五五難

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難経 第五十五難

  ank055

 

ゆっくり堂の『難経ポイント』第五十五難

※ 五十五難のポイント其の一は、腹中に積と聚と言う二つの塊が出来る事がある。

※ 五十五難のポイント其の二は、
積は五蔵の陰気が滞り積(つも)って出来たもので、
陰気から出来た積は陰性で沈んで下に深く伏して所在する。

※ 五十五難のポイント其の三は、
聚は六府の陽気が滞り集(あつま)って出来たもので、
陽気から出来た聚は陽性で浅く浮いていて移動する。

※ 難経第五十五難臨床&エトセトラより。・・・・・・
〔井上恵理先生の難経五十五難、臨床解説から積聚の区別を理解されたし。〕

難経 第五十五難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

五十五難曰.
病有積有聚.何以別之.
然.
積者.陰氣也.聚者.陽氣也.
故陰沈而伏.陽浮而動.
氣之所積.名曰積.氣之所聚.名曰聚.

積者.五藏所生.聚者.六府所成也.
積者.陰氣也.其始發有常處.其痛不離其部.上下有所終始.左右有所窮處.
聚者.陽氣也.其始發無根本.上下無所留止.其痛無常處.謂之聚.
故以是別知積聚也.
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五十五難の訓読

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(463号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

五十五の難に日く、
病に積(しゃく)あり、聚(じゅう)あり、何を以(も)って之(これ)を別(わか)たん。
然るなり、
積は陰気なり、聚は陽気なり、
故に陰は沈んで伏し、陽は浮んで動ず、気の積む所を名(なづ)けて積と日い、
気の聚(あつま)る所を聚と日う。
故に積は五蔵の生ずる所、聚は六府の成す所なり。
積は陰気なり、其の始めて発する常の処有り、其の痛み、其の部を離れず、
上下終始する所あり、左右窮(さだま)る処の所あり。
聚は陽気なり、其の始めて発するに根本なし、上下留止する所なく、其の痛み、常の処なし、
之を聚と謂う。
故に是を以って積聚を別ち知るなり。

詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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五十五難の解説

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(463号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

五十五難の解説をします。

腹中に積と聚と言う二つの塊が出来る事があるが、これについて区別して説明しなさい。

お答えします。

積と聚は陰陽の二面から区別される
積は陰に属し陰の気であり、聚は陽に属し陽の気である。
だから、
陰気から出来た積は陰性で沈んで下に深く伏して所在し、
陽気から出来た聚は陽性で浅く浮いていて移動する。
陰気の積(つも)る所を名付けてぜ積と言い、
陽気の集(あつま)る所を名付けて聚と言う。

ゆえに、
積は五蔵の陰気が滞り積(つも)って出来たものである。
聚は六府の陽気が滞り集(あつま)って出来たものである。

積は陰の気であるから、始めて発した時から常にある所が決ま っている。
痛みもそこから離 れて行かない。同じ所にある。
上下左右に始まる所、終わる所がハッキリしている。

聚は陽気であるから、どこに発するかと言う所がない。
留ま っていないから上下が決まっていない。その痛みも常に動く。
これを聚と言うと。

以上の特徴から積聚の区別を理解する事ができる。

詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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五十五難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(463号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕五十五難曰.
〔訓読〕五十五の難に日く、
〔解説〕五十五難の解説をします。

〔原文〕病有積有聚.何以別之.
〔訓読〕
病に積(しゃく)あり、聚(じゅう)あり、何を以(も)って之(これ)を別(わか)たん。
〔解説〕
腹中に積と聚と言う二つの塊が出来る事があるが、これについて区別して説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕
積者.陰氣也.聚者.陽氣也.
故陰沈而伏.陽浮而動.
氣之所積.名曰積.
氣之所聚.名曰聚.
〔訓読〕
積は陰気なり、聚は陽気なり、
故に陰は沈んで伏し、
陽は浮んで動ず、
気の積む所を名(なづ)けて積と日い、
気の聚(あつま)る所を名けて聚と日う。
〔解説〕
積と聚は陰陽の二面から区別される
積は陰に属し陰の気であり、聚は陽に属し陽の気である。
だから、
陰気から出来た積は陰性で沈んで下に深く伏して所在し、
陽気から出来た聚は陽性で浅く浮いていて移動する。
陰気の積(つも)る所を名付けてぜ積と言い、
陽気の集(あつま)る所を名付けて聚と言う。

〔原文〕故、積者.五藏所生.聚者.六府所成也.
〔訓読〕故に積は五蔵の生ずる所、聚は六府の成す所なり。
〔解説〕
ゆえに、
積は五蔵の陰気が滞り積(つも)って出来たものである。
聚は六府の陽気が滞り集(あつま)って出来たものである。

〔原文〕積者.陰氣也.其始發有常處.其痛不離其部.上下有所終始.左右有所窮處
〔訓読〕
積は陰気なり、其の始めて発する常の処有り、其の痛み、其の部を離れず、
上下終始する所あり、左右窮(さだま)る処の所あり。
〔解説〕
積は陰の気であるから、始めて発した時から常にある所が決ま っている。
痛みもそこから離 れて行かない。同じ所にある。
上下左右に始まる所、終わる所がハッキリしている。

〔原文〕聚者.陽氣也.其始發無根本.上下無所留止.其痛無常處.謂之聚.
〔訓読〕
聚は陽気なり、其の始めて発するに根本なし、上下留止する所なく、其の痛み、常の処なし、
之を聚と謂う。
〔解説〕
聚は陽気であるから、どこに発するかと言う所がない。
留ま っていないから上下が決まっていない。その痛みも常に動く。
これを聚と言うと。

〔原文〕故以是別知積聚也.
〔訓読〕故に是を以って積聚を別ち知るなり。
〔解説〕以上の特徴から積聚の区別を理解する事ができる。

〔本間祥白先生の難経解説から〕
積は陰の塊りであって、しっかりした根を持っていて動かない、
治療しても直ぐ消えるようなことなく永い治療を要する慢性病である。
聚は陽の塊であるから治療中に動いたり消えたりする、治療して治し易い病である。

〔井上恵理先生の難経五十五難、臨床解説から積聚の区別を理解されたし。〕

積と言うのは我々が腹を手で押し下げてみると、ちゃんと形にな って現れている。
聚と言うのは押し下げては判らない。お腹の上をソーッと撫でると判る。
そして痛みの方も、 積の方は 「ああ、ここが痛いんですね? 」 「そこが痛 いんです。」と判る。

ところが聚の方は、スー ツと撫でている内に「ああ先生、そこが痛い。」
そこかなと思って手を持って行くと、 痛みがなくなって別の所に動く。

これは皆さんも経験が あるだろうと思いますが、お腹をソーッと撫でると何かありそうなんです。
あるかなと思うとなくて、またこっちの方にポコッと出て来る。
またそこの所を押さえると向こうの方へ動く。あれは聚です。
痛む所がいつも一定していない。そっちへ行ったりこっちへ行ったりする。

ですから感覚的にみて積と聚と言うものは、
浮いているものと沈んでいるものと言う区別がある。
それから固定したものと固定しないものと言う区別がある。
痛む所も決まっているのと決まっていないのとの区別がある。
これが積聚の区別ですね。
積と言うのは陰の病であり、
聚と言うのは陽の病であると考えればいいと思います。

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