擬患者をこしらえて刺鍼鋪者が鍼を刺す。
その時は検脉者は脉を診ている。
その鍼、がうまくいっているかいっていないかを、刺鍼者に知らせるわけです。
研究科ではそういう時に
「どんな鍼をしたら脉がこうなるか 」を皆で意見を出し合って決めていく、
という方向でやってみてもらいたいと思うのです。
まず検脉者は今している鍼が良い脉をこしらえているか、どうか刺鍼者に伝える。
そして刺鍼している術者は今行なった刺誠法はどんな方法でやったかを検脉者や患者にも伝える。
このへんが今まではなかった点です。
あるにはあったが検脉者の方がずっと指導的な立場に立っていたので検脉者の言う通りにやっていたのですが、
そこにもうひとつ、刺鍼者が 「今、自分がどんな鍼をしたか 」を加えたとしたら
「そういう鍼をするとまずいんだな 」という事が検脉者にも模擬患者にも解かる。
また検脉者は例えば
「誠先がブスツとツボに当たった場合、脉がどんなふうになったか 」
それから 「鍼をする人が左右圧をぐっとかけて鍼を入れようとした場合、どんな脉になったか 」
また
左右圧があまり強くなくて鍼は確かに入る方向に進んだが鍼をあまり押しすぎたので鍼体がしなってうまく鍼が進まない。
たいていそういう時には模擬患者は痛みを感じるものです。
「今の鍼はこういうようにやったのだ 」と言う事もはっきりさせながら
小里方式を進めていくともっと有意義なものになります。
今までは検脉者が「これは押し手が重すぎだから、脉が硬くなった 」と言って鍼をする人が押し手を軽くした。
でも、もし今言った方法を使うとしたら、
「今、押し手が重かったのだが今度軽くした。 これで脉はどうか ? 」 とか
「鍼をぐっと押し込むようにやったのだが脉はどうなったか 」 と逆にそういう勉強も出来るのです。
つまり刺鍼技術の勉強だけでなく刺誠中の脉の変化の技術習練も出来る事になる。
検脉者が「これではまずい」と言ったら刺鍼者の方は刺鍼のやり方を変える。
そして脉がどう変ったか。
模擬患者は前にやってもらった鍼の感じと、
今、刺鍼者が変えた方法と
ではどっちが感じが良いか、という事も検脉者、刺鍼者に伝える。
その他にも模擬患者は自分の身体的変化を感じたらそれを伝える。
中には「その鍼はすーっと足の先から腹の方まで良い感じがした 」という人もいるんですね。
一番解り易いのは「鍼をしたらちくっとして痛い。今の鍼は痛かった 」
その時に脉はどう変わったか。
そうすると検脉者の方も「こういう脉になった時は鍼が痛かったのだなあ 」 と解かる。
だから今までの「検脉者は指導者で 刺鍼者は受講者だ 」と言う考えを捨ててしまって
「両方が同じ立場で小里方式の技術習練をするのだ 」と言うふうに変えた方が良いと私は思います。
また小里方式を周りで見ている人たちは模擬患者の体に出るいろんな変化、臍(サイ:へそ)は丸かったのに縦長になった。
あるいは横長になったというような事も鍼の刺し方によって大きく変る。
もちろん証が違ってもそう いう変化が出ます。
その他にも臍の左右の縁の変化も大変大きく変ります。
腹証も周りで見ている者が観察します。
そしてそれも一人二人でなく見ている全体の者がそれを観察し、それが良いか悪いかを話し合う。
鍼はうまく刺せているか。
補法は補法になっているか。
瀉法はちゃんと邪を瀉しているか、
というような事が身体の変化によって解かるものです。
そういう事も話し合いながら小里方式をして「小里方式の内容を変えていく」という事が必要だと思います。
他の事もそうには違いありませんが、こういう集団研修の時には自分の意見も発信するのが大事です。
自分の思った事を皆に聞いてもらう。
それが正しいかどうかもそこで知ると言う事になります。
もうひとつは自分が意見を発信するだけではない。
他の人の意見も受信する。
発信、受信、両方やらなければ集団で勉強したという価値がない。
だから自分の気持も柔軟にして皆が良いと言うことは自分にも良いはずなのだからそういう意見も自分に取り入れる
という柔軟な気持をもってこういう指導体制の中での勉強を進めるべきだと思います。
何でも先生から教わるという態度だけではいけない。
発信者がいて受信者がいて二つで進行方向が妨げられないで良いかもしれないが、
大きな成果を上げる集団研究においては一方通行は学聞を進めるという上では合理的、効率的でない。
だから今日も、教わるところがあればそれはすぐに取り入れる。
だけれど自分がいつもやっている方法でもこれだけの効果、かあるのだということを皆に知らせる。
そう いう気持が大事です。
鍼灸師の中には自分の技術を他人に知らせたら自分の営業がうまくいかなくなる、
という人がいるがそんなケチな事は考えない。
北海道の人が 「あの先生は良い先生だからあそこで病気を治してもらいに行こう 」 なんて事は数少ない。
今日もオーストラリアやアメリカから来ているけれど
「あの先生でなければこの技術がないのだ から、あそこで治療してもらおう 」 なんて言う事は不可能に近い。
もしあなた方が遠いところの技術者にその技術を教えれば、
「あなたがやらなくてもその技術を習得した人が行ってその患者を救う 」 という事になります。
大きな気持でいきましょうよ。
世界にはまだまだ我々がやろうとする分野はたくさんあるのですから。
今日もそれでいきましょう。
以上。
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