八、嘔吐

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   八、嘔吐

                              小項目 番号 c328

 南北経驗醫方大成による病証論:第八、嘔吐(おうと)
南北経驗醫方大成による病証論・井上恵理先生・講義録を参考に構成しています。。
2017.2.16.制作文章
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 第八、嘔吐の原文

人身以胃為主。
頼之以容受五穀。
但有所傷非不能食。
且有嘔吐之患、
故胃虚之人、
或爲寒氣所中、
或爲暑氣所干、
或爲飲食所傷、
或氣結而痰聚。
皆能令人嘔吐。
又有瘀血停積胃口、
嘔吐之間雑以涎血。
當辨其脉證。
施以治法。
中寒則脉沈緊、四肢厥冷、飲食不下、
當以温暖之薬調之。
挟暑則脉弦数、煩躁而渇、
又當清涼。
停食則消化之、
痰聚則順氣温胃。
停積者多由優思過度、損傷経絡。
其脉実大者難治、虚細者易兪。
嘔吐之證、名状不一、
至若脚氣内攻、婦人懐妊中毒、困酒、倶有嘔吐、
又須各従其類以求之、
此證決不可軽用利藥。
唯腹痛膨張、視其何部不利、 然後利之。
三因詳論及此、不可不審。
以上、第八、嘔吐の原文を終わる。
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 第八、嘔吐 の 原文と訳文読み(カタカナ)

人身以胃為主。
ジンシンハ イヲ モッテ ツカサドリ トナス
頼之以容受五穀。
コレニ タヨッテ ゴゴクヲ ジョウス
但有所傷非不能食。
タダシ ヤブラ ルル トコロアラバ ショク スルコト アタワズ
且有嘔吐之患、
ソシテ オオト ノ ワズライ アリ
故胃虚之人、
ユエニ イ キョノ ヒト
或爲寒氣所中、
アルイハ カンキノ タメニ アテラレテ
或爲暑氣所干、
アルイハ ショキノ タメニ ホサレ
或爲飲食所傷、
アルイハ インショク ノ タメニ ヤブラレ
或氣結而痰聚。
アルイハ キ ケッシテ タン アツマレバ
皆能令人嘔吐。
ミナ ヨク ヒトヲ シテ オウト セシム
又有瘀血停積胃口、
マタ オケツ イコウニ テイセキシテ
嘔吐之間雑以涎血。
オウトノ アイダニ マジワルニ ゼンケツヲ モッテ スルコトアリ
當辨其脉證。
マサニ ソノ ミャクショウ ヲ ベンジテ
施以治法。
ホドコスニ チホウヲ モッテス
中寒則脉沈緊、四肢厥冷、飲食不下、
カンニ アタラルル トキハ ミャク チン キン ニシテ シキ ケツレイシ インショク クダラズ
當以温暖之薬調之。
マサニ オンダンノ クスリヲ モッテ コレヲ トトノウ
挟暑則脉弦数、煩躁而渇、
ショヲ ハサムトキハ ミャク ゲン サク ニシテ ハンソウシテ カッス
又當清涼。
マタ マサニ セイリョウ スベシ
停食則消化之、
テイショク ナルトキ ハコレヲ ショウカシ
痰聚則順氣温胃。
タン アツマル トキハ キ ヲ ジュンジ イ ヲ アタタメヨ
停積者多由優思過度、損傷経絡。
テイセキ ノ モノハ オオクハ ユウシ カドニシテ ケイラクヲ ソンショウスル
其脉実大者難治、虚細者易兪。
ソノミャク ジツダイ ナルモノハ ナオシガタシ キョサイ ナルモノハ ナオシヤスシ
嘔吐之證、名状不一、
オウトノ ショウ メイジョウ イチナラズ
至若脚氣内攻、婦人懐妊中毒、困酒、倶有嘔吐、
モシクハ カノキ ウチニ セメイタリ フジン カイニン チュウドク コンシュノ トモニ オウト スルコトアリ
又須各従其類以求之、
マタ スバカラク カクカク ソノ ルイニ シタガッテ コレヲモトムベシ
此證決不可軽用利藥。
コノショウ ケッシテ カルガルシク リヤクヲ モチュベカラズ
唯腹痛膨張、視其何部不利、 然後利之。
タダ フクツウ ボウチョウ セバ ソノ ナンノブニ レイセザルカヲ ミテ シカシテ ノチニ コレヲリセヨ
三因詳論及此、不可不審。
サンインノ ショウロン コレニオヨビ ツマビラカニ セズバアルベカラズ
以上、第八、嘔吐の 原文と訳文読み(カタカナ)を終わる。

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南北経驗醫方大成、第八、嘔吐 の訳文(読み下し文)

人身は胃を以て主〔つかさどり〕と為す。
之に頼って五穀を容受す。
但し、傷(やぶ)らるる所あれば、食する事、能(あた)わざる。
且(か)つ、嘔吐の患いあり、故に胃虚の人、或いは寒気の為に中(あ)てられて、暑気の為に干され、或いは飲食の為に傷られ、
或いは気結して痰聚(たんあつ)まれば皆能(みなよ)く人をして嘔吐せしむ。
また瘀血(おけつ)、胃口に停積して、嘔吐の間に雑(まじ)わるに涎血(ぜんけつ)を以てする事あり。
當〔まさ〕に其の脉証を弁じて施すに治法を以てす。
寒に中〔あた〕らるる時は、脉沈緊にして四肢厥冷し、飲食下らず、當に温暖の薬を以て、之を調う。
暑を挟〔はさ〕む時は、脉弦数にして煩躁にして渇す。
又當に之を清涼すべし、停食なる時は、之を消化し、痰聚まる時は、気を順じ、胃を温めよ、停積の者は、多くは優思過度にして経絡を損傷する。
其の脉、実大なる者は治し難し、虚細なる者は兪へ易し。
嘔吐の証、名状一ならず、脚気、内に攻め、婦人懐妊中毒、困酒、倶に嘔吐する事あり、又須らく各々、其の類に従って之を求むべし、
此の証、けっして軽々しく利藥を用ゆべからず。
唯、腹痛膨張せば、其の何の部に利せざるかを視て、然して後に之を利せよ。
三因の詳論、此れに及び、審らかにせずばあるべからず。

以上、南北経驗醫方大成、第八、嘔吐 の訳文(読み下し文)を終わる。
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南北経驗醫方大成、第八、嘔吐 の解説文

                    山口一誠のオリジナル文章
  • 一粒(ひとつぶ)の光の「ゆらぎ」から宇宙が生まれました。
    宇宙の組成と人間の組成要素は同じです。
    東洋医学では、人間が生命を維持するために「先天の気」と「後天の気」の両方が必要だと考えます。
    「先天の気」は、父母より受け継いだ生命「気血」の源(みなもと)です。
    「後天の気」は、生命を維持する為に「五穀」食物を消化吸収することによって身体を養うものです。
  • そして、 「胃」が五穀食物を受容し「後天の気」を作る中心です。
  • 胃の調子が悪くなると食事をすることが出来なくなります。
    「食べない」ことにも色々とあります。
    1、食不思(ショクフシ)とは、食欲がなく「食べたくない」状態です。
    2、不食(フショク)とは、食欲があっても「食べられない」状態です。
    そして、
    胃の調子が悪くなる事での「嘔吐症」があります。
    食べても吐けば「食べない」のと同じ事ですね。
  • 「嘔吐症」になる人は、胃が虚弱になっています。
    そして、次のような状況に置かれると嘔吐の症状がさらに悪化します。
    身体が冷える寒い所や、湿気の多い所に長時間いた場合です。
    或いは暴飲暴食や胃腸に悪い食べ物を取った時です。
    また心配事があると精神を労して「痰聚(タンシュウ:悪い物が集まり)」心因性胃炎を起こします。
    この様なことが原因となり嘔吐の病気になります。
  • 東洋医学では「嘔吐」を「嘔」と「吐」の二つに分類します。
    「嘔」は声あって物無し、吐き気だけです。
    気結ばれ心配事がある時は「嘔」が多いです。
    「吐」はは声あって物有り、本当に吐く事です。
  • また、嘔吐物に血の雑(まじ)った物を吐く場合があります。
    これは、心下部に瘀血(オケツ:古血)の固まりがあり胃潰瘍を起こしている場合です。
  • 嘔吐の治療方針を正しく出すためには患者の「脉状」と「病状」を良く診て治療方法を診断します。
  • 寒い所にいて身体が冷えた時の「嘔吐症」は、
    脉状は、沈ずんで緊張した「沈緊」の脉になっています。
    病状は、手足が冷たくなり、飲食が入らない為に「嘔」声あって物無しの「吐き気け」の症状です。
  • 暑邪に侵され身体が熱くなった時の「嘔吐症」は、
    脉状が、速くなりピーンと張った弦の様な「弦数」の脉になっています。
    病状は、胸息れがして喉がカラカラになり嘔吐します。
    この時の治療法は、涼しくする清涼剤の漢方薬を処方します。
  • 「停食」とは、消化不良になる食もたれになる事、この時の治療薬は消化剤を処方します。
    「痰聚(たんしゅう)」症状は、胃部のもたれ感で、この時の治療薬は気を巡らし胃を温める処方します。
  • 「停食」や「痰聚」の状態になり易い人は、心配事が多く思い考え過ぎる人です。
    今でいう心因性胃炎で、びっくりしたり、心配して食べれない状態になります。
    そうすると、気結ばれて痰集まり、気の流れる経絡を損傷することになり嘔吐の病気になります。
  • 嘔吐の病気なっている患者の脉状で、
    脉状が「実大の脉」固くて大きい脉のときは治療が難しいです。
    脉状が「虚細の脉」細くて虚しているときは治し易いです。
  • 嘔吐の病症は沢山の原因があります。
  • 「内傷の気」が自分の身体の中を走り回り自身を内攻して心因性の嘔吐を誘発します。
    「内傷の気」は七情のことです。
    七情とは、怒、喜、憂、思、悲、驚、恐、の感情の事です。
  • 婦人の「つわり症状」から嘔吐を誘発します。
    また、
    嘔吐で腹が張っていない時の「つわり症状」の場合は、嘔吐の治療だけでなく、その物の病気を考える事。
  • 酒の飲みすぎで嘔吐します。
    二日酔いは、苦しんでもほっとけます。
  • それぞれの病気の原因を診て、その症状従って治療をほどこします。
    嘔吐の病状に対して、決して、軽々しく「利藥」吐き気止めや下剤を用いてはいけませんよ。
  • 嘔吐の症状があり、腹が痛んで大きくなっている時は、その原因をよく診断した後に適切な治療をしなさい。
    例えば、
    1、子供の嘔吐で、腹痛、緊張した症状には、温めて治療するのが良い。
    だいたい腹痛膨張は温めるのが良い、湿布の方法としては、湿布して油紙をして外気で冷やさない、
    腹痛膨張部にその上にタオルを置きカイロをつける、冷(さ)めると逆になるので気をつける事です。
    2、腹が痛んで大きくなっている時は、「食滯」で体のどこかに故障があると考えその治療をした後に下剤を用いてよい。
    「食滯」とは、吐くも下痢もしない食中毒の症状です。
  • 「三因の詳論」内因、外因、飲食の邪を不内外因として三因を審(つまび)らかにする。
    外邪に傷(やぶ)られた時は瀉法をします。
    内因は補法をします。
    そして嘔吐の症は、瀉法よりも補法が常法です。
  • ここで利剤は下痢剤ですから瀉法の薬です。
    軽々しく用いるべきでないというのは、我々の治療は、瀉法より補法を用いるべきだと言っているのではないかと思います。
    嘔吐の症で我々の所に来るのは〔症状が〕重くなっているので、よけい気をつける事です。
    食べると吐くのは内因の証です。
    優思過度にして経絡を傷る。
    飲食や内因に傷られた場合は脾虚証が多く、この時は治りやすい。
    腎虚証の嘔吐は気を付ける事。
    嘔血が雑じり今の医学では、胃潰瘍、胃癌等が含まれる事があります。
¨
以上、
第八、嘔吐の解説を終わります。
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第八、嘔吐の詳細解説コーナー

第八、嘔吐の原文・訳文・解説

原文:人身以胃為主。 頼之以容受五穀。
訳文:人身は胃を以て主〔つかさどり〕と為す。 之に頼って五穀を容受す。
解説:
一粒(ひとつぶ)の光の「ゆらぎ」から宇宙が生まれました。
宇宙の組成と人間の組成要素は同じです。
東洋医学では、人間が生命を維持するために「先天の気」と「後天の気」の両方が必要だと考えます。
「先天の気」は、父母より受け継いだ生命「気血」の源(みなもと)です。
「後天の気」は、生命を維持する為に「五穀」食物を消化吸収することによって身体を養うものです。
そして、「胃」が五穀食物を受容し「後天の気」を作る中心です。
¨
井上恵理先生の講義解説より】〈 胃が主 〉 P80下段。
人の身体は胃が主となる者である。
胃によって五穀を容受す。
「五穀」全ての食べ物、我々の体は先天の気と後天の気からなり、親から受け継いだ生命である。
それを維持する為、食物によって身体を養っている、これを後天の気といい、先天の気は命門から入り、三焦の気となる。
後天の気は、胃によって栄血を、腸に入って衛気を、その前の上焦で宗気を、それぞれ臓し、その三気が前の先天の気と共に、経絡を巡行する。
この様に生命を維持する食物は胃が主〔つかさどり〕となるのです。
¨
※ 三十二難 難経臨床&エトセトラより。・・・・・・
「気血」は父母より享けた先天の栄養であり、
これと飲食物の消化吸収された栄養分と合わさり後天の気「榮衞の気」となる。
この、榮衞の二気が十二経絡を通行している。
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/32nan/
¨
※ 三十六難のポイント其の一は、腎は二つあり、右腎の命門についての論述です。

※ 難経臨床&エトセトラより。・・・・・・
命門は神様と精力の宿る所であり、原氣の宿る所である。
命門は両親から受け継いだ「先天の気」を宿し、この精力が子々孫々に受け継がれるのである。
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/36nan/
¨
一粒の光の「ゆらぎ」から宇宙が生まれました。
「ゆらぎ」の科学が東洋医学です。
「宇宙の始まりと東洋医学のお話し。」
http://yukkurido.jp/keiro/g1/st1/%ef%bd%93%ef%bc%91/
¨
星の瞬(まばた)き
宇宙の組成と人間の組成要素は同じだとも
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=1589383124698479&set=a.1389466874690106.1073741828.100008804207166&type=3&theater
原文:但有所傷非不能食、 且有嘔吐之患、
訳文:但し、傷(やぶ)らるる所あれば、食する事、能(あた)わざる。 且(か)つ、嘔吐の患いあり。
解説:
胃の調子が悪くなると、食事をすることが出来なくなります。
食べられないことも色々あります。
食不思(ショクフシ):食べたくない。
不食(フショク):食べられない。
そして、嘔吐の病気も発症します。
¨
井上恵理先生の講義解説より】〈 傷(やぶ)られる病因 〉  P81上段。
胃が傷(やぶ)られると、必ず食物が食べられなくなる。
食べられないことも色々あり、食不思(ショクフシ:食べたくない)、不食(フショク:食べられない)、不味(味がない)等、患者の言葉はあてにならないので、患者に聞く時に、症としての区別が必要です。
食べても吐けば、食べないのと同じ事です。
原文:故胃虚之人、或爲寒氣所中、或爲暑氣所干、或爲飲食所傷、或氣結而痰聚、皆能令人嘔吐。
訳文:
故に胃虚の人、或いは寒気の為に中(あ)てられて、暑気の為に干され、或いは飲食の為に傷られ、
或いは気結して痰聚(たんあつ)まれば皆能(みなよ)く人をして嘔吐せしむ。
解説:
胃の調子が悪くなると食事をすることが出来なくなります。
「食べない」ことにも色々とあります。
1、食不思(ショクフシ)とは、食欲がなく「食べたくない」状態です。
2、不食(フショク)とは、食欲があっても「食べられない」状態です。
そして、
胃の調子が悪くなる事での「嘔吐症」があります。
食べても吐けば「食べない」のと同じ事ですね。
東洋医学では「嘔吐」を「嘔」と「吐」の二つに分類します。
「嘔」は声あって物無し、吐き気だけです。
気結ばれ心配事がある時は「嘔」が多いです。
「吐」はは声あって物有り、本当に吐く事です。
¨
井上恵理先生の講義解説より】〈 傷(やぶ)られる病因 〉
胃の虚している人が、寒に中(あ)てられ、暑さに干され、食にあたり、気結ばれて嘔吐せしむ。
嘔吐の原因は、先〔ま〕ず寒、暑、飲食、気結ばれに傷(やぶ)られる。
「気結ばれ」今の医学では心因性胃炎のことで、心に患いがあると食べられない。
これは感情に支配されている人間特有の物です。
嘔吐とは、今の医学では吐く事をいっているが、我々は嘔と吐を分け、
「嘔」は声あって物無し、吐き気だけ。
「吐」はは声あって物有り、本当に吐く事。
気結ばれる時は「嘔」が多い。
原文:又有瘀血停積胃口、嘔吐之間雑以涎血。
訳文:また瘀血(おけつ)、胃口に停積して、嘔吐の間に雑(まじ)わるに涎血(ぜんけつ)を以てする事あり。
解説:
また、嘔吐物に血の雑(まじ)った物を吐く場合があります。
これは、心下部に瘀血(オケツ:古血)の固まりがあり胃潰瘍を起こしている場合です。
¨
井上恵理先生の講義解説より】〈 症と脉による区別 〉  P81上段。
瘀血(オケツ:古血)が胃に停まり、血の雑(まじ)った物を吐く、これは瘀血が胃口に停積しているからで、今日でいう胃潰瘍で心下部に固まりがあり、これは瘀血の症です。
原文:當辨其脉證。施以治法。
訳文:當〔まさ〕に其の脉証を弁じて施すに治法を以てす。
解説:
嘔吐の治療方針を正しく出すためには患者の「脉状」と「病状」を良くみて治療方法を診断します。
¨
井上恵理先生の講義解説より】〈 症と脉による区別 〉
その区別は脉により治法を施さなければいけない。
ここでいう「脉証を弁じて」は、大成論は薬物中心なので脉状といってもよい。
原文:中寒則脉沈緊、四肢厥冷、飲食不下、當以温暖之薬調之。
訳文:寒に中〔あた〕らるる時は、脉沈緊にして四肢厥冷し、飲食下らず、當に温暖の薬を以て、之を調う。
解説:
寒い所にいて身体が冷えた時の嘔吐症は、
脉状は、沈ずんで緊張した「沈緊」の脉になっています。
病状は、手足が冷たくなり、飲食が入らない為に「嘔」声あって物無しの「吐き気け」の症状です。
¨
井上恵理先生の講義解説より】〈 症と脉による区別 〉
寒なら、遅緊等、我々の場合は六部定位の脉で脾虚証等となる訳です。
寒に中らる時は、脉が沈緊であり、手足が冷たくなる、飲食が入らない。
これは飢えて食を欲せず(不食)で温暖の薬を用いる、腎虚証です。
原文:挟暑則脉弦数、煩躁而渇、又當清涼。
訳文:暑を挟〔はさ〕む時は、脉弦数にして煩躁にして渇す。又當に之を清涼すべし、
解説:
暑邪に侵され身体が熱くなった時の嘔吐症は、
脉状が、速くなりピーンと張った弦の様な「弦数」の脉になっています。
病状は、胸息れがして喉がカラカラになり嘔吐します。
この時の治療法は、涼しくする清涼剤の漢方薬を処方します。
¨
井上恵理先生の講義解説より】〈 症と脉による区別 〉
暑を挟む時は、脉は弦で早い「煩躁」胸息れがして渇く。
「渇す」喉がカラカラになる。
乾と渇す
「渇す」は水を飲めば潤い一時的に楽になる。
「乾」はいくら飲んでも喉が渇く。
涼しくすべく清涼剤をやる。
原文:停食則消化之、痰聚則順氣温胃、
訳文:停食なる時は、之を消化し、痰聚まる時は、気を順じ、胃を温めよ、
解説:
「停食」とは、消化不良になる食もたれになる事、この時の治療薬は消化剤を処方します。
「痰聚(たんしゅう)」とは、胃部のもたれ感で、この時の治療薬は気を巡らし胃を温める処方します。
原文:停積者多由優思過度、損傷経絡。
訳文:停積の者は、多くは優思過度にして経絡を損傷する。
解説:
「停食」や「痰聚」の状態になり易い人は、心配事が多く思い考え過ぎる人です。
今でいう心因性胃炎で、びっくりしたり、心配して食べれない状態になります。
そうすると、気結ばれて痰集まり、気の流れる経絡を損傷することになり嘔吐の病気になります。
¨
井上恵理先生の講義解説より】〈 症と脉による区別 〉
停食なる時は消化剤をやればよい。
痰聚まる時は、気を巡らし胃を温めよ。
「停積」気結ばれて痰集まれば、今でいう心因性胃炎で、びっくりしたり、心配して食べれない。
「優思」思いが過度になり経絡を損傷するからである。

停食の意味 – 中日辞書 – 中国語辞書 – goo辞書より。
停食とは消化不良になる,食もたれになる事。
原文:其脉実大者難治、虚細者易兪。
訳文:其の脉、実大なる者は治し難し、虚細なる者は兪へ易し。
解説:
嘔吐の病気なっている患者の脉状で、
脉状が「実大の脉」固くて大きい脉のときは治療が難しいです。
脉状が「虚細の脉」細くて虚しているときは治し易いです。
¨
井上恵理先生の講義解説より】〈 症と脉による区別 〉
この嘔吐の症は脉実大なる者は治らない。
不治の病である。
脉虚細なる者は治り易い。
原文:嘔吐之證、名状不一、
訳文:嘔吐の証、名状一ならず、
解説:
嘔吐の病症は沢山の原因があります。
¨
井上恵理先生の講義解説より】〈 嘔吐の症 〉 P81下段。
嘔吐の症は名前が一つでない。
原文:至若脚氣内攻、
訳文:脚気、内に攻め、
解説:
「内傷の気」が自分の身体の中を走り回り自身を内攻して心因性の嘔吐を誘発します。
「内傷の気」は七情のことです。
七情とは、怒、喜、憂、思、悲、驚、恐、の感情の事です。
¨
井上恵理先生の講義解説より】〈 嘔吐の症 〉
「脚気、内に攻め」てもなり
原文:婦人懐妊中毒、
訳文:婦人懐妊中毒、
解説:
婦人の「つわり症状」から嘔吐を誘発します。
また、
嘔吐で腹が張っていない時の「つわり症状」の場合は、嘔吐の治療だけでなく、その物の病気を考える事。
¨
【井上恵理先生の講義解説より】〈 嘔吐の症 〉
「婦人懐妊中毒」つわり
嘔吐で腹が張っていない時、つわりの場合は、嘔吐の治療だけでなく、その物の病気を考える事、
原文:困酒、倶有嘔吐、
訳文:困酒、倶に嘔吐する事あり、
解説:
酒の飲みすぎで嘔吐します。
二日酔いは、苦しんでもほっとけます。
¨
井上恵理先生の講義解説より】〈 嘔吐の症 〉
「困酒」酒の飲みすぎで嘔吐する。
二日酔いは焦渇の病気です。
上焦渇、中焦渇、下焦渇の三つの焦渇があり、その上焦渇のことです。
原文:又須各従其類以求之、此證決不可軽用利藥。
訳文:又須らく各々、其の類に従って之を求むべし此の証、けっして軽々しく利藥を用ゆべからず。
解説:
それぞれの病気の原因を診て、その症状従って治療をほどこします。
嘔吐の病状に対して、決して、軽々しく「利藥」吐き気止めや下剤を用いてはいけませんよ。
¨
井上恵理先生の講義解説より】〈 嘔吐の症 〉
その症状により治療すべし。
それぞれの病気に従って治療をほどこすべし、嘔吐の症は決して、軽々しく「利藥」下し薬を用いてはいけない。
原文:唯腹痛膨張、視其何部不利、 然後利之。
訳文:唯、腹痛膨張せば、其の何の部に利せざるかを視て、然して後に之を利せよ。
解説:
嘔吐の症状があり、腹が痛んで大きくなっている時は、その原因をよく診断した後に適切な治療をしなさい。
例えば、
1、子供の嘔吐で、腹痛、緊張した症状には、温めて治療するのが良い。
だいたい腹痛膨張は温めるのが良い、湿布の方法としては、湿布して油紙をして外気で冷やさない、
腹痛膨張部にその上にタオルを置きカイロをつける、冷(さ)めると逆になるので気をつける事です。
2、腹が痛んで大きくなっている時は、「食滯」で体のどこかに故障があると考えその治療をした後に下剤を用いてよい。
「食滯」とは、吐くも下痢もしない食中毒の症状です。
¨
井上恵理先生の講義解説より】〈 嘔吐の症 〉
腹が痛んで大きくなっている時は、食滯で下剤を用いてよい。
よく腹痛、緊張した嘔吐は子供にあり、温めて、すぐに治った事を経験している。
嘔吐で腹が張っていない時、つわりの場合は、嘔吐の治療だけでなく、その物の病気を考える事、
嘔吐は急性的疾病で、伝染病や胃潰瘍の心配する病気で、心配する事で病気を悪化させる傾向がある。
病気が解ると安心する。
二日酔いは、苦しんでもほっとける。
だから証に随っての治療は無責任な様ですが、実は適切な表示方法なのです。
嘔吐の症状は、生理的に良い時がある。
食物は嫌だと思えば食べない事です。
しかしもったいないから食べる、その時、吐くのが一番軽い症状です。
その次は下痢です。
吐くも下痢もしないと「食滯」で食中毒になる。
それは体のどこかに故障があると考える。
そうゆう体質がある。
また、固有証、素因証の体質によっても違う。
肺虚証、脾虚証の人は、下痢は案外平気です。
下痢すると気持ちが良い。
無論、苦しくないと病気が軽いと考えるが重い場合もあるので気をつける事です。
だいたい腹痛膨張は温めるのが良い、湿布の方法としては、湿布して油紙をして外気で冷やさない、
私はその上にタオルを置きカイロをつける、冷(さ)めると逆になるので気をつける事です。
原文:三因詳論及此、不可不審。
訳文:三因の詳論、此れに及び、審らかにせずばあるべからず。
解説:
「三因の詳論」内因、外因、飲食の邪を不内外因として三因を審(つまび)らかにする。
外邪に傷(やぶ)られた時は瀉法。
内因は補法、しかし嘔吐の症は、瀉法よりも補法が常法です。
ここで利剤は下痢剤ですから瀉法の薬です。
軽々しく用いるべきでないというのは、我々の治療は、瀉法より補法を用いるべきだと言っているのではないかと思います。
嘔吐の症で我々の所に来るのは〔症状が〕重くなっているので、よけい気をつける事です。
食べると吐くのは内因の証です。
優思過度にして経絡を傷る。
飲食や内因に傷られた場合は脾虚証が多く、この時は治りやすい。
腎虚証の嘔吐は気を付ける事。
嘔血が雑じり今の医学では、胃潰瘍、胃癌等が含まれる事があります。
¨
井上恵理先生の講義解説より】〈 利剤の適否と補瀉 〉P81下段。
「三因の詳論」内因、外因、飲食の邪を不内外因として三因を審(つまび)らかにする。
外邪に傷(やぶ)られた時は瀉法。
内因は補法、しかし嘔吐の症は、瀉法よりも補法が常法です。
ここで利剤は下痢剤ですから瀉法の薬です。
軽々しく用いるべきでないというのは、我々の治療は、瀉法より補法を用いるべきだと言っているのではないかと思います。
嘔吐の症で我々の所に来るのは〔症状が〕重くなっているので、よけい気をつける事です。
食べると吐くのは内因の証です。
優思過度にして経絡を傷る。
飲食や内因に傷られた場合は脾虚証が多く、この時は治りやすい。
腎虚証の嘔吐は気を付ける事。
嘔血が雑じり今の医学では、胃潰瘍、胃癌等が含まれる事がある。
¨
以上、
第八、嘔吐の原文・訳文・解説 を終わります。
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南北経驗醫方大成、第八、嘔吐 :井上恵理先生の講義解説より

   〔 〕内は山口一誠の文字です。
¨
〔訳文〕 p80-
人身は胃を以て主〔つかさどり〕と為す。
之に頼って五穀を容受す。
但し、傷(やぶ)らるる所あれば、食する事、能(あた)わざる。
且(か)つ、嘔吐の患いあり、故に胃虚の人、或いは寒気の為に中(あ)てられて、暑気の為に干され、或いは飲食の為に傷られ、
或いは気結して痰聚(たんあつ)まれば皆能(みなよ)く人をして嘔吐せしむ。
また瘀血(おけつ)、胃口に停積して、嘔吐の間に雑(まじ)わるに涎血(ぜんけつ)を以てする事あり。
當〔まさ〕に其の脉証を弁じて施すに治法を以てす。
寒に中〔あた〕らるる時は、脉沈緊にして四肢厥冷し、飲食下らず、當に温暖の薬を以て、之を調う。
暑を挟〔はさ〕む時は、脉弦数にして煩躁にして渇す。
又當に之を清涼すべし、停食なる時は、之を消化し、痰聚まる時は、気を順じ、胃を温めよ、停積の者は、多くは優思過度にして経絡を損傷する。
其の脉、実大なる者は治し難し、虚細なる者は兪へ易し。
嘔吐の証、名状一ならず、脚気、内に攻め、婦人懐妊中毒、困酒、倶に嘔吐する事あり、又須らく各々、其の類に従って之を求むべし、
此の証、けっして軽々しく利藥を用ゆべからず。
唯、腹痛膨張せば、其の何の部に利せざるかを視て、然して後に之を利せよ。
三因の詳論、此れに及び、審らかにせずばあるべからず。
¨
〈 胃が主 〉 P80下段。
人の身体は胃が主となる者である。
胃によって五穀を容受す。
「五穀」全ての食べ物、我々の体は先天の気と後天の気からなり、親から受け継いだ生命である。
それを維持する為、食物によって身体を養っている、これを後天の気といい、先天の気は命門から入り、三焦の気となる。
後天の気は、胃によって栄血を、腸に入って衛気を、その前の上焦で宗気を、それぞれ臓し、その三気が前の先天の気と共に、経絡を巡行する。
この様に生命を維持する食物は胃が主〔つかさどり〕となるのです。
¨
〈 傷(やぶ)られる病因 〉  P81上段。〔〕
胃が傷(やぶ)られると、必ず食物が食べられなくなる。
食べられないことも色々あり、食不思(ショクフシ:食べたくない)、不食(フショク:食べられない)、不味(味がない)等、患者の言葉はあてにならないので、患者に聞く時に、症としての区別が必要です。
食べても吐けば、食べないのと同じ事です。
胃の虚している人が、寒に中(あ)てられ、暑さに干され、食にあたり、気結ばれて嘔吐せしむ。
嘔吐の原因は、先〔ま〕ず寒、暑、飲食、気結ばれに傷(やぶ)られる。
「気結ばれ」今の医学では心因性胃炎のことで、心に患いがあると食べられない。
これは感情に支配されている人間特有の物です。
嘔吐とは、今の医学では吐く事をいっているが、我々は嘔と吐を分け、
「嘔」は声あって物無し、吐き気だけ。
「吐」はは声あって物有り、本当に吐く事。
気結ばれる時は「嘔」が多い。
¨
〈 症と脉による区別 〉  P81上段。
瘀血(オケツ:古血)が胃に停まり、血の雑(まじ)った物を吐く、これは瘀血が胃口に停積しているからで、今日でいう胃潰瘍で心下部に固まりがあり、これは瘀血の症です。
その区別は脉により治法を施さなければいけない。
ここでいう「脉証を弁じて」は、大成論は薬物中心なので脉状といってもよい。
寒なら、遅緊等、我々の場合は六部定位の脉で脾虚証等となる訳です。
寒に中らる時は、脉が沈緊であり、手足が冷たくなる、飲食が入らない。
これは飢えて食を欲せず(不食)で温暖の薬を用いる、腎虚証です。
暑を挟む時は、脉は弦で早い「煩躁」胸息れがして渇く。
「渇す」喉がカラカラになる。
乾と渇す
「渇す」は水を飲めば潤い一時的に楽になる。
「乾」はいくら飲んでも喉が渇く。
涼しくすべく清涼剤をやる。
停食なる時は消化剤をやればよい。
痰聚まる時は、気を巡らし胃を温めよ。
「停積」気結ばれて痰集まれば、今でいう心因性胃炎で、びっくりしたり、心配して食べれない。
「優思」思いが過度になり経絡を損傷するからである。
この嘔吐の症は脉実大なる者は治らない。
不治の病である。
脉虚細なる者は治り易い。
¨
〈 嘔吐の症 〉 P81下段。
嘔吐の症は名前が一つでない。
「脚気、内に攻め」てもなり「婦人懐妊中毒」つわり「困酒」酒の飲みすぎで嘔吐する。
その症状により治療すべし。
二日酔いは焦渇の病気です。
上焦渇、中焦渇、下焦渇の三つの焦渇があり、その上焦渇のことです。
その治療をすれば良い。
それぞれの病気に従って治療をほどこすべし、嘔吐の症は決して、軽々しく「利藥」下し薬を用いてはいけない。
腹が痛んで大きくなっている時は、食滯で下剤を用いてよい。
よく腹痛、緊張した嘔吐は子供にあり、温めて、すぐに治った事を経験している。
嘔吐で腹が張っていない時、つわりの場合は、嘔吐の治療だけでなく、その物の病気を考える事、
嘔吐は急性的疾病で、伝染病や胃潰瘍の心配する病気で、心配する事で病気を悪化させる傾向がある。
しかし病気が解ると安心する。
二日酔いは、苦しんでもほっとける。
だから証に随っての治療は無責任な様ですが、実は適切な表示方法なのです。
嘔吐の症状は、生理的に良い時がある。
食物は嫌だと思えば食べない事です。
しかしもったいないから食べる、その時、吐くのが一番軽い症状です。
その次は下痢です。
吐くも下痢もしないと「食滯」で食中毒になる。
それは体のどこかに故障があると考える。
そうゆう体質がある。
また、固有証、素因証の体質によっても違う。
肺虚証、脾虚証の人は、下痢は案外平気です。
下痢すると気持ちが良い。
無論、苦しくないと病気が軽いと考えるが重い場合もあるので気をつける事です。
だいたい腹痛膨張は温めるのが良い、湿布の方法としては、湿布して油紙をして外気で冷やさない、私はその上にタオルを置きカイロをつける、冷(さ)めると逆になるので気をつける事です。
¨
〈 利剤の適否と補瀉 〉P81下段。
「三因の詳論」内因、外因、飲食の邪を不内外因として三因を審(つまび)らかにする。
外邪に傷(やぶ)られた時は瀉法。
内因は補法、しかし嘔吐の症は、瀉法よりも補法が常法です。
ここで利剤は下痢剤ですから瀉法の薬です。
軽々しく用いるべきでないというのは、我々の治療は、瀉法より補法を用いるべきだと言っているのではないかと思います。
嘔吐の症で我々の所に来るのは〔症状が〕重くなっているので、よけい気をつける事です。
食べると吐くのは内因の証です。
優思過度にして経絡を傷る。
飲食や内因に傷られた場合は脾虚証が多く、この時は治りやすい。
腎虚証の嘔吐は気を付ける事。
嘔血が雑じり今の医学では、胃潰瘍、胃癌等が含まれる事がある。
¨
〈 質問 コーナー 〉P81下段。
問:メニエール氏病は目眩(めまい)、吐き気があるが、肝虚証が多いのですか?

井上先生の答え:
肝虚とは限らない、優思、過度して経絡を損傷する証で、メニエール氏病の場合は、嘔吐が伴うが、肝虚から来た場合は、肝虚脾実でくるので、胃が虚して嘔吐する。
経絡的にも胆経に〔変動〕がきている。
たまたま三焦経にに来る事もある。
三焦経から来る場合は、腎虚証がある。
あの〔メニエール氏病〕嘔吐は脾虚証ではなく、肝虚、腎虚が多い、目眩を伴うと肝虚証、頭痛、耳鳴の時、腎虚証が多いようです。
以上、【南北経驗醫方大成、第八、嘔吐 :井上恵理先生の講義解説より】を終わります。

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これより以下の文章は、

2014.9.14  吉日・・ 記載HPアップした文章です。

3年前の文書も何か参考になればと思いそのまま掲載をいたします。

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新しいホームページ版より制作しました。 2014年9月14日

井上恵理先生の講義録「南北経驗醫方大成による病証論」を取り上げるHPコーナーです。

「南北経驗醫方大成による病証論」の概要を山口一誠なりに分類と纏めを試みてみます。

【】〔〕内は、山口一誠の考えやタイトルです。

嘔吐

「南北経驗醫方大成(ノンボクケイケンイホウタイセイ) 八:嘔吐 」の原文

P80上段1行目 ~ P83より。

 八: 嘔吐 原文

人身以胃為主。
 頼之以容受五穀。
 但有所傷非不能食。
 且有嘔吐之患、
 故胃虚之人、
 或爲寒氣所中、
 或爲暑氣所干、
 或爲飲食所傷、
 或氣結而痰聚。
 皆能令人嘔吐。
 又有瘀血停積胃口、
 嘔吐之間雑以血。
 當辨其脉證。
施以治法。
 中寒則脉沈緊。
 四肢厥冷、
 飲食不下、
 當以温暖之薬調之。
 挟暑則脉弦数
 煩躁而渇。
 又當清涼、
 停食則消化之、
 痰聚則順氣温胃、
 停積者多由優思過度。
 損傷経絡。
 其脉実大者難治、
 虚細者易兪。
 嘔吐之證、
 名状不一、
 至若脚氣内攻、
 婦人懐妊中毒困酒、
 倶有嘔吐、
 又須各従其類以求之、
 此證決不可軽用利藥。
 唯腹痛膨張、
 視其何部不利、
 然後利之。
 三因詳論及此、
 不可不審。

井上恵理 先生の訳: P80上段1行目 ~ P83より。

人身は胃を以て主(つかさど)りと為す。
これに頼って五穀を容受す。
但し、傷(やぶ)らるる所あれば、食する事、能(あた)わざる。
且(か)つ、嘔吐の患いあり、
故に胃虚の人、
或いは寒気の為に中(あ)てられて、
暑気の為に干され、
或いは飲食の為に傷られ、
或いは気結して痰聚(たんあつ)まれば皆能(みな よ)く人をして嘔吐せしむ。
また瘀血の、胃口に停積して、
嘔吐の間に雑(まじ)わるに涎血(えんけつ)を以てする事あり。
當に其の脉証を弁じて施すに治法を以てす。
寒に中らるる時は、
脉沈緊にして四肢厥冷し、
飲食下らず、
當に温暖の薬を以て、之を調う。
暑を挟む時は、
脉弦数にして煩躁にして渇す。
又當に之を清涼すべし、
停食なる時は、之を消化し、
痰聚まる時は、気を順じ、胃を温めよ、
停積の者は、多くは優思過度にして経絡を損傷する。
其の脉、実大なる者は治し難し、
虚細なる者は兪へ易し。
嘔吐の証、名状一ならず、
脚気、内に攻め、
婦人懐妊中毒、困酒、倶に嘔吐する事あり、
又須らく各々、
其の類に従って之を求むべし、
此の証、けっして軽々しく利藥を用ゆべからず。
唯、腹痛膨張せば、
其の何の部に利せざるかを視て、
然して後に之を利せよ。
三因の詳論、
此れに及び、
審らかにせずばあるべからず。

井上恵理 先生の解説と言葉の意味: P80上段1行目 ~ P83より。

〈 胃が主 〉 P80下段。

人の身体は胃が主となるものである。
胃によって五穀を容受す。「五穀」全ての食べ物、我々の体は先天の気と後天の気からなり、親から受け継いだ生命である。それを維持する為、食物によって身体を養っている、これを後天の気といい、先天の気は命門から入り、三焦の気となる。後天の気は、胃によって栄血を、腸に入って衛気を、その前の上焦で宗気を、それぞれ臓し、その三気が前の先天の気と共に、経絡を巡行する。この様に生命を維持する食物は胃が主(つかさど)りとなるのです。

〈 傷(やぶ)られる病因 〉  P81上段。

胃が傷(やぶ)られると、必ず食物が食べられなくなる。
食べられないことも色々あり、食不思(食べたくない)、不食(食べられない)、不味(味がない)等、患者の言葉はあてにならないので、患者に聞く時に、症としての区別が必要です。
食べても吐けば、食べないのと同じ事です。胃の虚している人が、寒に中(あ)てられ、暑さに干され、食にあたり、気結ばれて嘔吐せしむ。
嘔吐の原因は、先ず寒、暑、飲食、気結ばれに傷(やぶ)られる。
「気結ばれ」今の医学では心因性胃炎のことで、心に患いがあると食べられない。これは感情に支配されている人間特有の物です。
嘔吐とは、今の医学では吐く事をいっているが、
我々は嘔と吐を分け、
「嘔」は声あって物無し、吐き気だけ。
「吐」はは声あって物有り、本当に吐く事。
気結ばれる時は「嘔」が多い。

〈 症と脉による区別 〉  P81上段。

瘀血(古血)が胃に停まり、血の雑(まじ)った物を吐く、
これは瘀血が胃口に停積しているからで、今日でいう胃潰瘍で心下部に固まりがある。
これは瘀血の症です。
その区別は脉により治法を施さなければいけない。
ここでいう「脉証を弁じて」は、大成論は薬物中心なので脉状といってもよい。
寒なら、遅緊等、我々の場合は六部定位の脉で脾虚証等となる訳です。
寒に中らる時は、脉が沈緊であり、手足が冷たくなる、飲食が入らない。
これは飢えて食を欲せず(不食)で温暖の薬を用いる、腎虚証です。
暑を挟む時は、脉は弦で早い「煩躁」胸息れがして渇く。
「渇す」喉がカラカラになる。
乾と渇す=「渇す」は水を飲めば潤い一時的に楽になる。
「乾」はいくら飲んでも喉が渇く。
涼しくすべく清涼剤をやる。停食なる時は消化剤をやる。
痰聚まる時は、気を巡らし胃を温めよ。
「停積」気結ばれて痰集まれば、今でいう心因性胃炎で、
びっくりしたり、心配して食べれない。
「優思過度」思いが過度になり経絡を損傷するからである。
この嘔吐の症は脉実大なる者は治らない。
脉虚細なる者は治り易い。

〈 嘔吐の症 〉 P81下段。

嘔吐の症は名前が一つでない。
「脚気、内に攻め」てもなり「婦人懐妊中毒」つわり「困酒」酒の飲みすぎで嘔吐する。
その症状により治療すべし。
二日酔いは焦渇の病気です。
上焦渇、中焦渇、下焦渇の三つの焦渇があり、その上焦渇のことです。その治療をすれば良い。
それぞれの病気に従って治療をほどこすこと、軽々しく「利藥」下し薬を用いてはいけない。
腹が痛んで大きくなっている時は、食滯で下剤を用いてよい。
よく腹痛、緊張した嘔吐は子供にあり、温めて、すぐに治った事を経験している。
嘔吐で腹が張っていない時、つわりの場合は、嘔吐の治療だけでなく、その物の病気を考える事。
嘔吐は急性的疾病や胃潰瘍の心配する病気で、心配する事で病気を悪化させる傾向がある。
しかし病気が解ると安心する。
二日酔いは、苦しんでもほっとける。
だから証に随っての治療は無責任な様ですが、実は適切な表示方法なのです。
嘔吐の症状は、生理的に良い時がある。
食物は嫌だと思えば食べない事です。しかしもったいないから食べる、
その時、吐くのが一番軽い症状です。その次は下痢です。
吐くも下痢もしないと「食滯」で食中毒になる。
それは体のどこかに故障があると考える。そうゆう体質がある。
また、固有証、素因証の体質によっても違う。
肺虚証、脾虚証の人は、下痢は案外平気です。下痢すると気持ちが良い。
苦しくないと病気が軽いと考えるが重い場合もあるので気をつける事です。
だいたい腹痛膨張は温めるのが良い、―

〈 利剤の適否と補瀉 〉P81下段。

「三因の詳論」内因、外因、飲食の邪を不内外因として三因を審(つまび)らかにする。
外邪に傷(やぶ)られた時は瀉法。
内因は補法、しかし嘔吐の症は、瀉法よりも補法が常法です。
ここで利剤は下痢剤ですから瀉法の薬です。
軽々しく「利藥」下し薬を用いてはいけないというのは、
我々の治療は、瀉法よりも補法を用いるべきだと言っている―
嘔吐の症で我々の所に来るのは〔症状が〕重くなっているので、余計気をつける事です。
食べると吐くのは内因の証です。
優思過度にして経絡を傷る。飲食や内因に傷られた場合は脾虚証が多く、この時は治りやすい。
腎虚証の嘔吐は気を付ける事。
嘔血が雑じり今の医学では、胃潰瘍、胃癌等が含まれる事がある。

〈 質問 コーナー 〉P81下段。

問:メニエール氏病は目眩(めまい)、吐き気があるが、肝虚証が多いのですか?

井上先生の答え:
肝虚とは限らない、優思、過度して経絡を損傷する証で、
メニエール氏病の場合は、嘔吐が伴うが、
肝虚から来た場合は、肝虚脾実でくるので、胃が虚して嘔吐する。
経絡的にも胆経に〔変動〕がきている。
たまたま三焦経にに来る事もある。
三焦経から来る場合は、腎虚証がある。
あの〔メニエール氏病〕嘔吐は脾虚証ではなく、肝虚、腎虚が多い、
目眩を伴うと肝虚証、頭痛、耳鳴の時、腎虚証が多いようです。

 【メニエール氏病と嘔吐の考察・五行図解 】

nb8

① メニエール氏病の場合は、優思、過度して経絡を損傷する証である。
② メニエール氏病の場合は、嘔吐が伴うが、
肝虚から来た場合は、肝虚脾実でくるので、胃が虚して嘔吐する。
経絡的にも胆経に〔変動〕がきている。
③三焦経から来る場合は、腎虚証がある。
④メニエール氏病の嘔吐は脾虚証ではなく、肝虚、腎虚が多い。
⑤目眩を伴うと肝虚証。
⑥頭痛、耳鳴の時、腎虚証が多いようです。
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2014.9.14  吉日・・ 記載HPアップしました。

※ 詳しくは本文:「南北経驗醫方大成による病証論 井上恵理 先生 講義録」

発行:東洋はり医学会、をお読みください。

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