七八難

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難経 第七十八難

ゆっくり堂の『難経ポイント』第七十八難

 ank078

※ 七十八難のポイント其の一は、押手・刺手による鍼の刺入手技の補瀉法について述べている。

※ 七十八難のポイント其の二は、
左手の押手の指に気の来るを感じて、それに基準を置く鍼灸師は、鍼術の本当の妙術を行える者である。

※ 七十八難のポイント其の三は、
右手の刺手だけにたよって只(ただ)鍼を刺すことにのみ専念する者は、本当の鍼術を体得できない者である。

※ 難経 第七十八難 臨床&エトセトラより。

〔井上恵理先生の難経解説から〕

補法の刺入鍼の手技は、
気に随って入れる。無理に入れるなと。
呼吸とその所の硬さ・軟らかさに随って、軟らかく入る時には徐々に入れる。
硬い所は入れるなと。
軟らかい所はスーッと入るからといって乱暴に入れるんじゃない。
軟らかい所ほど徐々に静かに入れるのだと。
硬い所は入れない方がいい。
身体も同じですね。・・・・

 難経 第七十八難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

七十八難曰.
鍼有補瀉.何謂也.
然.
補瀉之法.非必呼吸出内鍼也.
知爲鍼者.信其左.不知爲鍼者.信其右.
當刺之時.必先以左手.厭按所鍼滎兪之處.彈而努之.爪而下之.
其氣之來.如動脉之状.順鍼而刺之.
得氣因推而内之.是謂補.
動而伸之.是謂瀉.
不得氣.乃與男外女内.
不得氣.是謂十死不治也

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七十八難の訓読

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(497号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

七十八の難に日く、
鍼に補瀉有りとは何んの謂ぞや。
然るなり、
補瀉の法は必ずしも呼吸出内(しゅつだい)の鍼にあらざるなり。
鍼をなすことを知るものは其の左を信(もち)い、
鍼をなすことを知らざるものは其の右を信う。
当(まさ)に刺の時にあたって、
先づ左手を以って鍼する所の滎兪の處(ところ)を厭按(いんあん)して、
弾(はじ)いて之を努(はげ)まし、 爪して之を下す。
其の気の来ること、動脉の状の如くにして、鍼を順にして之を刺す。
気を得て因(よ)って推して之を内(いれ)る。 是を補と謂う。
動じて之を伸ぷる、是を瀉と謂う。
気を得ずんば乃(すなわ)ち與(あた)うるに男は外にし、 女は内にす、
気を得ずんば是を十死不治と謂うなり。

詳しくは各先生の文献を参照されたし。

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七十八難の解説

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(497号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

七十八難の解説をします。

鍼術に補法と瀉法との手技上の区別がある。これについて説明しなさい。

お答えします。

補瀉の方法は必らずしも呼吸の補瀉のみではない、其の外にも最も大切な事がある。

〔解説補足〕
呼吸の補瀉は、呼に鍼を入れ吸に出すは補法であり、吸に入れ、呼に出すを瀉法と言うが、
この七十八難においては、手技としての押手と刺手の補瀉について述べている。

鍼術の本当の妙術を行える者は、左手の押手の指に気の来るを感じて、それに基準を置くのである。本当の鍼術を体得できない者は只(ただ)鍼を刺すことにのみ専念し、右手の刺手だけにたよっているのである。

鍼を刺入する時、先づ左手押手を以って、刺すべき穴の所を押し按じて次に指先で弾じいて、
気を張り努まさせ、更に爪甲で押して穴所を崔気させ、初めて鍼先をあて 刺入するのである。

鍼を刺入して左手に脉動の様な動気を感じて其の気に従って鍼を次第に入れるのである。

補法の刺入鍼の手技は、
気に随って、その所の硬さ・軟らかさに随って、鍼を押進める。これを補法の手技と言う。

瀉法の刺入鍼の手技は、
補法と同じように刺入して、更に鍼先を動かして鍼を伸べ邪気を洩らす手法を瀉法と言うのである。

鍼を入れて左の押手の指に気を感じなければ、男の場合は鍼を抜きあげて補法を遣ってまた入れる。
女の場合は深く鍼を入れて気の来るのを待つ、
この様な手技をしても気が来なければ、「十死不治」生きる事が出来ないと。

詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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 七十八難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(497号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕七十八難曰
〔訓読〕七十八の難に難に曰く。
〔解説〕七十八難の解説をします。

〔原文〕鍼有補瀉.何謂也
〔訓読〕鍼に補瀉有りとは何んの謂ぞや。
〔解説〕鍼術に補法と瀉法との手技上の区別がある。これについて説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕補瀉之法.非必呼吸出内鍼也.
〔訓読〕補瀉の手法は必ずしも呼吸出内(しゅつだい)の鍼にあらざるなり。
〔解説〕
補瀉の方法は必らずしも呼吸の補瀉のみではない、其の外にも最も大切な事がある。

〔解説補足〕
呼吸の補瀉は、呼に鍼を入れ吸に出すは補法であり、吸に入れ、呼に出すを瀉法と言うが、
この七十八難においては、手技としての押手と刺手の補瀉について述べている。

〔原文〕知爲鍼者.信其左.不知爲鍼者.信其右.
〔訓読〕
鍼をなすことを知るものは其の左を信(もち)い、 鍼をなすことを知らざるものは其の右を信う。
〔解説〕
鍼術の本当の妙術を行える者は、左手の押手の指に気の来るを感じて、それに基準を置くのである。本当の鍼術を体得できない者は只(ただ)鍼を刺すことにのみ専念し、右手の刺手だけにたよっているのである。

〔原文〕當刺之時.必先以左手.厭按所鍼滎兪之處.彈而努之.爪而下之.
〔訓読〕
当(まさ)に刺の時にあたって、先づ左手を以って鍼する所の滎兪の處(ところ)を厭按(いんあん)して、弾(はじ)いて之を努(はげ)まし、 爪して之を下す。
〔解説〕
鍼を刺入する時、先づ左手押手を以って、刺すべき穴の所を押し按じて次に指先で弾じいて、
気を張り努まさせ、更に爪甲で押して穴所を崔気させ、初めて鍼先をあて 刺入するのである。

〔原文〕其氣之來.如動脉之状.順鍼而刺之.
〔訓読〕其の気の来ること、動脉の状の如くにして、鍼を順にして之を刺す。
〔解説〕鍼を刺入して左手に脉動の様な動気を感じて其の気に従って鍼を次第に入れるのである。

〔原文〕得氣因推而内之.是謂補
〔訓読〕気を得て因(よ)って推して之を内(いれ)る。 是を補と謂う。
〔解説〕
補法の刺入鍼の手技は、
気に随って、その所の硬さ・軟らかさに随って、鍼を押進める。これを補法の手技と言う。

〔井上恵理先生の難経解説から〕
気に随って入れる。無理に入れるなと。 呼吸とその所の硬さ・軟らかさに随って、軟らかく入る時には徐々に入れる。 硬い所は入れるなと。 -
軟らかい所はスーッと入るからといって入れるんじゃない。 軟らかい所は徐々に静かに入れる。
硬い所は入れない方がいい。  身体も同じですね。・・・・

〔原文〕動而伸之.是謂瀉.
〔訓読〕動じて之を伸ぷる、是を瀉と謂う。
〔解説〕
瀉法の刺入鍼の手技は、
補法と同じように刺入して、更に鍼先を動かして鍼を伸べ邪気を洩らす手法を瀉法と言うのである。

〔原文〕不得氣.乃與男外女内.不得氣.是謂十死不治也.
〔訓読〕
気を得ずんば乃(すなわ)ち與(あた)うるに男は外にし、 女は内にす、
気を得ずんば是を十死不治と謂うなり。
〔解説〕
鍼を入れて左の押手の指に気を感じなければ、男の場合は鍼を抜きあげて補法を遣ってまた入れる。
女の場合は深く鍼を入れて気の来るのを待つ、
この様な手技をしても気が来なければ、「十死不治」生きる事が出来ないと。

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気の去来について。

井上恵理 先生の経験的臨床実践講義から。:

この気の去来と言うのは「感応」することなので -
- 補法の難しさは、この加減にあると思う。-
例えば、鍼を刺す前に押手を押していて、
そして鍼をスーッと入れてやるとグーッと
押手の下が持ち上がるような様な感じ。
いわいる硬くなる感じ、
弾力が出て来た様な感じがする事がありますね。
この時にやめる。
それから硬いなと言う時にスッと入れてやるとスーッと軟らかくなる事がある。
この時にやめる。
復溜・陰谷・太淵・経渠・尺沢・太白。
ああ言う脉のある所は鍼を刺している内に脉が出て来ます。
脉が動く様になって来る。
その時にやめる。

やりすぎると無くなって、「瀉法」になってしまう。

そうゆう点で、本治法はテイ鍼でやると間違いない。
もちろん押手をちゃんと置いて、テイ鍼を何回もズーッと押し下げてみる。
そしてググーッと来た時にやめる。

この感じを覚えるまでのものです。

そして、頭とか、お腹、背中は普通の鍼を使っても脉は整う。と・・・

 

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