七六難

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難経 第七十六難

ゆっくり堂の『難経ポイント』第七十六難

 ank076

※ 七十六難のポイント其の一は、補法と瀉法の理論と手技が記述されています。

※ 七十六難のポイント其の二は、

 虚性の邪の処理「補中の瀉法」の参考になる、理論と手技も展開されています。

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 ※ 難経第七十六難 臨床&エトセトラより。

鍼の刺入方法はとても繊細なんだとあらためて知らされまっした。

第七十六難と現代の経絡本治法の基本刺鍼の手技を合わせ考えるともう少し腕があがるかも。

難経 第七十六難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

七十六難曰.
何謂補瀉.當補之時.何所取氣.當瀉之時.何所置氣.
然.
當補之時.從衞取氣.當瀉之時.從榮置氣.
其陽氣不足.陰氣有餘.當先補其陽.而後瀉其陰.
陰氣不足.陽氣有餘.當先補其陰.而後瀉其陽.
榮衞通行.此其要也.

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七十六難の訓読

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(494号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

七十六の難に曰(いわく)、
何をか補瀉と謂(い)う、
當(まさ)に補うべきの時。
何(いず)れの所より気を取り、
當瀉すべきの時、何れの所に置くや。
然るなり、
當に補うの時は衞(え)より気を取り、當に之(これ)を瀉する時は榮(えい)より気を置く。
其の陽氣不足、陰氣有余は、當に先づ其の陽を補って、しかして後に其の陰を瀉すべし。
陰氣不足、陽氣有余は、當に先づ其の陰を補って、しかして後に其の陽を瀉すべし。
榮衞運行す、此れ其の要なり。


詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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七十六難の解説

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(494号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

七十六難の解説をします。

補瀉について説明しなさい。
また、補法は何れの所から気を取り入れるのか、
また、瀉法とは、何れの所より有余の気を抜き去るのか説明しなさい。

お答えします。

補法は衛気(えき)の循(めぐ)っている表皮の所即ち、衛気は脉外を循って浅い部分であるから、ここに先づ鍼を浅く斜めに入れて此処の気の至るを待って気の動じるを感じたら内に入れて其の気を陰の部に入れるのである。

瀉法は栄気の分、即ち栄気は脉中を循り深い部分であるから、鍼を深く入れ留めて、其の気の至るを待って、其の有余の邪気を抜き取り瀉するのである。

陽気不足は陽虚、衛気の虚、陰気有余は陰実栄気の邪実と解するのが普通である故(ゆえに)先づ陽の不足の所を補ってその後、陰の有余(邪実)を瀉するのが順当である。

陰気不足は陰虚、栄気の虚、陽気有余は陽実、衛気の実である、従って補が先であるから栄気を補 って、然して後に陽気を潟するのが順序となる。
以上のように衛気栄気の虚実に従って補潟の先後をわきま与えて行えば栄衝の通行が正常となり病は自づと癒るものである。此れ鍼師の要道である。

詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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 七十六難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(494号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕七十六難曰.
〔訓読〕七十六の難に曰(いわく)、
〔解説〕七十六難の解説をします。

〔原文〕何謂補瀉.當補之時.何所取氣.當瀉之時.何所置氣.
〔訓読〕
何をか補瀉と謂(い)う、
當(まさ)に補うべきの時、何(いず)れの所より気を取り、
當に瀉すべきの時、何れの所に置くや。
〔解説〕
補瀉について説明しなさい。
また、補法は何れの所から気を取り入れるのか、
また、瀉法とは、何れの所より有余の気を抜き去るのか説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕當補之時.從衞取氣.
〔訓読〕當に補うの時は衞(え)より気を取り、
〔解説〕
補法は衛気(えき)の循(めぐ)っている表皮の所即ち、衛気は脉外を循って浅い部分であるから、ここに先づ鍼を浅く斜めに入れて此処の気の至るを待って気の動じるを感じたら内に入れて其の気を陰の部に入れるのである。

〔解説補足1〕「気を取る」の意味は「気を取り入れる」の意である。

〔解説補足2〕
東洋はり医学会における基本刺鍼【補法】の手技。
用鍼(使用する鍼)は銀1番鍼。
1、経に随(したが)いごく軽く取穴する。
2、押手を軽く構える。
3、竜頭を極めて軽く持ち、その鍼を押し手の母指と示指の間に入れる。
4、鍼先を静かに穴所に接触させる。
5、とどめたまま、鍼がたわまないように静かに押し続ける。
(その際、患者の気の状態によって、鍼が進んだり、進まなかったするので、術者は無理に鍼を進めようとしない。)
6、鍼先が動かなくなったのを度とする。
7、押手の中に鍼があるのが分かるくらいの左右圧、ゆっくりとかける。
8、抜鍼と同時に押手にて穴所(けつしょ)に蓋をする。

〔原文〕當瀉之時.從榮置氣.
〔訓読〕當に之(これ)を瀉する時は榮(えい)より気を置く。
〔解説〕
瀉法は栄気の分即ち栄気は脉中を循り深い部分であるから、鍼を深く入れ留めて、其の気の至るを待って、其の有余の邪気を抜き取り瀉するのである。

〔解説補足1〕「気を置く」とは、邪気を抜き捨て置くの意味です。

〔解説補足2〕
東洋はり医学会における基本刺鍼【瀉法】の手技。
用鍼(使用する鍼)はステンレス1番鍼。
1、経に逆らい取穴する。
2、押出を軽く構える。
3、竜頭は補法よりやや強めに持ち、その鍼を押し手の母指と示指の間に入れる。
4、鍼先を穴所に接触させる。
5、押す・止めるを繰り返す。(刺動法:目的の深さまで鍼先を刺入する。)
6、鍼が止まる(抵抗を)度として、
鍼が滑らないよう押し手の母指と示指でしっかり保持し、鍼先の方向に下圧をかける。
7、刺手は押手の下圧と共にもっていく。
8、下圧の限度は押し手で感じる。(鍼先が進まない所)
9、鍼口は閉じずに、ゆっくりと抜鍼する。
10、抜鍼後一呼吸おいて、押手を取る。

詳しくは、
基本刺鍼の整脉力と検脉力の向上の為の実技方式。をリンクしてご覧ください。
http://yukkurido.jp/keiro/e1/e104/e216/

〔原文〕其陽氣不足.陰氣有餘.當先補其陽.而後瀉其陰.
〔訓読〕其の陽氣不足、陰氣有余は、當に先づ其の陽を補って、しかして後に瀉すべし。
〔解説〕
陽気不足は陽虚、衛気の虚、陰気有余は陰実栄気の邪実と解するのが普通である故(ゆえに)先づ陽の不足の所を補ってその後、陰の有余(邪実)を瀉するのが順当である。

〔原文〕陰氣不足.陽氣有餘.當先補其陰.而後瀉其陽.榮衞通行.此其要也.
〔訓読〕
陰氣不足、陽氣有余は、當に先づ其の陰を補って、しかして後に其の陽を瀉すべし、
榮衞運行す、此れ其の要なり。
〔解説〕
陰気不足は陰虚、栄気の虚、陽気有余は陽実、衛気の実である、従って補が先であるから栄気を補 って、然して後に陽気を潟するのが順序となる。

以上のように衛気栄気の虚実に従って補潟の先後をわきま与えて行えば栄衝の通行が正常となり病は自づと癒るものである。此れ鍼師の要道である。

〔解説補足〕

「補中の瀉法」の手技について。

虚性の邪の基本の邪実の処理を「補中の瀉法」と呼称します。
実脉には、大きく三つの脉状があります。
「外邪実」・「旺気実」・「虚性の邪」です。
外邪実とは、風・寒・暑・湿・燥・火の六種の外からの病邪を六淫の外邪が身体に作用して 起こります。また、不外内因の暴飲暴食によっても現れます。
旺気実とは、生体の内部的アンバランス、歪みよる邪の脉状です。
虚性の邪とは、虚体あるいは、それに近い体力の持ち主が、慢性的な病気や半健康状態にある時に、内因による邪により、旺気実の脉状を現すものです。
「虚性の邪」は3つの脉状に分類され、それぞれを治す手技があります。
「虚性の邪」の分類は塵(ジン)・枯(こ)・堅(ケン)の3つです。
枯の手技
(1)経絡の流れに逆って取穴し、押手を構える。
(2)刺手は竜頭を軽く持ち、補法の手さばきで2~3ミリ刺入し、
充分に補った後、幅狭に抜き刺しを軽く加え、抵抗が取れたら、
(3)押手の下面にて穴所に密着させ、スーッと抜き去る。

詳しくは脉状に応じる手技をリンクしてご覧ください。
http://yukkurido.jp/keiro/e1/e104/

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井上恵理先生の難経七十六難解説を参考にして山口一誠の考察文にて、「補法」「瀉法」「まとめ」の各コーナーに分類します。

「補法」コーナー

補法の手技は衛気(えき)である所の気を補うものです。
そして、衛(え)という気は脉外にあります。
衛気と言うのは「栄血」の周りにあり、
〔護衛し〕ているんだと考えていいと思います。
ですから、
補うと言う時には経脉の表面(表皮)にある部分・浮いている部分、
これを「陽氣」と言っていますから、そこを補うのです。
-補法と言う鍼は経脉のどこへでも補う事が出来る。
無論、経穴を離れてと言う意味ではない。
経穴がある所で言えば浅くても補法は出来る。
-私達が今到達している〔経絡臨床理論で〕は、「衛気」は、目や手で探り得ない、
所謂ものとしてみることの出来ない部分だと考えればいい。
-「気」を整えると言う補法のツボと言うものは、凡(おおよ)そ、ものとして見ることが出来ない所が多い。
手足の陰経の五行穴と言う所には余り圧痛とかは出ない。
-経渠・列欠・尺沢など、こうゆうツボは圧痛も何もない所でありながら、
我々が治療をすると脉が整うと言う所になる。
これは気を補ったからです。

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「瀉法」コーナー

瀉すと言うのは栄血を瀉すのだと。-
栄血は脉中を通っている。
-栄血は血管の中と考えてもいいが、
いわゆる深い中心部(経絡の中心部)と考えればいい。
瀉すると言う時にはなるたけ中心部に刺さなくてはいけない。
瀉法の場合にはものとして取る。
「栄血」は有形的なもの、
目で見る事も手で探る事も出来る。
それ故に瀉法と言う鍼をする場合は、
必ずそこには圧痛とか硬結たか、
何かものとしてある所に刺すべきなんです。

-お灸は、栄血、即ち気血の「血」に対する治療です。
だから、
お灸をやるなら、圧痛点を探って遣った方がいい。

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「まとめ」コーナー

七十六の難のポイントは、
鍼灸の「補法」と「瀉法」について述べられている。
何を補瀉と言うかの解説である。

當(まさ)に補うべきの時。
何(いず)れの所から気を取ればいいのか?
言葉の意味:
「気を取る」と言うのは「その気の不足を加えて補う」意味である。

當に瀉すべきの時、
何れの所に置くや。とは、
その気を瀉して捨て置くと言う意味の「置く」です。?

「補う時には衛を取れ・瀉する時には栄を取れ」
と言う意味は、
ものとしてある所と、無い所という意味にも取れると思います。

陰気実して陽気虚している場合には、
その陽を補ってから陰を瀉せ。瀉法を後にしろと。

陰気不足、陽気有余はまず陰を補ってから陽を瀉せと。
何れも瀉法を後からやれという事です。

こうすれば、
榮衞は正しく運行する。
これが、
補法と瀉法の要(かなめ)である。。と・・・

こんな感じに分類しました。
まだ、私の臨床実践が充分ではありませんので、
井上先生の講義の考察までは出来ません。
何時の日か・・・

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経絡鍼灸師の学友ならびに先輩諸先生方の
ご意見・間違いの指摘・などを、
当院へお送りくだされば幸いです。
メール : yukkurido@ybb.ne.jp
まで。。。。。

 

 

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