肺金経の変動c207

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肺金経の変動

小項目 番号 c207

 

①ルート: 手の太陰 肺経

現代経絡鍼灸実践例から鍼灸古典文献を検証する。 (素門霊蘭秘典論 第八、一章、二節)

肺者.相傅之官(そうふのかん).治節出焉

(肺は君主心を助け守る官職で各臓器の機能を按配、調節する)

肺経は主として、呼吸器病や神経症が多い。
肺の病としては、咳出で胸苦しく、肩こり上気し、肩から缺盆、上腕、前腕にかけての痛み痺れや運動不全を来し、小便頻数、増悪すれば失禁する。
また、気に属する病(精神不安)。
皮膚の病(光沢なく、乾燥肌、アトピー肌、尋常性乾癬症など)。


①ルート:手の太陰肺経 内経を中心とした流注・・・・

⑫ルート:厥陰肝経の交わりを受けて
中焦、胃部に始り、下って大腸をまと絡い、反転上行し胃の上口を経て、
横隔膜を貫いて胸郭内に入り肺に属し、その気を会集し、更に気管より鼻に通じる。
ゆえに、鼻・のど・気管など、呼吸器の異変や、き気のやまい病、あるいは消化器の病をつかさど主る。
また、肺および肺経は皮膚と体毛を支配しする。また、上窩の缺盆、肩背等をめぐり、
外経は中府穴より、上腕前腕の掌面母指側を通り、その先端の少商穴に終わる。
よって、その経過する部の異常:凝り・筋肉の麻痺、痙攣の病状が出る。

①ルート:手の太陰肺経 内経を中心とした流注図 c2071

c2071

①ルート: 手の太陰 肺経 (11穴)

順番 ツボの名前 役割  場所

1中府(ちゅうふ)募穴   雲門穴の下1寸に取る.(正中線外方6寸)
2雲門(うんもん)       鎖骨下窩にあり、烏口突起の内縁、動脈拍動部 に取る。 三角筋と大胸筋の間
3天府(てんぷ)      上腕部にあり、腋窩横紋前端から尺沢穴に向かい下3寸、上腕ニ頭筋の筋溝に取る。
4俠白(きょうはく)   上腕部にあり、腋窩横紋前端から尺沢穴に向かい下4寸、尺沢穴の上5寸、上腕ニ頭筋の筋溝に取る。

5尺沢(しゃくたく) 合水穴   肘窩横紋上にあり、上腕二頭筋腱の橈側に取る.
東洋はり医学会
部 位: 肘窩橫紋のほぼ中央、上腕二頭筋腱の上にあり。
取り方: 肘関節を45度程度曲げ、上腕二頭筋腱に沿って尺部に向かって指を滑らせ、腱が尺部に入りこんで行く上を示指で押さえ、そのまま肘を伸ばした所に取る。

6孔最(こうさい)郄穴   前腕前橈側にあり、太淵穴の上7寸、尺沢穴の下3寸に取る.
7列欠(れっけつ)絡穴 四総穴:頭項を司る・八総穴 (任脈)前腕前橈側にあり、太淵穴から尺沢穴に向かい上1寸5分で、動脈拍動部のやや橈側 に取る。
8経渠(けいきょ)経金穴  前腕前橈側にあり、太淵穴から尺沢穴へ向かい上1寸、動脈拍動部 に取る。

9太淵(たいえん)兪土原穴・脈会 手関節前面横紋の橈側端の陥凹部、動脈拍動部に取る.
東洋はり医学会
部 位: 経渠穴の下6分、長母指外転筋腱の内縁にあり。
取り方: 手関節掌面において、手根骨の肘よりの橫紋上(骨にはのらない)で、長母指外転筋腱の内縁に取る。

10魚際(ぎょさい)  栄火穴  第1中手指節関節の上、橈側陥凹部、表裏の肌目に取る.
11少商(しょうしょう)井木穴   母指橈側爪根部、爪甲の角を去ること1分に取る.

手の太陰肺経の五臓の色体(よそおい)表。

基礎:金・肺・大腸・五記:経・
五募:井・経行く時は咳も出て暑い寒いの病あり。
病因:魄(やる気。はく、たましい)・義・商音(顎音、カ行、長く・低く・濁る、音階レ、哭(悲しみなく)、馬・秋・夕・西・寒・鼻・皮膚・息。
病症:声・白・腥(せい:なまぐさい)・辛・哭(悲しむ)・涕(てい:はなじる)慮(うれい)・咳。
養生法その他:桃・葱(ねぎ)・米・生数:四、成数:九、
五柄戸:庚(かのえ)、辛(かのと)。

咳嗽・寒熱とは:総ての呼吸器疾患、ぜん息等の呼吸困難・咳嗽、これ肺金の証。

肺金の変動 、分類実践例。

② 大便について。:何度もトイレに行く。 便を出して、脱肛する。
③ 小便について。:昼間の小便の回数が多い。
④ 睡眠について。:寝つきが悪い。
⑤ 皮膚について。:皮膚病がある。アトピー。 尋常性乾癬。枯燥。肌のきめ細かさ。
⑥ 肩や背中の状態:肩こり。五十肩で側方に手を上げると痛い。
:五十肩で前方に手を上げると痛い。
⑦ 腰部の状態。 :風邪を引いて腰痛になった。寝返りが困難。じっとしていても腰痛を覚える。
⑧ 膝の状態。  :膝の皮膚が乾燥。
⑨ 頭部の状態。 :頭が重い。
⑩ 腹部の状態。 :便秘を伴う腹痛。昼間の頻尿を伴う腹痛。気魄がなくなり腹痛。
⑪ 風邪引きに伴う症状。:咳が出る。のどの痛み。鼻水。くしゃみ。皮膚の乾燥で体調不良。
⑫ 四肢の状態。 :手足の冷たさ。
⑬ 流注より。  :中府(肺募穴)辺りのざらつき。
⑭ 全身の状態。 :全身の湿り気。上焦の汗。風邪を冷たく感じる。
⑮ 動作。    :欠伸が多い。

・・・・・・・・・・・・

肺金経の変動 、五大病症:

①咳嗽、
②寒熱往来、
③肩こり、
④気の病、
⑤皮膚病。

・・・・・・・・・・・・
②ルート:手の陽明大腸経

現代経絡鍼灸実践例から鍼灸古典文献を検証する。 (素門霊蘭秘典論 第八、一章、五節)

大腸者.傳道之官(でんどうのかん).變化出焉(へんかしつえん).

②ルート:手の陽明大腸経 内経を中心とした流注・・・・

①ルート:太陰肺経の交わりを受けて示指端の商陽穴に始り、その母指側を上がり、
第一、第二中手骨基底の合谷穴を経て前腕背面の母指側を通り、上がって肘関節の曲池穴に至り、
上腕を上がって臂臑穴において、三焦経の臑会穴に交わり、上がって肩髃穴を経て、
頸の大椎穴に至り、 前に返って胃経の缺盆穴より胸郭内に入り肺を絡い、横隔膜を貫いて下り、 臍の傍らの天枢穴の部にいたり大腸に属会する。支脈は缺盆から別れて、 頸より頬に上がり下歯の歯齦に入り、
口を回って鼻と唇の中央、人中穴にて左右交差し、鼻の傍ら、迎香穴に終わる。

ここより、胃経の始りなり。

②ルート:手の陽明大腸経 内経を中心とした流注図 c2072

c2072


②ルート:手の陽明大腸経(20穴)

経穴名 役割 取 穴 部 位

1商陽(しょうよう)井金穴  示指橈側爪甲根部、爪甲の角を去ること1分に取る.
2二間(じかん)  栄火穴  第2中手指節関節の下、橈側陥凹部に取る.
3三間(さんかん) 兪木穴  第2中手指節関節の上、橈側陥凹部に取る.
4合谷(ごうこく)四総穴:面目  第1・第2中手骨底間の下、陥凹部、第2中手骨寄りに取る.
5陽谿(ようけい) 経火穴  手関節後橈側にあり、母指を伸展してできる長・短母指伸筋腱の間の陥凹部に取る.
6偏歴(へんれき) 絡穴   前腕後橈側にあり、陽谿穴から曲池穴に向かい上3寸に取る.
7温溜(おんる)  郄穴   前腕後橈側にあり、陽谿穴から曲池穴に向かい上5寸、長・短橈側手根伸筋の間に取る.
8下廉(げれん)      前腕後橈側にあり、曲池穴の下4寸、長・短橈側手根伸筋の間に取る.
9上廉(じょうれん)    前腕後橈側にあり、曲池穴の下3寸、長・短橈側手根伸筋の間に取る.
10手三里(てさんり)    前腕後橈側にあり、曲池穴の下2寸、長・短橈側手根伸筋の間に取る.
11曲池(きょくち)合土穴  肘を屈曲してできる肘窩横紋の外方で、上腕外側上顆の前に取る.
12肘髎(ちゅうりょう)   上腕外側上顆の上際で、上腕三頭筋外縁の陥凹部に取る.
13手五里(てごり)     曲池穴から肩?穴に向かい上3寸に取る.
14臂臑(ひじゅ)      肩髃穴から曲池穴に向かい下3寸、三角筋の前縁に取る.
15肩髃(けんぐう)     肩関節の前方、肩峰と上腕骨頭の間に取る.
(便法)患者の上肢を水平に持ち上げ、肩関節部の前後にあらわれる凹みのうち、前の凹みに取る.
16巨骨(ここつ)     鎖骨外端と肩甲棘の間の陥凹部に取る.
17天鼎(てんけい)    扶突穴の後下方1寸、胸鎖乳突筋後縁に取る.
18扶突(ふとつ)     喉頭隆起の外方3寸で下顎角の下方1寸に取る.
(注)胸鎖乳突筋の前縁筋中に当たる.
19禾髎(かりょう)    水溝穴の外5分に取る.
20迎香(げいこう)    鼻孔の外5分、鼻唇溝中に取る.

治療穴について考察する。

大腸腑の主治症は偏歴、下廉、上廉、曲池位のもので、呼吸器に関する熱症や気道の主治症が多い。
これは、表裏関係の肺経の現す熱症が陽実証が多いためである。
この大腸経に治療点が現れる。すなわち、流注における鼻・上歯・のど等の急性熱症や皮膚病、化膿性疾患に効く穴が多い。
特に、風邪による熱症は商陽、二間、三間に現れる血絡の刺絡が効果的である。
また、小児には膀胱経の金門穴と併用する。
また、化膿性疾患には合谷、手三里、曲池を用い。
皮膚病には手三里、臂臑、肩ぐう穴が多く用いられる。

大腸経:  大腸者.傳道之官.變化出焉.

鼻、歯、咽喉等を循っているのでこの部の病をおこし、この大腸経の循るところ、頸、肩、上腕、前腕にあたって腫れ痛み、悪寒戦慄する。
また、下痢、便秘等もこの経の主どりである。
肺経と共に皮膚病、できものに関係がある。

臓象論より、
大腸は金性で背の第十六椎(第四腰椎)つき、(ヨーカン食って大腸いたい腰眼穴)その上口は水分穴の部にて蘭門に連なり、下口は肛門となる。
小腸において水分と分離した固形物は大腸に入り、ここにて下焦の火により衛を燻蒸する。
この衛は先天の原気を受けて脈外を循り、営の働きを援護する。
残った滓は時を得て便として肛門より排泄される。
子午治療は肺膀大腎より。

膀胱経のツボ:飛陽(絡穴)・金門(郄穴)
腎経のツボ :大鐘(絡穴)・水泉(郄穴)

奇経治療の適応側は『病側優先』とする。

本治法:肺虚証(定則):

太淵(自経の兪土原、母穴)・太白(脾の兪土原、肺の母穴)
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・ - 参考図書 ・ -

柳下登志夫先生の臨床考察「肺金経の変動 」

「経絡治療学原論上巻臨床考察‐基礎・診断編」よりの抜粋。

【 】は山口一誠の考察文です。

詳しくは、

経絡治療学原論(上巻)臨床考察 ―基礎・診断編― をお読みください。

発刊:東洋はり医学会
http://www.toyohari.net/book.html

元東洋はり医学会会長の筆者:柳下登志夫先生が、
福島弘道著「経絡治療学原論(上巻)」をテキストとし講義した中で、
臨床上重要な箇所を抜粋したものです。
柳下登志夫著  定価3,000円 (送料400円) A5 230貢

※ 筆者:柳下登志夫先生の60年に及ぶ治療経験、
1日100人を越える患者さんと向き合い、臨床を通して古典を再検討したものです。
時代により変わりつつある患者さんの病に十二分に対応できるバイブルとなっています。
現代に生きる経絡治療家には必携の書籍です。


臨床考察「 肺金経の変動」総論

表題: 臨床考察22: 臓象論1、肺臓  頁:75・平成15年5月 収録

【 診断:背の第三胸椎辺りが肺の変動ポイントになる。】

背の第三椎につくという、これがひとつの鍵となり、診察治療に大いに役立つ。
ここで捕らえる肺臓は鼻喉を始め、呼吸器全般と診るべきで、【 肺臓の生理 】肺臓は天空の清らかな気を全身に送り、全身に生じた老廃物を放出する。

【 治療穴:肺兪を中心に背の第三胸椎辺りの変化を整えると鼻喉を始め、呼吸器全般の病を治す 】

この働きに障害が起これば肺兪を中心とする変化を整えて解消に向かわせる。
たとえ、片肺摘出の手術後も、この付近の解剖学的変化があっても、その効果は大いに期待できる。

【 診断:「肺の働きの変調」として心気症・神経症・精神疾患・等がある。】

そして気の病―現代医学的には心気症・神経症・精神疾患・等は「肺の働きの変調」として捉え施療する場合が多い。
しかしこれらは〔医療機関の〕薬物投与と重なることが殆どで、それとの兼ね合いに注意を要する。
特に精神安定剤のような薬物は、患者本人の気持ちが関連して止めにくい薬物である。
施術者の対応の仕方に一考を要する。

【誤治:《気的誤治から血的な誤治》】

各種の頻尿、緩やかに来る尿閉、小児の発熱等に対しては綿密な観察を怠る時は、《気的誤治から血的な誤治》に移行し手患者を苦しめ、続いて施術者の破滅にも繋がる恐れが生じる。

【診断:治療】皮膚の病にも大きく係わるが、他の経絡との係わり合いがやや複雑である。

表題: 臨床考察27: 病因論・ 素質〔五行体質〕頁:94・平成15年11月 収録

4、肺金体質

虚体・実体共に呼吸器や皮膚疾患に悩まされ、特にアトピー体質患者は治りにくい。
また、痔の病気・尿意頻数の様な下焦に関する病、あるいは「清潔潔癖症」とも言うべきもの。
例えばドアの取っ手をもてない。 手を洗う為に必要以上に石鹸を使う、入浴すれば長時間出て来られない、という様な神経症「気の病」等に罹りやすい。
ただ、皮膚疾患でも日光アレルギーや接触性湿疹は案ずるより治り易いものも多い。

陽性〔実証〕体質者の咳嗽は激しく、中には朝方だけに発するものもある。
現代医学的検査では原因不明のものも多い。

陰性〔虚証〕体質の咳嗽は長引き易く、中には咳嗽で、肋骨を骨折する患者もいる。

表題: 臨床考察30: 診察診断学  頁:106・平成16年3月 収録

【肺経の変動: 感冒:〔感・傷・中〕の病状と治療の方法。 】

〔感冒:感:〕感冒といえば、外邪が体に入っても浅く発熱しても、他に症状がまだあまり起こらない時期、大抵は肺・大腸が変動し、大腸の邪が膀胱経に流れる。
そこで治療は肺経・脾経を補い、大腸経・膀胱経を瀉す事になるという理論を唱える人もいたいた。
しかし病はまだ軽く、治療も体に負担をかけない程度に施せば患者の体が治ってくれる。

〔感冒:傷:〕では病が経絡を冒し、病は感冒に比較してやや重く治りにくいが、このとき経絡の変動を整えると回復が速やかになる。

【誤 治:感冒:中の治療:同じ証・経穴・手法で施術は、時には誤治反応が現れる事さえある。】

〔感冒:中:〕は邪が臓に当たり、慢性病になって治りにくい。
治療も継続治療になる。
こうゆう際の治療法は工夫が必要で、いつも同じ証で、同じ経穴に、同じ手法で施術していると中々治せず、時には誤治反応が現れる事さえある。

 

柳下 登志夫 先生 会長特別講演‐ 収録:2009年9月6日
「経絡治療の基本を活用する」(上)経絡鍼療(第484号)平成23年2月 掲載

【これは柳下先生が1日100名の患者を施術した古典の検証から導き出された現代実践理論である。】

―(第484号)―p60下段

【診 断: 夢診断: 肺経の変動:】

【 肺経の変動:気が休まらない夢は、肺実。 気がゆったりするような夢なら肺虚。】

例えば今までも〔古典に記載されている〕肺経の虚実によって夢の内容が違い ―
気が休まらないような夢なら肺実で、
気がゆったりするような夢なら肺虚。

表題: 臨床考察36: 十二経の病症 頁:124・平成16年10月 収録

【経絡診断治療:病という複合体の部分部分の観察と、それらを重ね合わせて病の診断治療になる。】

十二経の病症は、具体的で術者にとっては覚え易く忘れ難く、用い易いものである。

そして、後世に伝えて間違いのないものであろう。

しかし、それはごく基本的な範囲に限られて言える事で、今日に於いては、基本を踏まえて「今日の患者」に合わせて改革していなければ、成果を得られない。

〔例えば〕咳嗽は肺経の病症という事になっているが、その現れ方は虚あるいは実、しかも他の経の変動としてこれが捉えられる事もある。
そして肺経の以外の主証が立てられることもしばしばある。
また咳嗽という病症は激しくとも証決定にあたってはひとつの因子にすぎない。
咳嗽のみで証を立ててはならない。

経絡治療は病症緩解が目的ではなく、十二経絡の働きを整えるところにあり、それによって全ての病症が去り、健康を取り戻すというところにある。
もし咳嗽を鎮める為だけに終始すれば、それはツボ治療であり、経絡治療では無くなってしまう。
これから十二経の病症のひとつひとつを挙げて観察していくが、それは病という複合体の部分部分を切り離して観察するもので、やがてそれらを重ね合わせて病の診断治療になることを念頭に入れておかなければならない。

 

臨床考察41: 四診法: 問診 頁:144・平成17年4月 収録

十二経の病症と問診。

問診に当たって十二経病症は、虚実が表裏に出る事を認識しておく必要がある。

五臓六腑および十二経の病症と問診。

ここでは原論を記し、私(柳下)の臨床上の注意(付記)を一言ずつ付け加えておく。

一、肺および肺経

原論:
気を主る臓腑経絡であるが故に、精神的な病、呼吸障害、咳嗽、喘鳴、肩こり、胸部膨満感、肩背 胸部痛、肺経の経絡の痛み、頻尿、鼻の病、皮膚病。

(付記):
精神的な病と言っても肺虚状態とは限らず、実を示す場合も多い。
また、心及び心経の実に相剋されて虚す場合もあって、肺、肺経の虚を救う目的で心火に処置を加える事もかなりの例がある。
また頻尿に対する肺経への処置は、器質的な疾病に対しても効果が高い。
二、大腸および大腸経

原論:
この経の経絡、即ち目、歯、咽喉、およびこの経、過ぐる所、手の第二指(人差し指)に及んで腫れ痛む。
腹痛、腹が鳴る、下痢、便秘、悪寒戦慄す。

(付記):
この経の流注は湿疹や皮膚炎があり、邪気が客していたり、その後に血の滞りを残している時がある。
これらを処置する時は、〔症状は〕軽いが長年患者を苦しめていた病症を消失させる事にも繋がる。

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①ルート 手の太陰肺経

表題: 臨床考察36: 十二経の病症 ・①手の太陰 肺経  頁:125・平成16年10月 収録

① 手の太陰 肺経:

昔のように、青洟をたらしたイタズラ小僧は少なくなった。―
しかし体質的なものであろう鼻炎が多く、これがやがて喘息を招き、また中耳炎等もある。
また、皮膚炎や湿疹が中々治らない。―
小便が近く、或いは失禁症が昼夜を問わず起こり患者を苦しめている。

【投薬と鍼灸治療の併用・・・本職の鍼灸治療家の腕前。】

この様な治療の多くは、投薬と鍼灸治療の併用になる。
鍼灸師の中にはそれを好まない術者もいるが、それは間違いである。
自分が患者になった時の状態を考えてみるが良い。
「一刻でも早くこの苦しみから解放されたい! 健康になりたい!」と思う〔のは自然なことである。〕
古来より、〔漢方〕薬と鍼灸の併用は当然のこととして行われてきた。

もう一言、「薬物を使わず、自分の施術だけの方が高い成績を上げられる」と考えている術者がどれ程いるだろうか・・・・?
治療家はその結果のみが問われる。
それこそ本職、鍼灸治療家たる所以なのである。

【肺経の変動に起因する病症】

肺経の変動に起因する病症として、尿意頻数・我慢できずに失禁する・
何を行うにもその前に形だけでも便所へ入る・
これらの多くは神経性のもの、所謂「気の病」に属する。
他に、呼吸器疾患、喘息・皮膚病・アトピー体質から来る病気・など。
体質的なものであろう鼻炎・中耳炎・等々が昼夜を問わず起こり患者を苦しめている。

【治療穴:】【手技のポイント:】

なお、選穴に当たっては、小便近いは「逆気して漏らす」という病症的穴の性格を優先するよりも、もっと指先に近い穴を選んだ方が効果的な場合が多いようである。
加えて、この肺経は気を主っているので十分に気を捕え、気を漏らさない様に左右圧を十分かけることを忘れてはならない。

表題: 臨床考察18: 肺経の臨床考察  頁:61・平成14年12月 収録

内 容 :〔 肺金の変動: 痔の病・脱肛・痔出血 〕

特 徴〔「孔最穴」《誤治》による、肛門痙攣に注意〕

肺経が大腸を纏っている為、「痔の病」にも大いに関係する。
「脱肛」も肺経の虚実によって起こる場合が多く、「孔最穴」も「痔出血」に効果ありと言われている。
また《誤治》により、肛門痙攣を起こすこともあるので注意が必要・・・。

もちろん呼吸器との関係の深いことは言うを待たないが、虚ばかりでなく実を呈しているときも多いことも知っていなければならないだろう。
近頃増えているアトピー性皮膚炎は、皮毛を主っている。
肺経に関係が深く、特に皮膚炎と気管支喘息とがかわるがわる起こる様な時には、大いに肺経の変動に気を配らなければならない。
そして頻尿や、最も注目すべきは気を主る肺経に関係する精神的、病は肺経の気を整えつことによって好転させれれる。・・・
肺経の気の滞りの状態を知り、その解消に努めよう。

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②ルート 手の陽明大腸経

表題: 臨床考察36: 十二経の病症 ・②手の陽明大腸経 頁:127・平成16年10月 収録

大腸経の流注に沿った痛み、例えば肩関節の痛み、或いは温溜穴から合谷穴辺りの腱鞘炎による痛み、そして歯の痛み・・・【手法:】 大体は実になっている場合が多く、反応点を狙って瀉す。

大腸経は胃経と共に顔に関係が深く、流注の反応点を観察して補瀉する。
熱や寒気とも大いに関連し、処置が上手くいくと忽(たちま)ち改善される。

【手技のポイント:処置は慎重に、効をあせってはならない。】

しかし陽経である為、誤治反応も速やかに出やすく、誤治であることを患者にも悟られやすいので、処置は慎重に、効をあせってはならない。

【 大腸経に現われる誤治反応 】

誤治反応としては、経に沿っての痛み・重だるさ・寒気・咳・くしゃみ、それに少し時間は空くが、唇の腫れ・歯や歯茎の苦痛・下痢・皮膚病等・・・・。

表題: 臨床考察18: 手の陽明大腸経  頁:61.62・平成14年12月 収録

【大腸経は全身的な病症に用いても大変効果著明】

昔大腸経は歯の経絡と言われた事もありそれらの病症に応用されることも多いが、全身的な病症に用いても大変効果著明である。

【触覚所見:皮下のコロコロ】

経の流注に沿って湿疹・血絡あるいは皮膚を軽く撫でると、皮下にコロコロと豆状の反応が触知される。
これらの所見が診断を下すのに大変役立つと共に、治療に応用して効果大である。
勿論これらは他の経絡についても同様ではあるが、ややもすると無視されがちなので付け加えておく。

【誤治になるかも・・・】

注意したいのは、風邪の治りかけている時など、補法か瀉法か、ハッキリ区別できない様な手技で大腸経を処理すると、治まっていた熱が再び上がることある。

【温度の左右差大は、病が上がり坂】

また発熱時には、患者の身体の温度の左右差が大きい時はまだ病が上がり坂、これが揃ってくると病気が治まる方向に向かっていることが多い。

【適応側】

大抵は温度の高いほうが適応側になり、反応点もそちらに現れることが多い。


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