十六難

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難経十六難

     ank016

ゆっくり堂の『難経ポイント』  第十六難

※ 十六難のポイント、

脉証腹証一貫性の法則が難経十六で展開されている。

鍼灸家の診断と治療方針についての点検の法則が難経十六に明記されている訳です。

肝心脾肺腎のそれぞれの脉状と病状と腹証から弁証診断が一致した時に正しい証が導かれると言う事ですね。

脉診と脉証腹証一貫性の法則の参考リンク
http://yukkurido.jp/keiro/sisn/kiru/myk/

fuzu1

腹診の診所(診察場所) 図ー1
参考リンク
http://yukkurido.jp/keiro/sisn/bou/hara/

肝証を例に〔脉状〕〔病状〕〔腹証〕を考察すると、次のように成ります。

〔原文〕
假令得肝脉.〔脉状
其外證.善潔.面青善怒.〔病状
其内證.齊左有動氣.按之牢若痛.〔腹証
其病四肢滿.閉癃溲便難.轉筋.〔病状
有是者肝也.無是者非也.

〔訓読〕
假令(たと)えば、肝脉をえて、〔脉状
其の外証は、潔(きよ)きことを善(この)み、面青く怒ることを善む。〔病状
其の内証は、齊の左に動氣あり、之を按(お)せば牢(かた)くして、若(も)しくは痛む。
腹証
其の病い四肢に滿ち、閉淋(へいりん)して溲便(そうべん)難(むつかし)く、転筋す。〔病状
是れあるものは肝なり、是れ無きものは非(あらず)なり。

〔解説〕
例えば、肝脉の弦脉を脉診したならば、〔脉状

肝の証が、外に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
清潔好きで汚い事を嫌う精神状態になり、一日に何度も手を洗うとか、外出先のトイレの便器にはおしりを載せられないとか、の行動を取る。また、何事にも怒りっぽくなり顔色が青みを増す。
病状

肝の証が、内に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
齊の左に動悸〔肝の積(しゃく)〕が出る。また、この部を押せば、硬結があったり、圧痛が出たりする。〔腹証

肝証の症状として、手足の腱が張り、小便が出なくなり、便秘し、こむら返りが起こる。〔病状

こういうものが脉証腹証一致(脉状と証が一致している事)の肝の病である。

この様な症状が無くて弦脉を打っているのは、「肝の病」ではない。

他の証を考えなさいねと。

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難経 第十六難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

十六難曰.
脉有三部九候.有陰陽.有輕重.有六十首.一脉變爲四時.
離聖久遠.各自是其法.何以別之.
然.
是其病.有内外證.
其病爲之奈何.
然.
假令得肝脉.
其外證.善潔.面青善怒.
其内證.齊左有動氣.按之牢若痛.
其病四肢滿.閉癃溲便難.轉筋.
有是者肝也.無是者非也.
假令得心脉.
其外證.面赤.口乾.喜笑.
其内證.齊上有動氣.按之牢若痛.
其病煩心.心痛.掌中熱而啘.
有是者心也.無是者非也.
假令得脾脉.
其外證.面黄.善噫.善思.善味.
其内證.當齊有動氣.按之牢若痛.
其病腹脹滿.食不消.體重節痛.怠墮嗜臥.四肢不收.
有是者脾也.無是者非也.
假令得肺脉.
其外證.面白善嚔.悲愁不樂.欲哭.
其内證.齊右有動氣.按之牢若痛.
其病喘欬.洒淅寒熱.
有是者肺也.無是者非也.
假令得腎脉.
其外證.面黒.喜恐.欠.
其内證.齊下有動氣.按之牢若痛.
其病逆氣.少腹急痛.泄如下重.足脛寒而逆.
有是者腎也.無是非者也.


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十六難の訓読

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(431号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

十六の難に曰く。
脉に三部九あり、陰陽あり、軽重あり、六十首あり、一脉変じて四時となる。
聖を離るること久遠(くおん)、各自是れ其の法、何を以ってか之を別たん。
然るなり。
是其の病、内外の証あり、其の病之をなすこといかん。
然るなり。

假令(たと)えば、肝脉をえて、
其の外証は、潔(きよ)きことを善(この)み、面青く怒ることを善む。
其の内証は、齊の左に動氣あり、之を按(お)せば牢(かた)くして、若(も)しくは痛む。
其の病い四肢に滿ち、閉淋(へいりん)して溲便(そうべん)難(むつかし)く、転筋す。
是れあるものは肝なり、是れ無きものは非(あらず)なり。

假令えば、心脉をえて、
其の外証は、面赤く、口乾き、笑うことを喜(この)む。.
其の内証は、齊の上に動氣あり、之を按(お)せば牢(かた)くして、若(も)しくは痛む。
其の病い、煩心、心痛、掌中熱して啘(からえずき)す。
是あるものは心なり、是れ無きものは非(あらず)なり。

假令えば、脾脉をえて、
其の外証は、面黄ばみ、噫(おくび)することを善み、思うことを善み、味を善む。
其の内証は、齊に当たって動氣あり、之を按せば牢くして、若しくは痛む。
其の病い、腹脹滿し、食消せず、體重く、節痛み、怠情、臥(ふ)しことを嗜(この)み、四肢收まらず。
是あるものは脾なり、是れ無きものは非(あらず)なり。

假令えば、肺脉をえて、
其の外証は、面白く、嚔(くしゃみ)善み、悲愁して樂しまず、哭(こく)せんと欲す。
其の内証は、齊の右に動氣あって、之を按せば牢くして、若しくは痛む。
其の病い、喘欬(ぜんがい)し、洒淅(しゃしゃあ)として寒熱す。
是あるものは肺なり、是れ無きものは非(あらず)なり。

假令えば、腎脉をえて、
其の外証は、面黒く、喜んで恐れ、欠(あくび)す。
其の内証は、齊の下に動氣あり、之を按せば牢くして、若しくは痛む。
其の病い、逆氣し、少腹急痛し、泄して、しかも下重し、足脛(あしはぎ)寒(ひ)えて逆す。
是あるものは腎なり、是れ無きものは非(あらず)なり。

詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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 十六難の解説

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(431号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)

十六難の解説をします。
〔井上恵理先生と本間祥白先生の難経解説から、〕
『難経』は一度焼失したものを呂広(ろこう)と言う人が集めたものと言われるので、問と答えがバラバラになった所がある、この十六難が典型で、質問に対しての答えが無い。別の所に展開されている。
〔解説〕「脉に三部九候あり」の答えは、十八難にある。
「陰陽あり」の答えは、四難にある。
「軽重あり」の答えは、五難にある。
「六十首あり」の答えは、どこにもない。
「一脉変じて四時となる」の答えは、十五難にある。

聖人(黄帝あるいは岐伯)東洋医学の理論を確立してから久しく離れているが、
後の人が脉診の法則について、どの様な発展分別をしているかを説明しなさい。

お答えします。
病には、外証の病が身体の外にあって、症状が外表に現われるものと、
内証の病が身体の内にあって、症状が腹内に現われるものがある。

その内外の証病について詳しく説明しなさい。

例えば、肝脉の弦脉を脉診したならば、
肝の証が、外に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
清潔好きで汚い事を嫌う精神状態になり、一日に何度も手を洗うとか、外出先のトイレの便器にはおしりを載せられないとか、の行動を取る。また、何事にも怒りっぽくなり顔色が青みを増す。
肝の証が、内に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
齊の左に動悸〔肝の積(しゃく)〕が出る。また、この部を押せば、硬結があったり、圧痛が出たりする。
肝証の症状として、手足の腱が張り、小便が出なくなり、便秘し、こむら返りが起こる。
こういうものが脉証腹証一致(脉状と証が一致している事)の肝の病である。
この様な症状が無くて弦脉を打っているのは、「肝の病」ではない。 他の証を考えなさいね。

例えば、心脉の鉤脉を脉診したならば、
心の証が、外に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
顔に赤みがさし、口が渇き、何事にもむやみに可笑しくなって笑い声が出る。
心の証が、内に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
齊の上に動悸が出る。また、この部を押せば、硬結があったり、圧痛が出たりする。
心証の症状として、煩心(胸いきれ)し、 心下部が痛み、手の平が熱くなり、からえずき(吐き気をもよおすが吐物はない)する。
こういうものが脉証腹証一致の心の病である。
この様な症状が無くて鈎脉を打っているのは、「心の病」ではない。 他の証を考えなさいね。

例えば、脾脉の緩(かん)脉を脉診したならば、
脾の証が、外に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
顔が黄色くなり、ゲップが出て、あれこれと考え囚われ、暴飲暴食になる。
脾の証が、内に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
齊に当たって動悸が出る。また、この部を押せば、硬結があったり、圧痛が出たりする。
脾証の症状として、お腹が張り、食物の消化不良が起こり、身体が重だるくなり、膝・肘などの関節が痛む。また、「怠情」とは、身体が疲れ易くなること。そしてゴロッと寝たくなる。
「四肢收まらず」とは、手足が何となくだるくてキチンとしない。
こういうものが脉証腹証一致の脾の病である。
この様な症状が無くて緩脉を打っているのは、「脾の病」ではない。 他の証を考えなさいね。

例えば、肺脉の毛脉を脉診したならば、
肺の証が、外に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
顔色が白く、よくクシャミをする。悲しみ愁(うれ)い、何をやっても楽しくない。哭(ない)いてしまう。
肺の証が、内に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
齊の右に動悸が出る。また、この部を押せば、硬結があったり、圧痛が出たりする。
肺証の症状として、咳や喘息の病があり、「洒淅」水をかけられた様に寒気がして、寒熱往来する。
こういうものが脉証腹証一致の肺の病である。
この様な症状が無くて毛脉を打っているのは、「肺の病」ではない。 他の証を考えなさいね。

例えば、腎脉の沈脉を脉診したならば、
腎の証が、外に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
顔が黒ずみ、年中恐れをなし、生あくびが止まらない。
腎の証が、内に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
齊の下に動悸が出る。また、この部を押せば、硬結があったり、圧痛が出たりする。
腎証の症状として、逆氣の冷えノボセがあり、下腹が急に引きつり痛みだし、
裏急後重(お尻が下へさがる感じ、肛門の抜けるよ うな感じ)があり、
何回も便所に行きたがるのが痢病となる。
足の脛(すね)が寒くなり、冷え上がる。
こういうものが脉証腹証一致の腎の病である。

詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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   十六難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(431号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕十六難曰.
〔訓読〕十六の難に曰く。
〔解説〕十六難の解説をします。

〔原文〕脉有三部九候.有陰陽.有輕重.有六十首.一脉變爲四時.
〔訓読〕脉に三部九候あり、陰陽あり、軽重あり、六十首あり、一脉変じて四時となる。
〔井上恵理先生と本間祥白先生の難経解説から、〕
『難経』は一度焼失したものを呂広(ろこう)と言う人が集めたものと言われるので、問と答えがバラバラになった所がある、この十六難が典型で、質問に対しての答えが無い。別の所に展開されている。
〔解説〕「脉に三部九候あり」の答えは、十八難にある。
「陰陽あり」の答えは、四難にある。
「軽重あり」の答えは、五難にある。
「六十首あり」の答えは、どこにもない。
「一脉変じて四時となる」の答えは、十五難にある。

〔原文〕離聖久遠.
    各自是其法.何以別之.
〔訓読〕聖を離るること久遠(くおん)、
各自是れ其の法、何を以ってか之を別たん。
〔解説〕聖人(黄帝あるいは岐伯)東洋医学の理論を確立してから久しく離れているが、
後の人が脉診の法則について、どの様な発展分別をしているかを説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕是其病.有内外證.
〔訓読〕是其の病、内外の証あり。
〔解説〕病には、外証の病が身体の外にあって、症状が外表に現われるものと、
内証の病が身体の内にあって、症状が腹内に現われるものがある。

〔原文〕其病爲之奈何.
〔訓読〕其の病之をなすこといかん。
〔解説〕その内外の証病について詳しく説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕
假令得肝脉.
其外證.善潔.面青善怒.
其内證.齊左有動氣.按之牢若痛.
其病四肢滿.閉癃溲便難.轉筋.
有是者肝也.無是者非也.
〔訓読〕
假令(たと)えば、肝脉をえて、
其の外証は、潔(きよ)きことを善(この)み、面青く怒ることを善む。
其の内証は、齊の左に動氣あり、之を按(お)せば牢(かた)くして、若(も)しくは痛む。
其の病い四肢に滿ち、閉淋(へいりん)して溲便(そうべん)難(むつかし)く、転筋す。
是れあるものは肝なり、是れ無きものは非(あらず)なり。
〔解説〕
例えば、肝脉の弦脉を脉診したならば、
肝の証が、外に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
清潔好きで汚い事を嫌う精神状態になり、一日に何度も手を洗うとか、外出先のトイレの便器にはおしりを載せられないとか、の行動を取る。また、何事にも怒りっぽくなり顔色が青みを増す。
肝の証が、内に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
齊の左に動悸〔肝の積(しゃく)〕が出る。また、この部を押せば、硬結があったり、圧痛が出たりする。
肝証の症状として、手足の腱が張り、小便が出なくなり、便秘し、こむら返りが起こる。
こういうものが脉証腹証一致(脉状と証が一致している事)の肝の病である。
この様な症状が無くて弦脉を打っているのは、「肝の病」ではない。

他の証を考えなさいね。

〔原文〕
假令得心脉.
其外證.面赤.口乾.喜笑.
其内證.齊上有動氣.按之牢若痛.
其病煩心.心痛.掌中熱而啘.
有是者心也.無是者非也.
〔訓読〕
假令えば、心脉をえて、
其の外証は、面赤く、口乾き、笑うことを喜(この)む。.
其の内証は、齊の上に動氣あり、之を按(お)せば牢(かた)くして、若(も)しくは痛む。
其の病い、煩心、心痛、掌中熱して啘(からえずき)す。
是あるものは心なり、是れ無きものは非(あらず)なり。
〔解説〕
例えば、心脉の鉤脉を脉診したならば、
心の証が、外に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
顔に赤みがさし、口が渇き、何事にもむやみに可笑しくなって笑い声が出る。
心の証が、内に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
齊の上に動悸が出る。また、この部を押せば、硬結があったり、圧痛が出たりする。
心証の症状として、煩心(胸いきれ)し、 心下部が痛み、手の平が熱くなり、からえずき(吐き気をもよおすが吐物はない)する。
こういうものが脉証腹証一致の心の病である。
この様な症状が無くて鈎脉を打っているのは、「心の病」ではない。

他の証を考えなさいね。

〔原文〕
假令得脾脉.
其外證.面黄.善噫.善思.善味.
其内證.當齊有動氣.按之牢若痛.
其病腹脹滿.食不消.體重節痛.怠墮嗜臥.四肢不收.
有是者脾也.無是者非也.
〔訓読〕
假令えば、脾脉をえて、
其の外証は、面黄ばみ、噫(おくび)することを善み、思うことを善み、味を善む。
其の内証は、齊に当たって動氣あり、之を按せば牢くして、若しくは痛む。
其の病い、腹脹滿し、食消せず、體重く、節痛み、怠情、臥(ふ)しことを嗜(この)み、四肢收まらず。
是あるものは脾なり、是れ無きものは非(あらず)なり。
〔解説〕
例えば、脾脉の緩(かん)脉を脉診したならば、
脾の証が、外に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
顔が黄色くなり、ゲップが出て、あれこれと考え囚われ、暴飲暴食になる。
脾の証が、内に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
齊に当たって動悸が出る。また、この部を押せば、硬結があったり、圧痛が出たりする。
脾証の症状として、お腹が張り、食物の消化不良が起こり、身体が重だるくなり、膝・肘などの関節が痛む。また、「怠情」とは、身体が疲れ易くなること。そしてゴロッと寝たくなる。
「四肢收まらず」とは、手足が何となくだるくてキチンとしない。
こういうものが脉証腹証一致の脾の病である。
この様な症状が無くて緩脉を打っているのは、「脾の病」ではない。

他の証を考えなさいね。

〔原文〕
假令得肺脉.
其外證.面白善嚔.悲愁不樂.欲哭.
其内證.齊右有動氣.按之牢若痛.
其病喘欬.洒淅寒熱.
有是者肺也.無是者非也.
〔訓読〕
假令えば、肺脉をえて、
其の外証は、面白く、嚔(くしゃみ)善み、悲愁して樂しまず、哭(こく)せんと欲す。
其の内証は、齊の右に動氣あって、之を按せば牢くして、若しくは痛む。
其の病い、喘欬(ぜんがい)し、洒淅(しゃしゃあ)として寒熱す。
是あるものは肺なり、是れ無きものは非(あらず)なり。
〔解説〕
例えば、肺脉の毛脉を脉診したならば、
肺の証が、外に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
顔色が白く、よくクシャミをする。悲しみ愁(うれ)い、何をやっても楽しくない。哭(ない)いてしまう。
肺の証が、内に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
齊の右に動悸が出る。また、この部を押せば、硬結があったり、圧痛が出たりする。
肺証の症状として、咳や喘息の病があり、「洒淅」水をかけられた様に寒気がして、寒熱往来する。
こういうものが脉証腹証一致の肺の病である。
この様な症状が無くて毛脉を打っているのは、「肺の病」ではない。

他の証を考えなさいね。
〔原文〕
假令得腎脉.
其外證.面黒.喜恐.欠.
其内證.齊下有動氣.按之牢若痛.
其病逆氣.少腹急痛.泄如下重.足脛寒而逆.
有是者腎也.無是非者也.
〔訓読〕
假令えば、腎脉をえて、
其の外証は、面黒く、喜んで恐れ、欠(あくび)す。
其の内証は、齊の下に動氣あり、之を按せば牢くして、若しくは痛む。
其の病い、逆氣し、少腹急痛し、泄して、しかも下重し、足脛(あしはぎ)寒(ひ)えて逆す。
是あるものは腎なり、是れ無きものは非(あらず)なり。
〔解説〕
例えば、腎脉の沈脉を脉診したならば、
腎の証が、外に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
顔が黒ずみ、年中恐れをなし、生あくびが止まらない。
腎の証が、内に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
齊の下に動悸が出る。また、この部を押せば、硬結があったり、圧痛が出たりする。
腎証の症状として、逆氣の冷えノボセがあり、下腹が急に引きつり痛みだし、
裏急後重(お尻が下へさがる感じ、肛門の抜けるよ うな感じ)があり、
何回も便所に行きたがるのが痢病となる。
足の脛(すね)が寒くなり、冷え上がる。
こういうものが脉証腹証一致の腎の病である。
この様な症状が無くて沈脉を打っているのは、「腎の病」ではない。

他の証を考えなさいね。
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