第十二、咳嗽
南北経驗醫方大成による病証論・井上恵理先生・講義録を参考に構成しています。。
小項目 番号 c332
十二、咳嗽のポイント
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第十二、咳嗽の 原文と訳文読み(カタカナ)。
肺爲五臓之華蓋、 ハイ ハ ゴゾウ ノ カガイ ト ナシ
聲音之所従出、 セイオン ニ シタガイ イズル トコロナリ
皮毛頼之而潤沢、 ヒモウ コレニヨッテ ジュンタクシ
腎水由茲而生養、 ジンスイ コレニヨッテ ヨウジョウス
腠理不密、 ソウリ ミツ ナラズ
外爲風寒暑濕之氣所干、ホカ フウカンシツ キ ノ タメニ ホカサレレバ
皆能令人咳嗽、 ミナヨク ヒト ヲシ テガイソウ セシム
傷風則、脉浮憎寒、 カゼニ ヤブラレル トキハ、ミャク フ ニシテ カンヲニクミ
身熱自汗煩躁鼻清涕引、シンネツ ジカン シテ ハンソウ シテ ハナニ セイテイ ヲヒキ
欲語未竟而咳、 カタラント ホッスレバ イマダイナラズ ガイス
傷寒則、脉緊而無汗、 カンニ ヤブラレル トキハ、ミャク キンニシテ アセナク
悪寒煩躁不渇、遇寒而咳、ヲカン ハンソウ シテカッセズ、カンニアッテ カイス
傷熱則、脉數而煩渇引飲咽膈乾燥咳唾調粘、
ネツニ ヤブラレルトキハ、ミャクサクニシテ ハンカツ インインシ インカク カンソウシテ ガイダ チョウネンス
傷濕則、脉細、咳則四肢重著、骨節、煩疼。
シツニ ヤブラレルトキハ、ミャクササイ ニシテ セキスルトキハ シイシ チョウジュクシ コツセツ ハントウス
又有七情之氣、傷干五臓、六脉、剋干肺経、亦能致咳、
マタナナジョウノキアリテ、ゴゾウヲヤブリ、ロクミャク ハイケイヲコクシテ マタヨク セキヲ イタス
喜傷心者、咳而喉中、介介如腫状、
ヨロコンデシンヲヤブルモノハ、セキシテインチュウニ カイカイトシテ シュジョウ ノ ゴトシ
不巳則、小腸受之、咳状、與氣倶失、
ヤメザルトキハ、ショウチョウ コレヲウケ セキスルカタチ キトトモニシッス
怒傷肝者、咳而両脇下痛、
オコッテ カンヲ ヤブルモノ、セキシテ リョウワキ イタム
不巳則、膽受之嘔吐苦汁。
ヤメザルトキハ、タン コレヲウケ クジュウ ヲ オウトス
思傷脾者、咳而右脇下痛、引至肩背。
オモウテ ヒヲ ヤブルモノ、セキシテ ミギワキシタ イタミ ヒイテ ケンハイ ニイタル
不巳則、胃受之嘔吐痰沫。
ヤメザルトキハ、イ コレヲウケ タンマツ ヲ オウトス
憂傷肺者、咳而喘息有聾。甚則唾血。
ウレイテ ハイ ヲ ヤブルモノハ セキシテ ゼンソクシ セイアリ ハナハダシキハ ダケツス
不巳大腸受之、咳則遺屎。
ヤメザレバ ダイチョウコレヲウケ セキスルトキハ イシス
恐傷腎者、咳而腰背、相引痛、
オソレテ ジン ヲ ヤブルモノハ セキシテ ヨウハイ アイヒキテイタム
不巳則、膀胱受之、咳而遺溺。
ヤメザルトキハ、ボウコウ コレヲ ウケ セキシテ イデキス
咳而不巳、三焦受之、咳則腹満不欲食。
セキシテ ヤメザレバ サンショウコレヲウケ セキスルトキハ ハラミチ ショク ヲ ヨクセズ
聲音之所従出、 セイオン ニ シタガイ イズル トコロナリ
皮毛頼之而潤沢、 ヒモウ コレニヨッテ ジュンタクシ
腎水由茲而生養、 ジンスイ コレニヨッテ ヨウジョウス
腠理不密、 ソウリ ミツ ナラズ
外爲風寒暑濕之氣所干、ホカ フウカンシツ キ ノ タメニ ホカサレレバ
皆能令人咳嗽、 ミナヨク ヒト ヲシ テガイソウ セシム
傷風則、脉浮憎寒、 カゼニ ヤブラレル トキハ、ミャク フ ニシテ カンヲニクミ
身熱自汗煩躁鼻清涕引、シンネツ ジカン シテ ハンソウ シテ ハナニ セイテイ ヲヒキ
欲語未竟而咳、 カタラント ホッスレバ イマダイナラズ ガイス
傷寒則、脉緊而無汗、 カンニ ヤブラレル トキハ、ミャク キンニシテ アセナク
悪寒煩躁不渇、遇寒而咳、ヲカン ハンソウ シテカッセズ、カンニアッテ カイス
傷熱則、脉數而煩渇引飲咽膈乾燥咳唾調粘、
ネツニ ヤブラレルトキハ、ミャクサクニシテ ハンカツ インインシ インカク カンソウシテ ガイダ チョウネンス
傷濕則、脉細、咳則四肢重著、骨節、煩疼。
シツニ ヤブラレルトキハ、ミャクササイ ニシテ セキスルトキハ シイシ チョウジュクシ コツセツ ハントウス
又有七情之氣、傷干五臓、六脉、剋干肺経、亦能致咳、
マタナナジョウノキアリテ、ゴゾウヲヤブリ、ロクミャク ハイケイヲコクシテ マタヨク セキヲ イタス
喜傷心者、咳而喉中、介介如腫状、
ヨロコンデシンヲヤブルモノハ、セキシテインチュウニ カイカイトシテ シュジョウ ノ ゴトシ
不巳則、小腸受之、咳状、與氣倶失、
ヤメザルトキハ、ショウチョウ コレヲウケ セキスルカタチ キトトモニシッス
怒傷肝者、咳而両脇下痛、
オコッテ カンヲ ヤブルモノ、セキシテ リョウワキ イタム
不巳則、膽受之嘔吐苦汁。
ヤメザルトキハ、タン コレヲウケ クジュウ ヲ オウトス
思傷脾者、咳而右脇下痛、引至肩背。
オモウテ ヒヲ ヤブルモノ、セキシテ ミギワキシタ イタミ ヒイテ ケンハイ ニイタル
不巳則、胃受之嘔吐痰沫。
ヤメザルトキハ、イ コレヲウケ タンマツ ヲ オウトス
憂傷肺者、咳而喘息有聾。甚則唾血。
ウレイテ ハイ ヲ ヤブルモノハ セキシテ ゼンソクシ セイアリ ハナハダシキハ ダケツス
不巳大腸受之、咳則遺屎。
ヤメザレバ ダイチョウコレヲウケ セキスルトキハ イシス
恐傷腎者、咳而腰背、相引痛、
オソレテ ジン ヲ ヤブルモノハ セキシテ ヨウハイ アイヒキテイタム
不巳則、膀胱受之、咳而遺溺。
ヤメザルトキハ、ボウコウ コレヲ ウケ セキシテ イデキス
咳而不巳、三焦受之、咳則腹満不欲食。
セキシテ ヤメザレバ サンショウコレヲウケ セキスルトキハ ハラミチ ショク ヲ ヨクセズ
治療之法、 チリョウノホウ
宣詳審其脉證、
ヨロシク ソノ ミャクショウヲ ショウシンスベシ
若外、感邪氣止當發散、
モシホカニ ジャキカンゼバ タダマサニ ハツサンスベシ
又須観病者之 虚實用薬、
マタ スベカラク カンジャヲミテ キョジツ ノ クスリヲ モチウベシ
若内七情而得者又當、
モシウチニ ナナジョウニヨッテエツモノハ マタマサニ
隨其部経與氣口相應、
ソノ ケイブト キコウト アイオウズルニ シタガウベシ
脉浮緊為虚寒、沈数為實熱、弦濇為少血。
ミャクフキンナルヲキョカントナシ チンサクヲジツネツトナシ ゲンショクヲショウケツトナス
洪滑則多痰、咳嗽之脉、
コウカツハスナワチタンオオシ ガイソウノミャク
浮大者易治、沈微者難愈、
ミャクタイノモノハ チシヤスク チンビノモノハ イエガタシ
大概以順気為先、下痰次之、
オオムネ キヲジュズルコトヲサキニナシ タンヲ クダスコト コレニツグ
又有停飲而咳者、又須消化之、
マタ テイインシテ セキスルモノアリ スベカラク コレヲ ショウカスベシ
切不軽用 罌粟穀等薬澁之、
シキリニス カルガルシク オウゾクコクトウ のクスリヲモチイテ コレヲトメルベカラズ
又有寒邪、未除者、亦不可便用補薬、
マタ カンジャアリ イマダ ノゾカザルモノ マタスナワチ ホヤクヲ モチュベカラズ
最忌憂、思過度、房室労傷否則、
モツトモイミキラウコトハ シリョカド ボウシツ ロウショウ シカラギルトキハ
多成瘵疾之證
オオクハ サイシツ ノ ショウトナル
謹之謹之。
コレヲ ツツシムベシ コレヲ ツツシムベシ
宣詳審其脉證、
ヨロシク ソノ ミャクショウヲ ショウシンスベシ
若外、感邪氣止當發散、
モシホカニ ジャキカンゼバ タダマサニ ハツサンスベシ
又須観病者之 虚實用薬、
マタ スベカラク カンジャヲミテ キョジツ ノ クスリヲ モチウベシ
若内七情而得者又當、
モシウチニ ナナジョウニヨッテエツモノハ マタマサニ
隨其部経與氣口相應、
ソノ ケイブト キコウト アイオウズルニ シタガウベシ
脉浮緊為虚寒、沈数為實熱、弦濇為少血。
ミャクフキンナルヲキョカントナシ チンサクヲジツネツトナシ ゲンショクヲショウケツトナス
洪滑則多痰、咳嗽之脉、
コウカツハスナワチタンオオシ ガイソウノミャク
浮大者易治、沈微者難愈、
ミャクタイノモノハ チシヤスク チンビノモノハ イエガタシ
大概以順気為先、下痰次之、
オオムネ キヲジュズルコトヲサキニナシ タンヲ クダスコト コレニツグ
又有停飲而咳者、又須消化之、
マタ テイインシテ セキスルモノアリ スベカラク コレヲ ショウカスベシ
切不軽用 罌粟穀等薬澁之、
シキリニス カルガルシク オウゾクコクトウ のクスリヲモチイテ コレヲトメルベカラズ
又有寒邪、未除者、亦不可便用補薬、
マタ カンジャアリ イマダ ノゾカザルモノ マタスナワチ ホヤクヲ モチュベカラズ
最忌憂、思過度、房室労傷否則、
モツトモイミキラウコトハ シリョカド ボウシツ ロウショウ シカラギルトキハ
多成瘵疾之證
オオクハ サイシツ ノ ショウトナル
謹之謹之。
コレヲ ツツシムベシ コレヲ ツツシムベシ
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南北経驗醫方大成、十二、咳嗽の訳文(読み下し文)
肺は五臓の華蓋となして、聲音(せいおん)の従い出(い)ずる所なり、
皮毛これによって潤沢し、腎水これによって生養す、
湊理、密ならず、外(ほか)、風寒暑湿の気の為に干(ほ)かされれば皆よく人をして咳嗽せしむ。
風に傷(やぶ)られる則(とき)は、脉浮にして寒を憎み、
身熱、自汗、煩躁(はんそう)して鼻に清涕(せいてい)を引き、
語らんと欲すれば、未だ意ならぎるに咳す。
寒に傷らるる則は、脉緊にして汗なく、
悪寒、煩躁して渇せず、寒にあって咳す。
熱に傷らるる則は、脉数にして煩渇、引飲、咽膈、乾燥して咳唾、調粘す。
湿に傷らるる則は、脉細、咳する則は四肢重著し、骨節、煩疼す。
又七情の気ありて、五臓を傷り、六脉、肺経を剋して、亦(また)よく咳をいたす。
喜んで心を傷る者は、咳して喉中、介々として腫状の如(ごと)し、
巳えぎる則(やめざるとき)は、小腸これを受け、咳する状(かたち)、気と倶(とも)に失す。
怒って肝を傷る者は、咳して両脇下痛む、
巳えざる則は、胆これを受け苦汁を嘔吐す。
思うて脾を傷る者は、咳して右脇下痛み、引いて肩背に至る。
巳えざる則は、胃これを受け痰沫を嘔吐す。
憂いて肺を傷る者は、咳して喘息して聾(セイ)あり。甚しき則は唾血す。
巳えざれば大腸これを受け、咳する則は遺屎(いし)す。
恐れて腎を傷る者は、咳して腰背、相引きて痛む、
巳えざる則は、膀胱にこれを受け、咳して遺溺(いでき:もれ おぼれる)す。
咳して巳えざれば、三焦これを受け、咳する則は、腹満ち食を欲せず。
皮毛これによって潤沢し、腎水これによって生養す、
湊理、密ならず、外(ほか)、風寒暑湿の気の為に干(ほ)かされれば皆よく人をして咳嗽せしむ。
風に傷(やぶ)られる則(とき)は、脉浮にして寒を憎み、
身熱、自汗、煩躁(はんそう)して鼻に清涕(せいてい)を引き、
語らんと欲すれば、未だ意ならぎるに咳す。
寒に傷らるる則は、脉緊にして汗なく、
悪寒、煩躁して渇せず、寒にあって咳す。
熱に傷らるる則は、脉数にして煩渇、引飲、咽膈、乾燥して咳唾、調粘す。
湿に傷らるる則は、脉細、咳する則は四肢重著し、骨節、煩疼す。
又七情の気ありて、五臓を傷り、六脉、肺経を剋して、亦(また)よく咳をいたす。
喜んで心を傷る者は、咳して喉中、介々として腫状の如(ごと)し、
巳えぎる則(やめざるとき)は、小腸これを受け、咳する状(かたち)、気と倶(とも)に失す。
怒って肝を傷る者は、咳して両脇下痛む、
巳えざる則は、胆これを受け苦汁を嘔吐す。
思うて脾を傷る者は、咳して右脇下痛み、引いて肩背に至る。
巳えざる則は、胃これを受け痰沫を嘔吐す。
憂いて肺を傷る者は、咳して喘息して聾(セイ)あり。甚しき則は唾血す。
巳えざれば大腸これを受け、咳する則は遺屎(いし)す。
恐れて腎を傷る者は、咳して腰背、相引きて痛む、
巳えざる則は、膀胱にこれを受け、咳して遺溺(いでき:もれ おぼれる)す。
咳して巳えざれば、三焦これを受け、咳する則は、腹満ち食を欲せず。
治療の法、
宣しくその脉証を詳審すべし、
若(も)し外、邪気に感ぜば、ただ正に発散すべし、
又、須(すべから)く病者の虚実を診て薬を用ゆべし、
若(も)し内(うちに)、七情によって得る者は又、まさに、その部経と気口と相応ずるに従うべじ、
脉浮緊なるを虚寒ととなし、沈数を実熱となし、弦濇(ゲンショク)を少血となす。
洪滑は則ち痰多し、咳嗽の脉、浮大の者は治し易く、沈微の者は愈え難し、
大概、気を順ずるをもって先と為し、痰を下す事、これにつぐ、
又停飲して咳する者あり、須くこれを消化すべし、
切(しきり)に軽々しく罌粟穀(オウゾクコク)等の薬を用いて、これを止めるべからず、
又寒邪あり、未だ除かざる者、又便(すなわ)ち補薬を用ゆべからず、
最も憂思過度、房室、労傷を忌む、しからぎる則は、多くは瘵疾(サイシツ)の症と成る、
これを謹(つつ)しむべし、これを謹じむべし。
宣しくその脉証を詳審すべし、
若(も)し外、邪気に感ぜば、ただ正に発散すべし、
又、須(すべから)く病者の虚実を診て薬を用ゆべし、
若(も)し内(うちに)、七情によって得る者は又、まさに、その部経と気口と相応ずるに従うべじ、
脉浮緊なるを虚寒ととなし、沈数を実熱となし、弦濇(ゲンショク)を少血となす。
洪滑は則ち痰多し、咳嗽の脉、浮大の者は治し易く、沈微の者は愈え難し、
大概、気を順ずるをもって先と為し、痰を下す事、これにつぐ、
又停飲して咳する者あり、須くこれを消化すべし、
切(しきり)に軽々しく罌粟穀(オウゾクコク)等の薬を用いて、これを止めるべからず、
又寒邪あり、未だ除かざる者、又便(すなわ)ち補薬を用ゆべからず、
最も憂思過度、房室、労傷を忌む、しからぎる則は、多くは瘵疾(サイシツ)の症と成る、
これを謹(つつ)しむべし、これを謹じむべし。
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南北経驗醫方大成、咳嗽の解説文
山口一誠のオリジナル文章を含む。
- 咳嗽(がいそう)
- 肺臓は花傘の様な形で五臓の一番上に覆い被さっています。
- 声は肺臓から発声され、五つの音階と五つの性質に分類されます。
- 声が良い時は、皮膚は温かく潤いがあり色艶(いろつや)が有ります。
- 肺臓の機能が正常なとき身体に適切な水を供給して、腎水もこれによって生養されています。
- 体力が低下して、皮膚の毛穴が開いて、外邪が容易に体内に張り込む状態になると。
- 外邪である風寒暑湿の邪気に冒(おか)されて、咳が出ます。
- 風の邪気に冒(おか)された時の病状は、脉状は浮脉になり、寒気がして、体が熱し、何もせずとも汗がでる。また、話をすると終わらない内に咳込んでくる。
- 寒の邪気に傷(やぶ)られた時の病状は、脉状は緊脉になり、汗なく悪寒、煩躁し喉が渇かず、寒い風が吹き込んで来ると咳がでる。
- 熱の邪気に傷られた時の病状は、脉状は数脉になり、胸苦しくよく渇く、水を飲みたがる。喉と胸が渇き騒ぎ、喉や唾が粘っこい。
- 湿の邪気に傷られた時の病状は、脉状は細脉になり、咳をすると手足重苦しくなる。 また骨や関節がうずき痛む。
- 内因性の七情の感情が原因で、五臓六腑の脉が傷られ、肺経が剋される事で咳嗽がでる場合もある。
- ・・・・・解説捕捉:七情は、怒、喜、憂、思、悲、驚、恐の感情のことを言います。
- 喜こび過ぎて心を傷る人は、喉の中が塞がった感じで、それを出そうと咳をするが、喉に支(つか)えた腫物みたいなものがあって出きらない、 それが治らないと小腸に伝搬して、咳をするとオナラも一緒に出る。
- 怒り過ぎて肝を傷る人は、咳をすると両方の脇腹が痛む。 これが治らないと胆に伝搬して、咳とともに苦汁を吐く。
- 思い考え過ぎて脾を傷る人は、咳して右の脇下が痛く肩背に引く、これが治らないと胃に伝搬して、咳とともに淡い痰が出る。
- 憂い心配し過ぎる人は、咳して喘息になる。甚しいと「唾血」唾に血が混じる。これが治らないと大腸に伝搬して、咳する時は同時に大便が出てくる。
- 物事を恐れすぎる人は、咳をすると背中と腰が痛む、治らないと膀胱に伝搬して、小便を漏らす。
- すべての咳がやまないと、三焦これを受け咳すると腹が張って食物が入らない。
- 咳嗽の治療方法について述べます。
- 咳嗽の診断治療方針を決める時には、その人の病状、気の状態、そして正常なときの体質を考えて行いなさい。
- その咳嗽が、外邪の風寒暑湿に反応して起るのであれば、安直に風邪薬を服用するのでなく、その外邪の性質に応じ、これを中心に治療する事。
- そしてしかる後、病人の状態、虚実、病の軽重、新旧を診て薬を与えなさい。
- その咳嗽が、内因性の怒、喜、憂、思、悲、驚、恐の七情の感情に反応して起るのであれば、
- いわゆる五臓六腑の脉と証が一致してるかどうかを考えて治療方針を立てなければならない。
- 脉が浮いてかつ緊脉ならば、これは虚寒の状態である。
- 脉状が沈数ならば、実熱の状態になり、外邪性の陽邪が原因である。
- 脉状が弦濇(ゲンショク)ならば、肺肝相克関係から、相反する脉状なので、肺が実し、肝の血が虚し、血が少なくなる。
- 咳嗽で洪滑の脉状は、浮大で、非常にコロコ口と流れが早い脉であり、病状は痰症で熱痰になる。
- 咳嗽で浮大の脉状は外邪性で治し易い、沈微の脉状は内傷性で治し難し。
- 咳嗽を治す大概の治療方針は、経絡治療の本治法を行い脉証を整える事を先ず行う。
- 次に外邪性、内傷性それぞれに合った対症法を施し治療する事。
- 酒、お茶、水の飲み過ぎで飲物が停滞し咳嗽を起こした病人の場合は、これば咳嗽より停飲を先に治すこと。
- 咳嗽を起こしている病人の体質、病因、脉状も診ないで、軽々しく咳嗽を止める薬を用いてはならない。
- 寒邪が身体から抜けたいない病人には、補薬は用いてはいけない。
- 憂い、思い過ぎを止めること。セックス過度を忌しめること。
- この病気を治さないでいると、結核になるので慎しまなければならない。
以上
———————————————-
病気が治らない理由。
- これは咳嗽だけでなく他の病気も同じで、
- 仕事のやり過ぎ、遊び過ぎ、憂い思い過ぎ、房事過多の人、
- 養生しない人は病気は治らないと諦めた方が良いと思います。。
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咳嗽の詳細解説コーナー
咳嗽の原文・訳文・解説 〔 〕内は山口一誠のオリジナル文章です。
- 原文:肺爲五臓之華蓋、
訳文:肺は五臓の華蓋となして、
解説:〔肺臓は花傘の様な形で五臓の一番上に覆い被さっています。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】〈咳の原因〉 p96下段。
「華蓋」花の傘の様な物、五臓の一番上に覆い被さっている。
「内外の症あり」咳は内傷からも外邪からも起こる。 - 原文:聲音之所従出、
訳文:聲音(せいおん)の従い出(い)ずる所なり、
解説:〔声は肺臓から発声され、五つの音階と五つの性質に分類されます。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
「聾音」音声で五音、五声は肺から出る。
肺は音を司り、咳は音声の一つで肺が中心になる。 - 原文:皮毛頼之而潤沢、
訳文:皮毛これによって潤沢し、
解説:〔声が良い時は、皮膚は温かく潤いがあり色艶(いろつや)が有ります。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
声がいい時は、皮膚の艶も潤澤(じゅんたく)で、枯渇(こかつ)すると声も擦(かす)れる。
これは皮毛は肺が司るからです。
皮膚は全身を覆い一番外にあるから、皮毛が枯渇すると外邪を受けやすく、
又気を司る故に、気が乱れ易く、気を使う事が多くなり、憂いの症を起こす。 - 〔ここ辺りは、ゆっくり堂鍼灸教科書の睡眠コーナー「④睡眠について。c404」にリンクね。 〕
〔不眠の原因一つは「憂い:現実にない事を心配する」からか。。。〕
思うは現実にある事を心配する事で、
憂いは現実にない事を心配するので、病人、眠れない人に多い。
(睡眠)
睡眠には二通りあり、動物性睡眠と人闇的(性)睡眠がある。
動物は目を聞じて動かなければ寝ているが、耳はいつも越きている。何かあると直ぐに起きる。
所が人間は、耳も寝なければ寝た気がしないので身を守る為、家屋がいるのです。
だから眠れない人は、動物的睡眠だけとらせるのです。
犬は丈夫ですが四日眠ないと死にます。
所が四十八日食べなくても死なないのです。
人間も三日以上は起きていられない、
眠れない人は、寝ないのでなく、眠ったという感じがしないだけです。
時間が解かるのは耳が起きているだけで、動物的睡眠はとれているので、
寝ないでも大丈夫だと思わせる事で、眠れない事が大変だと思う事が病気を悪くしているのです。 - 原文:腎水由茲而生養、
訳文:腎水これによって生養す、
解説:腎水はこれによって生養される。
解説捕捉:〔肺臓の機能が正常なとき身体に適切な水を供給して、腎水はこれによって生養されています。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
金は水を生じ、皮膚が枯渇すると腎水も枯渇する。 - 原文:腠理不密、
訳文:湊理、密ならず、
解説:〔皮膚が正常に働いていないならば、〕
解説捕捉:〔皮膚の毛穴が開いて、外邪が容易に体内に張り込む状態。〕 - 原文:外爲風寒暑濕之氣所干、皆能令人咳嗽、
訳文:外(ほか)、風寒暑湿の気の為に干(ほ)かされれば皆よく人をして咳嗽せしむ。
解説:〔風寒暑湿の邪気に冒(おか)されて、咳嗽する。 〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
「湊理」皮膚の表面、湊理が密ならないと、皮膚が開いて風寒暑湿の外邪に冒される。
風寒暑湿は自然現象で、昔の人は風が一週間吹かないとクモの巣に覆われるそうで風寒暑湿すべてが適当に必要なのです。
風を受けたから病気になるのでなく、風〔邪〕を受ける〔負ける〕体を持っているからです。
その反対に外邪を受けた時は、体を調和して力を出させれば、汗として外邪を排泄出来る。
今、風という言葉がマスコミに乱用されているので、風を引いて咳嗽が出てくると思っているが、寒暑湿によっても咳嗽は起るのです。 - 原文:傷風則、脉浮憎寒、身熱自汗煩躁鼻清涕引、欲語未竟而咳、
訳文:風に傷(やぶ)られる則(とき)は、脉浮にして寒を憎み、
身熱、自汗、煩躁(はんそう)して鼻に清涕(せいてい)を引き、
語らんと欲すれば、未だ意ならぎるに咳す。
解説:〔風に冒された時の病状は、脉状は浮脉になり、寒気がして、体が熱し、何もせずとも汗がでる。また、話をすると終わらない内に咳込んでくる。 〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】p97-
風〔邪〕に傷(やぶ)られる時、脉浮「憎寒」寒気がして「身熱」体が熱する「自汗」何もせず汗がでる
「煩躁」胸苦しく動悸する「清涕(せいてい)」水鼻
「語らんと欲すれば未だ終わらざるに咳す」話をすると終わらない内に咳込んでくる。
これが風による咳嗽です。 - 原文:傷寒則、脉緊而無汗、悪寒煩躁不渇、遇寒而咳、
訳文:寒に傷らるる則は、脉緊にして汗なく、悪寒、煩躁して渇せず、寒にあって咳す。
解説:〔寒に傷られた時の病状は、脉状は緊脉になり、汗なく悪寒、煩躁し喉が渇かず、寒い風が吹き込んで来ると咳がでる。 〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
寒に傷らるる時は、脉緊にして汗なく悪寒、煩躁する。
汗がでて咳がでるのは風、
汗がでなく寒気がして胸騒ぎするのが寒、喉が渇かず、寒い風が吹き込んで来ると咳がでる。
これが寒の咳です。 - 原文:傷熱則、脉數而煩渇引飲咽膈乾燥咳唾調粘、
訳文:熱に傷らるる則は、脉数にして煩渇、引飲、咽膈、乾燥して咳唾、調粘す。
解説:〔熱に傷られた時の病状は、脉状は数脉になり、胸苦しくよく渇く、水を飲みたがる。喉と胸が渇き騒ぎ、喉や唾が粘っこい。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
熱に傷らるる時は、脉数、胸苦しくよく渇く、「引飲」水を飲みたがる。「咽膈乾燥」喉と胸が渇き騒ぐ「調粘」喉や唾が粘っこい、
これが熱にあった咳です。 - 原文:傷濕則、脉細、咳則四肢重著、骨節、煩疼。
訳文:湿に傷らるる則は、脉細、咳する則は四肢重著し、骨節、煩疼す。
解説:〔湿に傷られた時の病状は、脉状は細脉になり、咳をすると手足重苦しくなる。また骨や関節がうずき痛む。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
湿に傷らるる時は、脉細、咳をすると「四肢重著」手足重苦しくなる「骨節」骨や関節「煩疼」うずき痛み、
これが湿に傷られた咳です。 - 原文:又有七情之氣、傷干五臓、六脉、剋干肺経、亦能致咳、
訳文:又七情の気ありて、五臓を傷り、六脉、肺経を剋して、亦(また)よく咳をいたす。
解説:〔七情の感情が原因で、五臓六腑の脉が傷られ、肺経が剋される事で咳嗽がでる。〕解説捕捉:内因が原因に場合:内面的な感情が強くなりすぎると発病します。
これは七情という感情です。
七情は、怒、喜、憂、思、悲、驚、恐の感情のことを言います。
これらの感情がうっ積することで、病気が起きます。 - 【井上恵理先生の講義解説より】
内、七情に傷られて五臓六腑を傷られる事がある「肺経を剋して」この五臓六腑の脉が傷られるという事も、
すべて肺経が剋される故に咳嗽をいたす。 - 原文:喜傷心者、咳而喉中、介介如腫状、不巳則、小腸受之、咳状、與氣倶失、
訳文:喜んで心を傷る者は、咳して喉中、介々として腫状の如(ごと)し、
巳えぎる則(やめざるとき)は、小腸これを受け、咳する状(かたち)、気と倶(とも)に失す。
解説:〔喜こび過ぎて心を傷る人は、喉の中が塞がった感じで、それを出そうと咳をするが、喉に支(つか)えた腫物みたいなものがあって出きらない、 〕
〔それが治らないと小腸に伝搬して、咳をするとオナラも一緒に出る。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
「喜んで心を傷る時には、咳して喉中、介々として腫状の如し」
「喉中」喉の中「介々」塞がった感じ、それを出そうと咳をするが「腫状」腫れ物、何か喉に支(つか)えたものがあって出きらない、
それが心を傷り肺に及ぼしている。それが治らないと小腸に受ける。
これは心と小腸の表裏関係「気と倶に失す」オナラと一緒に出る。
咳をするとオナラが出る、これは心迄冒されたのです。 - 原文:怒傷肝者、咳而両脇下痛、不巳則、膽受之嘔吐苦汁。
訳文:怒って肝を傷る者は、咳して両脇下痛む、巳えざる則は、胆これを受け苦汁を嘔吐す。
解説:〔怒り過ぎて肝を傷る人は、咳をすると両方の脇腹が痛む。これが治らないと胆に伝搬して、咳とともに苦汁を吐く。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
腹が立つと肝を傷る者は「咳して両方の脇下が痛む」
咳をすると両方の脇腹が痛む。これが治らないと胆がこれを受け、咳とともに苦汁を吐く。 - 原文:思傷脾者、咳而右脇下痛、引至肩背。不巳則、胃受之嘔吐痰沫。
訳文:思うて脾を傷る者は、咳して右脇下痛み、引いて肩背に至る。巳えざる則は、胃これを受け痰沫を嘔吐す。
解説:〔思い考え過ぎて脾を傷る人は、咳して右の脇下が痛く肩背に引く、これが治らないと胃に伝搬して、咳とともに淡い痰が出る。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
思うて脾を傷る者は、咳して右の脇下が痛く肩背に引く、
肝は両脇下、
脾は右の脇下から肩背、「巳えぎる則」治らないと、胃が受け「痰沫」咳とともに淡い痰が出る。 - 原文:憂傷肺者、咳而喘息有聾。甚則唾血。不巳大腸受之、咳則遺屎。
訳文:憂いて肺を傷る者は、咳して喘息して聾(セイ)あり。甚しき則は唾血す。
巳えざれば大腸これを受け、咳する則は遺屎(いし)す。
解説:〔憂い心配し過ぎる人は、咳して喘息になる。甚しいと「唾血」唾に血が混じる。これが治らないと大腸に伝搬して、咳する時は同時に大便が出てくる。 〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
憂いて肺を傷る者、咳して喘息になる。甚しいと「唾血」唾に血が混じる。
治らないと大腸これを受け、咳する時は「遺屎(いし)」同時に大便が出てくる。 - 原文:恐傷腎者、咳而腰背、相引痛、不巳則、膀胱受之、咳而遺溺。
訳文:恐れて腎を傷る者は、咳して腰背、相引きて痛む、巳えざる則は、膀胱にこれを受け、咳して遺溺(いでき:失禁)す。
解説:〔物事を恐れすぎる人は、咳をすると背中と腰が痛む、治らないと膀胱に伝搬して、小便を漏らす。 〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】p98.上段
恐れて腎を傷る者は咳をすると背中と腰が痛む、治らないと膀胱これを受け咳して「遺溺」小便を漏らす。 - 原文:咳而不巳、三焦受之、咳則腹満不欲食。
訳文:咳して巳えざれば、三焦これを受け、咳する則は、腹満ち食を欲せず。
解説:すべての咳がやまないと、三焦これを受け咳すると腹が張って食物が入らない。 - 原文:治療之法、
訳文:治療の法、
解説:〔咳嗽の治療方法について述べます。〕 - 原文:宣詳審其脉證、
訳文:宣しくその脉証を詳審すべし、
解説:〔咳嗽の診断治療方針を決める時には、その人の病状、気の状態、そして正常なときの体質を考えて行いなさい。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】p98上段 脉状を伺いながら、
「治療の法は、宣しく脉証を詳審すべし」その人の体、気、常の体〔正常なときの体質〕、泳と体症を考え、心咳か肺咳であるか分別しておく必要がある。 - 原文:若外、感邪氣止當發散、
訳文:若(も)し外、邪気に感ぜば、ただ正に発散すべし、
解説:〔その咳嗽が、外邪の風寒暑湿に反応して起るのであれば、安直に風邪薬を服用するのでなく、その外邪の性質に応じ、これを中心に治療する事。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
風寒暑湿の外邪に感じて咳嗽を発する時は、咳嗽を治療するのでなく、〔安直に風邪薬を服用するなてことです。〕その外邪を中心に治療する。。 - 原文:又須観病者之 虚實用薬、
訳文:又須(すべから)く病者の虚実を診て薬を用ゆべし、
解説:〔そしてしかる後、病人の状態、虚実、病の軽重、新旧を診て薬を与えなさい。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
「病者の虚実を診て薬を用ゆべし」病者の状態、虚実、病の軽重、新旧をみて薬を与える。
これは薬を云っているが、我々〔鍼灸師〕もそうで、咳だけを相手にするのでなく、咳によって起こる体を診て治療していく。
病者を考えずに治療すると病気を重くする事もあります。
〔咳には〇〇のツボとマニアル治療をするといけませんよ。その病人の体質、病態、症状に応じた治療法を取るのが本当の鍼灸師です。。〕 - 原文:若内七情而得者又當、隨其部経與氣口相應、
訳文:若(も)し内(うちに)、七情によって得る者は又、まさに、その部経と気口と相応ずるに従うべじ、
解説:〔その咳嗽が、内因性の怒、喜、憂、思、悲、驚、恐の七情の感情に反応して起るのであれば、 〕
〔いわゆる五臓六腑の脉と証が一致してるかどうかを考えて治療方針を立てなければならない。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
「内、七情によって得る物は」
因性の咳嗽は「部経」証 「気口」脉が相応ずるか考える、いわゆる五臓六腑の脉と証が一致してるかどうか、
咳をし両脇下痛んで、肝の虚証であれば脉証相一致してる。
そうでなければ、病が先に行っているか、脉が先に進んでるかなので、それを考えなくてはいけない。
咳嗽でも、七情と外邪では違うのでその違いを考えなければいけない。 - 原文:脉浮緊為虚寒、沈数為實熱、
訳文:脉浮緊なるを虚寒ととなし、沈数を実熱となし、
解説:〔脉が浮いてかつ緊脉ならば、これは虚寒の状態である。〕
〔脉状が沈数ならば、実熱の状態になり、外邪性の陽邪が原因である。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】〈脉状と病因〉p98下段より、
脉が浮いて緊脉、これは虚寒である、というのは脉浮は虚で、緊は寒の脉である。
沈数は実熱、外邪性の陽邪は浮数である。
咳嗽の熱の場合、実熱で沈数になる場合が多い。外邪からの咳嗽は浮実になるが、内傷からの咳嗽は内熱、沈数が多い。 - 原文:弦濇為少血。
訳文:弦濇(ゲンショク)を少血となす。
解説:〔脉状が弦濇ならば、肺肝相克関係から、相反する脉状なので、肺が実し、肝の血が虚し、血が少なくなる。 〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
「弦濇(ゲン ショク)を少血となす」
弦にして濇の脉は相反する脉、弦は肝のは、濇は肺の脉、すなわち肝の血が虚し、肺に及ぼす。
肺が実し、肝が虚じ血が少なくなっているといえる。 - 原文:洪滑則多痰、咳嗽之脉、
訳文:洪滑は則ち痰多し、咳嗽の脉、
解説:〔咳嗽で洪滑の脉状は、浮大で、非常にコロコ口と流れが早い脉であり、病状は痰症で熱痰になる。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
洪滑、洪脉は浮大、滑脉は往来流利、非常にコロコ口と流れが早い。これは痰症で熱痰に存する。 - 原文:浮大者易治、沈微者難愈、
訳文:浮大の者は治し易く、沈微の者は愈え難し、
解説:〔咳嗽で浮大の脉状は外邪性で治し易い、沈微の脉状は内傷性で治し難し、〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
咳嗽で浮大は外邪性で治し易い、沈微は内傷性で治し難し、老人性咳嗽、喘息の咳嗽は治りにくい。 - 原文:大概以順気為先、下痰次之、
訳文:大概、気を順ずるをもって先と為し、痰を下す事、これにつぐ、
解説:〔咳嗽を治す大概の治療方針は、経絡治療の本治法を行い脉証を整える事を先ず行う。〕
〔次に外邪性、内傷性それぞれに合った対症法を施し治療する事。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
「気を順ずる」脉証を整えるをまず行なう。
咳の治療、天突(てんとつ)に上から下へ刺す。
璇璣(せんき)、 華蓋(かがい)の圧痛点の灸、背部、風門、肺兪、身柱の灸、隔兪の外、二行線の肉の薄い皮膚の灸、
そういうものを先でなく、
気を整えるを先にする、というのは咳が止まったからいいのでなく、それが自然に止まる方法をとるのです。
とかく鍼灸は現象をとるのが多い。
これは患者が即効を求めるからであり、それは我々の先輩がそうしたのです。
医者で治らないものを、すぐに治してくれというが、すべての病気が直ぐに治るとは考えられない。 - 原文:又有停飲而咳者、又須消化之、
訳文:又停飲して咳する者あり、須くこれを消化すべし、
解説:〔酒、お茶、水の飲み過ぎで飲物が停滞し咳嗽を起こした病人の場合は、これば咳嗽より停飲を先に治すこと。〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
「停飲して、咳する者あり、須(すべから)くこれを消化すべし」
「停飲」酒、お茶、水の飲みすぎで飲物が停滞し咳嗽を起こす。これば咳嗽より停飲を先に治す。 - 原文:切不軽用 罌粟穀等薬澁之、
訳文:切(しきり)に軽々しく罌粟穀(オウゾクコク)等の薬を用いて、これを止めるべからず、
解説:〔咳嗽を起こしている病人の体質、病因、脉状も診ないで、軽々しく咳嗽を止める薬を用いてはならない。 〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】
「切に軽々しく罌栗穀( おうぞくこく)等の薬を用いて止めるべからず」咳嗽を止める薬を軽々しく用いない。
気を順し、痰を下し、内外の邪を去って、両根を除き咳嗽が自ら治るようにすべきです。これが治療の法則です。
漢方薬だけでなく、いろんな薬が即効を望む治療と考えているが、あれは何にもならないのです。 - 原文:又有寒邪、未除者、亦不可便用補薬、
訳文:又寒邪あり、未だ除かざる者、又便(すなわ)ち補薬を用ゆべからず、
解説:〔寒邪が身体から抜けたいない病人には、補薬は用いてはいけない。 〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】p99じょう段
「寒邪があつて除かざる者、補薬を用ゆべからず」
邪があるので補薬は用いてはいけない。
邪をとって後、補薬を用いる、薬には補薬と瀉薬が補瀉のような役理をしているが、
薬と我々〔の鍼灸治療〕は違って、
「実」の外邪は、内因、内虚があるからで、内虚を補って、外邪を除く事も出来る。
体が虚してなく、熱のある患者に補法だけ用いても汗を臨す、体が充実してれば、自分の力で汗を出す事が出来るのです。 - 原文:最忌憂、思過度、房室労傷否則、多成瘵疾之證、謹之謹之。
訳文:最も憂思過度、房室、労傷を忌む、しからぎる則は、多くは瘵疾(サイシツ)の症と成る、
これを謹(つつ)しむべし、これを謹じむべし。
解説:〔憂い、思い過ぎを止めること。セックス過度を忌しめること。 〕
〔この病気を治さないでいると、結核になるので慎しまなければならない。 〕 - 【井上恵理先生の講義解説より】p99下段
「最も憂思過度、房室、労傷を忌む」 憂い、思いすぎをやめる。房事過度を忌じめる。
「労傷」体をつかう「房室」内傷の疲れ、思う、憂う、精神的労傷も忘れ、それをやるといい治療をしても治りづらい。
所が咳嗽の代表的、喘息の患者は、あんなに苦しむのに摂生出来ない体質ではないかと思います。
「否なる則は、多くは瘵疾(サイシツ)の症となる」
この病気を治さないでいると「瘵疾」労疾、結核のこと、これになるので慎しまなければならない。
岡本一抱は、養生しなければ、こういった症になると言っているが、治らなければとも取れる、
ともかく咳嗽は複雑なので軽々しく扱うのではなく、養生をよくする。
これは咳嗽だけでなく他の病気も同じで、養生しない者は治らないと諦めた方が良いのである。
以上
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南北経驗醫方大成による病証論・井上恵理先生・講義録を参考に構成しています。。
※ 詳しくは本文:
「南北経驗醫方大成による病証論 井上恵理先生 講義録」
発行:東洋はり医学会、をお読みください。
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