心火タイプ : 心火『心のゆらぎ』 k2 コーナー

心火タイプ : 心火『心のゆらぎ』 

心火タイプとは、

  • 人の道をわきまえ、礼儀正しく立ち振る舞う人です。
  • 貴賤の意識なく皆に敬意を示します。
  • 社会の秩序を守る人です。
  • 周りの人から尊敬される人です。
  • 彼の彼女の、微笑みに人は癒されます。
  • どんな些細なことにも「喜び」を見出し人生を楽しむ人です。
  • 神のような尊い精神を持っている人です。
—————————

心火タイプの弱点とは。

  • 心火タイプには欠点はありません。
  • ただ、
  • 人に優しく頑張り過ぎて、
  • 喜び過ぎて、
  • 悲しみ過ぎて、
  • 心の病に陥ります。
————————————

心火は認識機能です。

  • 心の初めの仕事は、物事を認識する機能です。
  • これは、目・耳・舌・鼻・肌の五感器が担います。
  • 五感器の働きは(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)です。

心の機能は物事を認識する働きです。

  • 目で見ること(視覚)
  • 耳で聞くこと(聴覚)
  • 鼻で嗅ぐこと(嗅覚)
  • 舌で味わうこと(味覚)
  • 体で感じること(触覚)

心の同時反応

  • そして、物事を認識したた事に対して、心の感情が同時に反応しています。
  • 心者、神明出焉(しんめいこれよりいづ)と言われ、人間の感情は心より現されます。
  • 神明出焉とは、人間の心の感情:思考、情動、意思です。

心の感情とは、五感器の認識から瞬時に感じる反応です。

  • 気持ち・心情・思い・思いやり・慈しみ・哀れみ・慕う・
  • 愛する・恋する・喜び・心地良い・爽快感・
  • 怒り・不快感・嫌悪感・嘆(なげ)き、悲(かな)しみ・辛(つら)い・
  • 驚き・恐(おそ)れ。慄(おのの)く・怯(おびえ)る・心配・不安・胸騒ぎ・
  • 憂(うれ)い・憂鬱 (ゆううつ)・無気力感・気分が落ち込み塞(ふさ)がる・気分が落ち着かない・
  • 気づき・ひらめき・悟り・思考・情動・意思・意志・気魄(きはく)・欲情・楽しみ・愉快・
  • 等の「心の感情」です。

五感器の認識と心の同時感情反応。

  • 視覚:目で見た事に対する心の感情です。
  •  例:綺麗な風景だとか、汚い雑な仕事だとか、美味しそうな食べ物だとか、、、
  • 聴覚:耳で聞いた事に対する心の感情です。
  •  例:心地よい音楽だとか、うるさい音だなとか、、、
  • 嗅覚:鼻で嗅いだ事に対する心の感情です。
  •  例:いい匂いだなとか、臭くて気分が悪くなるとか、、
  • 味覚:舌で味わうった事に対する心の感情です。
  •  例:酸い味だとか、苦い味だとか、甘い味だとか、辛い味だとか、鹹(塩から)い味だとか、、、
  • 触覚:手や肌、体が触れて感じた事に対する心の感情です。
  •  例:皮膚感触:柔らかい、心地よい、艶(つや)、潤(うるお)い、又は、陥下・冷え・皮膚のざらつき・硬さ・突っ張り感・滑りがいい所・力なく軟弱・フワフワしている等です。

心と他の四臓との関係

また、
  • 東洋医学の五行論では、心者の感情は他の四臓にも感情を担当させています。
  • 四臓は肝・脾・肺・腎です。
  • 四臓に於ける五感器の機能担当。
  • 視覚:眼は肝が担当します。
  • 聴覚:耳は腎が担当します。
  • 触覚:皮膚は肺が担当します。
  • 味覚:舌は脾が担当します。
  • 嗅覚:鼻は肺が担当します。
そして、

これら五感器を統括するのが「心」になります。

  • 心経は五官器と意識活動の働きを統括する最も高度にして上級の機能です。
  • だから、
  • 古典では、心者.君主之官也(くんしゅこれかんなり)と言われています。
  • 心は君主(殿さま)の役目と言う事です。
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心火タイプの『心の病気』

心の病『心のゆらぎ』の形態について

  • 心火タイプの人が積極的な良い面だけなら病気になる事はありません。
    ここのコーナーでは、
    『心のゆらぎ』(気持ち・心情・思い・感情)心の変化と動きに注目して、
    心火タイプが「心の病)」「気の病」に陥った時の症状を診ていきます。
    また同時に付随する身体症状も幾つか取り上げてみます。

心のゆらぎ症状・付随する身体症状 ・虚実分類 ・所属経絡の図表

  心のゆらぎ症状・付随する身体症状 ・備考の表
 心のゆらぎ症状 ゆらぎの背景

付随する身体症状
 備考
気が緩(ゆる)む。

気が散り集中力が無くなる。
  • ゆらぎの背景

    喜び楽しみ過ぎると。

    良くない事に非常に喜んだり笑うと。


    喜び過ぎて、
    気が緩(ゆる)み、
    気が散って減少し、
    心の病気になります。

  • 付随する身体症状

    腋下より上腕前腕の
    掌面小指側を下り、
    小指内端のルートに、
    病状が出ます。。
 心経
七情分類
 悲しみ

  • ゆらぎの背景

    悲しみ過ぎると、
    気が引き締まり過ぎて、
    気(き)が急(せ)き、
    心の病気になります。

    付随する身体症状

    腋下より上腕前腕の
    掌面小指側を下り、
    小指内端のルートに、
    病状が出ます。
 心包経
七情分類
不安になり、
意識朦朧となる
(いしきもうろう)
  • 付随する身体症状
  • みぞおちに痛みが出る。
  • 言葉が出にくい。
  • 聴覚障害が起こる。
 心経虚
 無感動
  • ゆらぎの背景

    何も感動しない状態になる。
  • 付随する身体症状

    腋下より上腕前腕の
    掌面小指側を下り、
    小指内端のルートに、
    病状が出ます。
 心経虚
 意識がぼやける。
  •  ゆらぎの背景
  • 物を読んだり、
  • 見たり、聞いたり、
  • 特に
  • 考えをまとめようとすると
  • 意識がハッキリせず、
  • 意識がぼやける。

  • 身体症状の背景
  • 体内で熱が亢進している。
  • 疲労感がして眠くなる。
 心経変動
瞬間的に意識を失う。
  • 意識状態

    患者の話す事と
    現実が時々一致しない。
  • 背景の病症群

    注意欠陥他動性症候群
    老人性の痴呆症
    欝症
  • 付随する身体症状

    舌が痺れる。
    舌の先が苦い。
    喋る時に舌の動きが悪い。
    不眠になっている。
    胸苦しい。
不安感
人が傍にいないと
不安でたまならない。
  • 付随する身体症状
  • 寒さがこたえる。
  • 手足が冷たくなかなか温まらない。
  • 鼻の奥に濃い鼻汁が留まる。
心包経
変動
 不安感
  • 付随する身体症状
  • 心痛、
  • 胸脇張り苦しい。
  • 胸内苦悶
  • 呼吸促迫
 心包経実
 不安感
  • 付随する身体症状
  • 胸苦しい。
  • 手の掌が熱くなる。
  • 動悸がする。
 心包経虚
  • 不安感

    寒熱感

    霧中感

    不安定感

    思考力減退。
  • 付随する身体症状
  • 呼吸苦しい。
  • 呼吸微弱。
  • お腹が冷える。
  • 心窩部に物が痞える.
  • 疲れる
  • 眩暈
三焦経虚
意識障害
  • 付随する身体症状
  •  発熱、
  • 咽喉乾き、
  • 心痛す。
  • 胸、脇、上腕、前腕の
  • 心経の通りが痛んで
  • 手掌中熱す。
心経変動
意識障害
  • 付随する身体症状
  • 夜目が冴え、不眠
  • 胸いきれして咽喉渇き発熱す。
  • 胸いきれ;
  • 胸が蒸されるような熱気の状態。
心経心実
意識障害
  • 付随する身体症状
  • 夢を多くみて眠れない。
  • 夜目が冴え、不眠になる。
  • 昼間、横になりたい。
  • 疲れが取れないで眠い。
  • 胸いきれする。
  • 耳や目を患い、顎(あざと:あご)、
  • 項(うなじ)、肩、肘、前腕等の
  • 所にあたって、折れるかと思うほどの
  • 激しい痛みを発する。
心経
小腸経
の変動

心火の変動(ゆらぎ)身体症状の分類コーナー

  • 先の心火経の「心のゆらぎ」に該当する精神状態があった方はこちらのコーナーもお読みください。

  • これらの症状も、身体的随伴症状に該当します。
    心火経が改善対象になる症状についてまとめました。
    点検してみましょう。

心火の変動 (ゆらぎ) 身体症状の分類表

 心火の変動 (ゆらぎ) 身体症状の分類表
 項目  身体症状
 ①
食欲について。
  • 胃が張る(膨満感)
 ②
大便について。
  • 緊張すると下痢になる。
  ③
小便について。
  • 尿量が少ない。
  • 色が濃い。
  ④
睡眠について。
  • 夢を多くみて眠れない。
  • 昼間、横になりたい。
  • 疲れが取れないで眠い。
  ⑤
皮膚について。
  • かゆみ。
    手の平のほてり。
    手の掌が熱くなる。
    小水疱。
    寒さがこたえる。
    手足が冷たくなかなか温まらない。

    心包経に邪が客していると、
  • 流注上に湿疹や皮膚炎や異常物が現れる状態になり邪実を表す。

腕・肩・背中の状態。
  • 右の肩背のこり(三焦経)。
  • 五十肩で後頭部に手を回すと痛い(三焦経)。
  • 左の肩背のこり(小腸経)。
  • 五十肩で腰に手を回すと痛い。
  • 肩、肘、前腕等の所にあたって、
  • 折れるかと思うほどの激しい痛みを発する。
 ⑦
腰部の状態。
  •  背中から腰にかけて痛む。

膝の状態。
  • 膝のリュウマチ。

頭部・顔面の状態。
  • 側頭部の痛み。
  • 頭蓋内部の痛み。
  • 耳鳴り。
  • 眩暈(めまい)
  • 言葉が出にくい。
  • 聴覚障害が起こる。
  • 舌が痺れる。
  • 舌の先が苦い。
  • 喋る時に舌の動きが悪い。
  • 鼻の奥に濃い鼻汁が留まる。
  • 耳や目を患い、
  • 顎(あざと:あご)、
  • 項(うなじ)に、激しい痛みを発する。


胸部の状態
  • 心臓病。
  • 動脈硬化症。
  • 胸いきれ;胸が蒸されるような熱気の状態。
  • 心痛、
  • 胸脇張り苦しい。
  • 胸内苦悶
  • 呼吸苦しい。
  • 呼吸微弱。
  • 呼吸促迫
  • 動悸がする。
腹部の状態
  • 心窩部に物が痞える.
  • お腹が冷える。
  • みぞおちに痛みが出る。
  • 消化不良。
  • 清水を吐く。

風邪引きに伴う症状。
  • 発熱、
  • 咽喉乾き、
  • 熱が出て体調不良。
  • インフルエンザ。
  • ウイルス性。
  • 熱が続いている。
  • 咽喉の痛み(三焦経)。

心火タイプの弱点を改善する鍼灸の治療法。

 鍼灸での治療法について。

 ※ 気の医学が東洋医学です。


  • 當先氣調而後治標邪
    読み方:
    マサニ サキニ キヲトトノエ シカシテノチニ ヒョウジャヲ チス 。
    訳文:
    気を調(ととの)るをえて、而(しか)して後に標邪を治すべし。
    解説:
    病気を治す為には、五臓六腑十二経絡の気を調(ととの)る「本治法」を初めに行い、その後に「標治法」を行ないなさい。

※ 「本治法」と「標治法」について。


  • 本治法
    「本治法」とは、気を調(ととの)る鍼灸の施術手技です。
    病気の根本原因を改善する、一番大事な一番初めに行なう鍼の施術手技です。
    本治法を施すことで、五臓六腑十二経絡の「気」が正しく調整され「血」の流れを正しく順行させます。
    そのことで、生命力の強化がなされ、病気を治す「自然治癒力」を増強させます。
    「本治法」は病気の根本原因を改善する為の施術手技に成ります。

    標治法
    標治法とは、患者の病状・症状を直接に緩和させる手技です。
    標治法の方法は、体表より観察できる患部の「虚実」の状態に対して直接に「補法、瀉法」を行なって、これを調和させ病状を緩和させます。

    そして、
    本治法と標治法をうけることで、現在の病状が改善されると同時に、病気をぶり返さない身体になります。

※ 鍼の治療法はシンプルなものです。

鍼の技術は、『虚実補瀉(きょじつほしゃ)』に尽きます。


  • 虚とは生気が不足する事です。
    実とは邪気が充満する事です。
    従って鍼の治療法は、
    生気の不足を補うことが『補法』の鍼術であり 、
    生気の働きを妨害する邪実を取り除くことが『瀉法』の鍼術です。


本治法が病気の根本原因を改善する為の一番の施術手技に成ります。

本治法の診断例:

  • 心火経の治療は臨床上は、一番目の刺鍼としての治療は行いません。
  • 多くは脾虚証などの時に、二番目の刺鍼として大陵(心包経の原穴)を処置します。
  • 脾虚証(定則):
    太白(脾の兪土原・自穴)・大陵(心包経の原穴)
————————————–

二番目の治療点。(標治法)

心火経の変動に関わる経絡は4つあります。

  • それぞれのルート別に臨床上の実践治療法の事例を取り上げます。
  • また、ルート参照図も参照ください。
  • ⑤ルート:手の少陰 心経
    ⑥ルート:手の太陽 小腸経
    ⑨ルート:手の厥陰 心包経
    ⑩ルート:手の少陽 三焦経 
    です。

⑤ルート:手の少陰心経での実践治療法例。

この流注経過によって見るに、心経は心臓、消化器、肺臓に関係し、更に眼系に連なり、脳髄を絡うので意識活動を支配する。
また、本経は営衛の循環作用と共に呼吸作用も主る。
ゆえに、少衝、少沢穴の刺絡治療は救急的に胸内苦悶の病症を取り除く。
その他、排便、排尿、意識活動に効く穴が多い。
また、霊道、通里、陰ゲキ、神門穴は子午療法に使用する。
子午治療は「胆心が肝小して」より。
胆経のツボ:光明(絡穴)・外丘(ゲキ穴)
肝経のツボ:蠡溝(絡穴)・中都(ゲキ穴)
奇経治療の適応側は『病側優先』とする。
心経(通里)ー肝経(太衝)
<臨床考察27: 病因論・ 素質〔五行体質〕 頁:94より>
心火体質
もつとも変化しやすく熱しやすい体質者。
喉が渇いて血脈が動じやすく、これらが続くと心臓を始め循環器障害の病気を発症する事もあが、その多くは神経症であり経絡鍼灸の適応症である。
【治療方法:必要となれば心経にも直接瀉法を行う事も考える。】
心の熱は体内に籠り患者を苦しめるが、体温計では測れない場合が多い。
この時は発想を変えて、必要となれば心経にも直接瀉法を行う事も考える必要がある。
【心の臓の変動症状:身体が熱ぽく、無気力、不眠、苦しい。には、治療経も心経。。】
心臓は精神活動にも関係が深く、効果を上げる場合もあるが、現代医学的に心臓に異常が認めれ、加えて意識や精神活動に異状を伴う患者は中々取り扱いがたく、現代医療との「併用医療」「混合診療」が望ましい。
「意識障害に対する心経の応用範囲は幅広い」
意識障害と言えば、・・・注意欠陥他動性症候群・老人性の痴呆症・欝症状、等・・
これらに対する心経の応用は有効で、継続治療で成績を上げることができる。

ルート参照図
⑤ 手の少陰心経 内経を中心とした流注図 c2051
 

⑥ルート:手の太陽小腸経での実践治療法例。

手の太陽小腸経は火経であるから、その病症はすこぶる激しいものが多い。
少沢穴は刺絡治療により心臓病の救急法としての特効穴である。
そのほか、寝違い、五十肩(結滞痛にはれいこうけつ蠡溝穴も良い)、耳の病(疼痛、しびれ、コリ)
<臨床考察23: 小腸腑 頁:82・より>
【治療穴:水分穴と小腸兪を合わせて用いると良い。】
【治療穴:養老穴付近の反応で、】
目・耳の病、心臓や消化器に大いに関連し、眩暈・耳鳴・頭鳴に対し《養老穴付近》の反応を求めて効を奏する。
また膀胱経との繋がりもあって、背や腰の寒気・冷え・痛みに大抵はこれを補って対処する。
【① 骨折・脱臼&後遺症に刺絡治療は有効である。】
〔手の指〕その辺りの骨折・脱臼、あるいは固定法を行った後の後遺症にはめぐり合う場合が多い。
その時の患部は水腫のようになっており、なかなか治らない。
これに対して刺絡を行うと、瘀血と共に瘀水が放出し、その後、水分の吸収も盛んになって、健康状態に戻る。
【② 骨折・脱臼&後遺症に刺絡治療は有効である。】
この方法はどの場所でも速やかに効果が上げられる。
〔これは〕回復期にある組織が瘀血・瘀水に犯されているところを、そのヘドロを取り除く様なものである。
この治療法は身体の各所各部位病状に従って行うと応用範囲が広く、回復を早めるきっかけとなる。
【小腸経の反応穴は心臓病・背中の痛みや違和感に効果あり。】
心経と表裏関係にあるこの経は、心臓の慢性的な病気の時等、背中の痛みや違和感を打ってる患者がいる。
この経の諸穴の反応を診て、これを補瀉して有効である。

ルート参照図
⑥ルート:手の太陽小腸経 内経を中心とした流注図 c2052
 

⑨ルート:手の厥陰心包経での実践治療法例。

君火である心臓の命を代行する。ゆえに、三焦と共に、相火といわれる。
君火である「心」は意識活動や感覚等、上級の精神活動を主るのに対して、心包はその生体が生き抜くための生理機能を主る。すなわち、排便、睡眠、その他反射運動、呼吸、循環作用を担当している。
その作用はすべての臓器や末端諸器官の働きに関与しているので、その主る病症も後天の原気の中心である脾経の母経として、また、心の病の一部を君火に代わって治すことになる。
その病は、胸内苦悶、心痛、呼吸速迫し不安感がある。発熱。
また、顔赤く、みだりに笑い、目黄ばみ、前腕と肘が引きつり、手の中熱す。
その治療点として、大陵、内関、曲沢等の使用頻度が高い。
<臨床考察23: 臓象論>
【治療穴:大陵穴:ペースメーカーを入れないですんだ例:心包経の大陵穴を補った。】
原因不明の除脉で心臓のペースメーカーを入れるように勧められた五十歳を少し超えた女性の患者が来院した。
証は脾虚肝実、心経を避けて少し遠回りだが心包経の大陵穴を補った。
次第に脈が正常に近づき、不整脉も無くなった。
【治療穴:心包は「心の臓」の邪実を表す、見逃さず、瀉法する。】
また、心包は「心の臓」の邪実を表す場合があり、術者はこれを見逃さず瀉すべきである。
脉状に応じた瀉法は、思うより卓越した効果を示し害も無いもである。
【心包経はサラッと刺鍼。】
心包経はかなり使用頻度の高い経絡であるが古典にもあるように鍼を長く留めないというのがコツである。

ルート参照図
⑨ルート:手の厥陰心包経 内経を中心とした流注図 c2053
 

⑩ルート:手の少陽三焦経での実践治療法例。

三焦者.決涜之官(けつとくのかん).水道出焉.  (靈蘭祕典論篇 第八、一章、六節)
心包経と共に相火といわれ、君火である心の臓に代わって、全身の支配と営衛の循環を主する。
その病は、耳塞がり、耳鳴り、耳聾(じろう)、目の鋭い眥痛(じつう:まなじり痛)、咽頭腫れる。
この経のめぐる所が痛む。また、妊娠、下焦の病を発する。
臓象論より、
火性、背の第十三椎(第一腰椎)につき、
上中下焦に分かれて営衛の生成、伝与及び排泄の循環系統を主る。
上焦:横隔膜より上、その働き霧の如く、治療点:膻中ね。
中焦:横隔膜下より臍まで、その作用漚(あわ)の如く、治療点:天枢穴
下焦:臍下、その状態瀆(みぞ)の如く、治療点:陰交穴
手の少陽三焦経はくんか君火の一部を代行する心包経と表裏をなしている。
即ち、心包経は内臓諸器官を統括し、三焦経はその機能を継続するためのエネルギー源を営衛(えいえ)
三焦の原気として運ぶ経絡である。
ゆえに、この経は心包経と共にそう か相火といわれる。
すべてのやまい病は営衛循環の不調和によって惹起される。
従って、経絡鍼灸治療に当たっては、その脉証に随い瀉法を加えるとが多い。
治療穴について考察:外関・三陽絡・四トク穴が用いられる。
時に補う場合もあるが、その穴は中渚・陽池を用いる。
また、関衝穴の井穴(せいけつ)刺絡(しらく)はすべての病症に速効がある。
主治症としては、下焦の病(婦人病・泌尿器疾患・排尿障害)、
或いはこの経が流れる目・耳・こうはい項背部・腰部・臀部・下腹の病に用いられる。
特に、りゅうざん流産の防止にはこの経の治療は欠かせない。
<臨床考察37:病症論>
何れの証にあっても三焦経の補瀉が用いられて効果的である。
しかし、脉は勿論であるが、左右の経あるいは流注付近の虚実に従って補瀉する事が効果を高める。
極当たり前な事であるが、守られていない場合が多い。
原論にも種々書かれているが、悪寒・発熱・熱感・疼痛・掻痒・目・耳・項背・腰部の症候等々に並んで「薬指の変化」も三焦経の変動を知る上で役に立つ。
この経の変動を正常に戻す時、三焦経の病症解消の目安になる。
臨床考察23: 臓象論:
【東洋思考で「気」の特性に合致した腑は三焦経である。】
三焦は働きがあって形が無いという東洋思考で「気」の特性に合致した腑である。
治療の現場では活用の範囲が広く、あまり証に拘らないで用いることができる。
【治療穴:膻中穴を始め上焦の穴所は「寒熱感・霧中感・不安定感・眩暈・思考力減退」を治す。】
上焦は雲霧の如くとあるが、気の病に適応する「寒熱感・霧中感・不安定感・眩暈・思考力減退・・」
これらは現代医学でも中々解決しにくいものであるが、膻中穴を始め上焦の穴所を用いてかなりの効果が期待できる。
【治療穴:天枢穴を代表に、志室・脾兪・胃兪・三焦穴等の補法は、心窩部に物が痞える・疲れる・背腰部に凝り痛みを感じる・手足が痛重い・体が重い・やる気はあるが中々実行できないなどを治す。】
中焦のおう漚の如き存在感は捕らえるのに難しいが、心窩部に物が痞える・疲れる・背腰部に凝り痛みを感じる・手足が痛重い・体が重い・やる気はあるが中々実行できないなど・・・。
天枢穴を代表にして、志室穴・脾兪穴等を補い、また胃兪穴・三焦穴等も使用することが多い。
中焦如漚(チュウショウハオウノゴトシ)漚は浸漬発酵の意味。中焦の主要機能が食物の浸漬と腐熱であることをいう。
【治療穴:陰交穴を始め下焦の穴で補法を用いると、便秘・下痢・膀胱炎・生理痛・のぼせを治す。】
下焦の働きは水の如くというが、二便・月水・逆気等五感で認識できる現象・病症を言う。
陰交穴を始め補法を用いる場合が多い。
全身の機能は心包によって支配され、その原気(元気)は三焦によって全身にもたらされる。
三焦の原気は、脾胃により生じた営衛に腎の臓から受けた先天の原気が混じともので、これこそ生命現象の源と言って良いだろう。
三焦の気の不足は、寒冷に繋がり衣服を重ね着しても寒く、クーラー・扇風機・涼風を嫌う。
これに対し気余れば熱感し、しばしば気血共に実証に繋がる恐れがある。
前者後者よろしき補瀉を持って未病を防ぐ。
【治療穴:三焦経補瀉で、目・耳の病や首の凝りを治す。】
目・耳の病や、翳風・風池・瘂門これらの穴辺りに現れる凝りや異常感に対しては、証にかからわず三焦経補瀉して効果が上げられる。
【 誤治反応:三焦に係わる穴には注意を怠ること無かれ・・・。】
背腰臀部にも作用する。
下焦の病、婦人科、泌尿器疾患、二便の排泄障害にも係わりが深く、反応点を求めて処置し効果を上げられるが、注意を怠ると眩暈・耳鳴り・尿閉・月経遅延等の誤治反応も起こすことがある。
なお、現代医療と平行して受診している患者は、病院で行う検査値にも良否の変化を齎す。
表題: 臨床考察22: 臓象論 6 三焦 頁:78・平成15年5月収録
【三焦経の用い方。】
体感温度が低く、摂氏25度でも寒く感じ、衣類を重ね着しなければ居られない。
そんな人は周囲の僅かな変化にも体調が崩れる、いわば陽虚の状態である。
この時三焦経を診て、これが虚していれば補って患者の身体に大きな変化をもたらし、生活状況を通常に戻すことができる。
また以上に暑がり、或いは暑さに弱い人の三焦経の実を瀉法して、未病を治すことができる。
このような人は血が結ほれて、重い疾病に冒される事が多いからである。
表題: 臨床考察19: 手の少陽三焦経 頁:67・平成15年2月収録
【 現代人を快適にする三焦経。】
この経絡は証に係わらず補瀉する応用範囲の広い経絡で、体表の虚実も大きく関与して、気候の変わり目や住まいの暖房が完備された今日この頃では、この経絡の感受性を高めると快適になる。
【 暑さ寒さに過敏な人の治療穴・・・】
暑さ寒さに過敏な患者に対し、陽池・支溝・会宗・三陽絡等の穴への補瀉は誠にその効果明らかである。
また肘関節より上、経絡に沿って現れる反応に対しての処置も上・中・下焦に渡って有効で、思わぬ成果が上げられる。
しかし良否は混在、表裏を示す。明らかな証と適切な処方が必須うである。

ルート参照図
⑩ルート:手の少陽三焦経 内経を中心とした流注図 c2054

 
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