三三難

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難経第三三難

 ank033

ゆっくり堂の『難経ポイント』  第三十三難

※ 三十三難のポイント其の一は、

 肝木と肺金(心火)の相克関係から臓腑の位置、陰陽の結びつきついての論述である。


※ 難経臨床&エトセトラより。

 五行の四方、関係図nk12を参照されたし。
十干(じっかん)図nk3を参照されたし。

 難経 第三十三難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

三十三難曰.
肝青象木.肺白象金.
肝得水而沈.木得水而浮.
肺得水而浮.金得水而沈.其意何也.
然.
肝者.非爲純木也.乙角也.
庚之柔.大言陰與陽.小言夫與婦.
釋其微陽.而吸其微陰之氣.其意樂金.
又行陰道多.故令得水而沈也.
肺者.非爲純金也.辛商也.
丙之柔.大言陰與陽.小言夫與婦.
釋其微陰.婚而就火.其意樂火.
又行陽道多.故令肺得水而浮也.
肺熟而復沈.肝熟而復浮者.何也.
故知辛當歸庚.乙當歸甲也.
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 三十三難の訓読

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(446号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

三十三の難に曰く。
肝は青くして木に象(かたど)る、肺は白くして金に象(かたど)る。
肝は水を得て沈み、木は水を得て浮ぶ、
肺は水を得て浮び、金は水を得て沈む、その意何ぞや。
然るなり。
肝は、純木たるに非(あら)ざるなり、乙(きのと)角(かく)なり、
庚(かのえ)の柔、大言すれば陰と陽、小言すれば夫と婦(つま)、
其の微陽を釈(し)て、而(しか)して其の微陰の氣を吸う、其の意、金を樂しむ、
又陰道に行くこと多し、故に肝をして水を得て沈むなり。
肺は、純金たるに非(あら)ざるなり、辛(かのと)の商なり、丙(ひのえ)の柔、
大言すれば陰と陽、小言すれば夫と婦(つま)、
其の微陰を釈(すべ)て、婚して而(しか)して火に就(つ)く、其の意、火を樂しむ、
又陽道に行くこと多し、故に肺をして水を得て浮かばしむなり。
肺熱して復(ま)た沈み、肝熱して復(ま)た浮かぶものは何ぞや。
故に知らぬ、辛は当に庚(かのえ)に帰すべし、乙(きのと)は当に甲(きのえ)に帰すべし。

詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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 三十三難の解説

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(446号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

三十三難の解説をします。

五臓の色体表から、
肝は青であり、東に属し木である。肺は白であり、西に属し金である。

肝臓は横隔膜の下に沈んであり、自然現象から見て木材は水に浮ぶ、
肺蔵は横隔膜の上に浮んでいる、自然現象から見て金族は水に沈む、
その意味する所は何なのか説明しなさい。

お答えします。

肝は木材の性質であるけれども、純粋な木ではない。
乙(きのと)は肝木の弟であり陰になる。そして、五音は角音である。

庚(かのえ)は、肺金の兄であり陽になる。そして肝木乙を陰柔とみる。
五行の相克関係からみれば、
「肝木の乙」と「肺金の庚」は「柔と剛」関係であり、「陰と陽」「夫と婦」の関係にもなる。

乙陰肝木弟は、
微陽甲陽肝木兄の関係を捨て、相克関係の微陰(陽かな)庚陽肺金兄と仲良くなり愛を育む。

また、肝木は腎水の陰を去ってほど遠くないので陰の気を多分に持っている。
故に肝臓は横隔膜の下にあるのである。

肺は金族の性質であるけれども、純粋な金族ではない。
辛 (かのと)は肺金の弟であり陰になる。そして、五音は商音である。

丙(ひのえ)心火の兄であり陽になる。そして心火丁(ひのと)を陰柔とみる。
五行の相克関係からみれば、
「心火の丁」と「肺金の庚」は「柔と剛」関係であり、「陰と陽」「夫と婦」の関係にもなる。

辛陰肺金弟は、同性の微陰なる庚陽肺金兄を捨て、「心火の丙 」と結婚し、愛を育む。

また、肺金は秋であるが夏の陽から離れること遠くない。未だ熱さが残っている。
故に肺は陰臓ではあるが未だ陽の気を持っているので、肺は水に浮かぶが如く横隔膜の上に位置するのである。

肺が熱して死んでしまうと、肺臓の気泡が潰れ肺が沈んでしまう。
肝が熱して死んでしまうと、乾いて軽くなり浮かんでくる。
この現象について説明しなさい。

その現象の理由を説明いたします。
辛(かのと)陰肺金弟は「心火の丙」と愛を育み結婚したが、丙が死んだので、
また元の庚陽肺金兄の所に当(まさ)に帰ったのである。

乙(きのと)陰肝木弟は「肝木の甲」と愛を育み結婚したが、甲が死んだので、
また元の甲陽肝木兄の所に当(まさ)に帰ったのである。

これは其々の本性に帰した様を言っている。
本来の木は浮かぶ性質があり、金は沈む性質があると。

 三十三難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(446号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕三十三難曰.
〔訓読〕三十三の難に曰く。
〔解説〕三十三難の解説をします。

〔原文〕肝青象木.肺白象金.
〔訓読〕肝は青くして木に象(かたど)る、肺は白くして金に象(かたど)る。
〔解説〕
五臓の色体表から、
肝は青であり、東に属し木である。肺は白であり、西に属し金である。

〔原文〕肝得水而沈.木得水而浮.肺得水而浮.金得水而沈.其意何也.
〔訓読〕
肝は水を得て沈み、木は水を得て浮ぶ、肺は水を得て浮び、金は水を得て沈む、その意何ぞや。
〔解説〕
肝臓は横隔膜の下に沈んであり、自然現象から見て木材は水に浮ぶ、
肺蔵は横隔膜の上に浮んでいる、自然現象から見て金族は水に沈む、
その意味する所は何なのか説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕肝者.非爲純木也.乙角也.
〔訓読〕肝は、純木たるに非(あら)ざるなり、乙(きのと)角(かく)なり、
〔解説〕
肝は木材の性質であるけれども、純粋な木ではない。
乙(きのと)は肝木の弟であり陰になる。そして、五音は角音である。

〔原文〕庚之柔.大言陰與陽.小言夫與婦.
〔訓読〕庚(かのえ)の柔、大言すれば陰と陽、小言すれば夫と婦(つま)、
〔解説〕
庚(かのえ)は、肺金の兄であり陽になる。そして肝木乙を陰柔とみる。
五行の相克関係からみれば、
「肝木の乙」と「肺金の庚」は「柔と剛」関係であり、「陰と陽」「夫と婦」の関係にもなる。

〔原文〕釋其微陽.而吸其微陰之氣.其意樂金.
〔訓読〕其の微陽を釈(し)て、而(しか)して其の微陰の氣を吸う、其の意、金を樂しむ、
〔解説〕
乙陰肝木弟は、
微陽甲陽肝木兄の関係を捨て、相克関係の微陰(陽かな)庚陽肺金兄と仲良くなり愛を育む。

〔原文〕又行陰道多.故令得水而沈也.
〔訓読〕又陰道に行くこと多し、故に肝をして水を得て沈むなり。
〔解説〕
また、肝木は腎水の陰を去ってほど遠くないので陰の気を多分に持っている。
故に肝臓は横隔膜の下にあるのである。

〔原文〕肺者.非爲純金也.辛商也.
〔訓読〕肺は、純金たるに非(あら)ざるなり、辛(かのと)の商なり、
〔解説〕
肺は金族の性質であるけれども、純粋な金族ではない。
辛 (かのと)は肺金の弟であり陰になる。そして、五音は商音である。

〔原文〕丙之柔.大言陰與陽.小言夫與婦.
〔訓読〕丙(ひのえ)の柔、大言すれば陰と陽、小言すれば夫と婦(つま)、
〔解説〕
丙(ひのえ)心火の兄であり陽になる。そして心火丁(ひのと)を陰柔とみる。
五行の相克関係からみれば、
「心火の丁」と「肺金の庚」は「柔と剛」関係であり、「陰と陽」「夫と婦」の関係にもなる。

〔原文〕釋其微陰.婚而就火.其意樂火.
〔訓読〕其の微陰を釈(すべ)て、婚して而(しか)して火に就(つ)く、其の意、火を樂しむ、
〔解説〕
辛陰肺金弟は、同性の微陰なる庚陽肺金兄を捨て、「心火の丙 」と結婚し、愛を育む。

〔原文〕又行陽道多.故令肺得水而浮也.
〔訓読〕又陽道に行くこと多し、故に肺をして水を得て浮かばしむなり。
〔解説〕
また、肺金は秋であるが夏の陽から離れること遠くない。未だ熱さが残っている。
故に肺は陰臓ではあるが未だ陽の気を持っているので、肺は水に浮かぶが如く横隔膜の上に位置するのである。

〔原文〕肺熟而復沈、肝熟而復浮者、何也。
〔訓読〕肺熱して復(ま)た沈み、肝熱して復(ま)た浮かぶものは何ぞや。
〔解説〕
肺が熱して死んでしまうと、肺臓の気泡が潰れ肺が沈んでしまう。
肝が熱して死んでしまうと、乾いて軽くなり浮かんでくる。
この現象について説明しなさい。

〔原文〕故知辛当帰庚、乙当帰甲也。
〔訓読〕
故に知らぬ、辛は当に庚(かのえ)に帰すべし、乙(きのと)は当に甲(きのえ)に帰すべし。
〔解説〕
その現象の理由を説明いたします。
辛(かのと)陰肺金弟は「心火の丙」と愛を育み結婚したが、丙が死んだので、
また元の庚陽肺金兄の所に当(まさ)に帰ったのである。

乙(きのと)陰肝木弟は「肝木の甲」と愛を育み結婚したが、甲が死んだので、
また元の甲陽肝木兄の所に当(まさ)に帰ったのである。

これは其々の本性に帰した様を言っている。
本来の木は浮かぶ性質があり、金は沈む性質があると。


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五行の四方、関係図nk12を参照されたし。

nk12


十干(じっかん)図nk3を参照されたし。

nk3


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(図nk3)の説明文。(文章内にウィキペディアよりの引用含む。)

十干(じっかん)は、陰陽五行を表している。

十干は甲 ・乙 ・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10種類からなる。

甲 (きのえ) 木の兄:陽: 草木の芽生え、鱗芽のかいわれの象意 。
乙 (きのと) 木の弟:陰: 陽気のまだ伸びない、かがまっているところ。

丙 (ひのえ) 火の兄:陽: 陽気の発揚 。
丁 (ひのと) 火の弟:陰: 陽気の充溢 。

戊 (つちのえ) 土の兄:陽:“茂”に通じ、陽気による分化繁栄 。
己 (つちのと) 土の弟:陰:  紀に通じ、分散を防ぐ統制作用 。

庚 (かのえ) 金の兄:陽: 結実、形成、陰化の段階 。
辛 (かのと) 金の弟:陰: 陰による統制の強化 。

壬 (みずのえ) 水の兄:陽: “妊”に通じ、陽気を下に姙む意 。
癸 (みずのと) 水の弟:陰: “揆”に同じく生命のない残物を清算して地ならしを行い、
新たな生長を行う待機の状態 。

以上

 

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