三一難

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難経第三十一難

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ゆっくり堂の『難経ポイント』  第三十一難

※ 三十一難のポイント其の一は、三焦には、上焦・中焦・下焦がある。
※ 三十一難のポイント其の二は、三焦の位置とその働きについて論述する。

※ 難経臨床&エトセトラより。・・・・・・
〔井上恵理先生の難経第三十一難の解説から「三焦」に対する見解について。〕
「三」と言う数字は東洋の考え方では「沢山」と言う意味です。
そ言う事を考えると、この「三焦」は人身が生かされる為のあらゆる機能を司っている。

 難経 第三十一難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

三十一難曰.
三焦者.何稟何生.何始何終.其治常在何許.可暁以不.
然.
三焦者.水穀之道路.氣之所終始也.
上焦者.在心下下膈.在胃上口.主内而不出.
其治在膻中.玉堂下一寸六分.直兩乳間陷者.是.
中焦者.在胃中脘.不上不下.主腐熟水穀.
其治在齊傍.
下焦者.當膀胱上口.主分別清濁.主出而不内.以傳導也.
其治在齊下一寸.
故名曰三焦.其府在氣街.
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 三十一難の訓読

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(443号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

三十一の難に曰く。
三焦は、何(いづ)くに稟(う)け、何くに生まれ、何くに始まり、何くに終る。
其の治(ち)常に何くの許(ところに)在りや、暁(さと)すべきことを以ってせんや。
然るなり。
三焦は、水穀の道路、氣の終始する所なり。
上焦は、心下下膈(かかく)に在り、胃上口に在り、内(い)れて出(いだ)さざることを主る。
其の治、膻中に在り、玉堂下一寸六分、直ちに兩乳の間、陷なるもの、是なり。
中焦は、胃の中脘に在り、上(のぼ)さず、下さず、水穀の腐熟することを主る。
其の治、臍(ほぞ)の傍(かたわ)らに在り。
下焦は、膀胱上口に當(あた)る、清濁を分別することを主り、出して内れさざることを主る。
其の治、齊下一寸在り。
故に名(なづ)けて三焦と曰う。
其の府氣街に在り。


詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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 三十一難の解説

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(443号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

三十一難の解説をします。

人間が健康に元気に生きる為には、
三焦の三つの気、宗気と榮氣(栄血)と衞氣が十二経絡を循環して、
五臓六腑を栄養し生命が保たれているのである。
この三焦の気は、どこから受け継ぎ、どこから生まれたのか。
また、どこで始り、どこで終わるのか。
上焦・中焦・下焦の働きの主なものは何か。
病気を治す治療法や治療穴にはどの様なものがあるか。
これらについて判り易く説明しなさい。

お答えします。

三焦には、上焦・中焦・下焦があり上から一つの管として連絡している飲食物の通路である。
また、各焦に於いて、
上焦で宗気を生成し、中焦で榮氣(栄血)を生成し、下焦で衞氣を生成し、そして終わる所である。

上焦は、心臓の下辺横隔膜上際と胃上口(上脘穴:中脘穴の上1寸.〔臍の上5寸〕)の間に位置し、
飲食物がいったん入ったら戻す事はない働きがある。
症状として、胸に何かつかえて飲食物が入らない時に膻中穴が治療穴になる。
また、呼吸を司りや気血を循らす働きの宗気に障害が出た時も膻中穴が治療穴になる。

中焦は、胃の中脘穴〔神闕穴(臍)の上4寸〕を中心に上下に在り、
この位置で飲食物を一旦留め置き消化する働きがある。
症状として、胃の消化作用が悪い時に、左右の天枢穴が治療穴になる。
(なお、中脘穴は胃の状態を診断する所でもあり治療穴にもなる。)

下焦は、膀胱の上際〔水分穴:神闕穴(臍)の上1寸〕と陰交穴〔臍下一寸〕の間にあって、
ここで胃から下った糟の中の清める水を分別し膀胱に送り、
水分を去られた粕を大腸に送り込む働きがある。
症状として、便秘や下痢をしたり小便の出が悪い時に陰交穴〔臍の下1寸〕が治療穴になる。
(また、小便自利の時には水分穴や水道穴にお灸をすえると改善する。)

三焦は、宗気・榮氣(栄血)・衞氣の気を発する所であり、飲食物の通路である。
故に三焦と命名された所以である。

詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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  三十一難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(443号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕三十一難曰.
〔訓読〕三十一の難に曰く。
〔解説〕三十一難の解説をします。

〔原文〕三焦者.何稟何生.何始何終.其治常在何許.可暁以不.
〔訓読〕
三焦は、何(いづ)くに稟(う)け、何くに生まれ、何くに始まり、何くに終る。
其の治(ち)常に何くの許(ところに)在りや、暁(さと)すべきことを以ってせんや。
〔解説〕
人間が健康に元気に生きる為には、
三焦の三つの気、宗気と榮氣(栄血)と衞氣が十二経絡を循環して、
五臓六腑を栄養し生命が保たれているのである。
この三焦の気は、どこから受け継ぎ、どこから生まれたのか。
また、どこで始り、どこで終わるのか。
上焦・中焦・下焦の働きの主なものは何か。
病気を治す治療法や治療穴にはどの様なものがあるか。
これらについて判り易く説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕三焦者.水穀之道路.氣之所終始也.
〔訓読〕三焦は、水穀の道路、氣の終始する所なり。
〔解説〕
三焦は、上焦・中焦・下焦があり上から一つの管として連絡している飲食物の通路である。
また、各焦に於いて、
上焦で宗気を生成し、中焦で榮氣(栄血)を生成し、下焦で衞氣を生成し、そして終わる所である。

〔原文〕
上焦者.在心下下膈.在胃上口.主内而不出.
其治在膻中.玉堂下一寸六分.直兩乳間陷者.是.
〔訓読〕
上焦は、心下下膈(かかく)に在り、胃上口に在り、内(い)れて出(いだ)さざることを主る。
其の治、膻中に在り、玉堂下一寸六分、直ちに兩乳の間、陷なるもの、是なり。
〔解説〕
上焦は、心臓の下辺横隔膜上際と胃上口(上脘穴:中脘穴の上1寸.〔臍の上5寸〕)の間に位置し、
飲食物がいったん入ったら戻す事はない働きがある。
症状として、胸に何かつかえて飲食物が入らない時に膻中穴が治療穴になる。
また、呼吸を司りや気血を循らす働きの宗気に障害が出た時も膻中穴が治療穴になる。

〔原文〕中焦者.在胃中脘.不上不下.主腐熟水穀.其治在齊傍.
〔訓読〕
中焦は、中脘穴辺りに在り、上(のぼ)さず、下さず、水穀の腐熟することを主る。
其の治、臍(ほぞ)の傍(かたわ)らに在り。
〔解説〕
中焦は、胃の中脘穴〔神闕穴(臍)の上4寸〕を中心に上下に在り、
この位置で飲食物を一旦留め置き消化する働きがある。
症状として、胃の消化作用が悪い時に、左右の天枢穴が治療穴になる。
(なお、中脘穴は胃の状態を診断する所でもあり治療穴にもなる。)

〔原文〕下焦者.當膀胱上口.主分別清濁.主出而不内.以傳導也.其治在齊下一寸.
〔訓読〕
下焦は、膀胱上口に當(あた)る、清濁を分別することを主り、出して内れさざることを主る。
其の治、齊下一寸在り。
〔解説〕
下焦は、膀胱の上際〔水分穴:神闕穴(臍)の上1寸〕と陰交穴〔臍下一寸〕の間にあって、
ここで胃から下った糟の中の清める水を分別し膀胱に送り、
水分を去られた粕を大腸に送り込む働きがある。
症状として、便秘や下痢をしたり小便の出が悪い時に陰交穴〔臍の下1寸〕が治療穴になる。
(また、小便自利の時には水分穴や水道穴にお灸をすえると改善する。)

〔原文〕故名曰三焦.其府在氣街.
〔訓読〕故に名(なづ)けて三焦と曰う。 其の府氣街に在り。
〔解説〕
三焦は、宗気・榮氣(栄血)・衞氣の気を発する所であり、飲食物の通路である。
故に三焦と命名された所以である。


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任脈の壺と取穴位置。

1 会陰    会陰部の中央に取る.
2 曲骨  正中線上で、恥骨結合の上際に取る.
3 中極 膀胱経の募穴   神闕穴の下4寸、曲骨穴の上1寸に取る.
4 関元 小腸経の募穴   神闕穴の下3寸に取る.
5 石門 三焦経の募穴   神闕穴の下2寸に取る.
6 気海          神闕穴の下1寸5分に取る.
7 陰交          神闕穴(臍)の下1寸に取る.
8 神闕          臍の中央に取る.
9 水分          神闕穴(臍)の上1寸に取る.膀胱上口に當(あた)る、
10 下脘          神闕穴の上2寸に取る.
11 建里          神闕穴の上3寸、中脘穴の下1寸に取る.
12 中脘 胃経の墓穴・腑会 神闕穴(臍)の上4寸に取る.
13 上脘 胸骨体下端の下3寸、 中脘穴の上1寸に取る.〔神闕穴(臍)の上5寸〕
14 巨闕 心経の募穴     胸骨体下端の下2寸に取る.
15 鳩尾 任脈の絡穴     胸骨体下端の下1寸、神闕穴の上7寸に取る.
16 中庭  膻中穴の下1寸6分、胸骨体正中線上に取る.
17 膻中 八会:気会 両乳頭を結ぶ線が、胸骨体正中線上に取る.(乳頭は第4肋間の高さ)

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〔井上恵理先生の難経第三十一難の解説から「三焦」に対する見解について。〕

「三」と言う数字は東洋の考え方では「沢山」と言う意味です。

「車」を3つ書くと「轟く」と言う字になる。
轟く【とどろく】とは、1.大きな音が響き渡る。遠くに鳴り響く。
2.世間に広く知れ渡る。評判が広がる。3.胸がドキドキワクワクする。「胸がとどろく」nado.

「木」を3つ書くと「森」と言う字になる。木が三つあるんじゃない、木が沢山ある山の事です。

そ言う事を考えると、この「三焦」は人身が生かされる為のあらゆる機能を司っている。

「焦」言う字は「焦(こが)がれる」
【焦】[漢字項目]
[常用漢字] [音]ショウ(セウ)(呉)(漢) [訓]こげる こがす こがれる あせる
1 こげる。こがす。「焦点・焦土・焦熱・焦眉(しょうび)」
2 いらだつ。あせる。「焦心・焦躁(しょうそう)・焦慮」

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